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第2話 現状確認
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とりあえずホテルのラウンジのソファーに座ることができたので、俺はとにかく今までのことを振り返ってみた。
まずは俺の名前だが、先にふれたように俺の名前は金田 一(かねだ はじめ)だ。
年齢は一昨年大学を卒業したばかりの23歳。
職業が私立探偵だ。
これも先にふれたが、俺は一人独立して私立探偵業を営んでいる。
よし、大丈夫だ。
俺はおかしくはないようだ。
しかし、この探偵業とういのは、ここ日本では本当に儲からない。
俺の尊敬するフィリップ・マーロウ先生やポアロ様、他には世界中で一番有名な探偵のシャーロックホームズ様のような生活にあこがれたのだが、実際には全く違う生活が待っていた。
俺の顧客でもある御年輩の方々が好きな昭和を代表する探偵の金田一◎助の小説を学生時代に読んでいたならば俺は探偵など目指すことは無かったのにとも思っている。
西洋の探偵は貴族のような生活と言えば大げさになるが、かなり裕福な生活をしているように見えるのだが、日本のそれも昭和に出てくる探偵は今の俺よりはましだろうが、かなり貧しい。
昭和でなく平成になるがドラマで有名な浅見◎彦なんかは完全に親のすねかじりだ。
というよりも彼は探偵ですらない。
そもそも、俺はハードボイルドが好きなのだ。
だから、日本の小説はあまり読まなかったのが失敗だった。
日本のハードボイルド小説だと警察官だったり、地方都市のバーの主人だったりだったかな。
もともと俺は、ハードボイルドどころか、探偵や殺人事件などには小説を含めて興味が無かったのだが、いや、そういう世界を知らなかったというのが正解だ。
しかし、都内の中堅大学に入学した時に、現在まで俺に度々仕事を世話してくれる先輩に騙されるように『ハードボイルド研究会』という名のサークルに入れられた。
そこで、俺は遅まきながら目覚めたというか、とにかくそれからの生活はハードボイルド一色と言っていいくらいにハードボイルド本を読みふけった。
その中でも一番好きなのがレイモンド・チャンドラー神様の描くフィリップ・マーロウ先生の世界だ。
とにかくマーロウ先生の放つセリフがかっこいい。
『タフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない』とか『さよならをいうのは、少し死ぬことだ』なんて最高だ。
あの名台詞に俺は魅了された。
俺にこの道に引き込んだ先輩は卒業とともにすっかり足を洗って、今では大手の商社マンだ。
まあ、俺もその先輩から時々回してもらう仕事で食いつないでいるようなものだから先輩のことはあまり悪くは言えないが、しかし、なんだか許せないと今でも思っている。
なんか裏切られた感じがしてならない。
だから、先輩も俺が不憫にでも思ったのか仕事を回してくれるようだが。
それに、この先輩の他にも俺をこの世界に沼らせたのが、この先輩のさらに上の先輩。
下手をするとすべての元凶ともいえるOBがいた。
彼は都内で獣医を開業しているが、俺の通っていた大学の獣医学部の出身だ。
だから、先輩はともかく、このOBは大学を卒業してそのまま家業の獣医を継いだが、商社に勤める先輩とは違い未だにこの世界から卒業してなく、やたらと俺の下に来てはハードボイルド談議に花を咲かして帰る。
俺の仕事の多くがこの先輩も一枚噛んでいるようなことを聞いたことがあるが、それなら納得がいく。
何せ稼ぎのほとんどが、先輩が相手をしている大切な顧客がらみの猫探しになっている。
だから俺の収入のほとんどは、先輩からの仕事で、その稼ぎがあるからどうにか生活ができている。
尤もその先輩から回されてくる仕事も多くは無いが、そのすべてが探偵らしく企業犯罪の捜査だったらかっこよかったのだが、お得意さんの飼い猫の家出捜索だけだ。
それ以外の先輩らが絡まない仕事としては、つい最近では千葉県の限界集落にある村での四半期ごとに村総出で行われる側溝の清掃作業の手伝いなどがある。
これなんかは村の青年会から毎回依頼を受けているのだが、ほとんどボランティアに近い金額でしかない。
何せ、限界集落なので、青年会最年少と言っても60歳になるくらいなのだから、正直日本の将来が心配になるくらいだ。
それでも、その仕事のおかげで色々と紹介もあり、その関係の仕事も多くしている。
その仕事はというと、近所の敬老会の手伝いなどだ。
老人ホームの臨時職員や、独居老人宅での水回りの修理や電球の交換など、今考えているだけでも落ち込んできそうなくらい探偵をしていない。
猫の捜索が辛うじて探偵の仕事って言えなくもないが、う~ん、どうしたものかな。
そんな俺だったが、先週久しぶりに先輩から仕事を依頼された。
それも飼い猫の捜索でなく長野への出張での仕事だ。
俺は張り切って先輩に仕事の内容を聞いたら、長野支店の人から先輩が頼まれた案件で、長野の旧家のお得意さんの接待のような仕事だった。
長野市にあるホテルで開かれる骨董品のオークションに件の人が古い万年筆を出品されるらしく、そのオークションを盛り上げてほしいというのだ。
これがテレビドラマなどでは、旅先で美女と出会い事件が……なんてありそうなものだが、流石に現実はシビアなものだ。
そもそも仕事の内容が、早い話がやらせの依頼だ。
俺が依頼された件だが、古い万年筆を長野で開かれるオークションに参加して来いと言うものだ。
そのまま競り落としても良いらしいのだが、最低でも5万円以上の金額で競り落としてほしいとのことで、俺は着手金として先輩から10万円の入った封筒を受け取っている。
なんでも出展される万年筆の持ち主が長野支店の重要なお客様で、現在進めている大規模開発のキーマンだとかで、その接待の手助になるらしい。
何せ、この人によいしょ?するために、今回オークションに出品する万年筆のレプリカをつくり、開発関係者に配る気の使いようだとか。
オークションで競り落とすようならばその費用も長野支店の人から出されるとかで、指定日に長野に向かってほしいという仕事を受け、俺は新幹線で長野に向かった。
長野駅を降りると商社の人が改札前で俺を待っていた。
俺はそのままホテルに連れられて、ロビーでオークションについての説明を受け、その商社マンからも10万円入りの封筒を預かった。
「そのままオークションで落としてもらっても良いですから。
もし、他の方が5万円以上の金額ならば、無理せずに落とす必要はありませんが。
それに、残りはそのままお持ちください。
なお、このお金は別件での依頼ということで処理したことになりますので、領収書だけはこの場で頂きたいのですが」
そう、やらせの依頼だが、やらせに費用は出せないので、適当な名目で俺にお金が渡された。
当然俺の収入になるが、オークションで使った費用は除かれるが、落とした万年筆は俺のものになるらしい。
そして夕方に開かれたオークションで、わざとらしくならないようにせり上げて6万円で俺が落としてしまった。
別に万年筆を持っていなかったので、良い品を自分用にするのは構わないのだが、俺をアテンドしている長野支店の商社マンは俺にさらに別の封筒を渡してきた。
当然俺も領収書は発行するが、それと同時に商社が販促用の万年筆のレプリカを10本も俺に渡してきた。
「ありがとうございます。
これ、お礼ですのでご笑納ください」
その後、雑談して彼とは別れた。
その日はオークションが開かれたホテルで費用を商社持ちでお泊りして、翌日は善行寺だけでも観光して帰ろうかとしていたら、布引観音に近い懐古園でボロ市のようなバザーが開かれるとの情報を得た。
ネットで検索すると、これがなんと今回は国鉄時代の碓井車両区からの懐中時計などの出品があるとかで、俺は寄ってみることにした。
鉄オタではなかった俺だが、行く先々で珍しいものを仕入れてはネットで売るという副業もしていたこともあり、こういう鉄道関連グッズがお金になることを知っている。
懐古園近くの会場で開かれているバザーは盛況で、俺も目的の懐中時計のセットを入手した。
何せ、俺の懐は近年稀なくらい温かい。
それに鉄道用品は転売ができるのだ。
鉄道員が仕事で使う懐中時計の未使用品が一個3350円で、ひと箱10個入で売り出されていたので、思わずその場で箱買してしまった。
さすがに10個だと裁くのに時間がかかりそうだと後で思ったのだが、もうすでに後の祭りだ。
懐中時計を3350円で10個も入手したと思うと、ま~良いかって感じになった。
出だしから良い買い物をしたと気を良くして他も見ていくと、会場隅っこに『ブ●ックジャックコスプレセット』があるので、思わず覗いてみたら一足違いで売れていた。
その代わりにと店主が進めてきたのが『外科医ギ●ノンなりきりセット』だ。
ブラックジャックは俺でもわかったのだが、外科医ギャ●ンって誰だよ。
俺はその場で調べると、これも昭和かって感じのアメリカドラマのタイトルだった。
『ER救●救命室』ならば俺も知っていたが、それの元祖のようなものらしい。
何だか無理やり勧められて俺はほとんどただのような金額でそれを買ってしまった。
何だかしてやられた感じだったので、そのまま懐古園を散策した後に布引観音まで足を延ばしてお参りをしてからもう一度バザー会場を覗いてみた。
会場はほとんど終わりに近いようで、人も売り物も少なくなっているが、その中で見つけた単行本の漫画本をセットで買って、近くのビジネスホテルにその日は泊った。
まずは俺の名前だが、先にふれたように俺の名前は金田 一(かねだ はじめ)だ。
年齢は一昨年大学を卒業したばかりの23歳。
職業が私立探偵だ。
これも先にふれたが、俺は一人独立して私立探偵業を営んでいる。
よし、大丈夫だ。
俺はおかしくはないようだ。
しかし、この探偵業とういのは、ここ日本では本当に儲からない。
俺の尊敬するフィリップ・マーロウ先生やポアロ様、他には世界中で一番有名な探偵のシャーロックホームズ様のような生活にあこがれたのだが、実際には全く違う生活が待っていた。
俺の顧客でもある御年輩の方々が好きな昭和を代表する探偵の金田一◎助の小説を学生時代に読んでいたならば俺は探偵など目指すことは無かったのにとも思っている。
西洋の探偵は貴族のような生活と言えば大げさになるが、かなり裕福な生活をしているように見えるのだが、日本のそれも昭和に出てくる探偵は今の俺よりはましだろうが、かなり貧しい。
昭和でなく平成になるがドラマで有名な浅見◎彦なんかは完全に親のすねかじりだ。
というよりも彼は探偵ですらない。
そもそも、俺はハードボイルドが好きなのだ。
だから、日本の小説はあまり読まなかったのが失敗だった。
日本のハードボイルド小説だと警察官だったり、地方都市のバーの主人だったりだったかな。
もともと俺は、ハードボイルドどころか、探偵や殺人事件などには小説を含めて興味が無かったのだが、いや、そういう世界を知らなかったというのが正解だ。
しかし、都内の中堅大学に入学した時に、現在まで俺に度々仕事を世話してくれる先輩に騙されるように『ハードボイルド研究会』という名のサークルに入れられた。
そこで、俺は遅まきながら目覚めたというか、とにかくそれからの生活はハードボイルド一色と言っていいくらいにハードボイルド本を読みふけった。
その中でも一番好きなのがレイモンド・チャンドラー神様の描くフィリップ・マーロウ先生の世界だ。
とにかくマーロウ先生の放つセリフがかっこいい。
『タフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない』とか『さよならをいうのは、少し死ぬことだ』なんて最高だ。
あの名台詞に俺は魅了された。
俺にこの道に引き込んだ先輩は卒業とともにすっかり足を洗って、今では大手の商社マンだ。
まあ、俺もその先輩から時々回してもらう仕事で食いつないでいるようなものだから先輩のことはあまり悪くは言えないが、しかし、なんだか許せないと今でも思っている。
なんか裏切られた感じがしてならない。
だから、先輩も俺が不憫にでも思ったのか仕事を回してくれるようだが。
それに、この先輩の他にも俺をこの世界に沼らせたのが、この先輩のさらに上の先輩。
下手をするとすべての元凶ともいえるOBがいた。
彼は都内で獣医を開業しているが、俺の通っていた大学の獣医学部の出身だ。
だから、先輩はともかく、このOBは大学を卒業してそのまま家業の獣医を継いだが、商社に勤める先輩とは違い未だにこの世界から卒業してなく、やたらと俺の下に来てはハードボイルド談議に花を咲かして帰る。
俺の仕事の多くがこの先輩も一枚噛んでいるようなことを聞いたことがあるが、それなら納得がいく。
何せ稼ぎのほとんどが、先輩が相手をしている大切な顧客がらみの猫探しになっている。
だから俺の収入のほとんどは、先輩からの仕事で、その稼ぎがあるからどうにか生活ができている。
尤もその先輩から回されてくる仕事も多くは無いが、そのすべてが探偵らしく企業犯罪の捜査だったらかっこよかったのだが、お得意さんの飼い猫の家出捜索だけだ。
それ以外の先輩らが絡まない仕事としては、つい最近では千葉県の限界集落にある村での四半期ごとに村総出で行われる側溝の清掃作業の手伝いなどがある。
これなんかは村の青年会から毎回依頼を受けているのだが、ほとんどボランティアに近い金額でしかない。
何せ、限界集落なので、青年会最年少と言っても60歳になるくらいなのだから、正直日本の将来が心配になるくらいだ。
それでも、その仕事のおかげで色々と紹介もあり、その関係の仕事も多くしている。
その仕事はというと、近所の敬老会の手伝いなどだ。
老人ホームの臨時職員や、独居老人宅での水回りの修理や電球の交換など、今考えているだけでも落ち込んできそうなくらい探偵をしていない。
猫の捜索が辛うじて探偵の仕事って言えなくもないが、う~ん、どうしたものかな。
そんな俺だったが、先週久しぶりに先輩から仕事を依頼された。
それも飼い猫の捜索でなく長野への出張での仕事だ。
俺は張り切って先輩に仕事の内容を聞いたら、長野支店の人から先輩が頼まれた案件で、長野の旧家のお得意さんの接待のような仕事だった。
長野市にあるホテルで開かれる骨董品のオークションに件の人が古い万年筆を出品されるらしく、そのオークションを盛り上げてほしいというのだ。
これがテレビドラマなどでは、旅先で美女と出会い事件が……なんてありそうなものだが、流石に現実はシビアなものだ。
そもそも仕事の内容が、早い話がやらせの依頼だ。
俺が依頼された件だが、古い万年筆を長野で開かれるオークションに参加して来いと言うものだ。
そのまま競り落としても良いらしいのだが、最低でも5万円以上の金額で競り落としてほしいとのことで、俺は着手金として先輩から10万円の入った封筒を受け取っている。
なんでも出展される万年筆の持ち主が長野支店の重要なお客様で、現在進めている大規模開発のキーマンだとかで、その接待の手助になるらしい。
何せ、この人によいしょ?するために、今回オークションに出品する万年筆のレプリカをつくり、開発関係者に配る気の使いようだとか。
オークションで競り落とすようならばその費用も長野支店の人から出されるとかで、指定日に長野に向かってほしいという仕事を受け、俺は新幹線で長野に向かった。
長野駅を降りると商社の人が改札前で俺を待っていた。
俺はそのままホテルに連れられて、ロビーでオークションについての説明を受け、その商社マンからも10万円入りの封筒を預かった。
「そのままオークションで落としてもらっても良いですから。
もし、他の方が5万円以上の金額ならば、無理せずに落とす必要はありませんが。
それに、残りはそのままお持ちください。
なお、このお金は別件での依頼ということで処理したことになりますので、領収書だけはこの場で頂きたいのですが」
そう、やらせの依頼だが、やらせに費用は出せないので、適当な名目で俺にお金が渡された。
当然俺の収入になるが、オークションで使った費用は除かれるが、落とした万年筆は俺のものになるらしい。
そして夕方に開かれたオークションで、わざとらしくならないようにせり上げて6万円で俺が落としてしまった。
別に万年筆を持っていなかったので、良い品を自分用にするのは構わないのだが、俺をアテンドしている長野支店の商社マンは俺にさらに別の封筒を渡してきた。
当然俺も領収書は発行するが、それと同時に商社が販促用の万年筆のレプリカを10本も俺に渡してきた。
「ありがとうございます。
これ、お礼ですのでご笑納ください」
その後、雑談して彼とは別れた。
その日はオークションが開かれたホテルで費用を商社持ちでお泊りして、翌日は善行寺だけでも観光して帰ろうかとしていたら、布引観音に近い懐古園でボロ市のようなバザーが開かれるとの情報を得た。
ネットで検索すると、これがなんと今回は国鉄時代の碓井車両区からの懐中時計などの出品があるとかで、俺は寄ってみることにした。
鉄オタではなかった俺だが、行く先々で珍しいものを仕入れてはネットで売るという副業もしていたこともあり、こういう鉄道関連グッズがお金になることを知っている。
懐古園近くの会場で開かれているバザーは盛況で、俺も目的の懐中時計のセットを入手した。
何せ、俺の懐は近年稀なくらい温かい。
それに鉄道用品は転売ができるのだ。
鉄道員が仕事で使う懐中時計の未使用品が一個3350円で、ひと箱10個入で売り出されていたので、思わずその場で箱買してしまった。
さすがに10個だと裁くのに時間がかかりそうだと後で思ったのだが、もうすでに後の祭りだ。
懐中時計を3350円で10個も入手したと思うと、ま~良いかって感じになった。
出だしから良い買い物をしたと気を良くして他も見ていくと、会場隅っこに『ブ●ックジャックコスプレセット』があるので、思わず覗いてみたら一足違いで売れていた。
その代わりにと店主が進めてきたのが『外科医ギ●ノンなりきりセット』だ。
ブラックジャックは俺でもわかったのだが、外科医ギャ●ンって誰だよ。
俺はその場で調べると、これも昭和かって感じのアメリカドラマのタイトルだった。
『ER救●救命室』ならば俺も知っていたが、それの元祖のようなものらしい。
何だか無理やり勧められて俺はほとんどただのような金額でそれを買ってしまった。
何だかしてやられた感じだったので、そのまま懐古園を散策した後に布引観音まで足を延ばしてお参りをしてからもう一度バザー会場を覗いてみた。
会場はほとんど終わりに近いようで、人も売り物も少なくなっているが、その中で見つけた単行本の漫画本をセットで買って、近くのビジネスホテルにその日は泊った。
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