22 / 31
22どこまでも腹の立つラヴァード
しおりを挟むエバンが出かけた後で騎士の一人が体調不良になり急きょ私が見回りに同行する事になった。いいよね。だってラヴァード副隊長が一緒なんだし‥
彼と会うのはあの怪我を治して以来初めてだ。
「ラヴァード副隊長、今日はよろしくお願いします」
毛嫌いしているであろう副隊長にあえて挨拶をする。彼は苦虫をかみつぶしたような顔で会釈をする。
「ああ、ったく、お前のようなものを同行させるなんて俺もどうかしている。だが、あの時は世話になった。一応例は言っておく」
以外。こんなお礼も言えるんだ。
「いえ、大事に至らず良かったです」
「だが、これからは二度と俺に構うな!俺は知っていると思うがキアラルダ人だから魔法が使える。だから怪我も自分で治癒することが出来たんだ。なのにお前はそんな事を知らなくて慌てて俺の治療をしたんだろうが不要な事だった」
上から目線の偉そうな物言い。人目もはばかることなく。悪かったわね。
ブチブチ!!
「まあ、そうとは知らずに余計な事をしました。もう二度とあなたに手は貸しませんのでご安心を。副隊長!」
「ああ、やっと忠告出来て良かった。それからお前は少し隊長と距離を置いた方がいい。他の騎士の影響も少しは考えろ。今はいつ戦争になってもおかしくない状況なんだ。バカップルを見せつけられている騎士の身にもなって見ろ。迷惑だろ!」
辛辣な物言いでそう言うとすっと顔を反らされた。
「では、隊長にもそうお伝えください。私一人ではどうしようも出来ない事もありますので」
「すでに忠告してある」
それ以上の会話は続かなかった。
そのまま見回りを終えるころだった。
魔物が3頭現れる。
「うごぉぉぉぉ~。ぐがぁぁぁ~。はあ”ぅぉぉぉ~」
どれも熊ほどの大きさで大きな牙と爪を持っている。
騎士隊員は6名ほど。ラヴァードが先陣を切って真ん中の魔物に飛び掛かる。
他の騎士も後に続き二手に分かれてすぐ横の魔物に切りかかった。
「おりゃぁぁぁ~」
「ぶしゅっ!ばすっ!」ラヴァードの剣が魔物めがけて振り下ろされる。剣が魔力を帯びて赤色の光が魔物の腹を切り裂いていく。
「怯むな。いいか、魔物に背を向けるんじゃない。剣先を突きつけて大きく振り払え!」ラヴァードが指示を飛ばす。騎士がそれに従い剣を魔物に振り被る。
一瞬魔物が下がった隙をついてラヴァードが横から剣を薙ぎ払う。剣が赤い光を帯びて魔力が魔物に押し込まれて行くみたいだ。
「ざびゅ!ずさっ!」鈍い音に続いて魔物の血しぶきが上がり魔物が倒れる。
「フレイシア魔法を!」
私は向かって魔物にハッとして手をかざす。
荷馬車で魔物を倒した時のように一心に魔力を手の平に込めると迫る魔物に向かって手のひらを押し出した。
光の帯が魔物を捕らえると縛り上げるように魔物に絡みつく。
「う”ぎゃぁぁぁぁぁ~」断末魔のような声を上げて魔物が倒れる。
3頭の魔物は見事に倒れた。
いきなりラヴァード副隊長が近寄って来る。
「良くやった。おい、お前の魔力は俺の魔力と同じ気がする。お前もキアラルダ人だろう?」
「はい、母がキアラルダ人です」
そうは言ったが私の魔力は月の加護なのだが。
「やっぱりそうか。傷を治した時気づいた」
「でも、私の魔力は月の‥いえ、あの、キアラルダ人ってみんな魔法が使えるんです?」
「いや、多分貴族くらいの身分の者が魔力を持っているはずだ。ということはお前も貴族か?」
「とんでもありません。母は平民の出身でしたから」
「そうか。まあ、元貴族かもしれんからな。まあ、ここでそんな事は関係ないからな。実力があれば出世する。まっ、お前は女の武器を使ったんだろうがそれでも同じ同郷と分かったんだ。お前を騎士団で働かせてやろう。何しろお前の魔力は威力がでかいから即戦力で使えそうだしな」
ということはラヴァード副隊長も貴族出身なの?幼い時に捨てられ孤児をたり元は盗賊集団に入っていたと聞いたけど。
「なんだ?俺が貴族かもって思ったのか」
ギクッ。
「はっ、俺が貴族のはずがないだろう。平民の中にもたまに魔力を持っているものが生まれるんだ。俺は強くならなきゃ生きていけなかった。だから魔力が強くなっただけだ。ったく。すぐ余計な勘繰りを‥だから女は」
「すみません」
チッ。と舌打ちが聞こえたと思ったらラヴァードが手を差し出して来た。
「ほら」
「はい?」
なに?握手しろって事?こんな最低な奴と?でも、これを拒否したらさらに最低な態度を取られる可能性大きいよね。
私は仕方なく手を差し出し彼の手の上に乗せる。
「プッ!お手か」
彼はすかさず今度は片方の手で頭をポンポンと撫ぜられて「これでどっちが上かわかったな」と言って笑った。
なによそれ?失礼な。腹立つ!!
まあ、あなたは副隊長様ですからわかってますけど!
銀色の髪。緋色の瞳。同じ色の私達。同じキアラルダ人。なのに何だか嫌だった。
それに副隊長、あなたと私の魔法そもそも色違いますけど!!同じじゃないし。
だが、笑うと意外とかわいい顔になるとも思った。ちょっと意外。
18
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
【完結】私が誰だか、分かってますか?
美麗
恋愛
アスターテ皇国
時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった
出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。
皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。
そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。
以降の子は妾妃との娘のみであった。
表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。
ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。
残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。
また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。
そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか…
17話完結予定です。
完結まで書き終わっております。
よろしくお願いいたします。
氷の王妃は跪かない ―褥(しとね)を拒んだ私への、それは復讐ですか?―
柴田はつみ
恋愛
亡国との同盟の証として、大国ターナルの若き王――ギルベルトに嫁いだエルフレイデ。
しかし、結婚初夜に彼女を待っていたのは、氷の刃のように冷たい拒絶だった。
「お前を抱くことはない。この国に、お前の居場所はないと思え」
屈辱に震えながらも、エルフレイデは亡き母の教え――
「己の誇り(たましい)を決して売ってはならない」――を胸に刻み、静かに、しかし凛として言い返す。
「承知いたしました。ならば私も誓いましょう。生涯、あなたと褥を共にすることはございません」
愛なき結婚、冷遇される王妃。
それでも彼女は、逃げも嘆きもせず、王妃としての務めを完璧に果たすことで、己の価値を証明しようとする。
――孤独な戦いが、今、始まろうとしていた。
赤毛の伯爵令嬢
もも野はち助
恋愛
【あらすじ】
幼少期、妹と同じ美しいプラチナブロンドだった伯爵令嬢のクレア。
しかし10歳頃から急に癖のある赤毛になってしまう。逆に美しいプラチナブロンドのまま自由奔放に育った妹ティアラは、その美貌で周囲を魅了していた。いつしかクレアの婚約者でもあるイアルでさえ、妹に好意を抱いている事を知ったクレアは、彼の為に婚約解消を考える様になる。そんな時、妹のもとに曰く付きの公爵から婚約を仄めかすような面会希望の話がやってくる。噂を鵜呑みにし嫌がる妹と、妹を公爵に面会させたくない両親から頼まれ、クレアが代理で公爵と面会する事になってしまったのだが……。
※1:本編17話+番外編4話。
※2:ざまぁは無し。ただし妹がイラッとさせる無自覚系KYキャラ。
※3:全体的にヒロインへのヘイト管理が皆無の作品なので、読まれる際は自己責任でお願い致します。
【本編完結】召喚? 誘拐の間違いでは?
篠月珪霞
恋愛
「…え」
まず聞こえたのは、成功だー!!といういくつもの歓声。それ以降は幾人もの声が混じりあい、何を言っているのか分からなかった。
私、白井瑠璃は、いつものように、出勤するために自宅のドアを開けただけだった。
いつものように、起床し、準備して、仕事が終われば帰宅し、そうした普通の、変わりない毎日を過ごすはずだった。
過去形になったこの日を、きっと忘れることはない。
居場所を失った令嬢と結婚することになった男の葛藤
しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢ロレーヌは悪女扱いされて婚約破棄された。
父親は怒り、修道院に入れようとする。
そんな彼女を助けてほしいと妻を亡くした28歳の子爵ドリューに声がかかった。
学園も退学させられた、まだ16歳の令嬢との結婚。
ロレーヌとの初夜を少し先に見送ったせいで彼女に触れたくなるドリューのお話です。
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
素顔を知らない
基本二度寝
恋愛
王太子はたいして美しくもない聖女に婚約破棄を突きつけた。
聖女より多少力の劣る、聖女補佐の貴族令嬢の方が、見目もよく気もきく。
ならば、美しくもない聖女より、美しい聖女補佐のほうが良い。
王太子は考え、国王夫妻の居ぬ間に聖女との婚約破棄を企て、国外に放り出した。
王太子はすぐ様、聖女補佐の令嬢を部屋に呼び、新たな婚約者だと皆に紹介して回った。
国王たちが戻った頃には、地鳴りと水害で、国が半壊していた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる