45 / 84
45フレイシア様は最高の推しです(イリ)
その朝、フレイシア様はすっかり疲れて熱を出した。
こちらに来てからは聖教会の与えられた部屋で暮らしていて王城のメイドだった私イリが専属のメイドとしてお世話をしている。
フレイシア様はその日急きょ療養する事になった。
彼女はベッドの横たわりキアを呼んだ。らしい。何しろ言葉は発しないので想像のみ。
(キア、いつもみたいに治してくれないの?)
(フレイシア、出来ないことはないわ。でも、あなた本当に疲れてるみたいだもの。無理をしない方がいいと思うわ。今日くらいゆっくりしていいわ。だってずっと忙しく働いてたんだもの)
(いいのかな。みんなを一刻も早く助けなきゃ。だって私はそのために‥コホッコホッ‥)あっ、咳はほんとにしてた。
(ほら、いいから寝てなきゃだめ)
って感じの会話なのだろう。多分。
マクリート大神官がやって来た。私は部屋の隅で待機する。
「聖女様誠に申し訳ない。少し無理が過ぎたようです」
「ですが、皆さんが苦しんでいる時に‥」
「何を仰います。聖女様はそれはもう出来る以上の事をされています。とにかく暫く静養が必要です。気になさらず休まれて下さい。何か欲しいものがあればメイドに何なりと申し付けて下さい。遠慮はいりませんから」
「はい、ありがとうございます」
その間に飲み物などを用意してこよう。私はそっと部屋を出ると飲み物を用意して戻って来た。
マクリート大神官はもういなかったので声をかけた。
「フレイシア様、取りあえずスープや果実水などをお持ちしましたが‥」
「ありがとう。自分で飲めるから大丈夫よ。コホッ」
「何か召し上がらないと‥欲しいものはありませんか。咳が出るなら薬湯をお持ちしましょう」
「ええ、それで充分よ」
「遠慮なさらず何時でも何でもおっしゃってください」
「ありがとうイリ」
そして薬湯をフレイシア様に飲ませてあげた。
うぐっ、可愛すぎるぅ~。
私は感激を噛みしめた。
*~*~*
私はイリ。ビーストハンターの一員でカラルーシの王城で密偵としてセレストの動きを探るのが仕事だった。
だが、フレイシア様が来てから一度に任務内容が変わった。彼女を守ることが私の仕事となった。彼女はラヴァード様、いいえ、ラビウド王子の妹で王女でもある方と知った時の驚きと言ったらない。
これまでのセレストは貴族と繋がり悪どい商売に手を貸し、他国からも金を巻き上げ私腹を肥やして来た。
貴族たちは金で物を言わせてすべてを自分の思い通りにして来た。そしてキアラルダ帝国は腐ってしまった。
ニルス国が月光水晶を返さないのを理由にして災害や飢饉に救助の手も伸ばさず領地は破綻寸前。貴族はこぞってセレストと顔色ばかりを伺い領民は税を搾り取られるだけの国家となっている。
王妃はクリス殿下の事ばかり心配して政治の事には一切関心を持たず、そして挙句にはセレストに見限られるまでに。
クリス殿下暗殺計画も浮かび上がり、殿下が疫病にかからなければすでに命を落としていたかも知れなかった。
そんな熾烈な勢力争いで王妃メルローズの出目であるコバート公爵家はすでに落ちぶれていてセレストが次に目を付けたのが彼の側近で金を荒稼ぎしてのし上がったフレイド・フォンタール伯爵。
すでに彼を宰相に押し上げている。
そして今までは全く問題のなかったクリス殿下が今や目の上のたんこぶとなりつつある。
王妃はそれを承知のうえでフレイシアとクリスを近づけ婚約に持ち込む考えだろう。
そうすればセレストを出し抜けると考えているに違いない。
ああ、問題が。
兄と妹?そんな事問題ではない。クリスは国王の子でではないのだから。彼はマクリート大神官と王妃の間に出来た子なのだから。
この話はこの業界では有名な話だがそれを口にする者はいない。
それもそのはずマクリート大神官は帝王の弟である。確かに母親は平民の出身で早くから王位継承権はなかった。なので彼は聖教会に身を置いた。そこで最高の地位に上り詰めた。それにはコバート公爵家の力もあったとかなかったとか。
マクリート大神官はかなりの力を持っていると言う事だ。
なんてややこしい。
まったく王族の跡目争いってホントに嫌になるわ。
でも、私個人的にはフレイシア様は大好き。あのサラサラの銀色の髪。触ってみたい。って、もちろん仕度をお手伝いすると言って髪を整える。これも私の仕事ですなんて言ってフレイシア様のあの美しい髪に触れている。
ああ、この仕事をしていて良かった。
それにあの緋色の美しい瞳に見つめられると背中がぞくぞくして来る。
一生懸命頑張る姿なんか、もう、何とか力になりたいって誰だって思うはず。それにラヴァード様の妹でもあって。
これって最高の推しじゃないですか!
今日に限ってラヴァード様からつなぎが来た。
フレイシアに合わせて欲しいと。エバン様も一緒だそうだ。チッ!今日はフレイシア様の具合が‥あっ、でも、今日なら二人があっても誰にも気づかれないわね。
私はすぐにフォートに知らせを頼んだ。
「今日の昼12時に聖教会の裏に来て欲しい。案内はフォートがしてここに連れて来て。二人には神官の服を着てもらうといいわ」
「了解、すぐに伝える」
フレイシア様ってエバン様が好きだって聞いた。でも、色々あったのよね。誤解が解けて仲直りしたいのかな?
もう、嫌いになったとか?
何とか二人の気持ちが通じるといいのになぁ~。
色々な情報が私達の耳に入って来て知らなくていい事まで知ってしまうのがこの世界。でも、それを漏らす事は絶対タブーだから。
教えたあげたいけどこれはエバン様のやるべき事だからなぁ。
心の中でエバン様にエールを送る。
あなたにおすすめの小説
【連載版】婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
短編では、なろうの方で異世界転生・恋愛【1位】ありがとうございます!
読者様の方からの連載の要望があったので連載を開始しました。
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
※連載のためタイトル回収は結構後ろの後半からになります。
〖完結〗終着駅のパッセージ
苺 迷音
恋愛
過去、使用人に悪戯をされそうになった事がきっかけとなり、分厚い眼鏡とひっつめた髪を編み帽で覆い、自身の容姿を隠すようになった女性・カレン。
その事情を知りながらも夫ローランは、奇妙で地味な姿の妻を厭い目を逸らし続けた。
婚姻してからわずか三日後の朝。彼は赴任先の北の地へと旅立ちその後、カレンの元へと帰省してきたのは、片手で数えるほどだった。
孤独な結婚生活を送る中。
ある冬の日に、ローランの上官であり北の地を治める領主ハルシオン公爵が、カレン夫妻の邸にやってきた。
始まりは、部下の家族を想う上司としての気遣いだった。
他愛もない会話と、節度を守ったやり取り。ほんの僅かな時間を重ねていく。
そのうちに、お互いに灯り始めた小さな心の想い。
だが二人は、それを決して明かさず語ることはなかった。
それから一年ほどたった冬の夜。
カレンから届いた手紙に、たった一度だけハルシオンは返事を書く。
そこには彼の想いが書かれてあった。
月日は流れ、カレンとローランが婚姻して三年目の冬の日。
カレンはひとつの決意と想いを胸に、北へ向かう汽車に乗った。
※微さまぁか、もしくはざまぁになっていないかもしれないです。
※舞台は近世・産業革命初頭を基にした架空世界だと思っていただけましたら有難いです。
稚拙な作品ではありますがご覧くださいましたら凄く嬉しいです。よろしくお願い致します。
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
※表紙 AIアプリ作成
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
王弟が愛した娘 —音に響く運命—
Aster22
恋愛
弟を探す旅の途中、身分を隠して村で薬師として生きていたセラは、
ハープの音に宿る才を、名も知らぬ貴族の青年――王弟レオに見初められる。
互いの立場を知らぬまま距離を縮めていく二人。
だが、ある事件をきっかけに、セラは彼の屋敷で侍女として働くことになり、
知らず知らずのうちに国を巻き込む陰謀へと引き寄せられていく。
人の生まれは変えられない。
それでも、何を望み、何を選ぶのかは、自分で決められる。
セラが守ろうとするものは、弟か、才か、それとも――
キャラ設定・世界観などはこちら
↓
https://kakuyomu.jp/my/news/822139840619212578
ブサイク令嬢は、眼鏡を外せば国一番の美女でして。
みこと。
恋愛
伯爵家のひとり娘、アルドンサ・リブレは"人の死期"がわかる。
死が近づいた人間の体が、色あせて見えるからだ。
母に気味悪がれた彼女は、「眼鏡をかけていれば見えない」と主張し、大きな眼鏡を外さなくなった。
無骨な眼鏡で"ブサ令嬢"と蔑まれるアルドンサだが、そんな彼女にも憧れの人がいた。
王女の婚約者、公爵家次男のファビアン公子である。彼に助けられて以降、想いを密かに閉じ込めて、ただ姿が見れるだけで満足していたある日、ファビアンの全身が薄く見え?
「ファビアン様に死期が迫ってる!」
王女に新しい恋人が出来たため、ファビアンとの仲が危ぶまれる昨今。まさか王女に断罪される? それとも失恋を嘆いて命を絶つ?
慌てるアルドンサだったが、さらに彼女の目は、とんでもないものをとらえてしまう──。
不思議な力に悩まされてきた令嬢が、初恋相手と結ばれるハッピーエンドな物語。
幸せな結末を、ぜひご確認ください!!
(※本編はヒロイン視点、全5話完結)
(※番外編は第6話から、他のキャラ視点でお届けします)
※この作品は「小説家になろう」様でも掲載しています。第6~12話は「なろう」様では『浅はかな王女の末路』、第13~15話『「わたくしは身勝手な第一王女なの」〜ざまぁ後王女の見た景色〜』、第16~17話『氷砂糖の王女様』というタイトルです。
婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜
夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」
婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。
彼女は涙を見せず、静かに笑った。
──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。
「そなたに、我が祝福を授けよう」
神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。
だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。
──そして半年後。
隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、
ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。
「……この命、お前に捧げよう」
「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」
かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。
──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、
“氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。