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55荒れる議会(ラヴァード)
翌朝、王城に入り貴族議会の場に入る。
そこにはセレスト国王代理。宰相となったフレイド・フォンタール伯爵。
コバート公爵にシリオン公爵、ブラム侯爵にリュドス伯爵など帝国高位貴族が揃っていた。
コバート公爵は数年前に公爵が馬車の事故で亡くなって代替わりしており今は王妃の弟が当主となっている。
今のコバート公爵は父親と違い話の分かる正義感の強い当主らしい。まあ、噂は噂でしかないが‥
俺は内心で目の前にずらりと並んだ貴族連中の腹の内を探るようにじろりと皆を一瞥する。ったく。
「叔父上、いつの間にみんなを呼んだんです」呆れたように言葉が落ちる。
「私は帝国貴族院議長だぞ。これくらい朝飯前だ。それに皆転移でやってくればいい事。造作もないだろう」
はぁ、いいんです?これで失敗したら‥
そんな心配をよそに。
そこにクリス殿下が入って来た。
「クリス殿下。お加減はもうよろしいのですか?」
叔父が尋ねる。
「ああ、聖女のおかげで今までで一番調子が良い。みんな聞いてくれ。私は今まで病弱であまり政務に関わって来なかった。だが、これからは次期王として積極的に政務に関わるつもりだ。いろいろ勉強不足な点もあると思うがよろしく頼む」
「クリス殿下、いつそんな事を決めたんです。私は聞いていませんよ。そう言うことは一番に私に言って頂かなくては!私があなたをずっと支えて来たんです。まったく‥!」
セレストが憤慨して言葉を荒げた。
「セレスト国王代理。でも、これがあるべき姿じゃありませんか。殿下が回復されてこうやって議会に出席出来る事を貴族院は喜ぶべきでしょう?ねぇ、みなさん」
叔父はみんなに同意を求めるとほとんどの貴族が賛成した。
「もちろんです。クリス殿下の回復が何より喜ばしい事ですよ」「これで本当の帝国政治が出来るじゃないですか」「いっそ、この議会でセレスト国王代理が退かれては?」
「いやいや、クリス殿下の体調は今までずっと悪かったのです。無理をされてまた何かあったらどうされるつもりです。ここは少しずつ様子を見た方がいいでしょう」
そう言ったのは宰相のフォンタール伯爵。
「私も同意見だ。クリス、あまり無理をするな。お前は身体が弱いんだ。もう、部屋に戻ってろ!」
セレスト国王代理が顎をしゃくり言葉を投げつける。
「セレスト国王代理。いくら何でもその態度はおかしいでしょう。クリス殿下こそが次期王なのですよ。あなたはご自分の立場を理解しておられるんですか?」叔父が苦言を呈す。
「何を?!メイズの田舎風情が‥いいから早く議会を始めろ!」
叔父が一瞬、身を乗り出すがぐっと堪え「では、これより議会を始めます。皆さん席についてください」
みんな席を立ちあがっていた。
「それでメイズ。急ぎの招集だったが議題はなんなんだ?」
セレスト国王代理の機嫌の悪い声がする。
「まあ、いいでしょう。実は急ぎ集まって頂いたのは他でもありません。昨夜、聖女様が襲われ連れ去られると言う事態が起きました。聖女様は今キアラルダ帝国に取ってかけがえのないお方だと言うことは皆さんお分かりと思います」
「待て!メイズ、今何と?フレイシアが攫われただって?それで彼女は?」
慌てたのはクリス殿下だ。
俺は思った。ああ、昨日も心配して会いに来ていたな。あいつが帰った後の事で何も知らなかったんだな。
「はい、殿下。配下のものがすぐに動き聖女様は昨晩、無事救出されております。今も警護の者がしっかりついております。ご安心下さい」
「そうか。良かった。それで襲った賊は捕らえたのか?」
クリス殿下いい具合に食いついてくれるじゃないか。
「はい、もちろんです。ご安心ください。ですが殿下。その事も大切ですが、いえ、それ以上にこの帝国の富を貪り食い物にしているものがこの部屋にいます」
「許せん!それは誰だ。メイズ、遠慮はいらん。はっきりも申せ!」
クリスやる気じゃないか。
「はい、それは‥セレスト国王代理。並びに宰相のフォンタール伯爵です。他にもおりますが一番の悪はセレスト国王代理です」
「メイズ。貴様言うに事欠いてそんな出鱈目を!殿下。こいつは何か企んでるんです。聖女が自分の身内と分かり帝国の中心的存在になれると勝手な妄想をしてうそを言ってるんです。信じてはいけません。私はこれまであなたや王妃の為にどれほど身を粉にして尽くして来たかお忘れか?」
おいおい、何を言ってるんだ?それを言うなら自分の私利私欲の為にどれだけ民を犠牲にして王妃やクリス殿下を欺いて来たかだろ!!
クリス殿下が躊躇する。
まあ、当然だろう。
はい、俺の出番。
「皆さん。こちらをご覧ください。これは王城でセレストとフォンタールが隣国と秘かに取引をしようとしている映像と会話です」
イリが投影魔法機で撮影したもの。絶妙がアングルで二人の顔がはっきり写り隣国から違法薬物を仕入れる算段をしている所がはっきりと。
「こ、これは‥セレスト国王代理が無理やり‥」
「な、何を言う。お前が無理やり持ち掛けてきた話じゃないか!」
「まあまあ、こちらは数年前リュドス伯爵が嘆願書を持って来た時の映像」
リュドス伯爵の領地で作物が枯れ困窮している領民に支援の要請に来た時の事。
「どうか、支援をお願いします。我が領地の領民はこのままでは餓死するしかありません。今まで言われて来た税はきちんと収めてきたはずです。こういう時こそ税の免除と援助をお願いしたい。宰相、お願いです。あなたの所では他国との取引を一手に担っているではありませんか。穀物を融通していただければ領民は飢えずに済むんですから。もちろんきちんと支払いはします。お願いです。フォンタール商会に助けて頂ければ「お前のような弱小貴族を助ける義理はない。が。私の頼みを聞けば考えてやってもいい」
「何でもします。お願いです。どうか‥」
その後、リュドス伯爵には、敵対するコバート公爵家の販売する薬草をよく似た毒草に入れ替えてコバート公爵家を窮地に追いやる計画が。
「おじい様はあの事件でかなりの損害と信用を失った。その心労がたたって倒れて亡くなった‥」
クリス殿下がつぶやく。
「セレストお前が仕組んだのか?」
「これは私を陥れる策略です!!」
セレストは狼狽えながらも自分はやっていないと。
どこまで往生際が悪いんだ。いい加減諦めたらどうだ?これもあるぞ。ほら、こっちにも証拠が!!
俺は次々に違法取引や人身売買の密約。などなど証拠書類が次々に提示して行く。
「皆さん、これで長い間皆さんを食い物にしてきたのはセレスト国王代理とわかったでしょう。もはや、言い逃れは出来ませんぞ。ちなみに聖女を襲わせたのも首謀者はセレストです。皆さん彼の国王代理は剥奪でよろしいですか?」
フォンタール伯爵と数名の貴族以外はみな立ちあがって賛同した。
「ガビアン騎士隊長。入ってくれ!」
メイズ辺境伯が大きな声を上げる。
「はい」
「お、お前ら‥私を嵌めたな!!くそぉ~」セレストが目の前に置かれた書類をめちゃくちゃに放り投げる。
「いい加減諦めてもらえませんか。あなたのせいでどれほどの帝国の民が苦しんで来たか。自分のやった事をよく考えた方がいい。連れて行け!」
「さあ、連れて行け」
セレストとフォンタール伯爵は騎士隊員に連行されて行く。
「本日の議会はこれにて閉会とします。すぐにクリス殿下の戴冠式を行い殿下の国王任命式を執り行う事になりますので皆さんよろしくお願いします」
一斉に貴族たちは会議室を退室した。
そしてクリス殿下と叔父と俺だけになった。
「クリス殿下、実はここにいるのはあなたの異母兄であるラビウド王子です」
「はっ?こいつがラビウド?」
こいつかよ。ったく。これでも一応お前の兄なんだが。
「お初にお目にかかります。ラビウド・メイズだ。でもないか。お前、俺の事わかるよな。しかしクリス大きくなったよな。まあ、俺はお前のことはちょいちょい見てたからな」
「お、お前、昨日フレイシアの所に入った賊じゃないか?おい、ほんとにラビウドなのかメイズ?」
クリス殿下の顔が俺を勘繰るように見る。
まあ、無理もないが。
間を置かず叔父がエバンの事を話し始めた。
「もちろんです。私の甥になります。そしてフレイシアの兄でもあって‥そのことでご相談が。実は昨日殿下が捕らえられた男はニルス国の前国王の弟エバン・チェスナット辺境伯でして、早急に釈放していただきたいのです」
「はっ?あいつを‥」
クリス殿下がへたへたっと椅子に崩れ落ちる。
叔父と俺はぎょっとした顔になる。まさか?!
「殿下。まさか何かされたんですか?」
「いや、私は知らん!連れて行かせた後のことは何も知らん!」
この態度、絶対何か知ってるだろ。まさかエバンの身に?
俺はクリス殿下ににじり寄る。
「そうですか。でしたら殿下、彼に合わせて下さい。今すぐ!!」
叔父さんが大丈夫だって言うから安心してたのに、クリスのやつ、いつの間に?ったく。どうなってるんだよ!
そこにシュテが現れた。
「シュテどうした?」
シュテの足首から足環を外し手紙を開く。
『ラヴァード様!大変です。フレイシア様が消えました。でも出て行った形跡もないんです。一体どうやって?警備は厳重にしてたんです。だから誰かに連れ去られたなんて考えられません。早く戻って来て下さい!』
イリの焦った声がまざまざと議会室に響く。
「クリス!お前フレイシアを!!」
「違います。私じゃない!私は彼女が部屋にいるところを見届けて帰った。その後のことは知らない!!嘘じゃない。本当だ!」
「とにかく、エバンの所へ急ぎましょう!」
心配しているイリにはエバンの所に行ってそっちに向かうと返信を送って俺達は騎士隊の牢に急いだ。
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