【R18】元悪役令嬢の青春

やまだ

文字の大きさ
7 / 35
逃げ出した悪役令嬢

7

しおりを挟む


仕立て屋さんはすぐに来てくれて、パパッと採寸してサクッと帰っていった。

「出来上がるの10日くらいだって。その辺で転入出来る様に手続きしとくわ。料理さ、配達があるらしーからそれ頼む?入居のタイミングで申し込んでくれるって」

ダートの言葉に頷いて、店員さんにお礼を言ってから他の街に転移した。

「本買ったら戻ってくる。あ~クソ、もっと街歩きしたかったのに」

ブツブツ走ってくダートを見送って、屋根の上からぼーっと眺めてたらすぐに帰ってきたので宿まで戻る。なんだかんだもう夕方で、あっという間の1日だった。

食事をすませたあと当然のように二人で私の部屋に戻って、ソファに並んで座る。繋げた手と、くっついてる肩にドキドキする。

「…一緒にお勉強するの?」

「今日はしねぇ」

「ふぅん、眠いから?」

ちょっと期待しちゃった自分が恥ずかしいじゃないか。



「んー、それもあんだけど。ディアナがオレ恋人にしてくれたのって半分同情じゃん?」

「え」

「同情でいいのよ?なんでもいーから傍に居たいつったのオレだし、全然好かれてないわけじゃないのもわかるし」

ダートは交差させた指を解いて、そのまま親指で私の手のひらを撫でながら話す。

「つい昨日までディアナはオレのこと全く好きじゃなかったわけで、それがこんな抱き締めたりキスしたりしていい距離に置いてくれたの超感動。…多分ね、ディアナはお人よしだからどんどんオレに絆されちゃって、しょーがないなあとか言いながらオレのことどんどん好きになってくれると思んだよね」

ネガティブなのかポジティブなのかよくわかんないこと言ってる。

撫でられていた手を口元に持っていかれ、そのまま見つめられる。

「っ、同情なんかしてない」

「そ?でもオレが泣かなかったら捨ててたでしょ」

「それは……泣き顔にグッと来たって可笑しい?」

「え、泣き落とし成功したんじゃなくて?」

泣き落としって言葉が悪い、渋々とか不本意みたいな感じに聞こえる。


「絆されたとこはあるけど、しょーがないなあで決めたわけじゃないから」

「ディアナはオレの泣き顔が好き?それはそれで情けねーな」

「いやそれも違う気がするけど…何だろ、上手く言語化出来ない」

情けない姿にキュンときたけど、今まで見た他の情けない男にそんな気持ちを感じたことないし。


「同情何パー?」

「……ゼロだよ」

真剣な目で見られて居た堪れなくて、目を逸らして返事をした。撫でられ続けてる手がこそばゆい。


「うわ、ちんこ勃った」

思わずダートの手を振り払った。多分今私の目はものすごく冷めている。

「すぐそんなこと言って茶化すのどうなの」

「茶化す気はない、事実を述べた」

「セクハラすんな。もーいい寝る、ダートも部屋に戻れば。おやすみ」

ベッドに入ってもぞもぞ上掛けに潜ろうとしたら背中側にダートも入ってきた。

「……一緒に寝ないんじゃなかったの」

「そのつもりだったんだけど、何か朝起きて夢だったら怖いから一緒に居てい?昨日完徹だし今日はエロいこと考える前に寝れそう」

「ふぅん」

向きを変えて向かい合おうとしたら、後ろから肩掴まれて寝返りを阻止された。

「今こっち向いたらダメ。オレ今顔赤い」

「え、何それ見たい」

泣き顔は昨日散々見たけど、顔赤くなったのとか見たことない。

強く肩を固定されてて、しょーがないから顔だけ振り向こうとしたら背中になんかグリグリと押しつけられた。髪の毛見えるから多分頭かな、真後ろに隠されて顔見えない。

お腹に腕がまわされて、体温高いダートの手に力が入った。
少し上の方にずり上がったと思ったら首の後ろに生暖かい空気が当たって、足の間にダートの足が捻じ込まれて、背中から足まで全部くっついてる。

「何してんのダート」

「うん…幸せを噛み締めてる。ちんこは無視して」

お尻に当たってるやつだよね多分。無視できるほど慣れてないんだけど。


「この体勢ディアナの匂いいっぱいでいーな、向かい合ったら口元とかおっぱいとに気ぃ行くけどこれだとエロ気分減って純粋に気持ちいいわ。安心する」

「ああ、それはちょっと分かる」

匂い嗅がれるのは嫌だけど、人肌ってそれだけで落ち着く感じ。


「寝室別とか言ったけど、もう既に反故にしたい気持ちだわ……」

それだけ言って、すぐに寝息が聞こえてきた。
討伐からの完徹で今日も歩き回ったし、相当疲れてたんだろうな。

寝ても腕の拘束は全然緩んでないし、私もそのまま寝ることにした。ダート程じゃないけどそれなりに疲れてたし、あったかいのがへばりついてたらウトウトきたのであっさり眠りにつけた。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

包帯妻の素顔は。

サイコちゃん
恋愛
顔を包帯でぐるぐる巻きにした妻アデラインは夫ベイジルから離縁を突きつける手紙を受け取る。手柄を立てた夫は戦地で出会った聖女見習いのミアと結婚したいらしく、妻の悪評をでっち上げて離縁を突きつけたのだ。一方、アデラインは離縁を受け入れて、包帯を取って見せた。

悪役令嬢のビフォーアフター

すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。 腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ! とりあえずダイエットしなきゃ! そんな中、 あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・ そんな私に新たに出会いが!! 婚約者さん何気に嫉妬してない?

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...