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82絶対に負けられません!
聖教会。見慣れたはずのその景色は一変していた。
植木はなぎ倒され、ごうごうと強い風に聖教会の窓や扉がガタガタと音を立てている。
つんざくような雷が鳴り響き、異様な光に建物が不気味に浮かび上がる。
まるで幽霊屋敷みたい。
神聖な場所は今や忌まわしく極悪な場所へと変わっていた。
教会の裏手は、火柱のせいか真っ赤に染まっている。まるで建物まで燃えているかのような有り様に思わず脚が竦む。
でも、私が一番心配だったのはキアが言っていた竜神から授かった竜水晶が無事かどうかだった。
それにあの竜水晶に力を貸してもらえるなんてほんとかな?
不安そうな顔をしていたらしくエバン様が私をぎゅっと抱き寄せてくれた。
「何があっても俺が守る。フレイシアだから‥」
「うん」
やっと戻って来た彼の温もりにほっと息を吐く。
今度こそ終わりにしよう。
「フレイシア様これを」
一緒に転移したイリがさっと懐から差し出した。
「これは、私の杖!もう、イリあなたって最高!」
「フレイシア様、その一言で私の苦労は報われます」
「二手に別れよう。俺たちゃ火柱の上がっている裏手に回る。きっと俺たちの仲間がいるはずだからな。フレイシア、お前は祭壇に急げ!」
ナジさんさすが!考えてることわかってるじゃない。
「ナジさん、お願いしていいですか?」
そこにキトさんが走って来た。
「あったりめぇだろ!おい、キト、ラドとアナンは?あいつらと一緒に王妃を取っ捕まえるぞ!」
「はい、ふたりはすでに待ってます。ですが頭。ほんとに大丈夫なんすっか?俺達逃げた方が‥」
「ばか、恩人を裏切るような事が出来るとでも?てめぇ、俺を誰だと思ってんだ!」
「頭はこうと決めたら人一倍頑固ですからねぇ」
「てめぇ、早くしろってんだ!!」
げんこつがキトさんに落ちた。
そんな会話を遠くに聞きながら私やエバン、イリ、ラキス、シグスの5人は祭壇に急ぐ。
「良かった。竜水晶は無事みたい」
「ああ、でも、なんか色がおかしくないか?」エバン様。
「何だか水晶全体がくすんでますね」ラキスさん。
「ああ、濁ってるな」シグスさん。
「フレイシア様」イリが。
「ええ、竜神様、キアーナ様どうか私に力をお貸しください。キアラルダ帝国をこの帝都を再び貶めようとするマクリートに神の裁きを‥」
私は念じながら杖を振りかざす。
突然竜水晶が光り始め杖の水晶と反響し始める。
「「「「おおぉぉぉぉ!!!」」」」
(フレイシア、あなたは神の祝福を受けたわ。さっきまで竜神様なんかイライラしちゃってて。でも、あなた達が来てくれて良かった)
(そうなの。間に合ってよかった。竜神様、キアーナ様ごめんなさい。あんなに良くして頂いたのにこんな事になって、でも、必ずマクリートを倒しますから!)
私は天に向かって叫ぶ。
すると竜水晶がぼわぁッと光輝いた。
「「「「」すごい!!」」」
(さあ、ぐずぐずしている暇はないわ。フレイシア気を付けてね。ちょっと、エバン!フレイシアを頼んだわよ。あなたにはフレイシアが浄化した時、竜神レオン様とキアーナ様との血のつながりが出来ている。二人で力を合わせてマクリートを倒して!)
いきなりキアの声がしたと思ったら、話を振れらたエバン様が焦る。
(どういう事だ?キア?神と血が繋がっているって?俺は何をすればいい?)
(念じなさい。フレイシアを思うときのように一心に。そうすれば魔力が使える。フレイシアとふたりで魔力を合わせればどんな邪悪な魔力も打ち払えるわ。スーパー浄化魔法とでも言えばいいのかしらね。お二人の神が力を貸してくれるはずだから)
「フレイシアの事を考えればいいってことだな。任せろ!」
エバンはバン!と胸を叩いた。
裏手に回ると大きな神木のたもとにマクリートがいた。
「ハハハハハ。帝都を混乱に陥れれば貴族も国民も神がラビウドを歓迎していないと思うだろう。王にふさわしいのはわが子クリスだと思い知るがいい!!」
もはや知っていたマクリート大神官ではない。鬼のような恐ろしい形相。髪を振り乱して雷を巻き起こす様子は悪魔にも見えた。
私はたまらず声を上げる。
「マクリート大神官。あなたがこんな事をするなんて!みんなあなたを信じてたのに‥」
「それがどうした?私は私の目的の為にこの仕事をして来た。王と同じ父を持ちながら惨めな思いをしなければならなかった。だから私は自分の血を引く子を王にすると決めたんだ。邪魔をするな!!」
マクリートは狂ったように魔力を使って雷を操る。
「どうします?」
ナジさんたちも姿をくらまして近付こうとしているらしいが、ごうごうとうねるような風と雷で容易に近づけない。
「みんなで一か所に魔力を。その間にフレイシアと俺がマクリートに直接魔力を注ぐ」
「ああ、みんなの魔力を!」
ナジさんが声を出す「あいつを取り囲め‥準備はいいか?いくぞ!おりゃぁぁぁぁぁぁ~!!!」
ナジが。キトが。ラドが。アナンが。イリが。ラキスが。シグスが。
全員が最大級の魔力を放つ。
そのおかげでマクリートの周りを取り囲んでいた一部の風と雷が弱まる。
「今よ!」
私は最大の魔力を杖に込める。
エバン様は言われたように手をかざしてそこに最大の気持ちを込めて念じる。
「マクリート覚悟しなさい!もう、終わりよ。自分勝手な野望でみんなを傷つけるなんて許さないんだから!!」
「邪魔させるか!!」
全身が真っ赤に染まったマクリートの身体から雷の矢が現れ放たれる。
「グサッ!」
「う”ぅっ‥」
「ふれいしあ?!よくも」
私は胸に矢を受けてうずくまる。エバンの身体から眩い光が放出するのがわかった。
きっと怒り。
「えばんさま、にげて‥‥」
微かな息の下で彼に危険な事をさせたくなかった。
くっと顔を上げるとエバン様から光が放たれる。光は尖ったナイフとなりマクリートの全身に突き刺さった。
「グガァ~」
エバンはすぐに私を抱きかかえて念じた。
(フレイシア頼む。死なないでくれ。お願いだ俺の命を引きかえにしてもいい。だからフレイシア‥‥‥)
(え‥ばん‥その‥気持ち、だけ‥‥わ、た、し‥‥)
意識が遠のきそうになる。
(もういいの。あなただけでも死なないで欲しいの。あなたは何度倒れてもその度に私の所に戻ってきてくれた。だから、もういいの。あなたを失うくらいなら私が‥)
「ばか、フレイシア!俺は諦めないって言っただろ!だからお前も諦めるな!頼む。頼むから俺をひとりにしないでくれ‥ふれいしあ‥‥俺は絶対諦めない!!だから‥」
再度エバンの身体が光り始める。抱きかかえられた私ごと、丸ごとが光の粒子で包み込まるのがわかった。
光の粒子は金と銀が混じりあっていて私を暖かく包み込んでくれる。
ズクズクしていた痛みが消えて行く。
流れていただろう血の感触がなくなる。ひどく痛む場所が。血の気が引いた肌に温もりが戻って行くのがわかった。
「フレイシア‥フレイシア‥フレイシア‥頼む。戻ってきてくれ‥」
悲痛なほどの呼び声が胸に突き刺さりそっと目が開いた。
「ふ、ふれいしあ?あっ、傷口が塞がってる。ああ、竜神様‥ありがとうございます。フレイシアしっかり。ほら、俺がわかるか?」
ぐっと目が開いてエバン様をしっかりとらえる。
「ええ、わかるわエバン様」
「良かった‥」
はっと気づくとみんなに取り囲まれていた。
「「「「フレイシア様、良かった~!!」」」」
「旦那やるじゃねぇか。おい、それよりマクリートが立ちあがったぞ!」
「もう、許さない!みんな、お願い。エバン様一緒に」
「おお!」
エバン様が私を支えてくれる。
「「「「いっちょ、やるぜ!!」」」
みんながマクリートを取り囲んだ。
私の杖から眩い光が飛び出る。そのすぐ後を追うようにエバンの手のひらからオレンジ色の光が。その光は波動となりマクリートの身体をぐるぐると取り囲む。
みんなの魔力もそれに同調するようにマクリートに絡みつく。
光は七色に変化して魔力が濃厚な圧で光の濁流となりマクリートを押しつぶす。
「グハッ!そんなもので私を止めれるとでも?‥ぎゃぁ、まさか。うそだ。うがぁぁぁぁ~‥」
光の鎖がマクリートを雁字搦めにしてとうとうマクリートはその場に倒れこんだ。
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