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第一章 転移、そして自立
第二十二話 村つくりの計画
しおりを挟む翌日からは、本格的に中長期に備えた方策を考えて行動していこうと決心した。
まず、村をこのあたりに作っていき、集団としての力をつけていこうと考えている。
まだ、試作品の塩が作れていないが、塩作りに関して、昨日から試作に取り掛かっている。
目処がつき次第直ぐに次に移れるように、というより、いつまでも宿坊暮らしもどうかなと、大人が少ないが、全くいないわけではない。
ここに来ている人は俺らも含め皆、生きることが最優先で、それ以外については考えることができなかったが、炭の生産と販売に当面は目処がつき、今は、人手の補強もあって、生産の拡大に勤めている。
そのため、収益も徐々にではあるが増えてきており、生活に少しずつ余裕が出てきた。
それでなくとも、少しの余裕を見て直ぐに教育に力を注いでいたのだから、それらが落ち着く来年あたりからは、本格的にいろいろ出来そうだ。
その前に、今いる大人たちに、そろそろ家庭を持ってもらいたいのだ。
幾人かの大人たちはいい関係になりそうなのがいるが、まだ新参の身の為か、遠慮しているようだ。
ここいらで、そろそろ身を固められるように村をこのあたりに作っていきたいのだ。
家をつくる材料は林の木がたくさんあるが、そのままでは浜辺に作った掘っ立て小屋しかできない。
そろそろ木材の生産をしていこう。
前回に浜に小屋を作ってもらった際に協力してくれたメンバーを連れて、林に入り、俺は説明した。
寺のすぐそば門前に当たるところの木を伐採してもらい、まっすぐである程度太ささのある木を日のあたる場所に積み上げ、干してもらう。
それ以外の木については、適当な長さに切りそろえ、炭焼きの小屋まで運んでもらった。
これは一石二鳥であった。
炭焼きの担当は、火の管理から、材料の伐採にと収集にかなりの手が掛かっていた。
それの一部を木材の担当者が受け持ってもらった格好だ。
直ぐに炭の増産が始まった。
これにあたっていた人も少し減らせる。
減らした人を連れて、俺は浜に来た。
浜では、葵と幸が二人して協力しながら、海水の塩分濃度を上げるために作った装置に海水を入れていた。
俺は連れてきた人たちに一通り説明を始め、葵たちの手伝いに当たらせた。
二人ばかりの男の子を連れて、手頃な石を探させ、小屋の前に新たな竈作りを始めた。
直に十分な濃度の海水が準備できそうなので、次の準備にかかった。
はじめは実験に使った素焼きの深皿を使って塩を作り始める。
それが成功したらならば、より大規模に始めて、商売にしていく計画だ。
直ぐに竈ができた。
俺は悩んだ、今作っている濃度の濃い海水で、もう一度実験をするかどうかだ。葵たちの協力で、丸二日は海水を蒸発させていた。
これが夏のさなかだったら十分だろうとは思ったが、まだ海水濃度が足りそうにない。
今日は、我慢して今の作業を続けてもらい、また、男の子を連れて、今度は竹林に入っていった。
今ある作業装置をもう一つ、今度はもう少し大きめに作るための竹を集めた。
一度作っているので、大人の力を借りずに俺らだけでも作れる。
早速作業を始め、それができた頃には夕方になっていた。
今日の作業を終え、みんなを連れて寺に戻っていった。
寺の前では、まだ珊さんたちが作業をしていた。
大きい木は二人掛かりでもなかなか切れない。
大鋸(おが_2人がかりで使うノコギリ)を使っていたが、太さが1mを超えるとなかなか切れないし、それ以下でも効率が悪そうだった。
そろそろ斧が必要になってきている。
明日にでも桑名あたりまで行って斧を探してこよう。
出来合いの品はこの時代には中古しかありえない。
新品は鍛冶職人に頼むしかないが、子供がお願いしても作ってもらえない。
ここでも見た目の子供が俺の足かせとなっている。
非常にもどかしいが、こればかりは受け入れいるしかない。
中古の斧がなければ、上人様に紹介してもらうしかない。
とりあえず、あすは買い物だ。
当面の木材作りはゆっくりとしたスピードにならざるを得ない。
すぐにでも必要なわけじゃないので、慌てるつもりはないが、やりたいことがたくさんあるし、早く家を作り、大人たちに所帯を持ってもらいたいのだ。
既に最年長者の与作さんの独身は、かなり遅い部類だ。
女性の年についてはなかなかコメントをつけにくいが、女性の最年長者はかなりの行き遅れと言われても不思議のない年齢になっている。
ま~、戦乱の絶えないこの時代だ、後家も多くいるし、許嫁が戦死などもたくさんあって、割と珍しくないようだったが、少しずつ余裕が出てきたので、少しでも幸せな家庭を増やして行きたい。
幸せなら間違っても一揆には参加しないだろう。
うちらだけで村の原型が作れたのならば、今度は棄民を受け入れることができるだろう。
できれば長島に流れ着いてくる棄民の多くを受け入れ、一揆の温床になる人を減らしていきたい。
当面の目標として、門前にベースとなる家を作ったら、生産の拠点となる浜にも家を作り、塩や干物作り、将来的には漁業関係者の集落としていきたい。
たくさんの木材が必要だ。
しかし、林を禿山にようにはできない。
今は門前の前を広くするから全部切ってもらっているが、それが済んだら、間引きのようにある程度の間隔を置いて木を切っていき、また、植林もするようにしていくつもりだ。
今ある林は、俺らの存在を隠してくれる防波堤の役割をも果たしている。
今度も、できる限り俺らに接触する人間をコントロールしていきたいので、力をつけるまでは、隠れるように生活を続けていくことになるだろう。
浜の集落はすぐに見つかるが、それすら奥に目を向けさせない役割をも持ってもらう。
その夜に、今後の中長期の計画について、玄奘様や張さん珊さんに本堂で集まってもらい説明をした。
秋には、芋や椿やお茶などの実の収穫もできるので、どんどん商いできる産物の種類が増えていく。
その頃までには門前と浜に一、二軒の家は作っていきたい。
近い将来には、川原周辺にも炭焼きの集落を、以前住んでいた小屋のあたりにも木材関連の集落を作って、道でつないでいきたいという夢を持っている。
寺周辺を地元の侍勢力から隠しておきたい。
浜から小屋を通って川原の窯のあたりまで道を作れば、関心はそこに集まるはずである。寺までの道は最後まで作らず、獣道のままとし、侍に難癖をつけられたら寺に逃げ込める環境を作っていくのが俺の防衛構想だ。
だから、今後は農業関係を除き、生産拠点は寺から少し離れた場所に作っていく。
はじめは寺の周辺に生産拠点を集めて効率化を図ろうと考えていたが、平和な時代ならばともかく、直ぐに戦乱に巻き込まれるのがわかっているのだから、少しでも安全を考えていく。
そこまで隠し通せるかわからないが、いざという時に逃げやすくするうえでも、財産関係は寺に集めておき、生産拠点周辺で分かれての生活を模索していくことになるだろう。
まだまだ先の話ではあるが、夢を含めて話をしていくと、張さんが、
「それじゃ~、寺の門前の整備は最後でいいわね。
今やる必要がないわよ。
整備するだけで見つかりやすくもなるわ。
それより、浜の周辺の家を先に作ったほうがいいわね。
干物だったっけ、それを作るのにも人手はいるから、それに浜からなら門前や桑名にも行くのも容易いわ。」 と意見をもらった。
まさしくその通りだった。
俺が最初に考えていた効率的な運用がまだ残っていたようだったので、木材の準備は門前の周辺の木を切り倒す方向で進めようかと考えたが、それもやめ、明日は勉強会だった、あさってから、浜の周辺に軸足をずらそう。
そのほうが浜での作業も安心できる。
俺は張さんの意見に賛成の意を伝え、計画を修正した。
今日切り倒した木はそのままそこで干してもらい、それ以降は浜周辺に集めるようにしていく。
徐々にではあるが、浜と川原との間にも道を整備していき、川原から炭を浜に運べるようにしていくことも確認した。
川原の窯で作った炭で売り物にならない炭を使って塩を作るのは最初からの計画だった。
村作りの青写真ができてきた。
明日の勉強会でみんなに説明をし、村を本格的に作っていくことにした。
塩もあす辺りから作っていくことになるし、やることは多いが、やることがはっきりわかっているので、ものすごく気分的に楽になってきている。
玄奘様も、もう少しここにいて下さるようだが、連れてきた後発組も馴染むのが殊のほか早くて、考えていたよりも早くまた旅に出れそうだと言っておられた。
もっとも、最初は願証寺の上人様のところに行くそうだが、そのときは俺もついていこうと考えていた。
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