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2.オズ・ルルファ
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守護者。
それは正しく人々の希望である。
1人1つずつ備えた超常の力と人間離れした身体能力を以て幾度の戦場を越え、魔を退け、人々を救うその姿は正しく英雄そのものであった。
守護者がどうやって生まれてくるのかは未だはっきりと分かっておらず、守護者出現から1000年もの月日が経った今でも守護者という存在の多くは謎に包まれている。
たが1つだけ分かっていることがあった。
それは守護者とは先天的なものであるということである。
守護者足り得るものは産まれたその瞬間から才覚を発揮し、多くの者は生後12ヶ月未満で言葉を理解し話すし、歩きもする。ごく少数の者も生後18ヶ月までにはその域に達している。
そしてこの1000年先天的に守護者が生まれど、後天的に守護者が生まれることはなかったのである。
──ただ1人を除いては。
世界で唯一後天的な守護者と認められた少年がいる。
年は15。名をオズ・ルルファという。
身長体重容姿普通の黒髪黒目のいたって普通の少年である。
親に捨てられ、森で森妖精やユニコーンなどの幻想種と呼ばれる生物たちに育てられた少年は5つのときに初めて人間の街の空気を吸った。森で迷い、餓死寸前にまで追い詰められていた若い修道女を助けたのがきっかけであった。
シスターにつれられ、初めてみるまったく新しい世界に少年の胸は躍った。
少年の思いとシスターの説得により、6つの頃から少年は街はずれの古びた教会でシスターとその娘、他数人の孤児との生活を始めた。
少年の日々は充実していた。
教会の裏にある小さな畑を皆で世話をして、ときには水遊びなどをしてシスターに叱られたり、楽しい毎日であった。
しかし、そんな安寧の日々は脆く儚く突然に消え去ることになる。
少年の7つの誕生日(少年が森で拾われた日)の出来事だった。
早朝、日が昇り始めたばかりのころ毎日恒例の神への祈りを捧げていたところ、突然右の手の甲が熱を持ち始めたのだ。
それに気づいた少年がそこに意識を向けた瞬間、目を開けていられないほどの光を放ちだすそれは、治まった頃には、右の手の甲に守護者の証である紋章が刻む形でその答えを示した。1本の長槍を挟むようにして2人の重騎士が胸の前で剣を構え、その後ろに八芒星が描かれた紋章は熱と光の放出を止め、バチッという音とともに右手の甲に固定化される。
紋章は守護者一人ひとり異なるために初めは怪しまれながらも落書き程度にしか思っていなかったし、思われていた。
だが、その日の夜、眠る直前になって少年は自覚する。これは守護者の証であると。
どんどんと冴えていく頭に次々と知らないはずの知識が流れ込み、精神が急速に成長し、体に未知の力が宿ったことを本能で理解したのだ。
少年の能力──それは『伝承』の権能。伝承に登場する修羅神仏や英雄の力をその身に宿す万能の力であった。
既存の守護者の全てを過去の物とする超常の存在がいまこの世界に産み落とされた。
それは正しく人々の希望である。
1人1つずつ備えた超常の力と人間離れした身体能力を以て幾度の戦場を越え、魔を退け、人々を救うその姿は正しく英雄そのものであった。
守護者がどうやって生まれてくるのかは未だはっきりと分かっておらず、守護者出現から1000年もの月日が経った今でも守護者という存在の多くは謎に包まれている。
たが1つだけ分かっていることがあった。
それは守護者とは先天的なものであるということである。
守護者足り得るものは産まれたその瞬間から才覚を発揮し、多くの者は生後12ヶ月未満で言葉を理解し話すし、歩きもする。ごく少数の者も生後18ヶ月までにはその域に達している。
そしてこの1000年先天的に守護者が生まれど、後天的に守護者が生まれることはなかったのである。
──ただ1人を除いては。
世界で唯一後天的な守護者と認められた少年がいる。
年は15。名をオズ・ルルファという。
身長体重容姿普通の黒髪黒目のいたって普通の少年である。
親に捨てられ、森で森妖精やユニコーンなどの幻想種と呼ばれる生物たちに育てられた少年は5つのときに初めて人間の街の空気を吸った。森で迷い、餓死寸前にまで追い詰められていた若い修道女を助けたのがきっかけであった。
シスターにつれられ、初めてみるまったく新しい世界に少年の胸は躍った。
少年の思いとシスターの説得により、6つの頃から少年は街はずれの古びた教会でシスターとその娘、他数人の孤児との生活を始めた。
少年の日々は充実していた。
教会の裏にある小さな畑を皆で世話をして、ときには水遊びなどをしてシスターに叱られたり、楽しい毎日であった。
しかし、そんな安寧の日々は脆く儚く突然に消え去ることになる。
少年の7つの誕生日(少年が森で拾われた日)の出来事だった。
早朝、日が昇り始めたばかりのころ毎日恒例の神への祈りを捧げていたところ、突然右の手の甲が熱を持ち始めたのだ。
それに気づいた少年がそこに意識を向けた瞬間、目を開けていられないほどの光を放ちだすそれは、治まった頃には、右の手の甲に守護者の証である紋章が刻む形でその答えを示した。1本の長槍を挟むようにして2人の重騎士が胸の前で剣を構え、その後ろに八芒星が描かれた紋章は熱と光の放出を止め、バチッという音とともに右手の甲に固定化される。
紋章は守護者一人ひとり異なるために初めは怪しまれながらも落書き程度にしか思っていなかったし、思われていた。
だが、その日の夜、眠る直前になって少年は自覚する。これは守護者の証であると。
どんどんと冴えていく頭に次々と知らないはずの知識が流れ込み、精神が急速に成長し、体に未知の力が宿ったことを本能で理解したのだ。
少年の能力──それは『伝承』の権能。伝承に登場する修羅神仏や英雄の力をその身に宿す万能の力であった。
既存の守護者の全てを過去の物とする超常の存在がいまこの世界に産み落とされた。
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