枯渇聖女は婚約破棄され結婚絶対無理ランキング1位の辺境伯に言い寄られる

はなまる

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15辺境伯と取引する

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 一夜明けて目が覚めて驚いた。

 えっ?私どうして‥

 私は辺境伯様の腕の中に閉じ込められていて身動きが取れない状態で。

 あの、これって。もう、誤解されるからって言ったのに。

 ウソ。もしかして寝ている間に私達?

 もぞもぞ動いて布団の中を覗き込む。

 ちゃんと昨日の寝間着を着たままだった。それに辺境伯様もシャツははだけてはいるが着ている。

 良かった。

 じゃなくて、これ絶対誤解されるってば!

 「あの‥辺境伯様。起きて下さい」

 唯一動かせる腕を伸ばして彼の頬をくいくい指先でつつく。

 「‥う、ん?だれだ‥まだあさじゃな、い‥って!」

 バチっと彼の目が開く。

 「うん?あっ、ふ、ふれいしあ。これには訳があって‥」

 「まだ何も言ってませんが‥」

 「いや、怒ってるんだろう?もちろん何もしてないぞ。お前の寝顔を見ていたらいつの間にか俺も眠ってしまったらしい」

 すごく気まずそうに眉尻を下げて誤って来るけど、彼ってもうかなり年上のはずよね?いいのかな。辺境伯にここまで言わせて。

 あんなに激しかった怒りは一夜明けるとかなり薄らいでいた。それに辺境伯が私に何もしなかった事も私にはかなりの安心材料だったみたいで。



 「そんな言い訳‥昨日みたいにぐいぐい迫ったらいいじゃないですか。おい、フレイシアお前は俺の処理係なんだ。朝から受け入れろとか」などと冗談も言えるほど。

 「ばかな事を言うんじゃない!誰もそんな事思ってない。二度とそんな事を言うな。わかったか!」

 「ふふっ、でも、これどう説明する気です?絶対誤解されますよ」

 「それは‥いや、こうなったら俺達はそう言う関係だと思わせればいいんじゃないか?そうすれば辺境騎士もお前には手を出さないだろうし‥ああ、それがいい。フレイシアお前は俺の婚約者で俺とはすでにこんな関係だと言うことにしよう」

 「そんな。いやですよ。辺境伯とそんな関係って思われるなんて‥」

 「何だ。俺じゃだめなのか?まさかジェリクが忘れられないのか?」

 「そんな訳。でも、ジェリクに捨てられてすぐに辺境伯に取り入ったみたいで何だか嫌なんです。私はもう男に頼らず男に利用もされたくないんです。これからは自分の力で生きて行こうって思ってるんですから」

 「でも、俺の婚約者ということにしておけば色々都合がいいだろう?」

 「都合がいいって?」

 「第一に住まいや食事に困らない。それに騎士団で働くにしても融通が利く。どうだ?」

 「そう言えばヌバルさんの時にもそんな事言ってましたよね。私に婚約者ではなく騎士団で働くのはどうかって?」

 「ああ、言ったな。あの時はフレイシアがまだ‥その‥」

 「ああ、男を漁っている聖女だって思ってたんですよね?」

 辺境伯様は大きな体をすくませて眉尻を下げる。



 な、何?これ、超かわいいんですけど!!

 何だか可哀想になって私はつい‥

 「まあ、仕方がありませんよね。それはジェリク殿下のせいですから、辺境伯様のせいじゃないってわかってますよ」

 「そうか、わかってくれるかフレイシア。それでだ。その辺境伯って言うのもおかしいだろう。俺のことはエバンと呼んでくれ」

 もう、コロッと変わる単純男だけど彼になら話してもいいかって思った。

 「いえ、そういうわけには‥実は私の魔力は月の精霊の加護なんです。キアは‥月の精霊の名前ですが、彼女は私の力にはなるけどもう王都の守護はしないと断言してます。だからきっと辺境騎士団のお役に立てると思うんです。魔物討伐にも参加します。だから婚約者にはならなくてもいいと思うんです」

 辺境伯の眉が上がる。

 まあ、そりゃそうだろう。いきなり月の精霊の加護なんて信じれないだろう。っていうか私ったらこんな事話すなんて‥



 (キア怒ってる?)

 (ううん、彼は信頼できるってわかってるから大丈夫)

 (そうなの?辺境伯様って信頼できる人なの?)

 私にした行いは決して許せる行いとは思えないけど‥

 (まあ、彼は幼いころから命を狙われたり蔑まれたりしてきたから、でも一度信じた人はすごく大切にする人よ。それに領民思いのいい領主だしね)

 (そうなの。そんな風には思えないけど‥まあ、グラマリンにいたころの彼は確かに信頼できる人だったわ)

 (今も同じよ。ただ、あなたがジェリクと一緒に王都に行った事は怒ってたわ)

 (どうして?)

 (さあ、あなたを頼りにしてたとか?)

 (まさか、私はまだ子供だったのよ)

 (でも、女神の加護を持っていたじゃない)

 (でも、まだ未熟だったし)

 (まあ、それは私にも責任があるわね。でも、エバンは裏切られたって思ったのかも)

 (まあ、そんなつもりなかったわ)

 (だから彼の言うように婚約者って事にして置けばいいんじゃない?)

 私は辺境伯をまじまじと見つめた。

 

 「月の加護?キアが?フレイシアが月の精霊の?いや、それは前から力があったからんだし‥俺も薄々気づいていた‥いや、でもそんなにはっきり‥で、何で婚約者になってくれない?‥×××」

 彼は1人でぶつぶつ言っている。ふふっ、脳内整理でもしているのかな。

 

 もういつまで迷ってる気?こうなったら最後のダメ押し!

 「辺境伯様!いえ、エバン様。私‥ええ、まだまだ未熟だとわかってますが、一緒に魔物と戦いましたよね?私の力だって知ってますよね?だから騎士団で働かせてもらえませんか?も、もちろん月の精霊の事は秘密にして下さいよ。辺境伯様だからお話したんですよ。私はあなたを信頼してるんです」

 はっと辺境伯の顔が上がる。

 「フレイシア、許してもらえるのか?あんなことをした俺を?」

 「はい、だってあなたは確認をしただけですよね?私が本当に信頼のおける人間かどうか。それでどうでした?私は合格ですか?」

 「ああ、ああ、もちろん合格だ。フレイシア君はあのジェリクのそばにいながら彼の毒牙にかからず乙女のまま清いままでいてくれた。その心も身体も純粋で美しくて月の女神の加護まで持っていてその力はおそらく強大でこの辺境の助けになる事は間違いないと思う。だから、改めて頼む。どうかこの私に力を貸してほしい。辺境で苦しむ人の為に魔物討伐や飢えに苦しむ人たちを救う協力をしてくれ、そのためにも婚約者という事にしておいた方がいいと思うんだ」

 「はい、もちろんです。って、ええ?」

 しまった。つい、話の流れで言ったけど‥

 「ありがとう。これで決まりだな。私の婚約者という肩書で騎士団で働けるようにしよう。いや、騎士団は荒くれものばかりで君のような若くて美しい女性が独り身と分かれば良からぬ考えを持つ奴も出て来るだろうからな。これで安心だ」

 「まあ、辺境伯様のおっしゃりたいこともわかりますけど‥婚約者はさすがに‥」

 私だってジェリクの婚約者という肩書があったからある意味神殿で優遇されていた部分もあったと思っている。だから肩書はあった方がいいと知っている。

 けど!!

 「ああ、こんな格好で心配するなという方が無理だな。いいかフレイシア、婚約者だからと言って俺が君に何かするなどということはない。そうと決まれば俺はすぐに部屋を出て行くからな安心しろ!」

 彼はおもむろに立ちあがるとはだけたシャツを急いで掻き合わせくしゃくしゃになった髪を掻きむしって何やら照れ臭そうに扉に向かう。



 (フレイシア、これ以上の取引はないと思うわよ)キアが囁く。

 (そうかしら、なんだかまた利用される気もするけど‥)

 「辺境伯様。もしさっきの言葉に嘘があればすぐに取引はなしにします。それでもいいんですよね?」

 「ああ、もちろんだ。婚約はただの表向き、俺は君に何もしないと誓う」

 「わかりました。今の言葉月の精霊が聞き届けましたので。これで取引は成立です」

 私だってジェリクに何度も煮え湯を飲まされてきたんだもの。現実は甘くないって知ってますから。

 理路整然とした顔でそう告げた。

 「ああ、それで構わない」

 そう言った辺境伯様の顔が少し悲し気に見えたのは気のせいだろうか‥‥





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