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76あの、誤解です
私はクリス殿下が好きなんだ。今日クリス殿下と結婚する。幸せだ。
思考はその事ばかりだった。
「フレイシア様目を覚ましてください!きっとあなたは何か薬を盛られたんです。フレイシア様はエバン様を愛しているって言ったじゃないですか?!」
イリが怒ったように私に言う。
「もう、イリ。違う違う。私はクリス殿下が好きなの」
「だから、それが間違いなんです!!」
何度かそんな会話を繰り返した。
それからイリが諦めたようにドレスの準備をすると言って私を連れ出した。
やっとわかってくれたんだって思った。
(フレイシア?あなた騙されてるわ。しっかりして。クリスが好きなんて嘘。あなたはエバンを愛してる)
(キア?違うの。私クリスが好きになったの。だって頭の中はクリスの事でいっぱいなのよ。こんな気持ち初めて。彼ったら今すぐ結婚しようっていうの。すごくうれしい)
(もう、フレイシア。あなたは薬でそう思ってるだけなの!いい加減目を覚まして!)
(もう、キアったら、いつもは私の見方なのに‥いいわ。もう消えて。キアなんか大っ嫌い!)
(もう、フレイシアなんか知らない!!)
私はうるさいキアを追いやった。
イリに連れて来られたのは帝都にある宿。フランニークだった。
「イリ、こんな所に来てドレスはどうする気?」
「フレイシア様、いきなり今日ドレスを決めるなら帝都のドレスショップで選ぶしかありませんよ。だから、これからドレスショップに」
珍しくイリが苛立った口調で。
「そうね。私ったら。ごめんなさい」
そうね。いきなり結婚するなんて‥私ったらどうしてこんな無理を言ってるんだろう。
あっ、クリス殿下が今すぐ結婚するって言ったから…
それほど私が好きだって‥もう、クリスったら。私もクリスが好き。そう、私はクリスが好きなんだもの‥
何だかそう思えば思うほど胸の奥がそわそわして落ち着かなくなった。
おかしい。ううん、考え過ぎよ。
「フレイシア様、とにかく先に食事をしてからにしてもらえますか?ショップの方には午後に行くと連絡を入れておきますので」
「ええ、そうする」あまりわがままを言うとイリを困らせてしまう。
私は素直に食事をすることに。
食事はお弁当だった。
少しずついろいろな料理があってハーブチキン、トマトで煮込んだ鴨肉、人参のグラッセ、ポテトにはチーズが乗っていたり、エビのフリッター、ローストビーフなど。
ほんの一口サイズの料理だけど色々な味を堪能しているうちにさっきまでの追い詰められたような気持ちがふっと和んで行った。
そして最後に食後のお茶が出された。
少し苦みのあるお茶だったけどたくさん食べた後にはちょうど良かった。
さあ、これからドレスショップにと思ったところにラキスさんとシグスさんが入って来た。
「どうしたんです二人とも?」
そう言ったのはイル。怪訝な顔で二人を見る。
「それはこっちのセリフだイリ。何でこんな所にフレイシアさんがいるんだ?」
「つっ!」
イリが耳打ちで二人に事情を話す。
聞いている私もクリス殿下との結婚の事だと思うと恥ずかしさがぶわっとこみ上げた。
何よ。もう、イリったら!
あれ?私‥どうしてそこまで思ってるんだろう?何も今日結婚しなくたって愛し合ってるならそんなのどうだってよくない?
がちがちに固まった気持ちにほんの少しひびが入る。
そうよね。クリス殿下もそんなに急がなくたって‥結婚より婚約なら話は分かるわよ。でも、やっぱり今日すぐに結婚なんて‥ありえなくない?
うん?違う違う。クリス殿下と結婚する。そう今すぐ!!
私は立ちあがるとイリに言う。
「イリ、いつまで待たせる気?行くわよ早くしなくちゃ間に合わないじゃない。きっと、もうクリス殿下は用意を済ませて待ってるわ。早く!」
「フレイシア様、待って下さい!」
イリより先に部屋を出て表に向かう。
バ~ン!!
「きゃ!」
「あたっ、てめぇ、どこ見てるんだ?!」
「ご、ごめんなさ」
「あっ!なんだ、フェイじゃねぇか」
「あなたは‥ああ、ナジさん?」
ぶつかった相手は先日子供を助けたナジさん。
「おお、あんときゃありがとな。おかげでカロの奴すっかり元気になったぜ」
ナジさんが大きな口を開けてにっこり笑った。でも、強面な顔は少し恐い。
「ええ、良かった。私、ちょっと急いで‥」
「あんたにお礼しようと思ってたのによぉ、行っちまったからさぁ。どこに行くんだ?俺で良けりゃ案内するぜ。帝都じゃ俺の顔の利かねぇ店はねぇんだ。あんたなら何でも買ってやるぞ‥って言うか。フェイお前‥ちょっ、待て!」
もう、急いでいると言うのに。
ナジさんが私を見て顔をしかめた。
イリが後を追ってきておかしな男に絡まれているとでも思ったのか私の前に立つ。
「なんだお前は!」
イリの口調が途端に恐い。それにナジさんの顔も一気にいかつくなって。
「おまえこそ誰だ?おれは、フェイに用があるんだ。邪魔すんな!!」
大きな声を出したせいでラキスさんもシグスさんまでもが来た。
「「こいつは!!て、てんろ‥黙れラキス!」」
「お前ら最近店の前をうろついてた奴らじゃねぇか。まさかフェイを狙って?クッソ!それでフェイがおかしいんだな。フェイ来い!お前とんだ奴らに騙されてるぞ。こいつらおまえに薬を盛ってるぞ。お前おかしなこと考えてないか?フェイ?おい大丈夫か?」
私はいきなりナジさんに手を引っ張られてナジさんの胸の中に抱き込まれた。
「フレイシア様!お前何をする。彼女を離せ!ラキス何してるの。早くフレイシアを!」
「おお!」
「くそ!フェイ、俺に掴まれ‥」
いきなりまぶしい光が。
きゃぁ~何する気?ナジさん誤解なんです。この人達は私の知り合いで‥
そんな事を言う暇もなく私とナジさんは転移していた。
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