110 / 112
第2章 導かれし王編
第百三話 戦闘用メイド「サリ」
しおりを挟む
あれから三日間、色々なことが起こった……ような気がする。いや、わかっている、別に何もしていないことは、わかっているから詮索はやめて下さいお願いしますなんでもしますから。
話が脇道にそれてしまったようだ、この三日間、俺はシャルティアたんに特訓してもらっていた。
まあもちろん、そんなにすぐに強くなれるようなものでもないし、どっちかというと三日前にシャルティアたん自身に削られてしまった精霊達のことを考えると、戦力的には弱体化してしまっていると思われる。
それでも、俺自身の強さは格段に上がってきていた……と思いたい。実際シャルティアたんからしたらアリがカマキリに進化したぐらいのイメージなのかもしれないが、そんなことは知らない。いや、知りたくない。
「どうぞ、入って」
その声に導かれて、俺は扉を開けた。遂にこの日が来てしまったのだ。
「今日はいい朝だな、魔王様」
「清々しい朝だね、全ての手続きを終えた私に不可能はないわ、それじゃあ攻め込みましょうか」
とても疲れた様子の魔王様に返事をしながら、少し考えてしまう。そんなに手続きというものが大変なのだろうか。
ひとつの世界に対して宣戦布告をする、後は神学校のほうに手続きをする……くらいしか思いつかないのだが、まるで三徹したかのような顔をしている気がする……目のクマがすごい。
「心外だなぁ、私がこの三日間それだけしかしてないわけないでしょ」
「人の心の声に反応するのやめてほしいなぁ」
「嫌だよ、そのほうが効率いいじゃん」
相変わらず人権侵害が甚だしいが、もう仕方ないのだろう。そんな俺の心の声は完全に無視され、話は続く。
「いけそうな世界全てに対して宣戦布告したからね、大丈夫戦力はちゃんと割り振ってあるから」
……この人は今なんて言った?
「聞こえてるでしょ、いけそうな世界、まあ具体的に言うと、確実にやばいひとつの世界が宣戦布告していない世界全部なんだけどね、サガンの攻略は任せたよ!」
「サガンに3人で行くんじゃなかったのかよ!?」
「あんな世界に3人で行くわけないでしょ? 特にシャルティアたんなんて特級火力、サガンに持っていっても遊ばせちゃうだけだよ? 大丈夫、こっちのことは心配しないで、やばい所は私とシャルティアたんで落とすし、魔王軍は最強なんだから! それじゃあサガンに飛ばすね」
「ちょっと待て!?」
「いってらっしゃーい!」
「人の話を聞けぇぇぇぇぇぇ!」
背中に固い感触があり、飛び起きる。そこは先程までいた魔王様の部屋ではなく、完全に屋外だった。
「まじかよ……俺ひとりで世界を落とせなんて本気で言ってるのか?」
「大丈夫でございますよ、荒巻様」
「うわっ、誰だお前」
「魔王軍お抱え戦闘用メイドのサリでございます、なんなりとお申し付け下さい」
「……とりあえず状況説明お願いしてもいいですかね」
「分かりました、魔王様からの伝言を預かっておりますので、そちらを伝えさせて頂きます『 殲滅せよ』以上でございます」
全然状況説明されていないことだけはわかった。そういうものだと思って慣れるほかないのだろう。
少し冷静になり、辺りを見渡すと、そこは荒野と呼ぶのがふさわしい場所だった。土地が悪いのが土のことなど何も知らない俺でもわかる。
地面にヒビが入っていたり、クレーターのようなものが出来ていたり、月の表面ってこんな感じなのだろうか、といった様子だった。
この世界は俺がひとりで任されるくらいだし、それが普通なのかと一瞬錯覚してしまったが、これが自然にこうなったとしたらおかしい場所を見つけてしまった。
「なんで木の幹が半分ほどえぐれているのか説明してもらっても?」
「殲滅いたしました」
……なるほど、わかった。俺ひとりに任されたと思っていたのは大間違いだった。本当は俺ひとりに任されたのではない。戦闘用メイドひとりに任されたんだな。
「いえ、私ひとりではほんの少しばかり力が足りない可能性が52874回に1回の確率で存在しております荒巻様。ですので私に力を貸してください」
「うん、まあ力を貸すのはいいんだけど、やっぱり俺確実にいらないよね、5万回に1回ってそれアルコール0.00%みたいなノンアルコールビールより微量だからね。というか、さも当たり前かのように心を覗く能力持ってるのやめろ」
「どうでもいいお話はやめてさっさとこの世界滅ぼしましょう、神の気配があるのはこちらです、ついてきてください」
どうでもいいお話扱いされたのは納得いかないが、神がいるということは、この戦闘用メイドは神に勝つ力を持っているということなんだよな、魔王様の兵力の底が見えない。以前の魔王様も、さすがにこんな兵力は持っていなかった……と思うんだけど。まだ全力を見せていなかったというのか?
「私は元々戦闘用メイドとして魔王様に造られたのですが、それに加えてアルテミス様とミツハ様によって力を注ぎ込まれたので更に強くなったのです。魔王様がまだ全力を見せていなかったというわけではないと思いますよ、知らんけど」
「知らんのかい」
そう言いながら、結構早足で進む戦闘用メイドについて行く。見渡す限り人のいる痕跡がないことから分かるように、道のりは長そうだ。
話が脇道にそれてしまったようだ、この三日間、俺はシャルティアたんに特訓してもらっていた。
まあもちろん、そんなにすぐに強くなれるようなものでもないし、どっちかというと三日前にシャルティアたん自身に削られてしまった精霊達のことを考えると、戦力的には弱体化してしまっていると思われる。
それでも、俺自身の強さは格段に上がってきていた……と思いたい。実際シャルティアたんからしたらアリがカマキリに進化したぐらいのイメージなのかもしれないが、そんなことは知らない。いや、知りたくない。
「どうぞ、入って」
その声に導かれて、俺は扉を開けた。遂にこの日が来てしまったのだ。
「今日はいい朝だな、魔王様」
「清々しい朝だね、全ての手続きを終えた私に不可能はないわ、それじゃあ攻め込みましょうか」
とても疲れた様子の魔王様に返事をしながら、少し考えてしまう。そんなに手続きというものが大変なのだろうか。
ひとつの世界に対して宣戦布告をする、後は神学校のほうに手続きをする……くらいしか思いつかないのだが、まるで三徹したかのような顔をしている気がする……目のクマがすごい。
「心外だなぁ、私がこの三日間それだけしかしてないわけないでしょ」
「人の心の声に反応するのやめてほしいなぁ」
「嫌だよ、そのほうが効率いいじゃん」
相変わらず人権侵害が甚だしいが、もう仕方ないのだろう。そんな俺の心の声は完全に無視され、話は続く。
「いけそうな世界全てに対して宣戦布告したからね、大丈夫戦力はちゃんと割り振ってあるから」
……この人は今なんて言った?
「聞こえてるでしょ、いけそうな世界、まあ具体的に言うと、確実にやばいひとつの世界が宣戦布告していない世界全部なんだけどね、サガンの攻略は任せたよ!」
「サガンに3人で行くんじゃなかったのかよ!?」
「あんな世界に3人で行くわけないでしょ? 特にシャルティアたんなんて特級火力、サガンに持っていっても遊ばせちゃうだけだよ? 大丈夫、こっちのことは心配しないで、やばい所は私とシャルティアたんで落とすし、魔王軍は最強なんだから! それじゃあサガンに飛ばすね」
「ちょっと待て!?」
「いってらっしゃーい!」
「人の話を聞けぇぇぇぇぇぇ!」
背中に固い感触があり、飛び起きる。そこは先程までいた魔王様の部屋ではなく、完全に屋外だった。
「まじかよ……俺ひとりで世界を落とせなんて本気で言ってるのか?」
「大丈夫でございますよ、荒巻様」
「うわっ、誰だお前」
「魔王軍お抱え戦闘用メイドのサリでございます、なんなりとお申し付け下さい」
「……とりあえず状況説明お願いしてもいいですかね」
「分かりました、魔王様からの伝言を預かっておりますので、そちらを伝えさせて頂きます『 殲滅せよ』以上でございます」
全然状況説明されていないことだけはわかった。そういうものだと思って慣れるほかないのだろう。
少し冷静になり、辺りを見渡すと、そこは荒野と呼ぶのがふさわしい場所だった。土地が悪いのが土のことなど何も知らない俺でもわかる。
地面にヒビが入っていたり、クレーターのようなものが出来ていたり、月の表面ってこんな感じなのだろうか、といった様子だった。
この世界は俺がひとりで任されるくらいだし、それが普通なのかと一瞬錯覚してしまったが、これが自然にこうなったとしたらおかしい場所を見つけてしまった。
「なんで木の幹が半分ほどえぐれているのか説明してもらっても?」
「殲滅いたしました」
……なるほど、わかった。俺ひとりに任されたと思っていたのは大間違いだった。本当は俺ひとりに任されたのではない。戦闘用メイドひとりに任されたんだな。
「いえ、私ひとりではほんの少しばかり力が足りない可能性が52874回に1回の確率で存在しております荒巻様。ですので私に力を貸してください」
「うん、まあ力を貸すのはいいんだけど、やっぱり俺確実にいらないよね、5万回に1回ってそれアルコール0.00%みたいなノンアルコールビールより微量だからね。というか、さも当たり前かのように心を覗く能力持ってるのやめろ」
「どうでもいいお話はやめてさっさとこの世界滅ぼしましょう、神の気配があるのはこちらです、ついてきてください」
どうでもいいお話扱いされたのは納得いかないが、神がいるということは、この戦闘用メイドは神に勝つ力を持っているということなんだよな、魔王様の兵力の底が見えない。以前の魔王様も、さすがにこんな兵力は持っていなかった……と思うんだけど。まだ全力を見せていなかったというのか?
「私は元々戦闘用メイドとして魔王様に造られたのですが、それに加えてアルテミス様とミツハ様によって力を注ぎ込まれたので更に強くなったのです。魔王様がまだ全力を見せていなかったというわけではないと思いますよ、知らんけど」
「知らんのかい」
そう言いながら、結構早足で進む戦闘用メイドについて行く。見渡す限り人のいる痕跡がないことから分かるように、道のりは長そうだ。
0
あなたにおすすめの小説
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー
芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。
42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。
下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。
約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。
それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。
一話当たりは短いです。
通勤通学の合間などにどうぞ。
あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。
完結しました。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
前世で薬漬けだったおっさん、エルフに転生して自由を得る
がい
ファンタジー
ある日突然世界的に流行した病気。
その治療薬『メシア』の副作用により薬漬けになってしまった森野宏人(35)は、療養として母方の祖父の家で暮らしいた。
爺ちゃんと山に狩りの手伝いに行く事が楽しみになった宏人だったが、田舎のコミュニティは狭く、宏人の良くない噂が広まってしまった。
爺ちゃんとの狩りに行けなくなった宏人は、勢いでピルケースに入っているメシアを全て口に放り込み、そのまま意識を失ってしまう。
『私の名前は女神メシア。貴方には二つ選択肢がございます。』
人として輪廻の輪に戻るか、別の世界に行くか悩む宏人だったが、女神様にエルフになれると言われ、新たな人生、いや、エルフ生を楽しむ事を決める宏人。
『せっかくエルフになれたんだ!自由に冒険や旅を楽しむぞ!』
諸事情により不定期更新になります。
完結まで頑張る!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる