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第44話 アマンダとの約束

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 こうして、プリマ教会による悪魔召喚事件は神父三人の死と教会周辺を破壊しただけで終わった。
 フリートの秘宝は、偉大な大魔法使いイ・フリートのもとへ無事に戻され、とりあえず火山の噴火という最悪の結果は免れた。
 ガドランド、クリス、ロレンツの魔法使い組は一連の騒動のお詫びとして、火山制御システムの調整を手伝うことになり、街からイ・フリート研究所までの転移魔法のキーを手に入れた。
 騒乱の一夜が明け、アマンダは子供たちを連れて、エルフの村へと帰ることになった。

「ガドランドさん、皆さん本当にありがとうございました」

 美しく光り輝く真紅の髪をなびかせて頭を下げる。その後ろには四人のかわいい子供が、ガドランドを見て怯えていた。いつもの光景にガドランドは極力刺激をしないようにする。

「お、おじさんたち……ぼくたちを助けてくれて……ありがとう……ございます」

 奴隷として売られていたエルフの子供の内、唯一の男の子が、勇気を出して前に出てお礼を言う。
 ほほに刀傷のある坊主頭の目つきの悪い男は、男の子の前に歩み寄ってしゃがみこみ、目線の高さを合わせると、にっこりと笑った。

「よく頑張ったな。村に帰っても元気でな」

 その無骨で大きな手は金色の頭をやさしく、暖かかく撫でる。

「はい! おじさんもその手、大丈夫?」

 ハイポーションを染みこませたガーゼを付け、包帯でしっかりと固定された左手を見た男の子は心配そうな顔で尋ねる。あのあと、クリスのありったけの回復魔法とポーションをつぎ込んだが、完全に治るには時間がかかりそうだった。

「ああ、君たちが助かったなら、おじさんの腕一本くらい安いもんだよ」

 クマのような男の笑顔につられて、男の子もにっこりと笑う。

「そろそろ、出ますよ! 乗られる方はお早めにー」

 エルフの村の近くまで行く乗合馬車が、アマンダたちを呼ぶ。

「アマンダさん、街に戻ってきたら、一緒に食事にでも行きませんか?」

 ガドランドは勇気を振り絞って、美しいエルフの女性を誘った。
 その声に振り向いた女性の大きく気の強そうな瞳は、嬉しそうに目尻がさがり、それでいてどこか悲しげだった。
 ほんの一瞬その視線は四人の弟子たちに向けたあと、恥ずかしそうに真っ赤になっているガドランドを真っすぐ見て答えた。

「はい、喜んで」
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