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5こんな男捨ててやる!って思ったら捨てられたのは私
婚約をなかったことにですって?
そんなのこっちが頼んだわけじゃない。
そりゃ最初はうれしかったわよ。
それに私だって身分不相応だってわかってた。でも、ジェリク殿下がそれでもいいって言うから!!
思えばジェリク殿下が私をいいように使いたかっただけの事じゃない。
それにカトリーナ?ふん、何様よ。ったく、5歳も年下の女のくせに堂々と人の男に手出してんじゃないわよ。
私をさめざめと見つめて小ばかにしたあの顔。腹立つ!
それ以上にあんなに私を婚約者にしておきながらさっさと王女に乗り換えたジェリク殿下に一番腹が立つけど。
こんな男に‥こんなばかに私は6年間も捧げて来たなんて。
悔しい。私が喋れたらこんな思いをしなくて済んだのだろうか?
王都に来て私はいつも喋れない事に劣等感を抱いて来た。言いたい事も言えずにすべてを喉の奥に押し込んで来た。
でも、もうすべてがどうでもよくなった。
彼は王子という地位を利用して高位貴族を優先に私の所に連れて来た。
病気の公爵家の母親や、怪我を負った嫡男。嫁入り前の娘の小さな怪我でも大げさに騒ぎ立てて私に治させて、毎日毎日そんなどうでもいい貴族の治療に明け暮れた。その費用はかなり高額だったはずなのに。
でも、そのお金はすべて神殿や紹介料として王子に支払われていて私にはびた一文入っては来ていない。
~そうそう、こんな会話もした~
「フレイシア。お金は君との将来の為に蓄えているから心配するな」とか。
「ああ~フレイシア。君はなんてすばらしい聖女なんだ。俺はすごく誇らしいよ。父も君との結婚を望んでいるんだ」
【ジェリク殿下。私達いつ頃結婚出来るの?】って尋ねた。
「ああ、君が不安になる気持ちはわかる。でも、フレイシアは聖女だから結婚はまだ無理だと思う。この国には聖女は君だけだ。みんなが君を頼りにしているんだ。俺だって早く君と一緒になりたい。でも、結婚となると君は聖女を引退する事になるだろうし‥」
そこまで言うとジェリク殿下がたまらないって顔をして私をぎゅっと抱きしめた。
「じぇ‥」カエルが踏みつぶされたような情けない声が出た。恥ずかしかった。
「今しゃべった?おい、フレイシア。頑張れば喋れるんじゃないのか?まあ、焦らなくていい。とにかく俺がどんなに君を愛してるかわかってるだろう?でも、俺だけの勝手を通すわけには行かない。なっ、フレイシアだってそう思うよね?」
こんなに私の事をってすごくうれしかった。
宝石のような美しい瞳に覗き込まれて私はこくりと頷くしか出来なかった~
それがこんな結果に。
そう言えば見て、この何年の着まわしている聖女服なんかもう裾は擦り切れて裏にはあて布がたくさんあって‥
寝る間を惜しんで孤児院の慰問とか市井の診療所なんかにあなたと出向いたりして治療もして休む暇なく働いて来たのは、すべてジェリク殿下、あなたとの未来の為じゃなかったの?
もう嫌だ!
聖女なんか辞めてやる!
でも一つ心配事があった。
私はカトリーナ様に向かって書いた紙を見せた。
【お尋ねしますが、カトリーナ様の呪いは解けたのですか?】
この期に及んで彼女の心配なんか。でも、気になるんだから仕方がない。
「あら。お忘れかしら?私は光魔法が使えるのよ。呪いなんて私の力でどうにでも出来るのよ。残念ね。でも、あなたが私を呪った恐ろしい罪人って事は忘れないでよね!」
カテリーナ様はさっと扇を広げて口元を塞いだ。
笑い堪えきれないとばかりに。
【どうしても私に罪を着せたいのですね。いいですとも。出て行きます。神官様、私は今日限りで聖女は止めさせていただきます】
「なっ、そこまでしなくてもいいだろうフレイシア。罪を償うにしても君にだって出来る事はあるんだろう‥」
神官様がちょっと焦ったように言う。
なに?さっきまで私に散々怒鳴ってたくせに。まだ私をこき使うつもり?魔力のない私を?
「神官、彼女がここを辞めるって言うならそれでいいじゃないか。呪いを掛けた罪もあるし王都にいられるのも迷惑だ‥どうだ神官、辺境騎士団に払い下げって事にすれば、あっちは魔獣退治で常に忙しいって聞くし罪は騎士団の慰安係って事にでもすればこんな人でも少しは役に立つんじゃないのか?」
はッジェリク本気なの?
カトリーナの口角が上がる。
二人は顔を見合わせて笑っている。
なによ!私をまるでごみみたいに捨てるつもり?それも慰安係って?私に騎士の慰み者になれっていうの?どこまで酷い人なのよ!!
それでも私はジェリク殿下を好きだったのに‥まじひどい!
【ひどい、ひどすぎるわジェリク。あなたは悪魔よ。私を散々利用して来たくせに!こんな処分納得できるわけありません。私、今すぐ辞めます。その代り私が今まで働いた給金をすぐに下さい】
私は荒ぶる気持ちを必死でこらえる。
「まあまあ、フレイシア、少し落ち着いて。今すぐなんて行き先も決まってないままではあなたも困るはず。あなたの行き先が見つかってからでも遅くはありません」
行き先って?罪人が行く流刑地って事?ふざけないで!こんな所に一分一秒だっていたくはない。
「いいじゃないですか神官様。本人が出て行くって言ってるんですもの。行き先は‥そうねぇもういっその事、辺境の娼館でもいいんじゃない?フレイシアでも騎士を癒すくくらい出来るでしょう。うふっ」
カテリーナ様がちろりとジェリク殿下を見る。
「ああ、だが、さすがに娼館はなあ‥‥あっ、そうだいいことを思いついた。辺境の叔父であるエバン・チェスナットの相手なんかどうだ?彼は38歳にもなってまだ結婚も出来ない変わり者だ。まあ、長年、令嬢たちの結婚絶対無理ランキング1位を誇るあいつなら無理もないけどな。だから俺が慰め相手を送り届けてやるんだ。フレイシア、お前とならピッタリだと思わないか?」
「‥‥(ひどい!)」
「ふふっ、もう、ジェリクッたらすごくいいアイディアですわ」
私はただ唇を噛みしめてニタニタ笑う二人をぎゅっと睨みつける。
「いいな。お前がちゃんと辺境に送り届けられるよう見張りを付けて送り出してやるから心配するな!おい」
ジェリク殿下が騎士に声をかけると私は神殿騎士に拘束された。
「うっ!うう”ぅ”ぅ”ぅ”~(ジェリク~卑怯よ。今まであなたにはいい思いをさせてあげたのに。いいから放して、私は自由よ!呪いなんかかけてないんだから!)」
言葉がしゃべれないってホントに悔しい!
「くっ、フレイシア。喋れないおまえにはピッタリだ。もっと早くこうすればよかった。枯渇聖女のお前と魔物との戦いに明け暮れる変わり者。まさにお似合いじゃないか。ハハハ」
ジェリク殿下とカトリーナが顔を見合わせてほくそ笑む。
ぎゅっと噛みしめた唇から血の味がする。
「おい、いいか。お前は聖女に呪いを掛けたんだ。まあ、今までの働きを考えてたとしても、お前にそんな自由が許される訳がないだろう?ったく。喋れないおまえに今まで優しくしてやったんだ。それだけでもありがたいって思えよ。じゃあな。出発まで牢にでも入れておけ、絶対逃がすんじゃないぞ!」
「はっ、承知しました」
ジェリク殿下の部下が私をひきずって行く。
こんなのひどい!
不意にジェリクがポンと手を叩いた。
「あっ、そうだ!聖女が呪いに掛けられたなんて知れたら国民を動揺させるな。そうだ。フレイシア。お前の罪は男を何人も誑し込んだ淫乱聖女って事にしよう。それなら聖教会の威厳も保てる。おい、お前たちもわかったな」
「「はい、わかりました」」
「あ”ぁぁ、ぐぁ”~ん”ん”~#%=#$!!(人を何だと思ってるのよ!この人でなし!)」
あいつを信じた私がバカだった。
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