枯渇聖女は婚約破棄され結婚絶対無理ランキング1位の辺境伯に言い寄られる

はなまる

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43エバン辺境に戻る(ラヴァード)

 
 結局エバンが帰って来たのは王都崩壊の知らせから3週間ほどが経っていた。

 彼は髭面の姿となって疲れ果てて辺境のレムソンに帰って来た。

 ウソだろ。最初こいつ誰だと思った。

 バーン!と執務室の扉が開かれ開口一番言った。

 「ラヴァード、今帰った。直ぐにキアラルダに行く。準備してくれ!フレイシアは帝都にいるんだろう?急がなくては、あれからもう3週間も経っているんだ。俺のしでかした事の説明をしなくちゃいけないんだ!」

 彼は焦った口調でそう言った。

 確かに俺はエバンに連絡した。フレイシアに居場所がどこかとしつこいから。キアラルダの帝都にいるらしいと。



 だからってどこまで無謀なんだよ。今にも倒れそうなほど疲弊しているって言うのに?

 って俺が言うのもおかしいが。俺もフレイシアが気になって一刻も早くと帝都に行ってたんだから。

 今日は辺境の様子を見に行って来た所で。

 まだ旅仕度の格好だ。

 ハハ。心の中で笑いが漏れた。



 「うん?お前そんな格好で。魔物か?また魔物が現れたのか。クッソ。今すぐにでもキアラルダに行かなきゃならんのに!!」

 隊長は焦ったように熊のような顔を歪ませる。

 俺は何とか平生を装い隊長に声をかけた。

 「隊長、魔物は心配ありません。でも、そんな身体で?無理ですよ。いいから落ち着いてください。とにかく少しは休んだ方がいい。それで王都は?」

 「ああ、何とかある程度の目処を立てて後はアレクとグラスリン侯爵たちに任せて来た。お前も大変だっただろう?魔物の心配はないと言ったが?」

 「はい、きっとフレイシアがキアラルダに聖女として疫病の治癒をしているせいかキアラルダ人の気持ちが和らいだんでしょう。魔物はこのところほとんど現れなくなったんです」

 「そうか。って、フレイシアはキアラルダでも聖女として?」

 「はい、彼女には月の女神キアーナ様の加護があるらしいですから」



 俺は内心で思っていた。まあ、フレイシアはキアラルダの王女。王女は月の女神の加護を受けるって決まっているからな。

 実はあれから数日後にはカラルーシに行って聖教会でこっそりフレイシアを見た。

 もちろんフォートとかにも内緒でだ。

 辺境で見た時と変わってなんかいないはずなのに。妹なんだと思うと‥何て言うか、愛しいって言うのか?

 なんて可愛いって思ってしまった。

 フレイシアが可愛くて誰にも見せたくないって。

 自分でもこんな気持ちに動揺した。

 だが、とにかく滅茶苦茶可愛い。あの小さな杖を振って魔法を繰り出すときの顔を見た時には息が止まった。あれは俺の妹なんだって叫びたくなって必死で口を塞いでいた。

 

 それにある時は王族の証である竜の紋章が手の平にあるのが見えた。

 俺には胸に三日月に竜の紋章がある。だが、ニルス国に入ると胸の紋章は消えた。だからフレイシアも紋章がなかったんだと納得。

 俺自身はあんな紋章欲しいとも思ってもないがフレイシアの紋章の可愛い事と言ったら。

 月の上に竜が乗っかっているんだぞ。俺なんか胸に三日月のマークがあって竜のようなものが薄くあるだけなのに。

 お揃いが良かったな。



 その日チェスナット辺境に帰ってから王子として権力に翻弄されて国を追い出された嫌な記憶が蘇った。

 不意にフレイシアは王女だったことを喜んでるんだろうか?って思った。

 フレイシアは聖女となって人々から崇拝されその力に酔いしれているのだろうか?もしかしてあの王妃のように嫌な人間になってしまうのではないかと思ってしまった。



 いや、俺の妹がそんなことを思うはずがない。

 もし、フレイシアがその権力に酔いしれているなら俺はフレイシアを説得する。

 今は聖女としてもてはやされキアラルダに必要とされている。でも、人は必要がなくなれば忘れられる。そして捨てられるんだ。それか悪い奴に利用されるか。

 もし、そんな事になったら俺はフレイシアをキアラルダから連れ出そう。

 俺はフレイシアのためならどんな事でもしようとそう心に決めていた。



 が、エバンの事はすっかり抜け落ちていた。

 フレイシアがエバンを許すなら、ふたりを夫婦として認める?いや、今は分からない。何しろ俺はフレイシアにメロメロだからな。

 まあ、それでもエバンの努力は認めるつもりだ。彼は出来うることをやったんだから。


 「フレイシアはキアラルダでも月の女神の加護を、そうか、彼女は天使だからな。いいから支度するぞ。直ぐにメイズ辺境に行く!そして帝都に転移するぞ。そうだ。シュテを呼んでメイズ辺境伯に知らせを出してくれ。おい、ラヴァード聞いてるのか?」

 エバンが怒りだした。

 悪い。俺の妹が可愛いからちょっとな。まあ、仕方がない。彼をカラルーシに連れて行くしかないだろう。

 「ったく、帰る早々人遣い荒いんですから。隊長は支度する間休んでてください!」

 「ああ、すまん。ほんの少し眠る。あとを頼んだ」

 隊長はその薄汚れた格好のままソファーに身を沈めた。



 それにしてもまあ‥

 隊長みたいな人を人垂らしって言うんですよ。みんなのために必死になってフレイシアの事が凄く気がかりだったくせに王都の人たちを放っておけなくて3週間も帰って来ないなんて。

 ジェリクやカトリーナに嵌められて、いや、子供の頃からそうだったんですよね?それでも隊長は必死で足掻いている。

 俺にも出来ますかね?

 大切な妹を守る事が。卑屈になって落ちぶれていた時の自分が顔を出すが。

 いえ、絶対守りますよ。俺の妹なんですから!

 それにエバン様が会うなら俺も会ってもいいですね。

 もちろん兄だって事は絶対にばれないようにするつもりですから。

 俺は面と向かって初めて妹であるフレイシアに会えると思うと仕度の間もうきうきしていた。

 この俺が‥鼻歌なんか!!




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