12 / 35
戻ってきた元悪役令嬢
3
しおりを挟む「コーデリア姫?」
「貴方に姫と呼ばれますと逆に失礼な気がします、呼び捨てでも何でも構いません。何でしょうナルサス様」
「え、何でこいつこんな喧嘩腰なの」
ツンとした態度で返事をしたコーデリアさんにダートは速攻でタメ口になった。そんなフランクでいーんだ。
「私、ずっとディー様に憧れておりましたの、強くて美しい紅桾の勇者様。同じクラスに転入してくると聞いてとてもとても楽しみで!なのに、現れたディー様には変な男が張り付いていて」
「変な男ってなんだ、勇者様の相棒で由緒正しいお家柄なオレに向かって」
「もっと騎士みたいに付き従っているならまだしも、駄々捏ねて手を煩わせるわ周囲を威圧するわ…ディー様、こんな狭量な男で良いのですか?もっと相応しい殿方はいくらでも」
「うるせぇ変なこと吹き込むな。なぁオレ恋人認識されてんの?」
キャンキャン二人でテンポ良く会話してて、口挟む余裕ないな。大人しくご飯食べてよ。
「そうですね、恋人同士だと思われています。訂正しておきますか?」
「しねぇよもっと広めてくれ」
口は悪いままだけどダートが嬉しそうに笑った。ちゃんと恋人同士だと思われてたんだ。そっか、良かった。
「私、ディー様と仲良くなりたいのです。お友達になっていただけませんか?」
一足先にご馳走様をして、食器を片付けて戻ってきたらズバリと言われた。横でブスッとダートが拗ねてるけど口挟んでこないのは何か言われたのか我慢してるのか。
「うーん、私そんな憧れられるような存在じゃないんでねぇ」
いつもキラキラした目で見られるのキツそうだし。
「ふふ、憧れは勿論ありますけれど。でも初日のお二人の様子がなければきっと私、遠くから見ているだけでしたわ。勇者様でも年相応にはしゃいだりするのねって思ったらすごく親近感が湧いてしまって、仲良くなりたいなって」
「…私結構どこでも年相応だよな?口悪いし暴れるし」
「猛者に混じって戦う冒険者ですもの、それは当然のことですわ!あの気心知れた相手にとる対応を私にもして欲しくって」
口元に手を当てて頬染めて、チラチラ上目遣いで見られる。かわいーけど変わってるなぁこのお姫様。雑な扱いが羨ましいってこと?
「よくわからんけど、じゃあ、気が合えば?」
「!ええ、是非!私小国の人間らしく人を見る目だけは鍛えられておりますの、きっと仲良くなれますわ。とりあえずはリアとお呼びください」
「お前いきなり距離つめすぎじゃね」
「チャンスがあれば全力で掴みに行く主義ですので。私も少しずつ崩しますので、ディー様も楽な口調でお願いしますね」
蕾が花開くように笑う様は、ぼーっと見惚れてしまうほど可愛らしかった。すごいな、笑顔だけで世界征服出来るんじゃないかな。
コーデリアさんは勇者様の名声を利用しようなんて考えていないので誤解されませんよう、と言い残して去って行った。
「……強引だけど超可愛い子だったね」
「ディーのが可愛い」
「私、美しさには自信あるけど可愛さはないんだわ」
ダートの目は曇りまくってるからわかんないんだろうな。
「あは、お友達出来ちゃったかも」
面白そうな子だったし、仲良く出来たらいいな。
「…やーだけど、我慢するつったからなー。オレ忘れないでね?」
「忘れないよ」
周りに人多いけど、食堂を出たところで私から手を握った。ちゃんと表現しとかないとダートすぐ不安になるからな。
ダートは握った手を交差させるように絡め直して、腕が肩にくっつくくらい近付いて歩き出す。
中庭のベンチに座って食後の休憩するのが毎日の定番になってて、今日も定位置でのんびり会話をする。
「まぁ男じゃないだけマシか、あの王女様すげぇ男の目引くだろうからディーへの視線が分散されっかもだし」
おぉ、この間から考えたらかなりの譲歩。
「宿泊学習の班って何人くらいなんだろ、三人ってことはないよね」
「あー…元の班抜けてきたって言ってたよな。他は誰か知らなそう」
「先生に聞いてご挨拶いってみるかな~」
「え~、いちいちそんなん必要ねぇじゃん。男だったらどーすんの」
どーもしないわ。
「勇者伯がいきなり挨拶に来たら相手が困るだろ、当日会ってからの挨拶で十分。午後の授業終わったら家で明日のデート予定たてよ♡」
「うーん、そうね…それでいっか」
二人で教室に戻ったらいつものように一瞬沈黙が訪れたけど、窓際前列でコーデリアさんがにこにこ手を振ってくれてたのでほっこりした。
宿泊合宿がちょっと楽しみになってきたな。
***
「なぁなぁ、この港町にいかね?祭りで出店がいっぱい出るみたい」
授業が終わって帰ってきた私たちは、明日どこに行くかの相談をはじめた。
ダートが何冊も買ってきた観光雑誌から一冊を開いて、お祭りのページを見せてくる。
「へぇ?楽しそう」
「だろ、明日のデートここ!ここで青春♡」
その青春ってのがいまいちわからないんだけど。
「恋人同士がいろんなとこでイチャイチャすりゃ青春だろ?」
「そんな大雑把な定義なの?」
青春って言葉はよく聞くけど、具体的にどんなのが当て嵌まるのか知らない。
「え~…若いヤツに使う言葉だから……若い時しか出来ないこと全般?」
祭りは若くなくても行けるけど。
「学生生活送るのは青春で間違ってないと思うんだよなー、それ以外に若い時しか出来ないこと…。そもそも青春デートってどんなんだ?一緒にお勉強?オレらが二人でお勉強したところで成績上がるとは思えないけど」
二人揃って武力特化タイプだもんね。
「お勉強と言えば、えっちなやつもお勉強だし。デートの最後に一緒にお勉強入れたら青春ぽいかも」
「そこに繋げちゃうの?」
恥ずかしいんだけど。
「デート週一、お勉強も週一。焦らずじっくりに丁度いい頻度?」
「まぁ…そう言われてみればそんな気もする」
「だよな。んじゃ明日宿とれねぇかなー、祭りだし急には無理かなー?」
お泊まりを計画しだした。それだと寝る時も一緒なのかな?ドキドキするな、なるほどこんな感じか青春。
「非日常感で頭鈍くなって鼻血出なくなったらいんだけどな~。また出る未来しか想像出来ねぇ、これもどーにかクリアしないと」
言いながら視線が胸にくる。
「じっと胸元を見るのはどうかと思う」
「見たら慣れるかと思って?」
両腕で隠して睨んだけど嬉しそうな顔されただけだった。
4
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
包帯妻の素顔は。
サイコちゃん
恋愛
顔を包帯でぐるぐる巻きにした妻アデラインは夫ベイジルから離縁を突きつける手紙を受け取る。手柄を立てた夫は戦地で出会った聖女見習いのミアと結婚したいらしく、妻の悪評をでっち上げて離縁を突きつけたのだ。一方、アデラインは離縁を受け入れて、包帯を取って見せた。
悪役令嬢のビフォーアフター
すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。
腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ!
とりあえずダイエットしなきゃ!
そんな中、
あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・
そんな私に新たに出会いが!!
婚約者さん何気に嫉妬してない?
男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました
春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。
名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。
誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。
ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、
あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。
「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」
「……もう限界だ」
私は知らなかった。
宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて――
ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる