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46やっと会える(エバン)
イリの合図で俺とラヴァードはフレイシアが休んでいる部屋の前に来た。
イリが少し待ってと言って中に入った。
俺の心臓ははち切れそうなほどバクバクしていて、彼女に会いたい一心でここまで来たが果たして何と言えば良いのかどうしようもなく怖気づいた。
髪色だって変えているしこの姿だ。気づいてくれるだろうか?いや、そんなことより会ってくれるかもわからない。
イリが出て来た。
「お見舞いの方が見えたと話しています。後はご自分で話をして下さい。お願いします」
「色々気遣ってもらってすまん」
俺はイリに礼を言って扉をノックした。
「はい、どうぞ」
フレイシアの声がした。ああ‥フレイシアがいる。どんなに会いたかったか。すごく心配したあんなことがあってどれほど俺が後悔したか。
やっと扉を開けて中に入る。
その後ろからラヴァードが続く。お前、遠慮してくれないかと言いたいがすべてラヴァードが段取ってくれた事。入るなとは言えない。
眠らせるためだろうカーテンが引いてあってうす暗い。ちらりと見た部屋には彼女の為だろう可愛い鏡台やクローゼットがあった。
フレイシアは俺と分かったのだろうか。不安な気持ちのままそっと声をかける。
「あの‥フレイシア。エバンだ。すまない。いきなりこんな所にまで押し掛けて。でも‥」
ベッドに横たわる彼女を見つめる。
彼女はハッとした顔をしてすぐに顔を背けた。
俺と気づいた。良かった。ほっとする間に‥
「帰って下さい。あなたになんか会いたくはありません」
はっきり拒絶の声がした。身体がびくびく震える。
「待ってくれ!」
「何も聞きたくありません。帰って!」
「これだけは聞いて欲しいんだ。頼む」
フレイシアの返事を待たずに話を続ける。
「あれは‥あの時カトリーナに魅了魔法を掛けられていた。あれは本当の俺じゃなかった。あの女にいきなり魔法を掛けられて自分の意志ではどうしようも出来なくて‥だからと言って君を傷つけたことは変わらない。でも、すまん。本当にすまん。フレイシアに辛い思いをさせて‥」
彼女の顔は驚くこともなくその唇から拒絶の言葉が。
「チェスナット辺境伯、どうぞお引き取りを」
「もう、エバンと呼んでくれないのか?もう、取り返しはつかないのか?」
「‥‥私は具合が悪いのです。そんな時に来て私の心を掻きまわして、それが貴方のやりたい事なんですか?」
「ちが‥」
喉の奥が引くついて言葉に詰まる。そしてそれ以上何も言えなくなった。
いきなりラヴァードが前に出て話を始めた。
「いきなりすまん。俺はラヴァードだ」
「ええ、知ってます。髪色や目はどうされたのです?」
「それは俺たちとばれるとまずいかと思ったから‥嫌そうではなくて無理やり押し掛けた事は悪かった。でもな。フレイシアほんの少し話を聞いてくれ。エバンは王都が崩壊するのを放ってはおけなかったんだ。あの後すぐに正気に戻ってそれからすぐにエグブランド公爵やジェリク殿下を拘束した。もちろんカトリーナもだ。暴徒化した群衆が押し寄せそれを何とか押しとどめ王都の立て直しをしてやっと、やっとここに来れる日が来たんだ。本当は一刻も早くフレイシアに会いに来て謝って事の真相を説明できたはずだっだ。でも、エバンはそれを堪えてずっとフレイシアに申し訳ないと思いながら‥辛かったと思うんだ。そのことだけはわかってやって欲しい。どうだろう。今は具合が悪いんだ。ゆっくり休めばいい。でも、身体が良くなったら考えてみて欲しいんだ」
俺はラヴァードを凝視した。こいつが俺の事を?俺の為にフレイシアに頼んでくれている。
こいつが?あの口の悪い偉そうな事しか言わない奴が?
「‥それでニルス国は」
フレイシアの瞳が俺を見る。
俺はゆっくり話をはじめた。
「ああ、王都は水没寸前だったがキアがちゃんとやるならって許してくれたんだ。それで王都は助かった。他の領地も何とか建て直しに頑張っているし、国王は一気に老け込まれてもう引退されるだろう。アレク殿下は殺されるところだった。カトリーナは魔込石を使って聖女だと嘘をついて。でも、キアが助けてくれた。アレク殿下が元気になったおかげでニルス国もきっと良くなるはずだ」
「キアと話したの?」
彼女が身を乗り出した。俺はあの時のことを必死で話す。
「ああ、気づいたらいきなり月光水晶が破裂して‥キアの声がした。キアは許さないって言っていて、だから俺は頼むからやめて欲しいと頼んだ。そしたら証拠を見せろって言われた。俺はすぐに行動に移した。ずっと知らん顔をして来た俺にも責任があると思ったからだ。それにエグブランド公爵やジェリク殿下だけが困るなら放っておけるが困るのはまっとうな人たちだからだ。やっとめどが立ってキアに尋ねた。信じてもらえたかって、それで許すって言ってキアはいなくなった」
「そうね。キアもやり過ぎたって言ってた。それにあなたの事も王都の事もキアから聞いたわ。ニルス国が無事だって知ってたの」
「そうか。君の心の負担が少しでも減ったなら良かった」
俺は心からそう思った。
君は優しいから知らなかったらすごく心配してただろうからな。
カトリーナの事が魅了魔法のせいだったと知れば彼女は許してくれるかもしれない。
俺は微かな期待を抱いた。
「そうね。それに私カトリーナがあなたに魅了を掛けたって知ってたの。でも、やっぱり許せないって思ったの。ここまで訪ねて来てくれてありがとう。これで気はすんだわよね?」
「知ってたのか‥‥」
「はい」
その瞳は急にうつろになった。すがる思いで気持ちを告げる。
「待ってくれ。あれは俺の意志とは関係なく起こった事だ。二度とあんなことは起きない。俺はフレイシアお前だけなんだ。フレイシアこんな気持ちは初めてなんだ。俺はお前が「困ります!」
「隊長。今日はもう帰りましょう。彼女も具合が悪いんです。無理をさせてはいけません」
「でも‥‥」
イリがラヴァードに近付いて来て耳打ちする。
「誰か来たようです。今すぐ立ち去って下さい」
「わかった。行きましょう。さあ、フレイシアまた会いに来る。ゆっくり休めよ」
「まだはなしが‥」
「諦め悪いですよ。さあ!」
フレイシアがずっと俺たちを見ていて俺は目が離せないままラヴァードに引きずられるようにして部屋を出た。
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