【R18】元悪役令嬢の青春

やまだ

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戻ってきた元悪役令嬢

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「おはよ。明日はコレ出来ねぇかなぁー、あーやる気でねぇ」

宿泊学習当日、同居をはじめてから日課になった軽いおはようのキスをしたあと、ダートが私の肩に腕をのせてため息を吐く。

「どっかで隠れて?」

ダートが伸ばした腕を両手で掴んでちょっと勇気出して言ってみる。

最近は恥ずかしいより嬉しそうなダートが至近距離で見れることの方が勝ってて、これがないのは私も寂しいかもしれない。


「んや~、クソ可愛いディアナのキス顔を万が一でも他のヤツに見られたくないから我慢する。…そんかし今もーちょいさして」

そう言って口を塞がれて、朝に相応しくないキスがはじまる。これはまだまだ慣れそうにない。

口内を蹂躙してくるダートに応えるように舌を伸ばしながら、心音がどんどん速くなる。

「……ん」

必死で口を合わせていたら、ダートの手が私の胸に触れた。

薄目を開けて見てみるけど、少し目元を赤くしたダートは目を瞑ったまま、舌も手も止めない。

最初はさわさわと触るだけだった手が段々大胆に動くようになって、片手でボタンが何個か外されたと思ったらそのまま直に侵入してきた。
するりと入ってきた手は動かされず、じっと私の胸の上に置かれてる。


……鼻血は出ていない。出てないけど、爽やかな朝だ。


「超やらけぇ」

唇を離したあと、ダートの第一声はそんな言葉だった。

「鼻血出なかったな?なんでだろ」

「……慣れたとか?」

ボタンを止め直されながら返事をする。

「慣れるほどやってねぇ…コレは後日検証だな。」

最後にもう一回ちゅっと唇にキスをされて、ご機嫌なダートと手を繋いで学園への道のりを歩いていった。


門の前まで着いたら待ってくれていたのか、コーデリアさんが手を振りながら私たちを出迎えてくれて。そのまま三人で集合場所まで行った。

「班は私ら三人だけ?」

「いえ、あと一人いるようですわ。クラスが違うので良く知りませんの」

「へぇ、同じクラスだけじゃないんだ。目的地に着いてから合流かな?」

転移門の前に並んで、自分たちの番を待ちながら会話をする。

動きやすそうな服装の子から、どこ行くんだって感じのひらひらした服装の子まで色々だな。まぁ大した危険もないただのキャンプだし、ヒラヒラしてても問題なさそう。汚れそうだけど。

大きな荷物を手に持ったコーデリアさんは弾んだ声で話す。

「ディー様たちは手ぶらなのね?高位の冒険者だと慣れてしまって一泊くらいじゃ着の身着のままなのかしら。目的地の初心者用の森くらいだったら武器も必要ないの?」

キラキラした目でカッコいいわ!と呟きながら聞かれたけど、手ぶらではないなぁ。


「牽制のためとかでないなら、武器を持ち歩いてる冒険者は未熟者です~って言ってまわってんのと同じなんだよね」

「ふん?」

不思議そうな顔をして首を傾げる。本当かわいーなーこの子。見てるとほやほやしてくるな。

「中級者あたりからはみんな、魔法なり何なりで必要なのはすぐ出せるように別空間に入れてんの。武器を腰やら背中やらから手にするより速く手元に現れるようになってる。その中に他の荷物も入ってるよ」


私たちの会話に聞き耳を立ててたんだろう、剣とかをぶら下げてた生徒らが顔を赤くした。
中級者からだって言ってんだから、学生なら別に恥じゃないんだけどってフォロー入れといた。ごめんね周りの学生さん。


「すごいのねぇ冒険者って。騎士の方は普通に剣を腰に差してるわよね?」

「それこそ牽制のためじゃん?正規の騎士ならやんねぇだけで出来る奴のが多そう」

「違う時もあるけど、対魔物と対人間で相手が違うしな。人間相手に武器を見せとくのはかなりの抑止力だろ」

ダートが捕捉して答える。魔物は武器持ってる人間見たら攻撃的になるだけだしなー。


「ふぅん……戦ったらディー様の方が強いのは確かでしょうけれど、何人居たら善戦されるのかしら?」

「知らね、騎士と関わりないもん」

「はっ、連合軍が出した十万の騎士団が壊滅して5年、手も足も出なかった魔王を討った勇者様が騎士数人に苦戦するかって?」


「愚問でしたわね、失礼しました。私騎士団の練習を良く見学に行くんですの、迫力があってワクワクするのよ!ディー様の戦っているところも見たいわ♡」

お綺麗な戦い方なんて出来ないよ?私。

「物好きだね、コーデリアさん」

「そうかしら?それよりディー様、是非リアとお呼びくださいませ!」

「だからお前ぐいぐい行きすぎなんだって。騎士と違って冒険者の戦いとかグロいわ荒いわでワクワクしねぇよ。冒険者んなって最初の数ヶ月は吐き気との戦いだもんなー。お、順番きたな」


転移門をくぐって、慣れ親しんだ森のにおいがする場所に足を踏み入れた。
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