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64もう、どうしたらいいの?
直ぐにクリス殿下が運ばれて行く。私も後をついて急ぐ。
部屋には主治医のフラン医師が駆け込んでくる。
「すぐに止血を!殿下、傷は浅いです。気をしっかりお持ち下さい!」
「クリス!クリスしっかりして」
悲痛な声の王妃。
私は慌てて治癒を申し出る。
「フラン医師、私に治療をさせて下さい!」
「おお、そうだ。聖女様がいらした。ええ、もちろんです。お願いします」
さっと人々が道を開ける。
期待を込めた眼差しに絶対に失敗は出来ない圧を感じる。今では少しはついた自信にほんのちょっと心が落ち着く。
エバン様がどうしてあんな事をしたのかなどと考えていた思考のすべてがクリス殿下の治癒に注がれていく。
ふぅっと息を吐いて気持ちを落ち着け集中する。
大丈夫。いつもみたいに力を籠めればきっとうまく行く。
私は横たわるクリス殿下の前に立って手の平に力を込める。
背中に大きな刀傷を負ったクリス殿下は意識を失っている。
うん?これって王家の紋章じゃ。
腰の真ん中少し臀部に近い背骨の辺りに薄っすらと満い月の真ん中に竜がいる。小さい‥
まあ、彼の父親も王族だもの紋章があるのは当然か。そんな事今考えている場合じゃない!
意識を傷に集中させて行く。
淡い光がぶわっと手の平からこぼれ落ちるように溢れててクリス殿下の背中を覆って行く。
ジュワッと光がしみ込んで傷口を治して行く。
「傷は治しました。きっともう大丈夫だと‥」
「ありがとう。ありがとう。フレイシアあなたはやっぱり素晴らしいわ!ねえ、メイズ辺境伯見ましたよね?あの男やっぱりクリスをフレイシアを狙っていたんです。すぐに彼を処刑して!」
王妃は安心したと思ったら、今度はエバン様への怒りを露わにした。まあ、当然な反応だけど何かおかしい。
「あの、待って下さい!クリス殿下にこのような怪我を負わせた事は事実です。が、私、彼の様子がおかしいと思ったんです。前にも彼は牢でおかしな連中に精神魔法をかけられて大変な目に遭ったんです。今回もきっと誰かに操られてあんな事をしたんだと思うんです」
「フレイシア、可哀想に。あなたがそう思いたい気持ちはよく分かるわ。メイズ辺境伯。あなたわかってるでしょうね。フレイシアはゆっくり休んだ方がいいわ。あなた、彼女を休める場所に案内して」
「はい、王妃殿下、すぐに案内いたします。さあ、聖女様、こちらにどうぞ」
そう言って私の案内を申し出たのは、もちろんイルだった。
私は今にも部屋を飛び出してエバン様の元に行きたい気持ちを必死で堪えてイルの後に続く。
二人きりになるとすぐに口を開いた。
「イル、エバン様があんな事するはずがない。そう思うでしょう。あの時、彼の目がおかしい気がしたの。ねぇ、彼を助けてくれるんでしょう?」
「フレイシア様、お気持ちはよく分かりますが、あんな公の席でそれも王妃様のいる前でした。いくら私たちでも‥」
イルの顔が曇る。
「そんな‥とにかくどんな手段を使ってもいいわ。彼を助けて!ううん、どうにかしてエバン様に合わせてちょうだい。彼の話が聞きたい。そうすれば真実がわかるはずよ」
「ええ、それはきっとラヴァード様が動かれているかと、それにここだけの話ですが、エバン様を襲った賊を頼んだのは王妃でしょう。もしかしたら今回もあいつらを使って彼を操った可能性も...」
イルは私に近づいて手を握ってくれる。私を見つめて悔しそうな顔をして歯ぎしりをする。
私は一人じゃないって感じる。イルいつもありがとう。
「でもイル、もしそうだとしたら、ここでじっと待ってなんかいられないわ。そうだ、キアに聞いてみる」
私はキアを呼ぶ。
(キア、聞こえる?)
(ええ、そばにいる)
(エバン様の事わかる?どうしてあんな事をしたのか、とにかくおかしいの)
(ええ、きっと彼は操られてあんなことをしたんだわ。王妃からすごく嫌な気配が出ていたから、きっと命令したのは王妃。でも証拠がない)
(ええ、王妃はこの事でエバン様を殺すかも知れない、良くても国外追放、私達の結婚はもう無理かもしれないわ)
(ええ、それが王妃の狙いでしょう?まあ、それにクリス殿下が加担しているかわからないけど)
(でも、クリス殿下は怪我をしたのよ)
(まあ、それは計算違いだったかもしれない。けど、そばにはフレイシアもいた。怪我をしても大丈夫じゃない)
(でも、死んでたかもしれないわ。だってエバン様ほんとに恐かった。俺はきっと正気じゃないわよ。絶対に‥)
(ええ、エバンは操られていた。でも、きっとそれを証明出来なければ難しいわ)
「イリ‥どうしたらいい?エバン様は操られていたってキアも言ってる。でも、それを証明できないと‥あぁぁぁぁ~どうしたらいい?」
キアはどんなに縋りたくても実態はない。私はイリに縋りついて泣きじゃくる。イリは困ったように背中を何度もさすってくれる。
もう、みっともない。そんな事わかってる。でも、エバン様の事になると我慢や抑えがきかなくなる。
「私達が絶対にあいつらを見つけますから、エバン様は絶対にフレイシア様の所に連れて帰ります。だから、泣かないで下さい‥グスッ‥」
いつだってシビアなイリが鼻をぐずらせ涙をぬぐった。
「イリごめん。あなたを困らせて‥」
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イリはそう言うとまた私の背中をさすってくれた。
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