13 / 84
13さらに怒りが
すぐに灯りを持ったチェスナット辺境伯が部屋に入って来た。
ランプの灯りが大きく照らされ私の顔が浮き上がる。
「フレイシア恐がらせたか?すまない」
私は灯りの向こうにいる辺境伯を見る。
間違いない。彼だ。金色の髪に精悍な眼差し。イケおじぶりにさらに磨きがかかって大人の色香がプンプン漂っている。
シャツは半開きでその隙間からのぞく熱い胸板や割れた腹筋に見惚れる。
が‥
あれ?ヌバルさん?でも、髪色が違う。でも、やっぱりヌバルさんじゃない?どうして?
「あの‥あなたは‥ぬ、ヌバルさんですよね?どうして‥」
この人荷馬車にいた時から私を試してたって事?
私はまたさらに怒りが増した。
辺境伯の顔が気まずそうになった。
「すまんフレイシア。君を騙していた‥君が辺境に送られることになった時、俺は王都にいたんだ。言ったように軍馬を騎士団に届けに来ていた。そしたら聖教会の聖女がふしだらな行為をしたので罪人として辺境に送ると、ついでに俺の婚約者にしろと連絡が来た。俺はどうせ平民の王族の俺への当てつけだろうと思った」
「ですが普通、誰が来るかくらい調べるのではないんですか?」
「名は書かれていなかった。それに俺は婚約者など欲しくもないのに誰だって気になんかするか!」
「でも、王都の聖教会だったら私かもって思わなかったんです?」
「思うわけないだろ!フレイシアはジェリク殿下と婚約してただろう?まさかお前が罪人として来るなんて思うわけない。それで帰るついでにその聖女と同行することにしたんだ。一体どんなあばずれだろうって。そしたら罪人はフレイシアで驚いた。髪色を変えて髭も付けていたが俺だってばれるんじゃないかって思ったが気づかなかったな。俺はお前が男を漁っていたと聞いてショックだった。だが、お前は変わっているようには思えなかった。魔力は失っていなかったし俺達を助けてもくれて傷も治してくれたな。感謝している‥でも、ジェリクにフレイシアが利用されていると聞いていたから色々な男と関係を持っているかもしれないって思ってしまった‥そしたらこんな手段を思いついておまえを騙してこんな事をしてしまった。本当にすまん」
「ひどっ‥さいってい!」
私は噛みつきそうになった感情はとっさに彼の胸板を叩いた。
彼はずっと私を騙して‥私にあんなひどい態度を。もし私が何も言わないままだったら?
「私が何も言わないままだったら私を抱いたんですか?ほんとにそんな事をするつもりだったんですか?」
「まさかそこまでする気はなかった。本当だ。信じてくれ。フレイシア悪かった。お前を疑って悪かった」
真っ直ぐに私を見る眼差しは困ったようなどうしていいかわからないような不安な色でいっぱいで嘘はついていないと思えた。
「そんな‥狡いです」
握りしめた拳を自分の太腿に叩きつける。
あんな態度で私に迫って来たくせに今の彼ときたらまるで飼い主に怒られた駄犬みたい。
途端に力が抜けてベッドにふにゃりと身体が沈んだ。
でも、許せる?こんなひどい事までして私を試したなんてやっぱり許せない!
ジェリクも神官も辺境伯まで!みんなみんな‥‥
あっ!それにこの状況って。
私は愕然とする。
「もう!辺境伯様この状況どうするんですか。絶対誤解されますよ。辺境伯様はもうすでにここに来てるんですよ。屋敷の人は今さら何もなかったなんて誰も思わないんじゃないんですか。もう、どうするんです?完全に誤解されますよ。私の純潔どうしてくれるんですか?」
あっ、言ってしまった。彼を怒らせただろうか?ぎゅっと思いっきり身体を縮こめる。
「あわゎゎ‥ふ、フレイシア。若い女がそんな事を‥いや、悪かった。誤解がないようにみんなには説明する。だから許してほしい」
辺境伯様が大慌てで私の頭を大きな手で撫ぜてもう片方の手で私を抱き寄せた。
温かい温もりがじわりと伝わる。
怒りに任せて握りしめた拳は行き場を失い力が緩む。
そんなことされたら‥
ずっとずっと辛かった。寂しかった。ずっと‥わたしは‥
辺境伯の胸に向かった拳はふっと緩んでその逞しい胸に手のひらを置いてしまう。
そして私は遂に我慢の限界が来てしまう。
泣くつもりもないのに一度堰を切ったら涙が止まらなくなった。
「わ、私、何も悪い事してません。ジェリク殿下に陥れられたんです。婚約破棄したいならそう言えばいいのに‥なのに、あのカトリーナと一緒になってわたしを悪者にして。ぐすん。うわぁぁぁぁぁ~ん、すごっくくやしい!あんなやつに6年も尽くして来たなんて‥ジェリクなんかだいっ嫌い!でも、私、辺境伯様は話せばきっとわかってくれるって思ってたんですよ‥こんなの、ひっく、こんなの、ぐすん。ひどすぎます~」
「ああ、悪かった。すまん。フレイシアの言うことを信じる。お前がそんな事をするはずがない。もう心配するな。これからはここで暮らせばいい。もちろんみんなにも真実を話す。なっ、お前に悪口なんか言わせないから安心しろ‥さあ、もう泣くな‥お前は俺が守るから、だから‥」
彼は何度も口ごもりながら。
大きな手はずっと私の背中をさすり続けていて。
何て大きな手なんだろう。まるで父様みたいに安心出来る。
騙されて疑われたのに、ひどいことをされたのに、なぜか彼の言うことがストンと胸の奥に落ちて何だか安心出来てしまった。
「ひっく、ジェリク殿下を信じていたんです。どんなにひどい頼み事を言われても彼の願いをかなえて来たんですよぉ。それなのに‥カトリーナが現れたら私はあっさりごみみたいに捨てられて‥うっ、ぐぅ、うわぁぁぁぁ~ん‥」
「そうだったのか。辛かったんだな‥すまんそうとは知らなくて‥俺は酷いことを‥ほんとにすまん」
彼は私の抱えて来た鬱憤を聞いてくれて‥
私はぐしゃぐしゃの気持ちを吐き出してほっとしたのかそのまま眠ってしまった。
あなたにおすすめの小説
【連載版】婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
短編では、なろうの方で異世界転生・恋愛【1位】ありがとうございます!
読者様の方からの連載の要望があったので連載を開始しました。
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
※連載のためタイトル回収は結構後ろの後半からになります。
〖完結〗終着駅のパッセージ
苺 迷音
恋愛
過去、使用人に悪戯をされそうになった事がきっかけとなり、分厚い眼鏡とひっつめた髪を編み帽で覆い、自身の容姿を隠すようになった女性・カレン。
その事情を知りながらも夫ローランは、奇妙で地味な姿の妻を厭い目を逸らし続けた。
婚姻してからわずか三日後の朝。彼は赴任先の北の地へと旅立ちその後、カレンの元へと帰省してきたのは、片手で数えるほどだった。
孤独な結婚生活を送る中。
ある冬の日に、ローランの上官であり北の地を治める領主ハルシオン公爵が、カレン夫妻の邸にやってきた。
始まりは、部下の家族を想う上司としての気遣いだった。
他愛もない会話と、節度を守ったやり取り。ほんの僅かな時間を重ねていく。
そのうちに、お互いに灯り始めた小さな心の想い。
だが二人は、それを決して明かさず語ることはなかった。
それから一年ほどたった冬の夜。
カレンから届いた手紙に、たった一度だけハルシオンは返事を書く。
そこには彼の想いが書かれてあった。
月日は流れ、カレンとローランが婚姻して三年目の冬の日。
カレンはひとつの決意と想いを胸に、北へ向かう汽車に乗った。
※微さまぁか、もしくはざまぁになっていないかもしれないです。
※舞台は近世・産業革命初頭を基にした架空世界だと思っていただけましたら有難いです。
稚拙な作品ではありますがご覧くださいましたら凄く嬉しいです。よろしくお願い致します。
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
※表紙 AIアプリ作成
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
王弟が愛した娘 —音に響く運命—
Aster22
恋愛
弟を探す旅の途中、身分を隠して村で薬師として生きていたセラは、
ハープの音に宿る才を、名も知らぬ貴族の青年――王弟レオに見初められる。
互いの立場を知らぬまま距離を縮めていく二人。
だが、ある事件をきっかけに、セラは彼の屋敷で侍女として働くことになり、
知らず知らずのうちに国を巻き込む陰謀へと引き寄せられていく。
人の生まれは変えられない。
それでも、何を望み、何を選ぶのかは、自分で決められる。
セラが守ろうとするものは、弟か、才か、それとも――
キャラ設定・世界観などはこちら
↓
https://kakuyomu.jp/my/news/822139840619212578
ブサイク令嬢は、眼鏡を外せば国一番の美女でして。
みこと。
恋愛
伯爵家のひとり娘、アルドンサ・リブレは"人の死期"がわかる。
死が近づいた人間の体が、色あせて見えるからだ。
母に気味悪がれた彼女は、「眼鏡をかけていれば見えない」と主張し、大きな眼鏡を外さなくなった。
無骨な眼鏡で"ブサ令嬢"と蔑まれるアルドンサだが、そんな彼女にも憧れの人がいた。
王女の婚約者、公爵家次男のファビアン公子である。彼に助けられて以降、想いを密かに閉じ込めて、ただ姿が見れるだけで満足していたある日、ファビアンの全身が薄く見え?
「ファビアン様に死期が迫ってる!」
王女に新しい恋人が出来たため、ファビアンとの仲が危ぶまれる昨今。まさか王女に断罪される? それとも失恋を嘆いて命を絶つ?
慌てるアルドンサだったが、さらに彼女の目は、とんでもないものをとらえてしまう──。
不思議な力に悩まされてきた令嬢が、初恋相手と結ばれるハッピーエンドな物語。
幸せな結末を、ぜひご確認ください!!
(※本編はヒロイン視点、全5話完結)
(※番外編は第6話から、他のキャラ視点でお届けします)
※この作品は「小説家になろう」様でも掲載しています。第6~12話は「なろう」様では『浅はかな王女の末路』、第13~15話『「わたくしは身勝手な第一王女なの」〜ざまぁ後王女の見た景色〜』、第16~17話『氷砂糖の王女様』というタイトルです。
婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜
夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」
婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。
彼女は涙を見せず、静かに笑った。
──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。
「そなたに、我が祝福を授けよう」
神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。
だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。
──そして半年後。
隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、
ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。
「……この命、お前に捧げよう」
「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」
かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。
──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、
“氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。