枯渇聖女は婚約破棄され結婚絶対無理ランキング1位の辺境伯に言い寄られる

はなまる

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53ほんのお礼のつもりが癒されている

 
 私はイリに抱きついたまま気づいた。

 こんなことをしている場合ではなかった。私はハッとして佇まいを正した。

 「も、申し訳ありません。うれしくてつい。ラヴァード副隊長、イリさん助けていただきありがとうございます。ですが、エバン様はまだ囚われたままです。このままではエバン様が‥」

 「ああ、それはすでに対処しようとメイズ辺境伯に頼んでいる。叔父は明日、王城に出向く手はずになっている。彼の力を借りてエバンを助け出すつもりだ。フレイシアは心配せずにとにかく休んでくれ」

 「ああ、そうなんですか。ラヴァード副隊長には本当にご迷惑をお掛けしたみたいですね」

 「いや、大したことじゃない。エステルとは知り合いだし気心も知れているんだ」

 「そうなんですか。そう言えば私、メイズ辺境伯は叔父様にあたるんですよね?一度きちんとご挨拶をしなくてはと思っていたんです。でも、今は状況が状況ですから‥って言うかラヴァード副隊長もメイズ辺境伯を叔父と呼んでましたね?失礼ですけどどういった御親戚です?」

 「コホッコホッ。いや、俺の母が叔父といとこで‥まあ、それはいい。今はエバンの事が先だろう?」

 どうしたんだろう?ラヴァード副隊長が慌てている。

 あの冷酷で冷静沈着と言われた人が?

 「ええ、そうですが、ラヴァード副隊長のお母様は御健在ですか?もし、そうなら会って見たいです」

 「ゴホッ!いや亡くなっている」

 「そうですか。すみません」

 


 「ラヴァード副隊長、もう話したらどうなんです?いずれ分かる事なんですから」

 「イリ!余計な事を‥」

 「なにか‥?」

 「何でもない。フレイシアは気にしなくていい。とにかく休んだ方がいい。熱も下がったばかりなんだ。なっ、ほら、イリ温かいミルクココアでも作ってやれ」

 「ミルクココアですか?フレイシア様お好きです?」

 「はい、大好きです。子供頃は母がいつも作ってくれました。そうだ。私が作りましょうか?ラヴァード副隊長もイルさんも冷えたんじゃありませんか?一緒に調理場に行って飲んで来れば一度で済みますし‥」

 「‥いいのか?でも、ああ、そうだな。警護もあるしな。一緒なら、ああ、そうだ。いいんじゃないか‥」

 ラヴァード副隊長の喋りかたがおかしい。



 こうして調理場に行ってミルクココアを作っていると。

 「ラヴァード様ここにいたんですか?もう、探しましたよ」と現れたのはラキスさん。

 「ラキスさん?どうしたんですか」

 「フレイシアさん?いえ、副隊長たちにお供して来てたんです。あなたが攫われたって聞いて‥」

 「まあ、ラキスさんまで。本当にごめんなさい。今ねちょうどミルクココアを作ってるんです。一緒に飲みません?」

 「えっ?いいんですか。俺ミルクココア大好きなんですよ」

 「チッ!ラキス。お前甘い物は苦手だったじゃないか。しっしっ、さっさと行け!」

 「えぇ~、そんな言い方しなくたって、副隊長も飲むんでしょう?だったら俺も~」

 「皆さん私の為に寒い思いをしたんですから‥副隊長お願いします」

 私はラヴァード副隊長にお願いする。

 「フレイシアがそう言うなら‥」

 「やったぁ~フレイシアさん何か手伝いましょうか?」

 ラキスさんが鍋をかき混ぜると変わってくれる。

 「あら、ラキスさんてうまいんですね。では、お願いして私はカップを」

 「カップは俺が!」

 猛ダッシュでラヴァード副隊長が食器棚に走り込む。



 「副隊長、もう、カップが割れちゃいますよ」

 「すまん。気を付ける」

 副隊長がカップを慎重に取り出す。



 そこにもうひとり男がやって来た。

 「ラヴァード様、何やってるんです。おい、みんなも揃って何してんです。って、俺みんなを探してたんですよ。取りあえずあいつらぶん殴って縛り上げときましたよ。気絶してるんで朝まで動かないと思いますけど」

 「ああ、すまん。シグス」

 ラヴァード副隊長の仲間とわかる。

 「あの、みんなでミルクココアを飲むんですけど一緒にいかがです?」

 「えっ、俺?いいんすっか?じゃ、遠慮なくいただきます」

 「お前ら揃いも揃って、そこは遠慮しますだろ!」

 「だって、温かいミルクココアなんて久しぶりなんでつい。じゅるぅ~すみません。寒くて鼻が‥」



 「みなさん本当にありがとうございました。おかげで無事にここに戻って来れました。さあ、出来ました」

 私は5個のカップに出来上がったミルクココアを注いでいく。

 みんなの視線がミルクココアに注がれていてすごく入れにくい。

 「さあ、どうぞ。私も久しぶりなので‥お口の合うといいのですが‥」

 みんなの手が伸びてそれぞれがカップを手にする。ゆっくりカップが口元に運ばれて行く。

 「う~ん、染みる~押しが作ってくれたココアもう最高!」イリさん。

 もう、大げさですよ。

 「う、旨い。旨すぎる。フレイシアは天才じゃないのか!」ラヴァード副隊長。

 そこまで言われると恥ずかし過ぎます。

 「もう、感激です。俺、キアラルダに来て良かった」ラキスさん。

 もう、恐縮です。

 「ぐふっ、うま!いや、偶然明かりがついてるからもしかしてって思ったんです。いや、これ、マジやばいっす!」

 間に合ってよかったです。



 何だか胸が温かくなって今夜の恐かった記憶が少し薄れて、エバン様の事もしばし忘れて今この優しくて温かな時間が愛おしいって思った。

 



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