枯渇聖女は婚約破棄され結婚絶対無理ランキング1位の辺境伯に言い寄られる

はなまる

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10辺境に向かう3


  私は耳を塞いで身体を丸くしていた。

 「ぎゃおぉ~!!うごぅぉぉぉぉ~」

 「魔物は一頭だ。怯むなヌバルお前は側面から行け!スクトお前は荷馬車を守れ!」

 「おー!「はいっ!」」

 ラキスさんが指示を飛ばす声がして私は荷馬車の隙間から外を伺う。

 熊を思わせるような大きな図体に真っ赤な目、怒り狂ったように大きな口を開け鋭い爪をむき出しにしてラキスさんたちに襲い掛かっている。

 3人は剣で立ち向かっているが相手はかなりの大きさでゆうに騎士たちの背を超えている。

 恐い‥あの時と同じ。また誰かが‥ぞわりと背筋が震えて肌が粟立つ。



 「ががぁぁぁぁ~」ひときわ大きな口を広げて魔物がラキスさんに襲い掛かる。

 「ラキス!くっそ!!」ヌバルさんが側面から一気に剣を振り下ろす。その一振りに迷いはないように見える。

 剣先は狙い通り魔物の腹に突き刺さった。

 「ぐわぅぉぁぁぁぁ~!!」

 さらにスクトさんも剣を大きく振り被って魔物に向かっていく。魔物がスクトさん荷襲い掛かる。

 「ばか!」

 それをヌバルさんが庇って「ザクッ!」魔物の爪がヌバルさんの皮膚に食い込んだ。

 「うぐぅぅぅっ‥」

 ヌバルさんがその場に頽れた。



 ああ‥これ以上は!どうすればいいのわたし!!

 (フレイシア大丈夫?)

 (キア?キアなの?どうすればいいの?わたし‥)

 (私が付いてるわ。だから大丈夫。いい、ここから力を使って魔物を浄化するの。魔物は瘴気って言う悪い気の塊。それを浄化すれば倒せるから、さあ、自信を持って!) 

 (うん、やってみる)

 私は意識を集中させて手の上で魔力を目り上げる。光の塊が大きくなって荷馬車から駆け下りるとその光を魔物に向かって突き出した。

 光の帯が生き物みたいに伸びて魔物をぐるぐる巻きにしていく。途端に荒れ狂っていた魔物が苦しみ始める。

 「ぐはぁぁぁぁ~ぎゃおぉ~‥」

 騎士よりも大きかった魔物が光に包まれて凝縮され一瞬で倒れた。



 私は魔力を使い切ったせいなのか魔物への恐怖なのかわからないままその場にしゃがみこんだ。

 「聖女さん大丈夫か?」

 ラキスさんが走り寄って来た。

 私はこくこくと頷く。

 「驚いた。あんたすげぇじゃねぇか!おい、見たか今の?魔物が一瞬で倒れたぞ!」ヌバルさんが腕を押さえながら私を褒めてる。

 うわっ、大変。血がしたたり落ちてるじゃない。

 「はい、あんな凄い魔法初めて見ました。あれは浄化ってやつですか?聖女さん凄いです!」スクトさんも驚いた顔で近づいて来る。



 「私も驚いてます。こんなの初めてで出来るなんて思わなくて‥とにかくヌバルさんの治療を‥」

 私は急いでヌバルさんの腕に治癒魔法をかける。魔力がなくなっていたらと思ったがそれは杞憂だった。

 彼の傷ついた腕に手をかざして魔力を込める。

 ヌバルさんはぐっと顔を歪めていたが、じわじわ傷が塞がるにつれてゆっくりしかめた顔はほぐれて行った。

 「これで大丈夫」

 私はほっと詰めていた息を吐きだす。

 「いやぁ参った‥聖女さんあんたマジすげぇよ。ったく驚かされるな。それにしてもジェリク殿下ってやつはばかだな。こんなすごい女性を欠陥聖女だなんて。なぁ」

 (いえ、ヌバルさん私、枯渇聖女て言われてるんですけど‥)

 私を取り囲む騎士にちょっとたじろぐ。

 「ああ、誰が言ったんですかね。あんな大噓。辺境伯もすごい人を婚約者にしましたね。辺境騎士団も大喜びですよきっと」

 もう、ラキスさんがおかしな事を言うから全力で否定する。

 「そんなことないです。婚約者だなんて私、お断りするつもりですから!」



 「おいおい、これだけの魔力を持ってるんだ。聖女さんあんた辺境伯と取引したらいいんじゃないか?婚約者なんかやめて騎士団で働くとかさぁ」

 「ヌバルさんそんなこと出来ますかね?」

 「さあな。やって見なきゃわからんだろう?」

 「そんな他人事だと思って‥」

 ヌバルさんが強面な顔を少し歪めた。「そうかもしれん‥」

 それを察したようにスクトさんが話しだす。

 「そんな事よりヌバルさん。俺達も頑張らないと聖女様に笑われますよ。だって聖女様が助けてくれなかったら危なかったんですからね」

 「ったく。お前はいっつも痛いところを突くよな」ヌバルさんがスクトさんをこずく。

 「改めて聖女様、危ないところを助けていただき礼を言う。我ら3人。ジェリク殿下から聞いた事は嘘だと思う。貴方が無実だと信じる。なあ、みんな」ラキスさんが頭を上げた。

 「ええ、もちろんです」スクトさんはそう言ったがヌバルさんは返事をしなかった。

 まあ、それも仕方がないだろう。だって殿下と王都を追われた聖女。比べるまでもない。

 

 それでも私たちの間には何となく信頼関係が生まれたのかその夜の野宿でも仲良く夕食を食べて荷馬車に私は寝かせてもらった。

 騎士たちは見張りと寝る者とに分かれて休み翌朝は早くに出発して夕暮れ前には辺境騎士団に到着した。



 辺境騎士団は辺境伯の屋敷と隣り合わせでどちらの建物も強固な石造りの立派な建物で、その周りは高い塀で取り囲まれていて要塞を思わせるような佇まいだった。

 ちなみに辺境伯の屋敷を見るのは今回が初めてだった。






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