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戻ってきた元悪役令嬢
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しおりを挟む「オレの傍で笑ってんの見続けたいだけだ。ディーは今のままでいんだよ」
「痒い、あの顔でそんな事言ってるの聞くと痒い!」
「王女様うるせぇ!!」
「じゃあその語りやめてぇぇ!!もういいから、こっちはいいからその人連れてどこか他のところで語ってきて?!」
カオス。
「オレもいらね、よく考えたらこんなやつに時間とられたくねぇや。なぁそこの国王様、こいつどーすりゃいいの?」
いきなりダートに問いかけられたリアのお父さん、スルド国王は一瞬だけ動揺したけど、すぐに真面目な口調で口を開く。
「今は拘束して、その後議会で…誘拐が表沙汰になればすぐに更迭され他の者が選出されるでしょう。この度は皇国のお二人にご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした」
腰ひっくいな、皇国と揉めたくないからかな?
「皇国の人間じゃなくて、リアの友達として助けにきただけだから…てか、良く考えたら私のせいでリアが拉致られたようなもんか。ぅあー…ごめんリア、リアの心意気はすごい嬉しかったけど、その主義曲げてちょっと勇者を利用してくんない?」
周りにいる人にこんな形で迷惑かけることがあるんだってこと、知らなかった。人との関わりってその人とだけで完結するわけじゃないんだ。
「何をしたいのかは知りませんが、嫌ですわ」
「…嬉しかったんだよ、そこまでしてくれるなんて」
最強である筈の勇者を守ろうとする人が居るなんて思いもしなかった。ダートだけでも奇跡なのに、こんなに弱くて可愛らしいお姫様まで。
国王の近くまで寄って、片膝を立てて座る。やったことないけどこんな感じで合ってるかな?
「スルド国王、紅桾の勇者としてお願いしたく存じます。高潔な彼女へ心からの感謝を…勇者ディーの命ある限り、スルド国の守護を誓います。何かあれば必ず馳せ参じ、力になりましょう。私の力は戦いにしか役立ちませんが、抑止力として使うことは出来る筈です」
「––––いえ、それは」
「皇国なら問題ない、ディーに意見出来る人間は居ないから」
「ディー、私ディーの負担になることなんて望んでないわ?」
「負担?このくらいのこと、勇者には負担にすらならないよ。何かあったらちょっと飛んで軽く剣振れば終わるんだから。実際には助けを求めてきそうにないけど…でも勇者との固い信頼関係があるよって周知されるだけでも違うんじゃない?」
立ち上がって、リアに感謝を込めて笑顔を向ける。リアみたいに可愛らしくは笑えないけれど。
「名声くらい好きに使ってよ、守らせて?」
「王女様根性あるなぁ、自分を差し出しても拒否するとか。そこまでディーに入れ込んでんのな」
「……当たり前です、ディーは私の憧れで、とても大切なお友達ですもの」
友達ね、いいね。今まで作ってこなかったのもったいなかったな。
「ふふ、ありがとう。リアの国に帰ろう?グランさんが心配して待ってるよ」
「グラン様も来てくれてるの?」
「そうだよ、真っ青ですっごい気にしてた。発破かけといたし、いまなら引かなくても落ちるんじゃない?」
「まぁ…でも私、もうグラン様のことは諦めるつもりなの」
ちょっと困った表情でリアが言う。今絶好のタイミングじゃないのかな。
「なんで?」
「いくら木っ端と言えど王族は王族でしょう?もし上手くいって、今回私がされたようなことがグラン様に降り掛かるかもしれないと思ったら自分の気持ちだけで求愛するのは駄目だなって思ったの」
「んんん、言いたいことはわかる…」
今回のこと、発端が自分だなんて相当な衝撃だった。無事だったからこうやって話せるわけで。
綺麗な涙を目に溜めて笑うリアを抱きしめて、そのままグランさんの元に転移した。
「ぅわ?!」
大人しく待てなかったんだろう、立って腕を組んで歩いてたグランさんはいきなり現れた私達に驚いて尻餅をついた。
「ディー様……コーデリア様…」
「襲われかけてた、間一髪。でももうグランさんのことは諦めるんだって」
「ディー!」
私の腕の中から目を赤くしたリアが顔を上げて抗議してきたけど、こういう時って好きな人の言葉が一番効果あるでしょ。
「リア、さっきの話は確かにその通りだけど。でもその対策含めて勇者の庇護だよ?どっちにしろ結構仲良くなっちゃってるし、リアの指輪と同じのグランさんにも渡すつもり。グランさん、ダートと国王様置いてきちゃったから私もう一回戻るけどリアは頼んだよ」
言うだけ言ってリアを預けて、もう一度ダートの元に飛んだ。
ダートと王様、拘束したおっさんを連れて連れて戻ってきたらうまいこと纏まってくれたようだった。めでたしめでたし。
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