みぱぱのお仕事海外旅行記

三原みぱぱ

文字の大きさ
12 / 38

アルジェリア

しおりを挟む
 アルジェリア
 北アフリカ。サッカーが強いようですがそれ以外、イマイチよく分からない国。

~*~*~

「ちょっと、アルジェリアに行ってくれ」
「良いですけど、アルジェリアって北アフリカですよね。どこ経由ですか?」

 イタリア来い、イタリア来い!  以前、フランス経由で行った上、同僚がイタリア経由でリビアに行って、イタリアの良さを聞かされています。『ARIA』や『王様の仕立屋』で勝手なイタリアブームになっているみぱぱは心の中で祈っていました。

「あ!? フランス経由だよ。みぱぱは以前もパリ経由で行ったから慣れてて良いだろう」

 おいおい、上司よ。あんたは何も分かってないよ。分かってない! そんなことで部下の心をつかめると思うなよ。頑張れ管理職!

「そうですね。分かりました」

 みぱぱはにっこり笑って了承しました。

「ああ、それから今回はS社の人と一緒に行ってもらうから」

 S社の古村さんと成田空港で合流して飛行機に乗ります。このあたりは『フランス トランジット アルジェリア往路』を読んでください。
 パリを経由して、アルジェリアの現場に入りました。
 現場に入るなり、アルジェリア軍の鬼軍曹が待っていました。

「よく来たな、ひょっこども! これから私に話しかけるときは最初と最後にサーを付けろ。いいな!」
「サー! イエス、サー!」
「アルジェリアは危険な土地だ! テロリストがいる。お前達日本人を誘拐して身代金を要求してくる。それを防ぐために俺たち特攻野郎Aチームがいる。いいな!」
「サー! イエス、サー! ってこんな砂漠しかないところにテロリストが出るんですか?」

 みぱぱは飛行機から見た地形を思い出していた。
 見渡す限りの砂漠に一本の道路。
 こんな所に来るよりも街中の方にいるんじゃないだろうか?

「俺たちがいるからそう簡単には襲ってこない。しかし、備えあれば憂い無し。よし! 今から走るぞ」
「サー! イエス、サー!」

 みぱぱ達は教官と一緒に走り始めた。

「ファミコンウォーズがで~たぞ~!」
「ファミコンウォーズがで~たぞ~!」
「……」
「こいつは、どえらいシミュレーション!」
「こいつは、どえらいシミュレーション!」
「……」
「のめり込める!」
「のめり込める!」
「……」
「のめり込める!」
「のめり込める!」
「……」
「かぁちゃん達には内緒だぞ!」
「かぁちゃん達には内緒だぞ!」
「ちょっと、待つっス。なんっスか、そのかけ声は!?」

 一緒に走っていた古村さんが急に叫び声を上げた。

「え!? 何って、軍隊式で走る時はファミコンウォーズの歌を歌うのが全世界共通だろう?」
「なんっスか、そのファミコンウォーズって」
「……え!?」
「……え!?」

 二十代の古村さんにはファミコンウォーズが分からないようです。世の中は広いと思い知らされたみぱぱでした。

 キャンプから現場まで約2キロメートルくらいですが、みんな、数台のバスで移動します。その際、必ずアーミーエスコートが無いとバスは出発しません。アーミーエスコートとは軍隊がバスの一団の前後を護衛する事を指します。
 朝、キャンプから現場に移動し、お昼にキャンプに帰ってきます。お昼ご飯を食べて、また、現場に行きます。
 その移動の全てが軍隊の護衛付きです。軍隊がいないと移動も出来ません。
 これだけ聞くと非常に危険なように思えますが、そもそも道路に車があまり通っていません。
 それ以外は現場関係者しかいません。
 本当に軍隊なんかいるのかな? と不思議に思うほど平和でした。
 しかし、そんな平和はすぐに崩れました。
 いつものようにお昼ご飯が終わって現場に戻っていると、そこには誰もいません。
 みぱぱは嫌な予感がしました。
 現地の人のまとめ役に電話をします。

 プルプルプル、エルピー、プル。

「おーい、ジョージか? なんで誰も現場にいないの? 午後から休みだったっけ?」
「U・S・A!」
「は!?」

 ジョージはいきなり、カーモンベイビーのU・S・Aと叫びました。
 なんでここにアメリカが出てくるんだ? みぱぱはジョージの言葉を待ちます

「アルジェリア・バーサス・USA!」

 アルジェリア対アメリカ!?
 バーサスと言うことはアルジェリアとアメリカが戦う!? 戦争? アルジェリアってそんなにアメリカと仲が悪かったのか?
 国外避難は可能なのであろうか?
 そんなみぱぱの考えを、粉々に砕くジョージの言葉が続きます。

「ワールドカップ! アルジェリア・バーサス・USA!」

 あ~、そう言えばサッカーのワールドカップ予選やってたな。アルジェリアとアメリカで勝った方が、本戦出場だったな。アルジェリアにとって、世紀の一戦って奴だな。ある意味、戦争か~。

「オッケー! 終わったら帰ってきてね」
「サンキュー!」

 最低でも90分はヒマになりました。恐らくいろいろあって最低でも2時間は帰ってこないだろう。
 キャンプに戻ってゆっくりしたいところですが、バスが出ない限り帰れません。
 仕方が無いので、人気の無い現場をぐるぐると散歩をして時間を潰すしかなかったみぱぱでした。
 いつもの人の声や車、重機でうるさい現場は、誰もいない静かな砂漠。
 こうなると据え付け途中の機械達は、まるで廃墟のようでした。
 実はみぱぱはこういう風景が好きなのです。
 昔、観光地化される前の長崎市の軍艦島に行ったときも、その廃墟のわくわくしていました。
 そんなことをしていると、夕方になり、ジョージを初めアルジェリアの人々が帰ってきました。肩を落として。

「ジョージ、残念だったな。今日は仕事にならないだろうから、明日からまた頑張ろう」
「サンキュー、みぱぱ」

 そしてジョージの涙はタクラマカン砂漠に吸い込まれていったのだった。
 そんなサッカー大好きアルジェリア人ですが、意外と真面目に仕事をしてくれました。
 おかげで、特に危険なこともなく、仕事は順調に終わり、みぱぱはアルジェリアを発つことになりました。

「古村さんは帰らないんですか?」

 日本から一緒に来た古村さんに声をかけました。

「ボクはまだ帰れないっス。ファミコンウォーズの歌を完璧に歌えないと帰れないみたいんっス」
「そうか、大変ですね。頑張ってくださいね」
「『ポケモン言えるかな?』だったら完璧なんっスけどね」

 『ポケモン言えるかな?』だったらみぱぱが居残り決定でした。ファミコンウォーズで良かった。
 そんな、古村さんをアルジェリアに置き去りにしてみぱぱは一人、帰国の途につきました。このあたりは『フランス トランジット アルジェリア復路』を読んでください。

 装置は順調に稼働して、たまに部品などの注文の連絡が来る日々が続きました。
 そして三年もしないうちに『アルジェリア人質事件』が起きました。
 みぱぱが行った現場とは離れていますが、同じアルジェリアです。
 本当にアルジェリアは危険な土地だったのです。みぱぱはスリランカの洪水以来、非常に多いな衝撃を受けました。

 アルジェリア人質事件の被害者のご冥福をお祈りしております。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness

碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞> 住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。 看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。 最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。 どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……? 神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――? 定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。 過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。

処理中です...