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4章 そして事件は起こった
怒り狂う上司
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「やってくれたな向田。もうあきれてものが言えんよ」
部屋に入るなり、伊澤支店長は怒りの矛先をすぐにおれに向けた。
「何で新規の案件なのにお前はチェックを怠ったんだ。ええ!?こんな面倒なことになる前に、事前に防げただろうが!」
相変わらず机をバンバン叩きながらまくしたてる。
隣の安藤は、立ちすくんでいた。
「大変申し訳ありません」
毎日暇な支店長殿がてっきり確認されてウハウハされていることと思い、自分はしませんでした。
続きは心の中で答える。
「本当に申し訳もできないだろうな。500万がパアになるんだぞ。どれだけの損失を生むことになると思ってるんだ!」
「しかし支店長、まだキャンセルが決まったわけではありません」
おれは何とか反論する。全ての責任をおれになすりつけられるわけにはいかない。
「まだ決まってないだぁ?お前はキャンセル撤回できる自信があるんだな!?というかできるんだな!?そうだな!?」
伊澤支店長が、おれにずいと顔を近づけた。
ず太くちぢれた眉毛にやけに巨大な口元のほくろ。
まるで憎まれ顔を絵に描いたようなパーツをそろえている。
「とにかくこれから、安藤と先方を訪ねて直接お話をうかがってみたいと思います。もう少々お待ち下さい」
「ああ、そうしてくれ。ただキャンセルになった場合、ただでは済むと思うなよ」
「分かりました」
おれは伊澤支店長と目を合わせるのも面倒になり、そのままくるりと背を向けて退出した。
「支店長、あんな剣幕で怒るんですか…」
後に続いて出て来た安藤が、すっかり怯えている。
伊澤支店長は、安藤を箱入り息子のように大事にしていたのだろう。
さきほどの場でも、当事者である安藤には一言もお咎めをしていない。
全くおれは損な役回りだ。
「ま、おれは慣れてるけどな。それより早く先方に行くぞ。書類まとめて」
「は、はい。あの…」
「ん?」
「係長も巻き込んでしまい、すみません」
安藤は申し訳程度に頭を下げる。
が、それを言うタイミングも遅すぎる。
この部下といい上司といい…おれは愚痴をこぼしそうになりながらも自席に戻って、冷め切ったコーヒーを口にした。
部屋に入るなり、伊澤支店長は怒りの矛先をすぐにおれに向けた。
「何で新規の案件なのにお前はチェックを怠ったんだ。ええ!?こんな面倒なことになる前に、事前に防げただろうが!」
相変わらず机をバンバン叩きながらまくしたてる。
隣の安藤は、立ちすくんでいた。
「大変申し訳ありません」
毎日暇な支店長殿がてっきり確認されてウハウハされていることと思い、自分はしませんでした。
続きは心の中で答える。
「本当に申し訳もできないだろうな。500万がパアになるんだぞ。どれだけの損失を生むことになると思ってるんだ!」
「しかし支店長、まだキャンセルが決まったわけではありません」
おれは何とか反論する。全ての責任をおれになすりつけられるわけにはいかない。
「まだ決まってないだぁ?お前はキャンセル撤回できる自信があるんだな!?というかできるんだな!?そうだな!?」
伊澤支店長が、おれにずいと顔を近づけた。
ず太くちぢれた眉毛にやけに巨大な口元のほくろ。
まるで憎まれ顔を絵に描いたようなパーツをそろえている。
「とにかくこれから、安藤と先方を訪ねて直接お話をうかがってみたいと思います。もう少々お待ち下さい」
「ああ、そうしてくれ。ただキャンセルになった場合、ただでは済むと思うなよ」
「分かりました」
おれは伊澤支店長と目を合わせるのも面倒になり、そのままくるりと背を向けて退出した。
「支店長、あんな剣幕で怒るんですか…」
後に続いて出て来た安藤が、すっかり怯えている。
伊澤支店長は、安藤を箱入り息子のように大事にしていたのだろう。
さきほどの場でも、当事者である安藤には一言もお咎めをしていない。
全くおれは損な役回りだ。
「ま、おれは慣れてるけどな。それより早く先方に行くぞ。書類まとめて」
「は、はい。あの…」
「ん?」
「係長も巻き込んでしまい、すみません」
安藤は申し訳程度に頭を下げる。
が、それを言うタイミングも遅すぎる。
この部下といい上司といい…おれは愚痴をこぼしそうになりながらも自席に戻って、冷め切ったコーヒーを口にした。
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