枯渇聖女は婚約破棄され結婚絶対無理ランキング1位の辺境伯に言い寄られる

はなまる

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24二人の話(エバン)


 
 俺はフレイシアの前ではおどけていたが内心はかなり参っていた。

 西の村で見て来た事に衝撃を受けていたからだ。

 倒された魔物の数は30頭数体。そのどれにも魔紋があった。魔紋はどれも竜の刻印がはっきりと見て取れた。

 竜の刻印はキアラルダ人の使う魔力にしか現れない事はこの大陸の人間なら誰でも知っている。

 はるか昔、このムント大陸の中心に神が降りて神に似せた人間や動物を作り自然を作ったとされている。

 竜神と月の女神がキアラルダという地に住み人間は神の魔力を分け与えられたと言う。

 竜神と月の女神が天に上ると人間が国を支配した。そのうちキアラルダから別の土地に移り住んだ人間が国を作り今のようにそれぞれの国が生まれた。

 だが、そのうちにキアラルダ国を去って行った人間は次第に魔力を失って行ったがキアラルダ国の人間は魔力を失わなかった。

 それでも長い年月の間にキアラルダ人も魔力を失って行き今では王族や貴族だけが魔力を持っていると言われている。

 彼らは今でも竜神の力を持っていると信じられており魔力を込めた魔込石には竜神の魔力が宿るのだと思われている。

 だから魔物にあった竜の魔紋はキアラルダ人の魔力を使った証になる。



 ラヴァードが俺の執務室に入って来た。事態はかなり深刻だった。

 「隊長、どうでしたか?」

 「ああ、やはり魔物には竜の魔紋があった。それも30数体すべてにだ。そう言えば今日倒した魔物はどうだった?」

 「はい、やはり竜の魔紋がありました。でも、他の者はまだ気づいていませんよ。俺が魔紋は見えないようにしたんで」

 ラヴァードは平然とした顔でへらっと口角を上げた。冷たい眼差しが一瞬若者の顔に戻る。まあ、お前まだ26だったか?幼いころから苦労したせいか年齢より落ち着て見えるがな。

 まあ、いつものように見事だ。



 「そうか。これは相当深刻な事態になりそうだな。これ以上キアラルダともめるわけには行かん。一番の原因はあの水晶だとわかっている。何とか国王に月光水晶を返すようにしてもらわなければ‥仕方がない。明日にでも王都に出向くしかないな」

 「隊長一人で行くんです?」

 「ああ、そのつもりだ」

 「じゃ、フレイシアさんは残るんですね。良かった。彼女意外と使えそうですから」



 ラヴァードの顔がほんの少し機嫌が良くなる。なんだ?

 途端に腹の底にどろりとした嫌な感情が沸き上がる。

 お前、まさか?確かに俺はフレイシアとはかなりの年の差がある。ラヴァードにしろ他の騎士にしろ、フレイシアにお似合いなのはあいつらだろう。

 だからこそ俺はめちゃくちゃ必死で彼女を口説いてるわけで‥ったく、いい年をして色ボケかよ!

 でも、こんな気持ちは初めてでフレイシアだけは誰にも渡したくないって‥かなり重症だな。

 と思いつつも‥



 「おい、ラヴァード。お前まさかまたフレイシアに魔力を使わせる気か?」

 「ええ、当たり前じゃないですか。あんな即戦力、使わない手はないでしょう?」

 はっ?お前気は確かか?!

 「お前なぁ、フレイシアは騎士じゃないんだ。それに今日だって魔力を使わせたんだろう?ったく。彼女に何かあったらどうするつもりだったんだ?」

 俺のフレイシアなのに!

 「あれは‥俺もちょっと手いっぱいでして、ちょっと彼女に頼んだら。以外にも魔物を倒したんですよ。驚きました。あの状況で魔力を使えるなんて思いませんでした」

 ラヴァードは、はは、そうなんですよって感じで話をした。

 俺の脳内がプチッと切れる。もう嫉妬なのか単なる心配なのかもわからなくなるが。

 「はっ?もしフレイシアが魔力が使えなかったらどうする気だったんだ?」

 頬がヒクヒクして歯をぐっと噛みしめた。

 「もちろん俺が剣を使ってましたよ。隊長の大切な人なんでしょう?どんな事があっても守るつもりでしたよ俺は‥でも、彼女もいい経験をしたと思いますよ。だって、騎士団で働かせるんですよね?まさかこの状況じゃいつ魔物に遭遇するかわからないんですよ。そう考えれば良かったんじゃないんです?」

 「おまえ~‥!!!」

 「そんなに心配なら騎士団には寄越さないで下さいよ。それにあんな差し入れもやめるように言って下さい。騎士たちは勘違いしますよ。今日だってフレイシアさんっていいよなぁとか、付き合いたいとか言ってましたよ。あっ、俺も彼女使えるし可愛いって思いましたよ‥知りませんよ。隊長が留守の間にフレイシアさんが寝取られても、だって隊長、彼女の純潔奪ったんですよね。そうなると女としても目覚めたって事でしょ?若い男の味を知ったらおじさんじゃ物足りないって思うかもですよ‥まじ、囲って大切にした方がいいんじゃないんですか?」

 俺の脳内の血管がピキッという。

 言うに事欠いて彼女を侮辱する気か?!

 「ラヴァード!お前ぇぇぇ~!!おまえみたいな恋愛音痴に何が分かるんだぁぁぁぁ~もういい!フレイシアも王都に連れて行くからな。留守は頼んだぞ!」

 「俺もその方がいいと思いますよ。だってフレイシアさんモテモテですから」

 「ラヴァード!!いいからもう休め!」

 あいつが冗談を言ってると分かっている。緊張しきった俺の気持ちをほぐそうとしているのだろうとも。

 だが‥いかん、頭を冷やせ、俺!



 「はいはい。王都に行ったらちゃんと仕事してきてくださいよ。月光水晶一刻も早くキアラルダに渡さないとニルス国なくなりますよ。多分‥」

 ニルス国がなくなる。その一言で俺の頭がすっと冷えて行く。そうだ。今はそれどころじゃない。とにかく何とかしなくては。

 ほんの少し溶けた緊張がまた脳内を覆った。

 「ああ、それをあの王都のボケらが分かってくれるか‥もしだめなら月光水晶を盗み出してでも持って帰るからな。お前にも来て欲しいが辺境も危機だしなぁ」

 「彼女に助けてもらえばいいじゃないですか。魔力使えるんですから」

 「ああ、そうだな。って。出来るか!そんなの格好の悪い事」

 「ニルス国の一大事なんですよ。そんな事言ってられるんですか?この国の民の為じゃないですか」

 「‥‥‥わかったから、もう部屋に戻れラヴァード!」

 俺はラヴァードを睨みつけて追い出した。

 ふっとため息を吐く。

 フレイシアが月の精霊の加護を持っていると言っていた事を思い出した。万が一の時には月の精霊に頼むしかないかもな。

 俺、頑張れ!国王に何としても決断してもらわなければ!

 俺は心の中でそんな事を思っていた。





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