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74母の手紙(ラヴァード)
俺は王城に戻るとすぐにフレイシアの部屋に出向いた
「フレイシアはどこだ?驚くな。母の手紙があったんだ。お前が20歳になったら呼んでほしいと手紙を残していたらしい。もしかしたら大切な事が書かれているのかもしれないだろう。悪いけどすぐに見てくれ」
「ラヴァード様、フレイシア様は今はちょっと」
イルが難しい顔をして言う。
ふと見るとフレイシアが鏡台の前に座っている。
「なんだ、いるじゃないか。フレイシア?」
「お兄様。私、クリス殿下と結婚します」
くるりと振り返ったフレイシアがそう言った。
「はっ?お前気でも違ったのか?エバンはどうするんだ?お前はエバンを愛してるんだろう?」
「私はクリス殿下が好きなんです。大好きなクリス殿下と結婚するのは当然ではありませんか。クリス殿下はすぐに式を挙げようって言ったんです。だから、私、今から仕度をしようかと‥イリお願い。髪がアップがいいかしら?それとも緩めに結った方がいい?」
「フレイシア、お前何があった?いくら何でもそんな事をしてエバンが喜ぶはずがないだろう!!クリスと何か結婚させないからな」
「もう、お兄様、そんな意地悪言わないで下さい。私はクリス殿下が好きなんですから」
フレイシアはクリスが好きというばかりで他の話は全く通用しない。
「イリ、一体何があった?」
「それが、クリス殿下の所にエバン様の事をお願いに行かれて帰って来られた時にはもうこんな状態でして、私が何を言ってもクリス殿下が好きだからとそれだけを繰り返し仰って‥」
「まさか‥フレイシアも操られているんじゃ?イリ、急いで転移の間に行け。そしてフレイシアを連れて王城を出ろ。行き先はフランニーク。急げ!クリスの奴何かしたのかも、いや、王妃の仕業かも知れん。フレイシアがクリスと結婚すれば次期王はクリスで決まったようなもの。王妃の思うつぼじゃないか!とにかく俺は悪いがこの手紙を先に見せてもらう」
「では、王城の転移を使って‥フレイシア様、結婚式となるとドレスを決めなくてはなりませんね。こちらに来て下さい」
「ええ、クリス殿下ったらそんなに急がなくてもいいのに‥でも、私クリス殿下が好きだからうれしいの」
「そうですね。では、急ぎましょう」
フレイシアはイリの後をついて部屋を出て行く。
イリの奴旨い芝居だな。でも、どうしてこんな事に?くっそークリスの奴。
俺は急いでフレイシア宛ての手紙を開いた。
~フレイシア20歳の誕生日おめでとう。
これを見ているってことは私はもうこの世にいないのね。あなたの晴れ姿を見たかった。きっとすごくきれいでしょうね。
それに私がいなくてローダンにも苦労かけたんでしょうね。フレイシア、ローダンを大切にしてね。
こんな手紙驚いたでしょう。
私の本当の名前はシャロン・メイズ。メイズ辺境伯の娘なの。驚かせてごめんなさい。でも、あなたにはどうしても知っておいて欲しい事があるの。
とても大切な事。あなたの本当の父親についてよ。
私はキアラルダ帝国のオスロ王太子、次期王になる人と学園で知り合ったの。私達はすぐに恋に落ちたわ。
でも、彼には既にメルローズ・コバート公爵令嬢という婚約者がいた。
知っての通りキアラルダ帝国も月光水晶をニルス国に貸して色々問題が起こっていた。それを解決するためにもコバート公爵家の資金援助は絶対に必要なものだった。だから、私は一度は彼を諦めたの。
彼の父が亡くなってオスロが王となりメルローズと結婚したけど子供が出来なかった。
どうやらオスロは、メルローズとは白い結婚を貫いていたみたい。
そして私は側妃として召し上げられることになったの。私はすごくうれしかった。
そして授かったのがラビウド王子。私は幸せだった。でも、王妃となったメルローズが私達をひどく妬んでいた。私は次第に彼女に意地悪をされるようになった。
そのうち王妃と弟のマクリートが親密な関係らしいと噂が立った。そして生まれたのがクリス殿下。
オスロ王は王妃がマクリートとの間の子を産んだ事で怒り狂ったわ。でも、マクリートもオスロを責めた。
どうやら王妃はオスロが子供を作れない体質だと聞かされていたらしくて、それでマクリートに関係を迫ったと言う事だった。
紋章はマクリートが王の子だとばれにように刺青をいれたと言ってあるらしい。
王家の紋章は王を継いだ王の子供にだけ現れる特別な物でフレイシアに証がなかったのはキアラルダ帝国にいなかったからだと思う。
もし、キアラルダ帝国に入ればきっとあなたの身体のどこかに王家の紋章が現れるはずよ。
だって、あなたはオスロ王の子供だから。あなたには兄ラビウド王子がいるの。5歳年上のあなたと同じ髪色、緋色の目をしているの。もしも、もしも出会ったら仲良くして欲しい。
一緒に行けなくてラビウドを置いて行った日の事を今も忘れられない。あの子は行ってらっしゃいって手を振ってた。父であるオスロ王に手を繋がれてニコニコ笑っていた。もう二度と母親が帰って来ないなんて夢にも思っていなかったでしょうね。
あの子の心を傷つけた事が今でも悔やまれて、その後、オスロ王が亡くなり王城から追い出されたと知ってメイズの父に助けて欲しいと頼んだの。でも父が殺されてラビウドは行方不明になったと聞いてすごく辛かった。
あの子の無事を祈らない日はなかったのよ。
あなたにはたくさん秘密を作ってしまった。本当にごめんなさい。
勝手な母親だって思うわよね。
でも、とにかくあなたには真実を知っておいて欲しい。
王妃は邪悪な人だった。
私が王に毒を盛ったとして追い出されたけど、実際は王も私も毒を盛られたの。
オスロ王はこのままキアラルダにいたら私が殺されると思って私を逃がしたの。
私は妊娠している事を誰にも話さなかった。それはあなたを守るためだった。そしてニルス国に逃げてあなたを産んだ。
赤ん坊を連れて困っているのを助けてくれたのがローダンだった。
私は次第にローダンが好きになった。オスロ王を愛していたけど、そばにいて支えてくれるローダンに次第に惹かれて行ったの。
だから父様を助けてあげてね。
これも覚えていて欲しい。
私が逃げてからのキアラルダ帝国はオスロ王の弟のセレストが支配していると聞いた。でも、きっと裏で糸を引いているのは王妃だと私は思っている。
王妃は今でもラビウドやフレイシアがオスロ王の子だと思っていないはず。
もしも、キアラルダに行かなければならなくなったら王妃には気を付けて、あの人は裏で闇組織と繋がりどんな事でもするような人だから。
最後に、フレイシア愛してるわ。あなたの幸せを心から祈ってる。
私の分まで幸せになってね。どうか、この手紙が貴方の役に立ちますようにそう祈っている。
シャロン・メイズ~
俺はその手紙を涙ながらに呼んだ。母の苦悩が苦しみが分かったから。この手紙を読んで知ったから。
母を恨んでいなかったと言えばうそになる。自分も一緒に連れて行ってほしかったと考えたこともあった。
でも、王子と生まれて勝手な事が出来ない事も良くわかっていた。
だから、考えないようにして来た。仕方がなかったんだと。
ずっとずっとほんとは心の底ではフレイシアに嫉妬していた。羨ましかった。でも、そうじゃなかった。母は一日たりとも俺を忘れてはいなかった。
胸の奥のつかえがすっとなくなった。
そして真実を残してくれた母に感謝した。
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