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6精霊と出会う1
私は騎士団の牢に連れて行かれた。
「う”ぅ、う”~。あ”ぅ‥#$%&!!」吐き出されるのは言葉にならない声。 (ああ、しゃべれない自分が歯痒い)
がむしゃらに紙に書く。
【騎士様、私はカトリーナに呪いなどかけておりません。どうか信じて下さい】
牢に連れていかれる間にも何度も騎士に話を聞いて欲しいと頼む。
「悪い。フレイシア。君の言うことを聞けるとでも思うか?相手は王子なんだ。悪いけど‥それにこんな王都にいるよりレムソン辺境領に行った方がいいんじゃないか?」
1人の騎士が言った。
「ったく。聖女様に毒を盛ったくせにこれくらいで済んだのはジェリク殿下のお慈悲だろう。それに元は聖女だったならこれからも国のために尽くすのが当たり前だ!それにしてもジェリク殿下はうまい事を考えたよな」
もうひとりの騎士は私が罪人だと言わんばかりに蔑んだ顔で睨みながらも舌なめずりする。
うげっ、気持わる。ったく、あいつ。人を何だと思ってるのよ。いくら王子だからってひどすぎ!
私は苛立たし気に紙に書いて騎士に見せる。
【でも、私はやってもいない罪を着せられるんです。そんなのおかしいじゃないですか】
「まあ、そうだけど‥王子や貴族に逆らえるわけもない。これ以上騒ぐと家族にも迷惑が掛かるんじゃないのか?だろ?」
最初に話しかけた騎士がどうどうと宥めるような仕草をする。
確かに私はしがないへき地にある聖教会の神官の娘だが父は一年前に魔物に出くわして亡くなった。
「う”う”ぅ”ぅ”~‥(こんなのひどすぎます)」
騎士を恨めしそうに睨みつけるが騎士はもう何も言わなかった。
暗くて冷たい牢に入ると騎士はガチャリと鍵をかけて去って行った。幸い女だからか地下牢ではなかった。
「心配するな。食事は出るから。とにかく今は休んだ方がいい」
聖教会の護衛騎士なので6年間私がやって来た事を知っているのでそんな言葉をかけてくれたのだろうか。
だからと言って納得できる話ではないがどうする事も出来ないのも事実だ。
大きくため息を吐き諦めて牢の中を見渡す。
人の出入りなどできない小さな窓のガラスは埃まみれで外は見えなかったがそれでもぼんやりとした明かりだけが牢を微かに明るくしている。
床や壁は石だが古びたベッドの小さなテーブルがあり隅っこにバケツがあった。
ベッドはマットがむき出しでシーツはかけてなかった。
「はぁぁぁ~」
私はベッドをはたいてそこにちょこんと腰かけた。
部屋はこの空間だけお手洗いもない。もう一度バケツに目を落とす。そう言う事?
まったく。どうしてこんなことに?
私が何をしたって言うのよ。
ジェリク殿下が心変わりしたのはわかったわよ。だからって私に罪を着せて追い出すなんてひどすぎる。
思えば6年まえ、こんな見目麗しい男がこの世にいたのかと心を奪われたのがばかだった。
父様は1年ほど前に流行り病で亡くなったけど葬式にさえ行かせてもらえなかった。母様のお墓参りもずっとしていなかった。チェスナット辺境領に行ったらお墓参りさせてもらえるかな?
母様‥会いたいよ~
私は泣きながらそのままうとうとしたらしい。
ガルゥ~、うがぁぁぁ~。母様、逃げて。魔物が‥魔物が‥ああ、母様を。いやぁぁぁぁぁ~!!!
「あ、ぁぁぁぁ~」
私は飛び起きた。
喉がからからで身体じゅう汗をかいていた。
10歳の時、母様と魔物に襲われた時の夢だった。
ここ数年あの夢を見ることはなくなっていた。ジェリク殿下の事で頭がいっぱいだったからかな?
思えば幸せだったのか、それともばかなのか‥
(大丈夫?)
(えっ?誰?)
(あの‥わたしキアだよ)
いきなり脳内に声が響いた。
(キア?キアなの?えっ?子供の頃私に話しかけてくれたあの?)
(うん、あんまり悲しそうだから、またあの夢見たんでしょう?大丈夫?)
私は突然の事で驚いた。あれって夢かと思ってたのよね。母様があんな事になって突然魔力が使えるようになったけど、キアはあれっきり現れなくなったし‥
(うん、フレイシアに嫌われちゃったからあれから顔を出すのはって思ったから、でもずっとあなたの事見守ってたよ)
それって、私の力はキアの加護のお陰って事だよね。やっぱりそうだと思ってたんだよね。
それでも私は自分は人より少し特別で選ばれたんだって思ってたりもしてた。
だって喋れなくなった私はいつも人より引け目を感じて‥でも、この力があるから大丈夫だって。
そうでも思わなければジェリク殿下に好かれている理由がなかったから‥
でも、それも全部キアのおかげだったの?
自分が卑しい心だからジェリク殿下にも嫌われたのかな。
だったら自業自得じゃない。
そんな気持ちが湧き上がった。
(私‥ちょっと自惚れてた。喋れないけど私には特別な力があるんだって。ほんとはキアがいてくれたからなのに‥だからこんな目に遭ったんだね私)
しおれた気持ちがさらにしぼむ。
(違うよ。そんな嫌な人だったら私はあなたのそばにいなかったよ。フレイシアはいつもみんなを助けようと頑張ってたから、だからわたしはあなたにそばにいたんだよ。心の卑しい人間には精霊の声も聞こえないよ。だから安心して)
その言葉に救われた。
重い鎖のような心が少し軽くなる。
(そっか、ありがとう。嫌な事があってそしたらまたあの時の夢見ちゃった。心配してくれてありがとう。それよりキアは元気だった。ああ、それにいつも私に力を貸してくれてありがとう。お礼を言わせて)
(そうなの?良かった。また怒られるかと思ったけどあなたを放っておけなかったから‥)
(それなのにあの時はひどい事言ってごめんね。あなたのせいじゃないのに。ねぇ、これからはずっと私に話しかけてくれる?)
思えばあれからもう11年が過ぎている。それなのにキアは私を見捨てていなかったなんて。とにかく嬉しかった。
(ええ、いつでも。呼んでくれれば)
(ありがとうキア。これからよろしくね)
(ええ、私の方こそ。寂しくなったらいつでも呼んでね。それにしてもこの部屋ひどいわ)
(ええ、私もそう思う‥)
キアと話せた事で私の心はずいぶん軽くなった。
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