没作品集

兎杷

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本家と分家

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登場人物
神崎永久(かんざき とわ)神崎家の元当主、兎杷の父
神崎兎杷(かんざき とわ)神崎家の現当主、永久の息子
月崎柚乃(つきざき ゆの)月崎家の当主、双子の詩乃の姉
月崎詩乃(つきざき しの)月崎家の当主、双子の柚乃の妹









『おはようございます』
今日も息ぴったりの挨拶と同じ角度のお辞儀と同じ音域の声で同じ光を宿した瞳で挨拶をする。

神崎家を本家とする天崎家・月崎家がこの地域でよく知られる分家となっている。
他にも派生として出てきた分家や陽崎家・陰崎家などがあるが、
位が下の為あまり知られていない。
私達はその中の月崎家の後継として生まれた
双子であったため二人で一つになる事を強制された。
姉である柚乃(ゆの)と妹の詩乃(しの)。
生まれた時から一ミリたりとも離れ離れになったことがない。
一卵性双生児で顔がそっくりだったが、身に纏っているオーラが違うらしく、
家系の人に間違えられる事はなかった。
いうまでもないが家系以外の人にはよく間違えられるほどには似ていた。
学校にも通っていたが私達を見分けられる人は、いなかった。
その辺の名もないただの一般家庭の分際では見分けられないほどに私達は
似ていたということだ。
もちろん表舞台に立つのは光属性である柚乃、詩乃も光属性ではあるが柚乃ほどの輝きは放ってないらしい。
だからこそ詩乃が役に立つ。
何か裏のことを引き受ける時は決まって柚乃ではなく詩乃が引き受ける。
汚れ仕事も詩乃の役目だ。
柚乃が手を汚す事はない。
今日も朝早くから先週より、引き受けている依頼をこなしに行った。
だからこそ良くも悪くも根も葉もない噂が流れる。

「月崎家の柚乃様はいつも分家の集まりの時に顔を出し、よく人の話も聞き相談役にもなり学園では生徒会長を務めているらしいわよ」

「それに比べて詩乃様は人と喋っているところを見た事ないわ。当主会議にも出席した事がないし、才能を全部お姉様に取られてしまったんじゃないかしら。でなきゃ説明がつかないもの」

「でも、一応副会長の立場にいるのでしょう?まあ柚乃様の権力と信頼があってこそなのかもしれないけれど」

最近の当主会議ではそんな戯言が格下の分家の当主達から聞こえる。
もちろんこの場に詩乃はいない。
依頼をこなしている最中だからだ。
でもそのことをここにいる連中は知らない。教えてもいいのだけれど大問題になりかねないから伏せておくようにと言われている。

「本日はお集まりいただきありがとうございます。私、23代目当主の兎杷でございます。先日神崎家22代目当主の永久が亡くなり長男であるこの私が次の代を務めさせていただく事になりました。まだまだ未熟者ではありますが、父のようにいや、父を超えるほどの当主としての役割を果たしますゆえどうぞよろしくお願いいたします。」

一言一句間違える事なく告げたのは神崎家の当主になった兎杷様である。
神崎家は代々当主は『とわ』という名を受け継ぐ事が決まっている。
こんな時に詩乃は何をしているのかというと、兎杷様のお父様、永久様の遺体を
処理しているとでも言えばいいのだろうか。
月崎家にきた依頼というのは、兎杷様の代わりに現当主である父、永久を殺してくれ
との依頼でした。
自分が当主となる為ならばどんな手段も厭わない。
まさに神崎家の家業らしいお方が当主になった。
これからはうまく立ち回っていかないと、月崎家もいつ滅ぼされるかわからない。
新しい当主の挨拶が終わったところで今日の会議は終了だ。
詩乃に連絡を入れないといけない。
この後、兎杷様に挨拶をしに行かないといけないからだ。
基本詩乃は表に顔を出すことがないし今後もその予定はない。
格下の分家の当主どもの前になんて絶対にださない。
あんな奴らに軽々と見せれるほど詩乃は安くない。
それに神崎家の分家の中でも格の高い三家がこれから集まる。
こんなことは滅多にないから、結構楽しみなのだ。
もう、かれこれ10年ほど会っていない。
どんな人たちだったかは失礼ながら忘れてしまった。
幼い頃はよく遊んだものだが、当主になった事により家業で忙しくなり
なかなか顔を合わせる機会もなかった。

「詩乃、会議が終わったよ。依頼は片付いた?これから神崎家・天崎家
月崎家で、集まるから早めに帰ってきてね。それと詩乃の予想通り兎杷様が本家の
当主様になったよ。これから忙しくなるかもだけどうまくやっていきましょうね。」

「柚乃様お着替えの準備が整いました。」
使者が部屋にやってきた。今回はどんな着物なんだろうか。
前回は赤と黒の組み合わせだったけど今回は、黒と青の組み合わせ。
という事は詩乃のリクエストなんでしょうね。
赤色の着物を着た時の詩乃の顔はすごかったもの。

「柚乃様、失礼します。」
「詩乃様、お帰りなさい。」
詩乃が帰ってきた。いつも周りに人がいる時は必ず様をつけて私を呼ぶ。
だから私も同じように様をつけて詩乃を呼ぶ。
二人で一つなんだから様をつける必要はないのにと、この前詩乃に言ったら、
当主としての仕事をしているのは柚乃なんだから、それに目上の人にはそれなりの対応でいかないとでしょ?と真顔で言われてしまった。
私は当主としての仕事はこなしているけど、詩乃にいつも面倒ごとを押しつけて
しまっている気がしてとても申し訳ないのだ。
当の本人は全く気にしていないようだけれど。
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