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5. 自由をくれるですって
(それがあなたの本音ね!)
子どもさえ、政治的に利用価値のある血統の子さえいれば、その後、私が家でどうしようと、どうでもいいってことでしょ。
とっても、貴族らしいわ。
フィフタージュ王国では一般的な価値観よ。
私の両親だって、だからこそ、私をここに送り込んだんだし。
どうせ誰とも恋愛できないから、使える血筋だけ使って、お金を稼いできなさいって。
「それで? 私の……自由ですって?」
「そうだよ。君は自由を求めているように見えたし、僕の望みとも逸れない」
ライラックの瞳が、熱心な語りかけに説得力を持たせる。
「僕の子を孕んだら、あとの生活の保証をしてあげる。もう誰も君を血統のために利用しない。好きにすればいいじゃないか」
「それって? たとえば離婚して、商人になったりしても? 荘園を持って運営しても?」
「いいよ。……君が望むなら」
え、離婚、できる?
離婚する私に、日々の保証をくれる……。
生活に困らず好きなことをしていい?
理解のいいシリルに、気持ちが追いつかない。
私に都合が良すぎない?
差した希望で肩に力が入る。
不本意な結婚だったけど、やめられるんだ。子どもをつくったら。
「でも、子どもを産んだら、その先は『お母さん』をしなきゃいけないんじゃないの? それじゃ子どもが……かわいそうだわ。ほかにも、公爵夫人としての役目とか……」
「気持ちのない母親は不幸の元だよ。君に無理をさせる気はない。愛情深い乳母をつけるよ。僕だって、乳母育ちなんだ」
「あなたが……?」
「乳母はとてもいい人だったから、僕は母じゃなくても彼女に育ててもらえたことに満足している。母が……自由に生きられたことにもね」
含むように微笑みを転がし、彼は続けた。
「公爵夫人らしい役目を果たす、なんていらないよ。僕はそういうものがなくても一人で職務をこなして回す能力があるから」
「……ほんとうに、離婚できるのね?」
「僕と子どもをつくってくれるなら。あとは君の自由意志だ」
「約束、してくれる……?」
「うん」
「欲しいなら、後日契約書面を用意してもいい」とシリルは請け負った。
そこまで、はっきりしてくれるなら……。
「さて、君のためだ。早く自由になれたほうがいいでしょ? 今晩からはじめようか」
ギシ……とベッドが軋む音を立てて、シリルがシーツに手をついて私へ近寄る。
(ほ、本当に。つくるの……?)
おずおずと見上げた私に、シリルは柔らかな笑みを返す。
「大丈夫だよ、ただの子づくり。みんなしているよ。恋しあっていなくても、行為自体が目的でする人はいっぱいいる。だから、ぜんぜん普通のことだからね」
シリルの手が伸びて、肩を抱き寄せられた。
「緊張してる?」
「それは、もちろん」
「僕じゃイヤ?」
「わからないわ」
「そうなの……?」
「誰でも同じでしょ。子どもをつくって離婚するなら」
「そう……」
少し寂しそうな声を出して、シリルは私の髪を一房とった。
「素敵な色の髪だね」
「私はそうは思わないわ」
この髪のせいで、苦労してきたもの。
「僕はいいと思う、君がこの髪の色でよかった」
「え……」
そんなこと、思う人がいるなんて思わなかったから、衝撃だった。
(どこがいいっていうのよ!?)
戸惑っていると、シリルの美しい顔が近くに……。
そっと私に触れる──
頬にキスされた。
あの形の良い唇が、私に触れたなんて!?
興奮に顔を熱くしていると、幾度となく頬にキスされる。
「子づくりだから、キスは頬に軽くね」
キスを受けているうち、いつのまにか寝間着がはだけられていた。
シリルの指が服の下に入り込む。
その指は新雪に跡をつけるように、未踏の地で探し物を求めるように、私の肌を彷徨った。
指先で突き、指の腹で擦り。
これが、触れられる、ということなのかしら?
五指と手のひらの熱が心地いい。
彼に身体を預け、私はすっかり四肢の力が抜けていく。
「磨いた夜光貝みたいな肌だね。僕の手によく馴染んで……離したくなくなるな」
「あ……」
もう緊張は解けてる。でも、息が上がっていく。
「ここも」
「あっ!」
シリルの手が、私の胸をしっかりと捉えた。
大きさがあるほうだから、下を向いていると掴まれた胸が、彼の手の中で形を変えていくのが見える。
「やわらかいね……」
ふっくらとした乳房へ沈む指の甘さに、涙が滲んだ。
(これは……この人、私のこと愛してもいないのに。こんなことされて……っ、私、どうなってしまうの)
子どもさえ、政治的に利用価値のある血統の子さえいれば、その後、私が家でどうしようと、どうでもいいってことでしょ。
とっても、貴族らしいわ。
フィフタージュ王国では一般的な価値観よ。
私の両親だって、だからこそ、私をここに送り込んだんだし。
どうせ誰とも恋愛できないから、使える血筋だけ使って、お金を稼いできなさいって。
「それで? 私の……自由ですって?」
「そうだよ。君は自由を求めているように見えたし、僕の望みとも逸れない」
ライラックの瞳が、熱心な語りかけに説得力を持たせる。
「僕の子を孕んだら、あとの生活の保証をしてあげる。もう誰も君を血統のために利用しない。好きにすればいいじゃないか」
「それって? たとえば離婚して、商人になったりしても? 荘園を持って運営しても?」
「いいよ。……君が望むなら」
え、離婚、できる?
離婚する私に、日々の保証をくれる……。
生活に困らず好きなことをしていい?
理解のいいシリルに、気持ちが追いつかない。
私に都合が良すぎない?
差した希望で肩に力が入る。
不本意な結婚だったけど、やめられるんだ。子どもをつくったら。
「でも、子どもを産んだら、その先は『お母さん』をしなきゃいけないんじゃないの? それじゃ子どもが……かわいそうだわ。ほかにも、公爵夫人としての役目とか……」
「気持ちのない母親は不幸の元だよ。君に無理をさせる気はない。愛情深い乳母をつけるよ。僕だって、乳母育ちなんだ」
「あなたが……?」
「乳母はとてもいい人だったから、僕は母じゃなくても彼女に育ててもらえたことに満足している。母が……自由に生きられたことにもね」
含むように微笑みを転がし、彼は続けた。
「公爵夫人らしい役目を果たす、なんていらないよ。僕はそういうものがなくても一人で職務をこなして回す能力があるから」
「……ほんとうに、離婚できるのね?」
「僕と子どもをつくってくれるなら。あとは君の自由意志だ」
「約束、してくれる……?」
「うん」
「欲しいなら、後日契約書面を用意してもいい」とシリルは請け負った。
そこまで、はっきりしてくれるなら……。
「さて、君のためだ。早く自由になれたほうがいいでしょ? 今晩からはじめようか」
ギシ……とベッドが軋む音を立てて、シリルがシーツに手をついて私へ近寄る。
(ほ、本当に。つくるの……?)
おずおずと見上げた私に、シリルは柔らかな笑みを返す。
「大丈夫だよ、ただの子づくり。みんなしているよ。恋しあっていなくても、行為自体が目的でする人はいっぱいいる。だから、ぜんぜん普通のことだからね」
シリルの手が伸びて、肩を抱き寄せられた。
「緊張してる?」
「それは、もちろん」
「僕じゃイヤ?」
「わからないわ」
「そうなの……?」
「誰でも同じでしょ。子どもをつくって離婚するなら」
「そう……」
少し寂しそうな声を出して、シリルは私の髪を一房とった。
「素敵な色の髪だね」
「私はそうは思わないわ」
この髪のせいで、苦労してきたもの。
「僕はいいと思う、君がこの髪の色でよかった」
「え……」
そんなこと、思う人がいるなんて思わなかったから、衝撃だった。
(どこがいいっていうのよ!?)
戸惑っていると、シリルの美しい顔が近くに……。
そっと私に触れる──
頬にキスされた。
あの形の良い唇が、私に触れたなんて!?
興奮に顔を熱くしていると、幾度となく頬にキスされる。
「子づくりだから、キスは頬に軽くね」
キスを受けているうち、いつのまにか寝間着がはだけられていた。
シリルの指が服の下に入り込む。
その指は新雪に跡をつけるように、未踏の地で探し物を求めるように、私の肌を彷徨った。
指先で突き、指の腹で擦り。
これが、触れられる、ということなのかしら?
五指と手のひらの熱が心地いい。
彼に身体を預け、私はすっかり四肢の力が抜けていく。
「磨いた夜光貝みたいな肌だね。僕の手によく馴染んで……離したくなくなるな」
「あ……」
もう緊張は解けてる。でも、息が上がっていく。
「ここも」
「あっ!」
シリルの手が、私の胸をしっかりと捉えた。
大きさがあるほうだから、下を向いていると掴まれた胸が、彼の手の中で形を変えていくのが見える。
「やわらかいね……」
ふっくらとした乳房へ沈む指の甘さに、涙が滲んだ。
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