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逃げ出した悪役令嬢
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しおりを挟む仕立て屋さんはすぐに来てくれて、パパッと採寸してサクッと帰っていった。
「出来上がるの10日くらいだって。その辺で転入出来る様に手続きしとくわ。料理さ、配達があるらしーからそれ頼む?入居のタイミングで申し込んでくれるって」
ダートの言葉に頷いて、店員さんにお礼を言ってから他の街に転移した。
「本買ったら戻ってくる。あ~クソ、もっと街歩きしたかったのに」
ブツブツ走ってくダートを見送って、屋根の上からぼーっと眺めてたらすぐに帰ってきたので宿まで戻る。なんだかんだもう夕方で、あっという間の1日だった。
食事をすませたあと当然のように二人で私の部屋に戻って、ソファに並んで座る。繋げた手と、くっついてる肩にドキドキする。
「…一緒にお勉強するの?」
「今日はしねぇ」
「ふぅん、眠いから?」
ちょっと期待しちゃった自分が恥ずかしいじゃないか。
「んー、それもあんだけど。ディアナがオレ恋人にしてくれたのって半分同情じゃん?」
「え」
「同情でいいのよ?なんでもいーから傍に居たいつったのオレだし、全然好かれてないわけじゃないのもわかるし」
ダートは交差させた指を解いて、そのまま親指で私の手のひらを撫でながら話す。
「つい昨日までディアナはオレのこと全く好きじゃなかったわけで、それがこんな抱き締めたりキスしたりしていい距離に置いてくれたの超感動。…多分ね、ディアナはお人よしだからどんどんオレに絆されちゃって、しょーがないなあとか言いながらオレのことどんどん好きになってくれると思んだよね」
ネガティブなのかポジティブなのかよくわかんないこと言ってる。
撫でられていた手を口元に持っていかれ、そのまま見つめられる。
「っ、同情なんかしてない」
「そ?でもオレが泣かなかったら捨ててたでしょ」
「それは……泣き顔にグッと来たって可笑しい?」
「え、泣き落とし成功したんじゃなくて?」
泣き落としって言葉が悪い、渋々とか不本意みたいな感じに聞こえる。
「絆されたとこはあるけど、しょーがないなあで決めたわけじゃないから」
「ディアナはオレの泣き顔が好き?それはそれで情けねーな」
「いやそれも違う気がするけど…何だろ、上手く言語化出来ない」
情けない姿にキュンときたけど、今まで見た他の情けない男にそんな気持ちを感じたことないし。
「同情何パー?」
「……ゼロだよ」
真剣な目で見られて居た堪れなくて、目を逸らして返事をした。撫でられ続けてる手がこそばゆい。
「うわ、ちんこ勃った」
思わずダートの手を振り払った。多分今私の目はものすごく冷めている。
「すぐそんなこと言って茶化すのどうなの」
「茶化す気はない、事実を述べた」
「セクハラすんな。もーいい寝る、ダートも部屋に戻れば。おやすみ」
ベッドに入ってもぞもぞ上掛けに潜ろうとしたら背中側にダートも入ってきた。
「……一緒に寝ないんじゃなかったの」
「そのつもりだったんだけど、何か朝起きて夢だったら怖いから一緒に居てい?昨日完徹だし今日はエロいこと考える前に寝れそう」
「ふぅん」
向きを変えて向かい合おうとしたら、後ろから肩掴まれて寝返りを阻止された。
「今こっち向いたらダメ。オレ今顔赤い」
「え、何それ見たい」
泣き顔は昨日散々見たけど、顔赤くなったのとか見たことない。
強く肩を固定されてて、しょーがないから顔だけ振り向こうとしたら背中になんかグリグリと押しつけられた。髪の毛見えるから多分頭かな、真後ろに隠されて顔見えない。
お腹に腕がまわされて、体温高いダートの手に力が入った。
少し上の方にずり上がったと思ったら首の後ろに生暖かい空気が当たって、足の間にダートの足が捻じ込まれて、背中から足まで全部くっついてる。
「何してんのダート」
「うん…幸せを噛み締めてる。ちんこは無視して」
お尻に当たってるやつだよね多分。無視できるほど慣れてないんだけど。
「この体勢ディアナの匂いいっぱいでいーな、向かい合ったら口元とかおっぱいとに気ぃ行くけどこれだとエロ気分減って純粋に気持ちいいわ。安心する」
「ああ、それはちょっと分かる」
匂い嗅がれるのは嫌だけど、人肌ってそれだけで落ち着く感じ。
「寝室別とか言ったけど、もう既に反故にしたい気持ちだわ……」
それだけ言って、すぐに寝息が聞こえてきた。
討伐からの完徹で今日も歩き回ったし、相当疲れてたんだろうな。
寝ても腕の拘束は全然緩んでないし、私もそのまま寝ることにした。ダート程じゃないけどそれなりに疲れてたし、あったかいのがへばりついてたらウトウトきたのであっさり眠りにつけた。
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