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5日目
今後のこと①
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バルトさんに聞いたところによると、魔法で物を修復することはできないらしい。
「ああ、そのはずだ。俺の常識もユーチのお陰で怪しくなってきてるがな……」
バルトさんは、カジドワさんの家のソファーにどっかりと座ると、テーブルの上に〝振り子付きの置時計〟を置き、隣に座るように促す。
カジドワさんがいないのに、勝手に部屋で寛いでいてもいいものかと迷ったが、これからのことを相談したかったのもあり、躊躇いつつ座らせてもらうことにした。
「――そうなると、本格的にこの機能を使って中古品を売りに出したら、悪目立ちしちゃうってことですよね。気をつけていれば腕時計のことは知られないで済むかもしれないけれど、訝しく思う人は現れそうだ」
「間違いなく、どうやって新品同様な中古品を得ているのか、探りを入れられるわな」
「そうですよね。せっかく、ガン爺のお宝の価値を上げて、理不尽な扱いを受けている中古品の立場を確立し、目覚ましく展開する未来を想像していたのに……残念です。規模を小さくして細々とやってくしかないのかな」
浮かれていた気持ちがしぼみ、ため息を吐いた私の耳に、バルトさんの笑い声が届く。
「なんだよ、その目覚ましく展開する未来って、もしかして中古品のことか?」
「あ、はい、そうです。……ゴミとして捨てられる運命だった物が、ガン爺の手によって命を吹き返し、中古品としてもう一度世の中の役に立つ機会を与えられたのに、傷物扱いで正当に評価されず買い叩かれるなんて、理不尽じゃないですか。だからそんな中古品たちを、腕時計の能力で払拭するんです。新品と変わらない外観を手に入れた中古品たちは、確かに新品より低い価格で売買されることになるのだけれど、外観、機能は新品と変わらないんだから、世の中に切望されること間違いなし。そうなれば、多くの中古品が再び一線で活躍することも夢ではないはずなので……そんなに笑うほどおかしいですか?」
「いや、その大丈夫だ。おもしろいがおかしくはない」
「なんですかそれ、意味がわかりませんよ」
真面目に話していたのに笑われ、ついむくれてしまう。
「いや、俺も初めて物の一生を考えさせられたわ。なんかの物語みたいでおもしろくてな。別にバカにして笑ったわけじゃねえぞ」
どうやら嘘ではないようなので、睨むのを止めた。
「いいんじゃねえか、俺も真剣にゴミの未来を夢見ることにするわ。都合よく身近にゴミがお宝に見える爺さんもいるしな。ゴミの再就職斡旋所(?)でも作ってみるか? ユーチの秘密は全力で守る方向で頑張るんで、どうよ」
何を思ったのか、突然一足飛びな提案をしてきたバルトさんに、ポカンとしてしまう。
楽しい遊びを思い付いた子供みたいで、どこまで本気で考えているのかわからなかったのだけれど、面白そうなので乗っかることにする。
「それ良いですね。名称はどうかと思いますが、ガン爺のお宝を最高の形で世の中に送り出すのが目的なら、喜んで協力させていただきます。安全も確保されるようなので問題ないですね」
私はそう言ってバルトさんを見やり、続けて話し出す。
「そうなると〝所長〟はバルトさんで、ガン爺は〝最高技術責任者〟でしょうか? 僕は〝お世話係〟ってとこですかね」
「ぶはっ、お世話係ってなんだよ」
笑いを堪えながら聞いてくるバルトさんに、真面目に答える。
「そんな感じゃないですか? 見栄えを整える役目ですからね」
「いや、ユーチの腕時計の能力がなきゃ成り立たないんだから、もうちょっといい感じのがあるんじゃねえのか? たとえば〝最終検査者〟とかどうよ。ユーチが成人したら所長の座は任せる(押し付ける)気でいるからな、箔がつく感じのにしとかねえと恰好つかねえだろ」
「そんな大それた肩書はいらないですよ。〝お世話係〟がダメなら〝世話役〟とか〝世話人〟とかにするので大丈夫です」
肝心のガン爺を抜きにして、何を盛り上がっているのだか……
冗談だか本気だかわからない会話が、面白くてつい調子に乗ってしまった。お互い自分に呆れていたのだろう。顔を見合わせ照れ笑いを浮かべる。
「――斡旋所設立より先に、お宝の価値が上がったことをガン爺に話さないとですよね。ガン爺はまだ腕時計の能力ことを知らないので、そのことも打ち明けて説明しないと……」
「おお、そうだったな。たった1個の中古品が、今日のガン爺の稼ぎを超える金額で買い取ってもらえるとわかったら、どんな顔をするか見ものだな。小屋の補修代のこともあるし、大喜びするのは間違いないと思うが……腕時計の能力のことは、どうするかな?」
バルトさんが思案するように黙り込むのを見て、私は首を傾げた。
「ガン爺なら秘密を知っても、態度を変えたり悪用したりすることはないと思いますが」
不思議に思いつつ、ガン爺に対して不安はないことを伝える。
「ああ、それは俺も保証する。そういう心配はしてないんだが、謎の多い腕時計を前にしたときのガン爺の好奇心が、どう転ぶかわらからないのが不安でな。腕時計の能力じゃなくてユーチの魔法ってことにした方が問題にならないような気がするんだよな」
「え? でも、魔法で物を修復することはできないって言ってましたよね。それでもですか?」
「それでもだ。ガン爺の物への執着を考えると、そっちの方が無難に収まりそうでな」
なるほど、そういう心配だったのか。確かにどんなものかわからないと知りたくなるものかもしれない。
分解させてくれとか言いだされたら困るけれど、いくらガン爺でも外せない腕時計を無理やりどうこうはしないと思う。……しないよね?
一抹の不安を感じるけれど、今後のことを考えると誤魔化すのは無理な気がしたので、正直に話すことをバルトさんに提案しようと思う。
「ああ、そのはずだ。俺の常識もユーチのお陰で怪しくなってきてるがな……」
バルトさんは、カジドワさんの家のソファーにどっかりと座ると、テーブルの上に〝振り子付きの置時計〟を置き、隣に座るように促す。
カジドワさんがいないのに、勝手に部屋で寛いでいてもいいものかと迷ったが、これからのことを相談したかったのもあり、躊躇いつつ座らせてもらうことにした。
「――そうなると、本格的にこの機能を使って中古品を売りに出したら、悪目立ちしちゃうってことですよね。気をつけていれば腕時計のことは知られないで済むかもしれないけれど、訝しく思う人は現れそうだ」
「間違いなく、どうやって新品同様な中古品を得ているのか、探りを入れられるわな」
「そうですよね。せっかく、ガン爺のお宝の価値を上げて、理不尽な扱いを受けている中古品の立場を確立し、目覚ましく展開する未来を想像していたのに……残念です。規模を小さくして細々とやってくしかないのかな」
浮かれていた気持ちがしぼみ、ため息を吐いた私の耳に、バルトさんの笑い声が届く。
「なんだよ、その目覚ましく展開する未来って、もしかして中古品のことか?」
「あ、はい、そうです。……ゴミとして捨てられる運命だった物が、ガン爺の手によって命を吹き返し、中古品としてもう一度世の中の役に立つ機会を与えられたのに、傷物扱いで正当に評価されず買い叩かれるなんて、理不尽じゃないですか。だからそんな中古品たちを、腕時計の能力で払拭するんです。新品と変わらない外観を手に入れた中古品たちは、確かに新品より低い価格で売買されることになるのだけれど、外観、機能は新品と変わらないんだから、世の中に切望されること間違いなし。そうなれば、多くの中古品が再び一線で活躍することも夢ではないはずなので……そんなに笑うほどおかしいですか?」
「いや、その大丈夫だ。おもしろいがおかしくはない」
「なんですかそれ、意味がわかりませんよ」
真面目に話していたのに笑われ、ついむくれてしまう。
「いや、俺も初めて物の一生を考えさせられたわ。なんかの物語みたいでおもしろくてな。別にバカにして笑ったわけじゃねえぞ」
どうやら嘘ではないようなので、睨むのを止めた。
「いいんじゃねえか、俺も真剣にゴミの未来を夢見ることにするわ。都合よく身近にゴミがお宝に見える爺さんもいるしな。ゴミの再就職斡旋所(?)でも作ってみるか? ユーチの秘密は全力で守る方向で頑張るんで、どうよ」
何を思ったのか、突然一足飛びな提案をしてきたバルトさんに、ポカンとしてしまう。
楽しい遊びを思い付いた子供みたいで、どこまで本気で考えているのかわからなかったのだけれど、面白そうなので乗っかることにする。
「それ良いですね。名称はどうかと思いますが、ガン爺のお宝を最高の形で世の中に送り出すのが目的なら、喜んで協力させていただきます。安全も確保されるようなので問題ないですね」
私はそう言ってバルトさんを見やり、続けて話し出す。
「そうなると〝所長〟はバルトさんで、ガン爺は〝最高技術責任者〟でしょうか? 僕は〝お世話係〟ってとこですかね」
「ぶはっ、お世話係ってなんだよ」
笑いを堪えながら聞いてくるバルトさんに、真面目に答える。
「そんな感じゃないですか? 見栄えを整える役目ですからね」
「いや、ユーチの腕時計の能力がなきゃ成り立たないんだから、もうちょっといい感じのがあるんじゃねえのか? たとえば〝最終検査者〟とかどうよ。ユーチが成人したら所長の座は任せる(押し付ける)気でいるからな、箔がつく感じのにしとかねえと恰好つかねえだろ」
「そんな大それた肩書はいらないですよ。〝お世話係〟がダメなら〝世話役〟とか〝世話人〟とかにするので大丈夫です」
肝心のガン爺を抜きにして、何を盛り上がっているのだか……
冗談だか本気だかわからない会話が、面白くてつい調子に乗ってしまった。お互い自分に呆れていたのだろう。顔を見合わせ照れ笑いを浮かべる。
「――斡旋所設立より先に、お宝の価値が上がったことをガン爺に話さないとですよね。ガン爺はまだ腕時計の能力ことを知らないので、そのことも打ち明けて説明しないと……」
「おお、そうだったな。たった1個の中古品が、今日のガン爺の稼ぎを超える金額で買い取ってもらえるとわかったら、どんな顔をするか見ものだな。小屋の補修代のこともあるし、大喜びするのは間違いないと思うが……腕時計の能力のことは、どうするかな?」
バルトさんが思案するように黙り込むのを見て、私は首を傾げた。
「ガン爺なら秘密を知っても、態度を変えたり悪用したりすることはないと思いますが」
不思議に思いつつ、ガン爺に対して不安はないことを伝える。
「ああ、それは俺も保証する。そういう心配はしてないんだが、謎の多い腕時計を前にしたときのガン爺の好奇心が、どう転ぶかわらからないのが不安でな。腕時計の能力じゃなくてユーチの魔法ってことにした方が問題にならないような気がするんだよな」
「え? でも、魔法で物を修復することはできないって言ってましたよね。それでもですか?」
「それでもだ。ガン爺の物への執着を考えると、そっちの方が無難に収まりそうでな」
なるほど、そういう心配だったのか。確かにどんなものかわからないと知りたくなるものかもしれない。
分解させてくれとか言いだされたら困るけれど、いくらガン爺でも外せない腕時計を無理やりどうこうはしないと思う。……しないよね?
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