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4日目つづき
憂い
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バルトジャンside(※少し前に戻ります)
ユーチと孤児院の門で別れ、来た道を戻っている。
ギルドの食堂でイモールに言われた言葉が頭から離れない。
「くそっ!」
何でユーチが悪く言われなきゃならないんだ。
どうせ、クレエン辺りがあることないこと好き勝手に抜かしてたんだろうが……今回はいつもみたいに笑って済ませられねえ。
クレエンの言いたいことはわかる。
物心が付く前から一緒にいたらしいからな……
腐れ縁ってやつなんだろう。
――クレエンと俺は、大概一緒に行動していた。
羽目を外して騒いだときも、隣に奴がいた気がする。
8歳で孤児院を飛び出してから『どうやって金を稼ぐか』常に頭の中で考えていた。
18年近く、そうやって金を稼ぐことを優先してきたのだから、ここ最近の俺の変わりように憤りを感じていたとしても責めらねえ。
でもそれは、ユーチに向けていい感情じゃないだろ?
たとえ、俺が変わった原因がユーチの存在だったとしても、陰でグチグチと不満を漏らし、慣れない場所で前向きに頑張ってるユーチに、水を差すようなまねされて黙ってられるかよ。
不安そうにこちらを窺っていた、出会った頃のユーチの姿が浮かび、苛立ちが募る。
はあ~。
大きく息を吐き、珍しく熱くなっていた自分を窘める。少しは冷静になれたか。
ユーチに出会って4日……まだ、それしか経ってないんだよな。
すっかり傍にいることが当たり前になっていたから、改めてその事実を目の当たりにすると不思議な気分だ。
ユーチがいない生活が想像できねえくらい、俺の中にピッタリはまっちまってる気がする。
もう剥がすの、無理じゃね?
無理やり剥がした後の、俺へのダメージが半端ないだろ?
――グッ!
俺は自分の想像で負傷した己の身を案じ、思考を断ち切る。
クレエンに会ったら、ガッチリ問い質すとして、とりあえず今日はギルドで簡単な依頼を受けるつもりだ。
クレエンの思惑通りに動いている気がして癪に障るが、文句が言えねえくらい稼いでやるわ。
ケッ!
胸糞悪い奴のにやけた顔が浮かび、吐き捨てるように言葉を漏らした俺を、ギルドの受付をしているアネスが目を丸くして見ていることに気付く。
「珍しく荒れてるようだけど、どうしたの? 怖い顔がますます恐ろしくなってるわよ」
「ああっ⁈」
「さっきユーチ君と一緒だったときは、幸せそうにデレデレしちゃって緩みまくった顔してたのに……大違いじゃない」
「何があったの?」と心配そうに俺の顔を覗き込むアネスに、感情のまま愚痴をこぼすのも恰好悪いと思い直し、気持ちを切り替えるように息を吐く。
「なんでもねえよ。それより、2、3時間で終わりそうな依頼はねえか?」
「ああ、それなら廃棄物の処理を頼んでもいい? 収集場にかなり溜まっているらしいのよ。魔物の討伐前になんとかしたいと思っていたから、バルトが受けてくれると助かるんだけど……どうかしら?」
「わかった、それでいい。その依頼を受けさせてもらうわ。で、埋め立て場はまだ変更されてないのか?」
「ええ、もう少し大丈夫みたいよ。でも次の場所が確保され穴掘り作業が開始されてるから、そろそろ今の場所はいっぱいになるのかもしれないわね」
「了解! 早速行ってくるわ」
俺は廃棄物運搬依頼を受け、ギルドを後にする。
最近は狩りの依頼ばかり受けてたからな、こういう依頼は久しぶりだ。
――そういえば、収納袋を持ってなかったガキの頃に、クレエンと一緒にこの依頼を受けたことがあったな。
そのときは荷車を借り、2人で押したり引いたりしながら運んだんだったか……
結構大変だった記憶があるが、確か大した儲けにならなかったんだよな。
まあ1日頑張っても、半分は荷車代として消えちまうんだから仕方ねえわな。
懐かしい昔の光景を思い出しながら辿り着いたのは、ユーチと一緒に来る約束をしていた、埋め立てゴミの収集場だ。
思った以上に大きなゴミの山ができている。
確かに、こりゃあ限界だわ。
崩さないように注意しながら、ゴミを収納袋に入れていく。
流石に全部は無理だったか。
残されたゴミを眺め、何回か往復する必要があることを確認する。
ユーチの腕時計があれば1度で終わるだろうが、あの収納量を大っぴらにするわけにはいかねえからな。ユーチがこの依頼を受けるときは、注意しとかないと。
『誰も見てないから、大丈夫じゃないかな?』とか言って、気軽に腕時計を使いそうで怖いわ。
どういう育ち方をしたらああなるのかわからないが、常識がないうえに、ぽわぽわしてて危機感がないんだよな。
可愛い顔して、思いつきでスゲー魔法をポンポン使えちまうのも普通じゃないのに、高性能な魔道具らしい腕時計まで所持してるんだから気が気じゃねえわ。
箱に入れて持ち歩きたいくらいだ。
今も孤児院で、おかしな魔法を編み出して披露してんじゃねえだろうな?
無邪気に笑って魔法をぶちかますユーチの姿がありありと浮かび、不安になってくる。
……とっとと依頼を終わらせて、ユーチを迎えに行った方がいい気がしてきた。
いささか雲行きが怪しくなってきた空を眺め、作業のスピードを上げることにする。
ユーチと孤児院の門で別れ、来た道を戻っている。
ギルドの食堂でイモールに言われた言葉が頭から離れない。
「くそっ!」
何でユーチが悪く言われなきゃならないんだ。
どうせ、クレエン辺りがあることないこと好き勝手に抜かしてたんだろうが……今回はいつもみたいに笑って済ませられねえ。
クレエンの言いたいことはわかる。
物心が付く前から一緒にいたらしいからな……
腐れ縁ってやつなんだろう。
――クレエンと俺は、大概一緒に行動していた。
羽目を外して騒いだときも、隣に奴がいた気がする。
8歳で孤児院を飛び出してから『どうやって金を稼ぐか』常に頭の中で考えていた。
18年近く、そうやって金を稼ぐことを優先してきたのだから、ここ最近の俺の変わりように憤りを感じていたとしても責めらねえ。
でもそれは、ユーチに向けていい感情じゃないだろ?
たとえ、俺が変わった原因がユーチの存在だったとしても、陰でグチグチと不満を漏らし、慣れない場所で前向きに頑張ってるユーチに、水を差すようなまねされて黙ってられるかよ。
不安そうにこちらを窺っていた、出会った頃のユーチの姿が浮かび、苛立ちが募る。
はあ~。
大きく息を吐き、珍しく熱くなっていた自分を窘める。少しは冷静になれたか。
ユーチに出会って4日……まだ、それしか経ってないんだよな。
すっかり傍にいることが当たり前になっていたから、改めてその事実を目の当たりにすると不思議な気分だ。
ユーチがいない生活が想像できねえくらい、俺の中にピッタリはまっちまってる気がする。
もう剥がすの、無理じゃね?
無理やり剥がした後の、俺へのダメージが半端ないだろ?
――グッ!
俺は自分の想像で負傷した己の身を案じ、思考を断ち切る。
クレエンに会ったら、ガッチリ問い質すとして、とりあえず今日はギルドで簡単な依頼を受けるつもりだ。
クレエンの思惑通りに動いている気がして癪に障るが、文句が言えねえくらい稼いでやるわ。
ケッ!
胸糞悪い奴のにやけた顔が浮かび、吐き捨てるように言葉を漏らした俺を、ギルドの受付をしているアネスが目を丸くして見ていることに気付く。
「珍しく荒れてるようだけど、どうしたの? 怖い顔がますます恐ろしくなってるわよ」
「ああっ⁈」
「さっきユーチ君と一緒だったときは、幸せそうにデレデレしちゃって緩みまくった顔してたのに……大違いじゃない」
「何があったの?」と心配そうに俺の顔を覗き込むアネスに、感情のまま愚痴をこぼすのも恰好悪いと思い直し、気持ちを切り替えるように息を吐く。
「なんでもねえよ。それより、2、3時間で終わりそうな依頼はねえか?」
「ああ、それなら廃棄物の処理を頼んでもいい? 収集場にかなり溜まっているらしいのよ。魔物の討伐前になんとかしたいと思っていたから、バルトが受けてくれると助かるんだけど……どうかしら?」
「わかった、それでいい。その依頼を受けさせてもらうわ。で、埋め立て場はまだ変更されてないのか?」
「ええ、もう少し大丈夫みたいよ。でも次の場所が確保され穴掘り作業が開始されてるから、そろそろ今の場所はいっぱいになるのかもしれないわね」
「了解! 早速行ってくるわ」
俺は廃棄物運搬依頼を受け、ギルドを後にする。
最近は狩りの依頼ばかり受けてたからな、こういう依頼は久しぶりだ。
――そういえば、収納袋を持ってなかったガキの頃に、クレエンと一緒にこの依頼を受けたことがあったな。
そのときは荷車を借り、2人で押したり引いたりしながら運んだんだったか……
結構大変だった記憶があるが、確か大した儲けにならなかったんだよな。
まあ1日頑張っても、半分は荷車代として消えちまうんだから仕方ねえわな。
懐かしい昔の光景を思い出しながら辿り着いたのは、ユーチと一緒に来る約束をしていた、埋め立てゴミの収集場だ。
思った以上に大きなゴミの山ができている。
確かに、こりゃあ限界だわ。
崩さないように注意しながら、ゴミを収納袋に入れていく。
流石に全部は無理だったか。
残されたゴミを眺め、何回か往復する必要があることを確認する。
ユーチの腕時計があれば1度で終わるだろうが、あの収納量を大っぴらにするわけにはいかねえからな。ユーチがこの依頼を受けるときは、注意しとかないと。
『誰も見てないから、大丈夫じゃないかな?』とか言って、気軽に腕時計を使いそうで怖いわ。
どういう育ち方をしたらああなるのかわからないが、常識がないうえに、ぽわぽわしてて危機感がないんだよな。
可愛い顔して、思いつきでスゲー魔法をポンポン使えちまうのも普通じゃないのに、高性能な魔道具らしい腕時計まで所持してるんだから気が気じゃねえわ。
箱に入れて持ち歩きたいくらいだ。
今も孤児院で、おかしな魔法を編み出して披露してんじゃねえだろうな?
無邪気に笑って魔法をぶちかますユーチの姿がありありと浮かび、不安になってくる。
……とっとと依頼を終わらせて、ユーチを迎えに行った方がいい気がしてきた。
いささか雲行きが怪しくなってきた空を眺め、作業のスピードを上げることにする。
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