12 / 84
12あなたはどなたでしょうか?
かなり夜が更けた頃。
ギシリと扉の開く音がした。
私はすでに明かりを落とし部屋はほとんど何も見えない状態。
だと言うのに誰かが部屋に入って来た。
ヒェッ!誰?
「‥‥‥(あの、どなた?)」と言いたかったが喉が張り付いたようになって声が出ない。
衣擦れの音がして誰かがベッドの端に上がる気配が。
うわっ!どうしよう。どうすれば?もう、あんた誰なのよ!
「おい、寝てるのか?普通、辺境伯の閨の相手になるかもしれないと思ったらおちおち明かりも落とせないんじゃないのか?こうやっているという事はやはりずいぶんと男慣れした女なのか?さすが聖女を呪ったり殿下をたぶらかした淫乱女だけのことはあるな。まあ、王都の奴らの言いなりって言うのも癪に障るが拒否すればしたで面倒だからな。今夜だけは仕方なくお前を性のはけ口にする事にした。変な期待はするなよ。俺だって王都の奴らに付け入る隙は与える気はないからな。それに俺が手をつけなきゃ騎士に下げ渡す事も出来ない。だから仕方なくだ。わかったらそのつもりで務めを果たすんだな」
気だるげなつぶやきのような言葉を吐き捨てると男がするりと私を引き寄せた。
すごい、見えるんだ。こんな真っ暗なのに?
「わ、私が見えるのですか?」
「くっ!ほとんど見えない。まあ、おぼろげに姿が分かる程度だ。そもそもお前の顔さえ見たくはないんだ。まったく、王都は暇人ばかりなんだな。こんな余興を企てやがって!こっちはとんだ迷惑だ」
いやいやこっちだって迷惑だよぉ~。いっそやめるって言わないかな?っていうかもうやめてよ!
「‥‥」
どうやり過ごせばいいのかわからないまま。
「恐くはないはずだろう?さあ、いいから直ぐに終わる」
男の身体が上になりその手が胸の辺りをまさぐり始める。どうやらシャツは着ているらしい。
が。
ああ、もう我慢できない!
「あの、申し訳ありませんがあなたはどなたでしょうか?」
かばりと上半身が上がる気配。
「はっ?俺が誰かって。決まってるだろう。俺はエバン・チェスナット。この辺境の領主だ。さっ、これでいいか。お前は俺の婚約者になるって話だったがまさか本気にはしてないんだろう?。でも、俺は温情を掛けて一晩だけ俺の相手をすれば後はより取り見取り騎士達と楽しめるよう計らうって言ったんだ。わかったら黙ってじっとしてろ。ったく‥」
これがあのエバン・チェスナット辺境伯?いつからこんな嫌な男になり下がったのよ!
私がフレイシア・タンジールだって知っていてこの態度だとしたらがっかり。いや元から最低の男だったのか?
やはり結婚絶対無理ランキング1位の男だからくそなの?
だからと言ってこのままこの状況を受け入れるわけには行かない!
目の前と言ってもほとんど見えてはいないけど、起き上がってぐっと息を吸い込んで‥
「すぅぅぅ~はなぁぁぁ~。エバン・チェスナット辺境伯聞いてください。私が誰かお判りですか?私はフレイシア・タンジールです。幼いころよりあなたには色々と助けていただきました。グラマリン男爵領の聖教会の娘のフレイシア・タンジール。父の名はローダン・タンジールです。私は辺境伯が思っているような人間ではありません。むしろ逆です。私は純潔です。男をたぶらかすなんてそんなふしだらな事はしていません。カトリーナ様を呪ってもいません。すべてジェリク殿下の策略なんです。私は被害者なんです。どうか私を信じてもらえませんか?」
一気に言いたいことを吐き出した。
暗闇で彼が身じろいだ気がした。
「俺は‥その‥罪人が護送されると聞いてそいつの罪が俺の婚約者だなんてふざけた事になっていてくそムカついて、それでも王命に逆らうわけにも行かなくて。だからお前を試した。すまん」
彼が頭を下げたのかベッドが軋んだ。
「ひゃっ!」
「驚かせたのか?すまん。何もしない。フレイシア君はどう見ても淫乱聖女なんかじゃないって理解した。あっ、いいからちょっとそこで待ってろ!今、明かりを持って来る」
「‥はい」
辺境伯が急いで出て行く。
だからってこんなの許せるわけ‥信じてもらえた事より何さっきの態度。すごくむかつく。
いくら私が罪人だからって普通そこまで言う?
まじ、この人うざい。
私の中で怒りが荒れ狂う。
あなたにおすすめの小説
【連載版】婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
短編では、なろうの方で異世界転生・恋愛【1位】ありがとうございます!
読者様の方からの連載の要望があったので連載を開始しました。
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
※連載のためタイトル回収は結構後ろの後半からになります。
〖完結〗終着駅のパッセージ
苺 迷音
恋愛
過去、使用人に悪戯をされそうになった事がきっかけとなり、分厚い眼鏡とひっつめた髪を編み帽で覆い、自身の容姿を隠すようになった女性・カレン。
その事情を知りながらも夫ローランは、奇妙で地味な姿の妻を厭い目を逸らし続けた。
婚姻してからわずか三日後の朝。彼は赴任先の北の地へと旅立ちその後、カレンの元へと帰省してきたのは、片手で数えるほどだった。
孤独な結婚生活を送る中。
ある冬の日に、ローランの上官であり北の地を治める領主ハルシオン公爵が、カレン夫妻の邸にやってきた。
始まりは、部下の家族を想う上司としての気遣いだった。
他愛もない会話と、節度を守ったやり取り。ほんの僅かな時間を重ねていく。
そのうちに、お互いに灯り始めた小さな心の想い。
だが二人は、それを決して明かさず語ることはなかった。
それから一年ほどたった冬の夜。
カレンから届いた手紙に、たった一度だけハルシオンは返事を書く。
そこには彼の想いが書かれてあった。
月日は流れ、カレンとローランが婚姻して三年目の冬の日。
カレンはひとつの決意と想いを胸に、北へ向かう汽車に乗った。
※微さまぁか、もしくはざまぁになっていないかもしれないです。
※舞台は近世・産業革命初頭を基にした架空世界だと思っていただけましたら有難いです。
稚拙な作品ではありますがご覧くださいましたら凄く嬉しいです。よろしくお願い致します。
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
※表紙 AIアプリ作成
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
王弟が愛した娘 —音に響く運命—
Aster22
恋愛
弟を探す旅の途中、身分を隠して村で薬師として生きていたセラは、
ハープの音に宿る才を、名も知らぬ貴族の青年――王弟レオに見初められる。
互いの立場を知らぬまま距離を縮めていく二人。
だが、ある事件をきっかけに、セラは彼の屋敷で侍女として働くことになり、
知らず知らずのうちに国を巻き込む陰謀へと引き寄せられていく。
人の生まれは変えられない。
それでも、何を望み、何を選ぶのかは、自分で決められる。
セラが守ろうとするものは、弟か、才か、それとも――
キャラ設定・世界観などはこちら
↓
https://kakuyomu.jp/my/news/822139840619212578
ブサイク令嬢は、眼鏡を外せば国一番の美女でして。
みこと。
恋愛
伯爵家のひとり娘、アルドンサ・リブレは"人の死期"がわかる。
死が近づいた人間の体が、色あせて見えるからだ。
母に気味悪がれた彼女は、「眼鏡をかけていれば見えない」と主張し、大きな眼鏡を外さなくなった。
無骨な眼鏡で"ブサ令嬢"と蔑まれるアルドンサだが、そんな彼女にも憧れの人がいた。
王女の婚約者、公爵家次男のファビアン公子である。彼に助けられて以降、想いを密かに閉じ込めて、ただ姿が見れるだけで満足していたある日、ファビアンの全身が薄く見え?
「ファビアン様に死期が迫ってる!」
王女に新しい恋人が出来たため、ファビアンとの仲が危ぶまれる昨今。まさか王女に断罪される? それとも失恋を嘆いて命を絶つ?
慌てるアルドンサだったが、さらに彼女の目は、とんでもないものをとらえてしまう──。
不思議な力に悩まされてきた令嬢が、初恋相手と結ばれるハッピーエンドな物語。
幸せな結末を、ぜひご確認ください!!
(※本編はヒロイン視点、全5話完結)
(※番外編は第6話から、他のキャラ視点でお届けします)
※この作品は「小説家になろう」様でも掲載しています。第6~12話は「なろう」様では『浅はかな王女の末路』、第13~15話『「わたくしは身勝手な第一王女なの」〜ざまぁ後王女の見た景色〜』、第16~17話『氷砂糖の王女様』というタイトルです。
結婚してるのに、屋敷を出たら幸せでした。
恋愛系
恋愛
屋敷が大っ嫌いだったミア。
そして、屋敷から出ると決め
計画を実行したら
皮肉にも失敗しそうになっていた。
そんな時彼に出会い。
王国の陛下を捨てて、村で元気に暮らす!
と、そんな時に聖騎士が来た