枯渇聖女は婚約破棄され結婚絶対無理ランキング1位の辺境伯に言い寄られる

はなまる

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58エバン様が大変!


 
 私は目が覚めるとすっかり熱も下がっていた。まだ外はうす暗い。

 ふと思い出したのはエバン様の事だった。

 ラヴァード副隊長は心配ないと言ってたけど‥

 (キア?いる?)

 (うん、フレイシア気分はどう?)

 (ええ、おかげですっかり良くなったわ。ねぇ、キア、それよりエバン様の事知りたいの。キア、エバン様と話が出来るって言ってたじゃない。今からコンタクト取ってくれない?)

 キアにエバン様の様子を尋ねればどうしているかわかるはず。

 (ええ、少し待ってて)



 どれくらいの時間が経っただろう。

 まだかまだかと待つ時間は思っている以上に長く感じた。



 やっとキアの声がした。

 (フレイシア!エバンが大変なの。あいつら精神魔法でエバンの精神を破壊するつもりよ。時間がないの。一緒に来て!)

 聞いた事もないほどの慌てた様子のキアに自分でも驚くほど動揺する。

 (キア。でもどうやって?)

 (フレイシアには杖があるじゃない。それは何でもできるの。願って杖を振ればエバンの所にだって行けるわ)

 そうだった。私ったら焦ってばかりで。しっかりしなきゃ。

 (キア、エバン様は大丈夫?)

 (騎士団の牢の中には3人の男がいたわ。彼らはエバンに精神魔法をかけて心を壊す気なの。だから向こうに着いた瞬間に身体を消して、そして男たちをやっつけて)

 (わかった。行くわよキア!)


 *~*~*


 淡い光に包まれて身体が一瞬宙に浮いた気がするともうすでに騎士隊の牢の中に転移していた。

 キアに言われた通り瞬時に杖を振り姿を周りの景色に溶け込ませる魔法を展開。



 目の前には床にうつ伏せで転がったエバン様と3人の黒ずくめの男達。

 「ったく、たわいもない。こんな簡単な仕事なら一人でもよかったな」

 「だよな。さあ、行くぞ!」

 「こいつ生きてるよな?殺すなって命令だからな‥くくっ、でも、こいつもう一生このままだな」

 「そんなの知るかよ。俺たちは命令されただけだ。さあ、行くぞ」

 「ああ、へへっ。あばよおっさん」

 1人の男がエバン様を脚で蹴る。

 エバン様の身体がころりと上向きになる。彼の目は焦点が定まらず唇からは笑いが漏れる。

 ウソ。エバンさま?‥こいつら何したのよ!私のエバン様になんてことをしてくれたのよ!!

 許せない。怒りが込み上げて杖を振り上げた。一気に感情が爆発した。



 「ドガ、ッァァァン!!!」

 気が付けば3人の男達が黒焦げになって床に転がりピクピクとうごめいている。



 (フレイシア!エバンを)

 (ええ)

 私は姿を現すとエバン様に駆け寄る。

 「エバン様!エバン様聞こえますか?わかりますか?えばんさま!!」

 「へへへへへへ‥」

 彼は薄気味悪い笑みを浮かべ口から涎を垂らす。まるで魂の抜け殻のようになった彼にどうすればいいのかわからない。

 「キア、どうすればいい?どんな魔法を使えばエバン様は元に戻るの?教えてキア!」

 (きっとエバンは、かなり強い精神攻撃を受けたと思う。身体の傷は治癒魔法で治せるけど‥これはひどいわ)

 (そんな‥)

 「エバン様。しっかりして。私です。フレイシアです。会いに来てくれて嬉しかった。ずっとずっとあなたの事ばかり思っていた。なのに、素直じゃなくて‥ごめんなさい。私が素直になっていたらあなたをこんな目に合わせなくて済んだのに‥」

 後悔と悲しさと悔しさと色々な感情がないまぜになって私の心の中でぐるぐる回る。



 助けたい。彼を助けたいの。どうかお願い。竜神様。キアーナ様。お願いします。彼を助ける力を貸してください。杖を握りしめて祈る。



 不意に彼の瞳が正気を取り戻したかのように私を見た。

 「くる‥な。きけ、ん‥だか、ら‥‥」

 「えばんさま!しっかり!」

 一瞬だった。

 すぐに彼はへらへらと笑い始める。

 こんな時でも彼は私を守ろうとしているの?

 彼のことだ。きっと私を困らせてはいけないと。



 ギシリ。歯ぎしりして口の中に血の味が広がる。私のエバン様に!!

 フルフルと怒りがこみあげて身体中の力が渦巻いて立ち上るように魔力が覚醒して行く感覚がした。

 杖は手から転がり落ちた。

 (フレイシア。それは‥あなたが壊れちゃう。憎しみで魔力を増幅させると闇魔法に落ちるわ。駄目。もう諦めて‥お願い)

 キアが何か言っている。でも、私の暴走は止まりそうにない。

 (キア‥はぁぁぁ身体が熱い。苦しい。ああ、でも、彼を助けたいの‥どうしても‥彼を愛してるの‥)



 急に杖の水晶が光り輝いた。

 口の中にどろりとした液体が沸き上がってそれを飲み干す感覚がした。何かがぐるぐると私の体内と駆け巡る。

 エバン様の中の悪いものを取り込み、そしてそれをフィルターみたいなもので漉して行くみたいに何度も何度も彼の中の悪いものを‥

 私はどうなってもいい。



 (フレイシア、しっかりして、お願い。目を開けて‥キアーナ様フレイシアを助けて!このままじゃ‥)

 【キア、大丈夫。フレイシアは死んだりしないから。闇魔法にも取り込まれないから。今はエバンの掛けられた精神魔法を浄化してるの。精神魔法は心をぐちゃぐちゃに傷つける。エバンの心は粉々に砕ける寸前だったけど、大丈夫。レオンの血と私の血で作った浄化液をフレイシアの体内に取り込ませたわ。それでどんな魔法も浄化できる。それにフレイシアの愛があればエバンの心の底に残っている彼女への想いと繋がれる。それが出来れば精神魔法を浄化出来るはず。但し愛が本物じゃなければ無理。だからもう大丈夫。でしょう?】

 (はい。二人の愛は本物ですから!キアーナ様。レオン様ありがとう。良かった。これで二人とも大丈夫ね)

 

 二人は意識を失ったままだ。

 (えっ?意識失ったままじゃない?もう、どうすればいいのよ。私、意識のない人間とはコンタクトとれないのよ)

 しばらく時間が過ぎる。

 私は姿を現して二人の前でおろおろしているとやっと人間が来た気配がしたので急いで姿を消す。まあ、人間に私は見えないはずだけど。

 (騎士だったら?またエバンを拷問する?フレイシアは?ああ、もう!どうすればいいのよ!)

 入って来あのは血相を変えたラヴァードやクリス殿下だった。

 (良かった。ラヴァードがいるなら大丈夫よね)

 私はすうっと気配を消した。

 



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