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13さらに怒りが
しおりを挟むすぐに灯りを持ったチェスナット辺境伯が部屋に入って来た。
ランプの灯りが大きく照らされ私の顔が浮き上がる。
「フレイシア恐がらせたか?すまない」
私は灯りの向こうにいる辺境伯を見る。
間違いない。彼だ。金色の髪に精悍な眼差し。イケおじぶりにさらに磨きがかかって大人の色香がプンプン漂っている。
シャツは半開きでその隙間からのぞく熱い胸板や割れた腹筋に見惚れる。
が‥
あれ?ヌバルさん?でも、髪色が違う。でも、やっぱりヌバルさんじゃない?どうして?
「あの‥あなたは‥ぬ、ヌバルさんですよね?どうして‥」
この人荷馬車にいた時から私を試してたって事?
私はまたさらに怒りが増した。
辺境伯の顔が気まずそうになった。
「すまんフレイシア。君を騙していた‥君が辺境に送られることになった時、俺は王都にいたんだ。言ったように軍馬を騎士団に届けに来ていた。そしたら聖教会の聖女がふしだらな行為をしたので罪人として辺境に送ると、ついでに俺の婚約者にしろと連絡が来た。俺はどうせ平民の王族の俺への当てつけだろうと思った」
「ですが普通、誰が来るかくらい調べるのではないんですか?」
「名は書かれていなかった。それに俺は婚約者など欲しくもないのに誰だって気になんかするか!」
「でも、王都の聖教会だったら私かもって思わなかったんです?」
「思うわけないだろ!フレイシアはジェリク殿下と婚約してただろう?まさかお前が罪人として来るなんて思うわけない。それで帰るついでにその聖女と同行することにしたんだ。一体どんなあばずれだろうって。そしたら罪人はフレイシアで驚いた。髪色を変えて髭も付けていたが俺だってばれるんじゃないかって思ったが気づかなかったな。俺はお前が男を漁っていたと聞いてショックだった。だが、お前は変わっているようには思えなかった。魔力は失っていなかったし俺達を助けてもくれて傷も治してくれたな。感謝している‥でも、ジェリクにフレイシアが利用されていると聞いていたから色々な男と関係を持っているかもしれないって思ってしまった‥そしたらこんな手段を思いついておまえを騙してこんな事をしてしまった。本当にすまん」
「ひどっ‥さいってい!」
私は噛みつきそうになった感情はとっさに彼の胸板を叩いた。
彼はずっと私を騙して‥私にあんなひどい態度を。もし私が何も言わないままだったら?
「私が何も言わないままだったら私を抱いたんですか?ほんとにそんな事をするつもりだったんですか?」
「まさかそこまでする気はなかった。本当だ。信じてくれ。フレイシア悪かった。お前を疑って悪かった」
真っ直ぐに私を見る眼差しは困ったようなどうしていいかわからないような不安な色でいっぱいで嘘はついていないと思えた。
「そんな‥狡いです」
握りしめた拳を自分の太腿に叩きつける。
あんな態度で私に迫って来たくせに今の彼ときたらまるで飼い主に怒られた駄犬みたい。
途端に力が抜けてベッドにふにゃりと身体が沈んだ。
でも、許せる?こんなひどい事までして私を試したなんてやっぱり許せない!
ジェリクも神官も辺境伯まで!みんなみんな‥‥
あっ!それにこの状況って。
私は愕然とする。
「もう!辺境伯様この状況どうするんですか。絶対誤解されますよ。辺境伯様はもうすでにここに来てるんですよ。屋敷の人は今さら何もなかったなんて誰も思わないんじゃないんですか。もう、どうするんです?完全に誤解されますよ。私の純潔どうしてくれるんですか?」
あっ、言ってしまった。彼を怒らせただろうか?ぎゅっと思いっきり身体を縮こめる。
「あわゎゎ‥ふ、フレイシア。若い女がそんな事を‥いや、悪かった。誤解がないようにみんなには説明する。だから許してほしい」
辺境伯様が大慌てで私の頭を大きな手で撫ぜてもう片方の手で私を抱き寄せた。
温かい温もりがじわりと伝わる。
怒りに任せて握りしめた拳は行き場を失い力が緩む。
そんなことされたら‥
ずっとずっと辛かった。寂しかった。ずっと‥わたしは‥
辺境伯の胸に向かった拳はふっと緩んでその逞しい胸に手のひらを置いてしまう。
そして私は遂に我慢の限界が来てしまう。
泣くつもりもないのに一度堰を切ったら涙が止まらなくなった。
「わ、私、何も悪い事してません。ジェリク殿下に陥れられたんです。婚約破棄したいならそう言えばいいのに‥なのに、あのカトリーナと一緒になってわたしを悪者にして。ぐすん。うわぁぁぁぁぁ~ん、すごっくくやしい!あんなやつに6年も尽くして来たなんて‥ジェリクなんかだいっ嫌い!でも、私、辺境伯様は話せばきっとわかってくれるって思ってたんですよ‥こんなの、ひっく、こんなの、ぐすん。ひどすぎます~」
「ああ、悪かった。すまん。フレイシアの言うことを信じる。お前がそんな事をするはずがない。もう心配するな。これからはここで暮らせばいい。もちろんみんなにも真実を話す。なっ、お前に悪口なんか言わせないから安心しろ‥さあ、もう泣くな‥お前は俺が守るから、だから‥」
彼は何度も口ごもりながら。
大きな手はずっと私の背中をさすり続けていて。
何て大きな手なんだろう。まるで父様みたいに安心出来る。
騙されて疑われたのに、ひどいことをされたのに、なぜか彼の言うことがストンと胸の奥に落ちて何だか安心出来てしまった。
「ひっく、ジェリク殿下を信じていたんです。どんなにひどい頼み事を言われても彼の願いをかなえて来たんですよぉ。それなのに‥カトリーナが現れたら私はあっさりごみみたいに捨てられて‥うっ、ぐぅ、うわぁぁぁぁ~ん‥」
「そうだったのか。辛かったんだな‥すまんそうとは知らなくて‥俺は酷いことを‥ほんとにすまん」
彼は私の抱えて来た鬱憤を聞いてくれて‥
私はぐしゃぐしゃの気持ちを吐き出してほっとしたのかそのまま眠ってしまった。
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