38 / 84
38ラヴァードの正体
ラキスとスクトが帰って来た。
実は俺は数年前からメイズ辺境伯と連絡を取り合っている。これは隊長も知っている事だった。
俺はキアラルダ帝国の王子ラビウドだ。
だが、エバンやみんなには隠している。
エバンに保護されるまで俺は乞食のような生活をしていた。何も望まず流されるまま悪い事も平気でやって来た。
だが、彼はこのままでいいのかと俺に居場所を与えてくれた。きちんとした生活を送るようになるとこれまでの生活を立て直そうと思い始めた。
そして5年後20歳になった時俺はメイズ辺境伯の身内だとエバンに打ち明けた。もちろん王子だと言うことを明らかにする気はない。
何しろエバンも同じ境遇だった事に衝撃を受けたもんだ。
エバンはそんな境遇にもへこたれずこの辺境を素晴らしいところに変えようとしていると思うと自分にも何かできないかと思うようになった。
そしてメイズ辺境伯に連絡を取った。
祖父は俺が逃げて来た時に巻沿いを食って亡くなっていたが母シャロンの兄が後を継いでいた。
エストル・メイズ辺境伯と嫡男のガビアン・メイズ。ガビアンは俺と同じ年だ。
エストル叔父は俺は生きていることを知ってすごく喜んだ。でも、キアラルダの状況はセレスト国王代理が実権を握り今だ国に帰るのは危険だった。俺はそのままチェスナット辺境領に留まり騎士団で働くことにした。
エバンはニルス国の生末を案じていた。月光水晶の事でいずれ戦争にでもなるかもしれない事も危惧していて、それでキアラルダ帝国の状況を知りたいと言われ俺達は特殊部隊を立ち上げた。もちろんメイズ辺境伯も一緒に。
その名は《ビーストハンター》
ビーストハンターはギルドとして登録してキアラルダ帝国とニルス国を出入り出来るようにした。
表向きの仕事は魔物討伐で主にキアラルダの情勢を探る事。
メンバーは限られた人間で主にメイズ辺境伯が人選した。
ラキスはその一員だった。他にもシグスやメイトがいて商売人に成りすまして帝都の動きを探っている。
フォートは聖教会に入って神官をしながら情報を探っている。イリは女でメイドや侍女として貴族や王城に入り込んで情報を集めている。
みんなメイズ辺境出身者だ。
そして俺がこのビーストハンターのリーダーだ。彼らだけは俺がキアラルダ帝国のラビウド王子と知っている。
これは叔父のエストル・メイズが決めた事だった。
だが、俺は王子と名乗る気もないし帝国に戻る気もなかった。
帝都の動きはすぐにメイズやチェスナット辺境に入る事になっている。
魔物に関する情報もビーストハンターから知らせれていた確証がなかった。それがはっきりした。やっとニルス国の国王の重たい腰を上げさせれると思っていた矢先にこのざまだ。
クソ!
そんな状況でラキスとスクトは王都の状況を俺に報告をして来た。王都の事はラキスに任せてあったので月光水晶が破裂して暴動が起きているとだけは知らせが届いてはいたがくわしい報告を改めて聞く。
「王都が崩壊しただと?」
「はい、国民が王宮を開けろと暴動が起き、暴徒化した国民が王宮になだれ込みました。そこでは隊長やグラスリン侯爵がエグブランド公爵やジェリク殿下を拘束されていて、何でも月光水晶が粉々に割れて国王やエグブランド公爵、ジェリク殿下たちは硬直状態になったらしく、それに彼らと同じように不正やあくどい事をしていた貴族も同じように石化していたそうで、隊長は彼らはきちんとさばくことを約束して、すぐに王都の救助活動に取り掛かるように王国騎士団や国民に呼びかけ今必死で救助活動を行っている最中でして、俺たちはこの事を副隊長に知らせるように命令を受けました」
ラキスが口早に説明をする、
「それで副隊長。フレイシアさんが消えたんです。隊長はどんなに気がかりでも今は彼女を探せないと仰って我々にフレイシアさんが辺境に帰っていないか捜索するように言われました。副隊長、フレイシアさんがこちらに帰ってるなんてことは?」
スクトがそう言いながら辺りを見回す。
「いや、フレイシアは帰ってない。誰も見たとは言ってない」
「でも、もしかしたらグラマリンにいらっしゃるかも‥」
「あちらにも騎士が駐留してるからな。もしフレイシアが帰っていれば知らせがあるはずだ。だが、そんな知らせは届いてない」
「だが、どうしてフレイシアはいなくなった?」
隊長も隊長だ。こんな時に女の事など‥だが、いきなり消えたなどとそんな事があるのか?
「それは‥」
「何があった。言ってみろ!」
そして隊長からラキスたちが聞いた話は酷かった。
はぁぁぁ~、なにやってんだ。ったく。
大きくため息が出る話だった。魅了魔法にかかったのか?隊長ともあろうものが何たる不始末。挙句にフレイシアがいなくなった。なるだろう。そんなところを見せられて平気な女がいるはずがない。
きっと、感情的になって何もかも投げ出して逃げ出したんだろう。
だがニルス国にはすでに身内はいない。いっそキアラルダにでも逃亡したかもな。
「わかった。スクトお前は騎士団に合流して今まで通り魔物の見回りに入れ。フレイシアの事は任せろ。いいな」
「了解です」
スクトはすぐに部屋から出て行った。
あなたにおすすめの小説
【連載版】婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
短編では、なろうの方で異世界転生・恋愛【1位】ありがとうございます!
読者様の方からの連載の要望があったので連載を開始しました。
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
※連載のためタイトル回収は結構後ろの後半からになります。
結婚してるのに、屋敷を出たら幸せでした。
恋愛系
恋愛
屋敷が大っ嫌いだったミア。
そして、屋敷から出ると決め
計画を実行したら
皮肉にも失敗しそうになっていた。
そんな時彼に出会い。
王国の陛下を捨てて、村で元気に暮らす!
と、そんな時に聖騎士が来た
〖完結〗終着駅のパッセージ
苺 迷音
恋愛
過去、使用人に悪戯をされそうになった事がきっかけとなり、分厚い眼鏡とひっつめた髪を編み帽で覆い、自身の容姿を隠すようになった女性・カレン。
その事情を知りながらも夫ローランは、奇妙で地味な姿の妻を厭い目を逸らし続けた。
婚姻してからわずか三日後の朝。彼は赴任先の北の地へと旅立ちその後、カレンの元へと帰省してきたのは、片手で数えるほどだった。
孤独な結婚生活を送る中。
ある冬の日に、ローランの上官であり北の地を治める領主ハルシオン公爵が、カレン夫妻の邸にやってきた。
始まりは、部下の家族を想う上司としての気遣いだった。
他愛もない会話と、節度を守ったやり取り。ほんの僅かな時間を重ねていく。
そのうちに、お互いに灯り始めた小さな心の想い。
だが二人は、それを決して明かさず語ることはなかった。
それから一年ほどたった冬の夜。
カレンから届いた手紙に、たった一度だけハルシオンは返事を書く。
そこには彼の想いが書かれてあった。
月日は流れ、カレンとローランが婚姻して三年目の冬の日。
カレンはひとつの決意と想いを胸に、北へ向かう汽車に乗った。
※微さまぁか、もしくはざまぁになっていないかもしれないです。
※舞台は近世・産業革命初頭を基にした架空世界だと思っていただけましたら有難いです。
稚拙な作品ではありますがご覧くださいましたら凄く嬉しいです。よろしくお願い致します。
【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~
夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」
婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。
「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」
オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。
傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。
オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。
国は困ることになるだろう。
だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。
警告を無視して、オフェリアを国外追放した。
国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。
ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。
一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。
婚約者候補を見定めていたら予定外の大物が釣れてしまった…
矢野りと
恋愛
16歳になるエミリア・ダートン子爵令嬢にはまだ婚約者がいない。恋愛結婚に憧れ、政略での婚約を拒んできたからだ。
ある日、理不尽な理由から婚約者を早急に決めるようにと祖父から言われ「三人の婚約者候補から一人選ばなければ修道院行きだぞ」と脅される。
それならばと三人の婚約者候補を自分の目で見定めようと自ら婚約者候補達について調べ始める。
その様子を誰かに見られているとも知らずに…。
*設定はゆるいです。
*この作品は作者の他作品『私の孤独に気づいてくれたのは家族でも婚約者でもなく特待生で平民の彼でした』の登場人物第三王子と婚約者のお話です。そちらも読んで頂くとより楽しめると思います。
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
※表紙 AIアプリ作成
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――