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戻ってきた元悪役令嬢
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しおりを挟む「アルラ皇国グランです、よろしくお願いいたします」
門をくぐったらすぐに活動がはじまるらしく、荷物を持ったままそれぞれの班に別れた。もう一人の班員はグランさんと言うらしい。
「皆様のことは知っておりますので、自己紹介は省いていただいて構いません。冒険者であるお二人の方が慣れているとは思いますが、成績順ですので僭越ながら僕が班長になりました」
グランさんはぺこりと私たちに一礼した。
「入学式で生徒代表だった方ですわね」
「へぇ?めっちゃ頭いーんだ」
「今回知識が役に立つ場ではなさそうですけどね。この班には監督である冒険者はおりません、お二人を監督するなんて滅相もないと誰も依頼を受けなかったようでして」
うーん、まあ…考えてみればそりゃそうですな。
「いらねぇよ、どの班より安全だろ。そんでオレら何すりゃいいの?」
「ええと、必要な荷物だけ持ってオリエンテーリングですね。指定されたチェックポイントを通過してゴールした後は夕食を作って終了です」
「ふぅん、ゆっくりまわる感じか」
それぞれのチェックポイントに転移すればすぐ終わるけど、それじゃ面白くないもんな。
「そうですね。僕体力ないので、ゆっくり進んでもらえると有り難いです」
「なるほど了解。危ないこともないだろうし、ピクニックな感じで行けばいーね。それでお弁当必要だったのか」
「昼飯…朝ディーと二人で頑張ったけど、結局肉焼いただけんなったもんな」
二人でため息をついた。米すら炊けなかったんだよね、結局首都の店で買って済ませた。
会話しながら少し待っていると出発の順番がきて、そのまままったり進んでいく。
「グラン様は家名はありませんの?」
「ですね、平民なので」
へぇ、平民で生徒代表ってすごいな。めっちゃ優秀じゃん。
「と言うわけで、高位の皆様に敬称をつけて呼ばれるのは非常に複雑です。呼び捨てでお願いします」
「片側だけ呼び捨てってムズムズしてやなんだよなー、そもそも私だって平民に毛が生えたようなもんだし」
「勇者伯はその地位以上の権威がありますのに、何を言ってますの」
「元平民だもん」
詳しくは元貴族の元平民の現貴族だけど。
「歩き方ひとつとっても、とても元平民には見えませんわ?やはり鍛えている方は身のこなしを会得するのがはやいのですね」
ちょっと違うけど、そーゆーことにしとこ。
「それにしても、元々貴族のナルサス様はあまり所作がよろしくありませんね」
「なー、なんでお前毎回そんな攻撃的なの?ディーと比べなきゃそれなりに出来てんだけど」
「ディー様の横に居るならもっと洗練された動きをなさって欲しいですわ!」
「答えになってねぇよ」
この二人の組み合わせはすぐ戯れるような会話になるなぁ。
貴族が多い学園のオリエンテーリングなのもあるのか、一個一個のチェックポイントは距離が近くて、ゆっくり歩いてるにも関わらず既に半分が終わってしまった。チェックポイントで出される問題をグランさんが一瞬で解いていったのが一番の理由だとは思うけど。役に立たないどころか一番活躍してるや。
少しひらけた場所があったので、そこで長めの昼食休憩をとることにした。
シートを敷いて、みんなで座って食べだす。本当にただのピクニックだな。
「買ってきたお弁当も同じですのね。先ほどの会話からも思ったのですけれど、お二人は一緒の家に?」
「うん」
「……お家にお邪魔させていただいたり」
「本当図々しいなお前、誰が入れるか!」
また始まった。
放置してご飯食べてたら、今度はグランさんが口を開く。
「森の中はかなり涼しいんですね、夏も近いのに風がひんやりしてます」
「そだね、ここがどの辺か知らんけど他の森より涼しいかな。過ごしやすい中から選んだんだろーね」
「ああもう、お前が口挟むからディーが他の男と交流を深めだしたじゃん!」
「小さい男」
「ああん?!」
うるっさいなぁ、ご飯はのんびり食べたいのよ。
「……あの、ダートルド様。僕ディー様とどうのこうのなんて全く考えていないので落ち着いてくださいね?」
「おぉ––––…ん?」
「魔物くるね。二人はそこにいて」
シートの上を退避させて、二人から離れる。
「他の班のやつらかな、人間三人。オレそいつら回収すっから」
その場で待って、走って逃げてきた三人がダートに回収されたのを確認して進路を塞いだ。
「––––なんだ、人喰い熊か」
確かに駆け出し冒険者一人だったらちょっと大変なやつかな。
サクッと斬って逃げてきた冒険者に目を向ける。二人は若いし学園生ぽい。でも冒険者バッチつけてるし登録はしてるんだろう。
「なんだよこの辺の冒険者って連携も出来ねぇの?下っ端とは言え三人もいりゃ余裕だろ」
三人ともそれぞれの体勢で床に転がってぜーはー言ってるけど、そんな必死に逃げる相手?
「こっちのギルド、練度足りてないやつまで冒険者登録出来んの?お前ランク何」
「…Cで」
「ねぇわ。剣の腕はE相当、魔法も使いこなせてない。他は冒険者名乗るのもおこがましいレベル」
ダートが唯一得意な鑑定をしたようで、細かく教えてくれた。
レベルとランクが合ってないんだ、これは本部に一斉監査してもらうべきかも。
「貴族のお遊び冒険者にしてもちょっとひでぇな。こんなん続いたら皇国とギルドの関係も悪くなる、上にあげとくわ」
首都のギルド酷くない?監督ちゃんと出来ないじゃんこんなだったら。他の班大丈夫かねこれ、夕方までこの辺注意して警戒しとこ。
「やーだなー、皇国のギルド責任者私になってんのにめんどくさ過ぎ。とりあえず権限使わせてもらうな?お前ら二人は免許取消、ゼロから出直せ。そっちはランクE降格」
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