枯渇聖女は婚約破棄され結婚絶対無理ランキング1位の辺境伯に言い寄られる

はなまる

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4罠

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 「フレイシア‥残念です。あなたがこの様な非道な行為を行っていたとは、我が教会はあなたのせいで忌まわしく穢れてしまいました。あなたにはもう聖女の資格はありません。あなたには期待していたのですがこのような事になって残念です」

 神官様の口調は穏やかと言うより呆れているような、でも私を鬼の様な形相で睨み付ける神官様をぼんやりと見つめる。

 視線の先にはこの国の守護神である月の女神であるキアーナ像が首を垂れて慈愛を込めた眼差しでこちらを見ていてその像の前のガラスの箱の中にある月の女神キアーナ様の守護の証である月光水晶はいつものように儚い月明かりのような色合いを醸し出している。

 

 「聞いているんですか?フレイシア!!」

 すぐに返答しなかったのが神官様のご機嫌を更に損ねたらしい。が。

 まったく、心当たりがない。

 ここに来てからの6年間の出来事が走馬灯のように脳内を駆け巡る。

 何がいけなかったのだろう?ジェリク殿下に嫌われたからと言っても仕事はきちんとこなしてきたのに?

 まあ確かにこのところは魔力がさっぱり使えなくなってはいたけど非道な行為なんて‥

 さらさらと紙に書いて尋ねる。

 【あの、私の何がいけなかったのでしょう?】

 「フレイシア貴様、カトリーナ公爵令嬢を呪いわざと苦しめた事がばれていないとでも?」

 神官様のこめかみに青筋が浮き上がる。

 でも、私には全く心当たりがないのだからと紙を差し出す。

 【カトリーナ様を呪う?一体何の事でしょう?】何よそれ?まったく覚えがないんだけどと首を傾げながら。

 「フレイシアあなたという人は!!」

 神官様がわなわなと唇を歪め私の差し出した紙をグシャリと握りつぶす。



 バーン!

 そこにジェリク殿下が入ってきた。

 彼は私の恋い焦がれている愛しの君。この国の第2王子であり私の婚約者でもある人。いや、私が勘違いしていたと言った方が正解だろうか。

 隣には今噂のカトリーナ公爵令嬢がいる。

 ピンクブロンド色のふわふわした髪を縦ロールにクルクル巻いて湖水のように美しい紺碧色の瞳の女性。

 あっ、ちなみに私は銀色の髪で瞳は燃え上がる炎のような緋色。でも、髪の色は母様と同じ色で私は気に入っているんだけど瞳の色は好きではない。



 「フレイシア!貴様まだとぼける気か?カトリーナに呪いをかけわざと病と見せかけ苦しめた。俺がカトリーナを可愛がるのに嫉妬して俺の気を引くためのお粗末な考え全てお見通しだ!」

 こんなジェリク殿下の顔初めて見る。恐い顔で私を睨みつけて来る。

 私はまた急いで紙に書く。

 【何を証拠に?私がその様な事をするはずがありません。カトリーナ様に呪いをかけるなどそんな馬鹿なこと。それに彼女は公爵令嬢。そのような事するはずもありません】

 「あの…」

 ジェリク殿下の腕に絡み付いたカトリーナ様が恐る恐る言葉を出しかけた。

 「カトリーナ?心配いらない。フレイシアの事は任せろ!」

 見たこともないような甘ったるい視線でカトリーナ様を見つめるジェリク殿下に胸が締め付けられる。

 「あの‥私、見たんです。扉の隙間から。フレイシア様が呪いを掛けている所を、夜中にこっそり自分の部屋で私の名を呼びながら呪文を唱えてて、私がいなくなればジェリクあなたがまた振り向いてくれるって言いながら…あの顔を思い出すだけでわたし…あれはきっと闇魔法ですわ」

 カトリーナ様がぶるっと身震いした。

 すかさずジェリクがカトリーナ様の腰を抱く。



 あっ!、いくら何でもカトリーナ様も聖女。そんな態度。不敬よ。不敬!!と思いながら‥ 紙に書いて見せる。

 【そんなの嘘です。私はカトリーナ様に呪いなんてかけるわけありません】

 (それに私の魔力は月の精霊の加護ですから!!闇魔法なんて恐ろしい)

 ジェリク殿下がポンと手を打つ。

 「そうかフレイシアお前の魔力はもう枯渇したから焦ったんだな。それで闇魔法に手を出したと言う事だろう」

 

 きゅっと胸が痛む。確かに焦っているのかもしれないけど。でも、最近はジェリク殿下への思いも薄れていた。

 また紙に書いて見せる。

 【そもそも呪いなんかかけていません】

 「では聞くが、君の治癒魔法が完全に傷を癒せなかったのも病気を完治出来なかったのはどうしてだ?それに最近は全く魔力が使えなくなっていたじゃないか。俺は騙されていた。今までフレイシアこそがこの国の聖女とばかり‥いいかフレイシア。カトリーナの光魔法はどんな怪我や病気でも治る。だから君は焦ったんだろう。本物じゃないからな。それにカトリーナが嘘をつくはずがないだろう。いい加減自分のやったことを認めたらどうなんだ?」

 「フレイシア様。ジェリク様の言う通りですわ。さっさと白状した方がいいですわよ」

 はっ?あなたにそんな事言われる筋合いないんですけど!!

 むっとした顔でジェリク殿下に紙を差し出す。

 【私はこの6年あなたの為にどれほど尽くして来たか忘れたんですね】



 ジェリク殿下がその紙きれをぐしゃりと握りつぶす。

 「尽くして来た?おい、それはこっちの言うセリフだフレイシア。俺の気持ちを踏みにじるような真似をしたのはお前だ。聖女だと思っていたのに枯渇聖女だなんて笑わせるな。いいか、この際だからはっきり言おう。フレイシアお前との婚約はなかった事になった。これはすでに国王陛下も了承済みだ。お前はみんなを騙していたんだ。陛下も王妃もみんな怒っているからな。今さら謝ってすむと思うなよ」

 ああ、もう何を言っても無駄なんだ。

 何だかこんな男に執着していた自分がばかみたいだ。

 私はジェリク殿下への気持ちがすっと冷めて行くのを感じた。





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