111 / 113
第111話 救出
しおりを挟む「作戦が無事終了したようです」
「ああ、こちらにも港湾当局からの退去命令が出たことだし、彼らを回収して高雄に帰ろう」
クルーザーの船長はマカオ港に対して退去の命令を受諾するが燃料の補給を要求している。
マカオ港の港湾当局も、燃料の補給要請を受け入れてすぐに小型タンカーを寄こしてくる。
その間に、コロンビアのマーク達は今回救出に動員された特殊部隊をこのクルーザーに回収している。
そう、あの時海に飛び込んだワンボックスカーに乗っていた人たちを含め、全員が海の底からこの船に上がってきた。
後部甲板にある海水浴用の出入り口から潜水具を付けたがっちりとした人たちがどんどん上がって来る。
この人たちが報告のあったコロンビア政府が誇る特殊部隊の人たちのようだ。
どんどん人が船に上がって来るがその中の一団が寝袋のようなものを抱えて上がってきた。
それを見たのか、船内から白衣を着た一団が急ぎ足で近づきその寝袋を引き取り、ストレッチャーで運んでいく。
特殊部隊の責任者だろうか、ひときわ威圧感のある人が俺を見つけて近づいてきた。
俺の前で敬礼姿勢を取った後、「本郷様ですね、作戦は無事終了しました」と報告してきた。
いつのまにか俺の横にいたマークが彼に向かってねぎらいの言葉をかけている。
俺も慌てて、彼らに感謝の言葉を伝えた。
「今回は、私の無理な要請にこたえてくれ大変感謝します。
あなた方の献身に対して、何かしらのお礼がしたいと思っております」
俺のお礼に対して彼が答えて来た。
「大統領直々からの指令ですので、お気になさらずに」 ととんでもないことを言いだした。
俺は顔を青くしながらマークの方を見た。
するとあいつは憎たらしいことに満面の笑顔で「言ってませんでしたか」だって。
俺絶対にあいつとは仲良くできない。
「聞いていないよ。
それよりも彼らのこの後については」
「それこそお気になさらずに。
十分に距離を取ったら迎えのヘリが来ますので、それに乗せて帰らせますから。
それより、無事に目標は連れて来られたようですね」
目標って、梓の父親のことか。
まあ、彼らにとっては作戦の目標だろうが、もう少し言い方ってもんがあるだろうに。
「ああ、何か運んでいたな。
白衣の一団がそれを運んでいったからこの船の病室にでもいるかな」
「そうですか。
なら後程確認して作戦の終了としますか。
それよりも、うちの特殊部隊にまで怪我人の手当ての手配をして下さり感謝します」
「あ、それね。
でも俺は知らないよ。
もし手当てをしているのなら殿下たちだろうね……って、けが人が出ましたか」
「ハイ、十分に想定の範囲ですが、銃撃で数人撃たれました。
今病室で応急処置を取ってもらっておりますからご安心ください」
「すみません。
俺たちのために……」
「それこそ気にしないで下さい。
こっちは、こっちの思惑で動いていますからね。
作戦の終了を確認したら、報酬の話をしましょう」
「そうですね。
梓の父親の無事を確認しましょう」
俺はマークと一緒にこの船の病室に向かった。
船内の病室には初めて入ったが、流石に王室専用の大型クルーザーだけあって、設備も下手な病院よりも完備されている。
奥の手術室で、弾丸の摘出を数名の医師が行っているようで、俺は目を背けた。
「悪いが、目標はどこに」
マークは忙しくしている看護師の一人を捕まえて聞いていた。
既にクルーザー内の部屋に連れて行かれたようだった。
部屋の番号を聞いてから俺らはその部屋に向かった。
部屋には先客がいた。
とても綺麗な女性医師と看護師の他に既に梓も里中さんと一緒に連れて来られていたようだった。
肝心の梓の父親は、ベッドに寝かされている。
俺を見つけた梓は俺に話しかけて来た。
「お父さん、寝ているだけで大丈夫だって。
付いてくれているお医者さんが教えてくれた。
直人君。
今回は本当にありがとう。
何とお礼を言えばいいか分からない。
あとでしっかりお礼をするけど、許してね」
「何を許せばいいんだ、梓。
俺は、世話になっていたおじさんを助けただけだよ」
そう言ってから里中さんの方を見た。
里中さんはとりあえずホッとした顔をしているが俺に何かを言いたそうだった。
俺は里中さんの意図を察して、外に連れ出した。
部屋の外で里中さんが俺に言ってきた。
「君には毎回驚かされたが、その中で今回ほど驚いたことは無い。
しかし、この後どうする気だ。
私が見た限り少なくとも5か国は関係しているだろう」
「5か国ですか」
「ああ、日本政府も入るが、コロンビアにペトロ、それにスレイマンとこの船の所有者であるボルネオの5か国だ。
大した人脈だと言いたいが、それにしても国益に関係しないところでこんな借りを作ってどうする気だ」
「え?
日本政府にも借りができましたか」
「いや、政府は邦人保護の使命もあるし借りだとは思っていないが、他は違うだろう」
「スレイマンというよりもエニス王子にですが、大きな借りは作りましたね。
殿下とは事前に話し合っており、殿下の指示があったことは明かしておきます。
正直ボルネオまで動かしていたことは知りませんでしたが、後で皇太子殿下にでも確認しておきます」
「ああ、できればその結果も教えてくれると助かるが」
「できる範囲でなら」
「ああ、それで構わないが、残りはどうする気だ」
「これから、彼らと相談ですよ。
だいたいは決まっておりますが」
「だいたい?
それは何かな」
「ええ、城南島開発の権益で我らが持つ分の一部を渡します」
「え、それはまずくないか」
「大丈夫です。
本契約の部分でなく、別に開発中のがあるでしょ。
既にコロンビアに対してミュージカル劇場を共同して運営することで話が付いております。
あれは借りを返すつもりでしたが、私からの貸しになっていたようです。
尤もそれだけでは収まらないでしょうが」
「そんなことになっていたか」
そこまで話していると部屋から出て来たマークに呼ばれた。
「直人君。
依頼は、完了で良いよね。
報酬について相談しようか」
「ええ、分かっております。
私からの依頼についての報酬ですね」
「何を警戒しているかは分かっているが、そんなに構えなくとも良いよ。
私は、君との関係をもっと強化したいだけだ。
大統領も私の意向を承認してくれている」
「分かりました。
では私の部屋に行きましょう。
あそこにペトロも待たせておりますから」
「え?
一緒にする気か」
「ええ、その方が両者とも安心できるでしょう」
「分かった」
俺はマークと一緒に部屋に戻った。
部屋には既にアリアさんたちがペトロからの代表者のあの男性を連れてきていた。
事前に何やら話し合っていたようだが、ここからが本番だ。
両者を席に着かせて話し合った。
「前に話したようにこの案件は私個人からのものです」
「理解しております」
「コロンビアはどうか分かりませんが、スレイマンに対して今回のことでペトロ政府は何かを要求することはありません」
「ありがとうございます。
では私からの提案ですが、ペトロに対しては私どもが開発中の城南島にいくばくかの権益を譲ることができます」
「それは魅力的なお話ですね。
でも、今回のことでコロンビアはあなたに提案があるのでしょう。
私どもも同じことを要求します」
「何で知っている……
問うまでもないか。
では先に私からの提案ですが、直人さんにはキャサリンを受け入れてもらいたい。
コロンビアとより一層のつながりを持つためにどうしても譲れない条件です。
今回の報酬としてください」
「え、それは以前に御断りを……」
「既に直人さんは日本国政府から受け入れているではありませんか」
「う……分かりました」
「我らとしては、既に直人様とは面識のあるサーシャとナターシャの姉妹を受け入れてください。
人数については日本と同じはずですが」
そこまで分かっているのか。
いったいこいつらはどこまで俺のことを嗅ぎまわっているのだ。
俺はアリアさんを見た。
11
あなたにおすすめの小説
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件
暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる