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第19話 黒柳の夢
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昨日は一日出かけたため、僕は昼食を取りがてら、農園の様子を見ていた。
「なんかバレちゃったね」
「あれも君が、手を回したんじゃないのか?」
当たり前のように、黒柳も屋上に来ていた。
黒柳はクラスメイトとお昼を食べてから、すぐにやってきたようだ。
クラスのみんなに今の状況を知らせて、僕にプレッシャーをかけて、武田の告白を断りにくくさせるつもりなのかもしれない。
もしもそうならば、勇気を出してくれた彼女の告白をさらし者にしたことになる。彼女がいなかったのと、告白の話が出なかったとはいえ、ひと言文句を言わなければ気が済まない。
しかし、彼女は不本意そうな顔をして反論した。
「そんな事しないわよ。まさか、見られてたなんて、私も知らなかったわよ」
「でも、君は僕達のことを見てたんだよね。全く気が付かなかったんだけど、どうやってたんだ?」
「そりゃ、魔女ですから、ホウキに乗って、空の上から見てたのよ」
そう言って、彼女は備品のホウキに乗って、おどけて見せた。
高校生にもなって、子供みたいな事をしてと思ったが、今時のホウキでも上手く空を飛べそうなほど似合っていた。
クラスにいるときは、まるでお嬢様のようにおとなしい彼女だが、二人で屋上にいるときは、子供っぽい仕草を見せることがある。そんな姿を見る度に、こちらの姿が元々の彼女の姿では無いのかと思ってしまう。
僕は目の前の美少女を見て、ふと考えた。
なぜ彼女は恋の魔女を目指しているのだろうか?
人を恋の手助けをするよりも、自分が恋をすれば良いのにと思ってしまう。僕とは違って恋心という物を知っているだろう。そう言えば、そもそも彼女は、本当に僕達と同じ年なのだろうか? 魔女というのだから、見た目そのままの年でないのだろうか。すでに初恋はもちろん、恋愛の酸いも甘いも知っているのかも知れない。
大人の恋も。
そうでなければ、人の恋の手助けなどできないだろう。
そして、彼女のことを好きだというの男として普通だろう。現に他のクラスメイトが夏休み前には、告白をしたいなんて話しているのを聞く。しかし、彼女は魔女の試験に集中している。試験さえ終わってしまえば、彼女は彼女の恋を始めるのかも知れない。いや、それ以前に……
「なあ、黒柳は試験が終わったら、この街から出て行くのか?」
「なに、私に出て行って欲しいの? ああ、私がふたりの邪魔をするとでも思ってる? 試験が終わってもここにいるつもりだけれど、安心して。二人の邪魔なんてしないから。一人前になったら、私はバリバリ魔女の仕事をするんだから」
なんで僕が告白を受け入れる前提でいるのだろうか? そして、彼女の言葉に、一つの疑問が浮かんだ。
「そう言えば、魔女の仕事って、具体的に何をするんだ?」
「何を今更。恋の手助けに決まってるじゃない」
「それは分かってるよ。仕事、何だろう。だったら、それでどうやってお金を儲けるんだ?」
「ああ、そのこと? 簡単よ。恋の魔女の表の仕事は、恋占いや恋愛グッズの販売よ。後はコーディネートアドバイザーとかね。スゴイ人になると雑誌なんかに、『今、男の子をメロメロにするコーディネート』とかやってるわよ」
「ちょっと待て、あの良く街にいる占い師とか本物の魔女だって言うのか?」
「まさか~そんな事あるわけないわよ。ごく一部よ、ごく一部。ただ、よく当たるって評判の人は、もしかしたらね……」
そう言って、彼女はいたずらっ子のように笑った。
試験があるというのなら、それなりの人数がいてもおかしくない。しかし、一般的に知られていないだろうし、恐らく知られてはいけないのだろう。それなのになぜ黒柳は恋の魔女なんて存在を知り、なろうと思ったのか僕は興味が湧いた。
「黒柳はなんで、恋の魔女になりたいなんて思ったんだ?」
「だって、私のママが恋の魔女だからよ。小さい頃から、大きくなったらママみたいな魔女になるって決めてたの」
自分の親が魔女ならば、その存在を疑う必要が無いし、魔女になる方法も悩まなくて済む。小さいときから魔女になるための修行をしていたのかも知れない。しかし、その試験の対象が、僕のような恋愛感情のない人間に当たるなんて、黒柳に同情してしまう。
なんとか、ふたりにとって良い方法はないだろうかと、僕が頭を悩ませていると、昼休みが終わるチャイムが聞こえてきた。
「なんかバレちゃったね」
「あれも君が、手を回したんじゃないのか?」
当たり前のように、黒柳も屋上に来ていた。
黒柳はクラスメイトとお昼を食べてから、すぐにやってきたようだ。
クラスのみんなに今の状況を知らせて、僕にプレッシャーをかけて、武田の告白を断りにくくさせるつもりなのかもしれない。
もしもそうならば、勇気を出してくれた彼女の告白をさらし者にしたことになる。彼女がいなかったのと、告白の話が出なかったとはいえ、ひと言文句を言わなければ気が済まない。
しかし、彼女は不本意そうな顔をして反論した。
「そんな事しないわよ。まさか、見られてたなんて、私も知らなかったわよ」
「でも、君は僕達のことを見てたんだよね。全く気が付かなかったんだけど、どうやってたんだ?」
「そりゃ、魔女ですから、ホウキに乗って、空の上から見てたのよ」
そう言って、彼女は備品のホウキに乗って、おどけて見せた。
高校生にもなって、子供みたいな事をしてと思ったが、今時のホウキでも上手く空を飛べそうなほど似合っていた。
クラスにいるときは、まるでお嬢様のようにおとなしい彼女だが、二人で屋上にいるときは、子供っぽい仕草を見せることがある。そんな姿を見る度に、こちらの姿が元々の彼女の姿では無いのかと思ってしまう。
僕は目の前の美少女を見て、ふと考えた。
なぜ彼女は恋の魔女を目指しているのだろうか?
人を恋の手助けをするよりも、自分が恋をすれば良いのにと思ってしまう。僕とは違って恋心という物を知っているだろう。そう言えば、そもそも彼女は、本当に僕達と同じ年なのだろうか? 魔女というのだから、見た目そのままの年でないのだろうか。すでに初恋はもちろん、恋愛の酸いも甘いも知っているのかも知れない。
大人の恋も。
そうでなければ、人の恋の手助けなどできないだろう。
そして、彼女のことを好きだというの男として普通だろう。現に他のクラスメイトが夏休み前には、告白をしたいなんて話しているのを聞く。しかし、彼女は魔女の試験に集中している。試験さえ終わってしまえば、彼女は彼女の恋を始めるのかも知れない。いや、それ以前に……
「なあ、黒柳は試験が終わったら、この街から出て行くのか?」
「なに、私に出て行って欲しいの? ああ、私がふたりの邪魔をするとでも思ってる? 試験が終わってもここにいるつもりだけれど、安心して。二人の邪魔なんてしないから。一人前になったら、私はバリバリ魔女の仕事をするんだから」
なんで僕が告白を受け入れる前提でいるのだろうか? そして、彼女の言葉に、一つの疑問が浮かんだ。
「そう言えば、魔女の仕事って、具体的に何をするんだ?」
「何を今更。恋の手助けに決まってるじゃない」
「それは分かってるよ。仕事、何だろう。だったら、それでどうやってお金を儲けるんだ?」
「ああ、そのこと? 簡単よ。恋の魔女の表の仕事は、恋占いや恋愛グッズの販売よ。後はコーディネートアドバイザーとかね。スゴイ人になると雑誌なんかに、『今、男の子をメロメロにするコーディネート』とかやってるわよ」
「ちょっと待て、あの良く街にいる占い師とか本物の魔女だって言うのか?」
「まさか~そんな事あるわけないわよ。ごく一部よ、ごく一部。ただ、よく当たるって評判の人は、もしかしたらね……」
そう言って、彼女はいたずらっ子のように笑った。
試験があるというのなら、それなりの人数がいてもおかしくない。しかし、一般的に知られていないだろうし、恐らく知られてはいけないのだろう。それなのになぜ黒柳は恋の魔女なんて存在を知り、なろうと思ったのか僕は興味が湧いた。
「黒柳はなんで、恋の魔女になりたいなんて思ったんだ?」
「だって、私のママが恋の魔女だからよ。小さい頃から、大きくなったらママみたいな魔女になるって決めてたの」
自分の親が魔女ならば、その存在を疑う必要が無いし、魔女になる方法も悩まなくて済む。小さいときから魔女になるための修行をしていたのかも知れない。しかし、その試験の対象が、僕のような恋愛感情のない人間に当たるなんて、黒柳に同情してしまう。
なんとか、ふたりにとって良い方法はないだろうかと、僕が頭を悩ませていると、昼休みが終わるチャイムが聞こえてきた。
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