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第9章 崩壊 / What a wonderful world
第81話 グッバイ・イエスタディ
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黒剣を握る帰還者と、能面のように無表情なTPが対峙する。
その顔は感情を欠いた仮面めいていたが、時折わずかに歪み、口元だけが嘲りを示していた。
「おやおや、冴えない連中だな。せっかくの舞台なのに」
「うるせえ!」
軽薄な声音が響いた瞬間、ナズが吠えて駆け出した。巨躯を揺らしての踏み込みは、空気を裂きながら剣を振り下ろす。
その一撃に合わせるように、リゼが瞬で加速し、残光を引きながら斬撃を叩き込む。
さらに、紫の光を纏ったクラヴァルも立ち上がった。顔色はまだ蒼白で、全身は血に濡れていたが、その瞳だけは強い光を放っている。
「借りは返させてもらうわよ…!」
叫びとともに剣を振り抜く。
彼女の剣筋は荒々しく、力任せのように見えた。だが、確かにその刃には“生き残る”という意志が込められていた。
三者の連携が一斉にTPへ殺到する。
だが能面の男は表情ひとつ変えず、わずかに肩を傾け、片腕を振るだけで全てを弾き返した。
甲高い金属音と火花が弾け、振動が空気を震わせる。
「品がない攻撃だ」
無表情の口元がゆがみ、挑発するような声が重なる。クラヴァルは弾かれてもすぐに立ち直り、舌打ちをしながら再び踏み込む。
ナズの大剣が唸りを上げ、リゼの斬撃が閃光のように交差する。だがTPは依然として余裕の笑みを浮かべ、受け流し続ける。
「あるわけねえだろ。インスパイア系だぞ?」
帰還者の低い声が割り込んだ。
白銀のガントレットが同時に閃き、TPの胸元を鋭く抉る。その瞬間、能面の顔がわずかに揺らいだ。
返す力が激突し、耳を裂く衝撃音と共に火花が散る。
♢
激突の余波が吹き荒れるなか、ハナラは一歩だけ後ろに退き、深く息を吸い込んだ。
肺を満たす空気がざらつき、耳の奥には世界そのものが軋むような“ざわめき”が届いている。
──これなら、いける。
これまで何度も試した。
詠唱の響きは掻き消され、術式の組み立ては強制的に壊されてきた。
だが今は違う。
乱入してきたあの兵がなにかTPの効果を打ち消しているようだった。
まさに長らく封じられていた魔素を解き放ちつつあった。
(ようやく、手が届く)
ハナラは両の剣を地に突き立て、瞼を閉じた。
視界を閉ざすと、膨大な情報がいっせいに流れ込む。
熱、光、残響、そして魔素の脈動。
それらを“必要か不要か”で切り分け、余分を斬り捨てていく。
正面では、帰還者が火花を散らしていた。
黒剣が突き込まれ、白銀のガントレットがTPの腕を押さえ込む。
能面のような顔がわずかに揺れ、口元が嗤った。
「……なんだ?」
TPの声をかき消すように、帰還者の咆哮が轟く。
「今だ、やれ!」
ハナラは目を開いた。鋭い光が瞳に宿る。
その背中を見ながら、彼女は静かに口を開いた。
「シングルナンバー008」
♢
瞬間、白が生まれた。
光でも闇でもない、“欠損”の奔流。
触れたものを理ごと削り、余計な過程をすっ飛ばしていく。
周囲の色は剥がれ、音は呑み込まれ、ただ“削る”という行為だけが残る。
「…この範囲でシングルナンバー…ダメだ空間が狭すぎる!」
ロアが思わず声を漏らす。
リゼも加速の構えを解き、息を呑んで立ち尽くす。
クラヴァルは紫の光に包まれたまま、必死に剣を握り締めていた。
白は膨張し、TPの全身を覆う。
それはまさに――崩壊の奔流
能面の顔に、初めて感情らしき影が走る。
口元が歪み、嗤いのようなものが刻まれた。
「やればできるじゃないの」
ハナラの口元もまた歪む。
冷笑でも皮肉でもない。
ただ一言だけ、感情を叩きつける。
「……これでぶっ飛べ」
白が爆ぜた。轟音が空間を貫き、奔流はTPと帰還者を丸ごと呑み込む。
光と衝撃に包まれ、仲間たちが思わず腕で顔を庇った。耳鳴りが残響し、世界そのものがひっくり返るような圧力が襲う。
その中で、ハナラだけが一歩も動かず、淡々と立っていた。彼女の眼差しは冷ややかで、だが確かに勝利を見据えていた。
♢
嘲りとも賞賛ともつかぬ声が奔流の中に響いた。
だが帰還者は動じない。全身を軋ませながら、最後の力を込めて黒剣を押し込む。
「クラヴァル……よくやった」
その短い言葉が、紫の光に包まれた少女へと届いた。クラヴァルは血に濡れた剣を握り締め、震える唇を噛みしめる。
目尻に熱いものが滲み、声にならない返答を呑み込んだ。
白はさらに広がり、二人の輪郭を侵食していく。
能面の顔に影が走り、口元がわずかに吊り上がった。
「また会おう」
その言葉を最後に、TPの姿は奔流に呑まれて消えた。同時に、帰還者の影もまた白に溶けていく。黒剣とガントレットは粒子となり、霧のように散っていった。
「おじいちゃん!」
クラヴァルが叫ぶ。だが彼女の声は奔流に呑まれ、何の返答も返ってこない。
仲間たちもただ見つめるしかなかった。
ナズは拳を握り、リゼは唇を噛み、ロアは治癒の光を保ちながらも瞳を揺らしている。
やがて奔流は収束し、残響だけを残して消え去った。残ったのは、TPと帰還者の姿が消えた空白だけ。
空間全体が震え、次の瞬間、大きな揺れが走る。
亀裂が幾重にも広がり、異空間そのものが崩壊を始めていた。
その直後、轟音と震動が途絶え、仲間たちは一斉に地を踏みしめる感覚を取り戻す。
♢
草の匂い。
ユウが瞬きを繰り返すと、そこはもう異空間ではなかった。
夜風に揺れる草原。見慣れたアヴラス郊外の景色が広がっていた。
崩壊しかけていた異形の世界は影も残さず消え失せ、ただ冷たい風だけが頬を撫でていく。
「戻った……のか」
ナズが呟く。剣を地に突き、荒い息を吐きながら周囲を見渡す。
「みんな…無事か?」
ロアが確認する。まだ治癒の光を絶やしていないその手は、汗に濡れていた。リゼは短く頷き、ユウの隣に立って周囲を警戒する。
彼女の視線はすぐに一点に注がれた。
「……クラヴァル!」
紫の光に包まれた少女が、草原に倒れていた。
顔色は青白く、衣服は血に濡れている。だが胸はわずかに上下し、生きていることを示していた。
ユウが駆け寄り、抱き起こす。
「大丈夫か……! クラヴァル!」
その瞬間、彼女の胸奥から脈動が走り、紫の光が強く脈打った。砕けた肉体が編み直されるように、傷口がみるみる塞がっていく。
ロアが目を見開いた。
「……再生? 違う……これは……」
クラヴァルのまぶたがゆっくりと震え、鈍く光る瞳が開かれる。
「……ユウ……?」
かすかな声が漏れた。
ユウは必死に頷く。
「ああ! よかった、生きてて……!」
だがロアは表情を険しくしたまま首を振った。
「違う。これは“蘇生”に近い。……普通の治癒じゃない」
リゼが眉をひそめる。
「どういうこと?」
ロアは深く息を吐き、冷静に言葉を継ぐ。
「彼女はもう、魔素なしでは生きられない体になってる」
「……ここではいいけど、ユウの世界に行けば──」
「……生きられない」
ロアの言葉を遮るように、クラヴァルが自分で答えた。
蒼白な頬にうっすら笑みを浮かべ、強がるように口角を上げる。
「そんなの、覚悟してたわ」
ユウの胸に重いものがのしかかる。
抱き締める腕に力がこもるが、クラヴァルはその手を軽く叩いた。
「平気よ。……ほら、ちゃんと生きてるでしょ?」
だがロアは首を振り、鋭い声で制した。
「今は動かないで。すぐに元通りにはならない」
クラヴァルは悔しげに唇を噛み、だが従うように目を閉じた。紫の光がゆるやかに収まり、静かな夜風が彼女の髪を揺らした。
仲間たちは安堵の息を漏らしながらも、その代償の重さを否応なく思い知らされていた。
♢
草原には、もう何も残っていなかった。
異空間を形づくっていた黒い半球も、奔流の痕跡も消え失せ、そこに広がるのはただの更地だけ。
風が吹けば草がそよぎ、鳥の声が遠くに響く。
先ほどまで命を賭けた戦場だったとは到底思えない静けさだった。
「……終わった、のか?」
ナズが低く呟く。剣を肩に担ぎ直し、虚空をにらむ。
「違う」
リゼが即座に首を振った。
「TPも、あの人も……消えただけ。終わりじゃない」
ロアはまだクラヴァルに治癒の光を当てながら、唇を噛んだ。
「私たちは生き残った。でも…」
紫の光に包まれたクラヴァルは、意識の底でかすかに揺れた。彼女の睫毛が震えるたびに、ユウの胸は締め付けられる。
帰還者が最後に残した「よくやった」の声が、まだ耳に残っていた。その一言が、ユウの心にずしりと響く。
守られるだけの存在だった自分が、気づけば戦場を呼び込んでしまった。
自分の声が、この戦いを引き寄せた。
その果てに、ひとりの男が消えてしまった。
「俺が…2人を合わせた…から」
吐き出すように呟いた言葉は、夜風にかき消された。リゼがそっと近づき、ユウの肩を支える。
「まだ、これで終わりじゃない。…そうでしょ?」
彼女の瞳はまっすぐに輝いていた。
ユウは返事を飲み込み、ただその瞳を見返す。
不穏さと喪失感を抱えたまま、夜の草原は静かに広がっていた。
その顔は感情を欠いた仮面めいていたが、時折わずかに歪み、口元だけが嘲りを示していた。
「おやおや、冴えない連中だな。せっかくの舞台なのに」
「うるせえ!」
軽薄な声音が響いた瞬間、ナズが吠えて駆け出した。巨躯を揺らしての踏み込みは、空気を裂きながら剣を振り下ろす。
その一撃に合わせるように、リゼが瞬で加速し、残光を引きながら斬撃を叩き込む。
さらに、紫の光を纏ったクラヴァルも立ち上がった。顔色はまだ蒼白で、全身は血に濡れていたが、その瞳だけは強い光を放っている。
「借りは返させてもらうわよ…!」
叫びとともに剣を振り抜く。
彼女の剣筋は荒々しく、力任せのように見えた。だが、確かにその刃には“生き残る”という意志が込められていた。
三者の連携が一斉にTPへ殺到する。
だが能面の男は表情ひとつ変えず、わずかに肩を傾け、片腕を振るだけで全てを弾き返した。
甲高い金属音と火花が弾け、振動が空気を震わせる。
「品がない攻撃だ」
無表情の口元がゆがみ、挑発するような声が重なる。クラヴァルは弾かれてもすぐに立ち直り、舌打ちをしながら再び踏み込む。
ナズの大剣が唸りを上げ、リゼの斬撃が閃光のように交差する。だがTPは依然として余裕の笑みを浮かべ、受け流し続ける。
「あるわけねえだろ。インスパイア系だぞ?」
帰還者の低い声が割り込んだ。
白銀のガントレットが同時に閃き、TPの胸元を鋭く抉る。その瞬間、能面の顔がわずかに揺らいだ。
返す力が激突し、耳を裂く衝撃音と共に火花が散る。
♢
激突の余波が吹き荒れるなか、ハナラは一歩だけ後ろに退き、深く息を吸い込んだ。
肺を満たす空気がざらつき、耳の奥には世界そのものが軋むような“ざわめき”が届いている。
──これなら、いける。
これまで何度も試した。
詠唱の響きは掻き消され、術式の組み立ては強制的に壊されてきた。
だが今は違う。
乱入してきたあの兵がなにかTPの効果を打ち消しているようだった。
まさに長らく封じられていた魔素を解き放ちつつあった。
(ようやく、手が届く)
ハナラは両の剣を地に突き立て、瞼を閉じた。
視界を閉ざすと、膨大な情報がいっせいに流れ込む。
熱、光、残響、そして魔素の脈動。
それらを“必要か不要か”で切り分け、余分を斬り捨てていく。
正面では、帰還者が火花を散らしていた。
黒剣が突き込まれ、白銀のガントレットがTPの腕を押さえ込む。
能面のような顔がわずかに揺れ、口元が嗤った。
「……なんだ?」
TPの声をかき消すように、帰還者の咆哮が轟く。
「今だ、やれ!」
ハナラは目を開いた。鋭い光が瞳に宿る。
その背中を見ながら、彼女は静かに口を開いた。
「シングルナンバー008」
♢
瞬間、白が生まれた。
光でも闇でもない、“欠損”の奔流。
触れたものを理ごと削り、余計な過程をすっ飛ばしていく。
周囲の色は剥がれ、音は呑み込まれ、ただ“削る”という行為だけが残る。
「…この範囲でシングルナンバー…ダメだ空間が狭すぎる!」
ロアが思わず声を漏らす。
リゼも加速の構えを解き、息を呑んで立ち尽くす。
クラヴァルは紫の光に包まれたまま、必死に剣を握り締めていた。
白は膨張し、TPの全身を覆う。
それはまさに――崩壊の奔流
能面の顔に、初めて感情らしき影が走る。
口元が歪み、嗤いのようなものが刻まれた。
「やればできるじゃないの」
ハナラの口元もまた歪む。
冷笑でも皮肉でもない。
ただ一言だけ、感情を叩きつける。
「……これでぶっ飛べ」
白が爆ぜた。轟音が空間を貫き、奔流はTPと帰還者を丸ごと呑み込む。
光と衝撃に包まれ、仲間たちが思わず腕で顔を庇った。耳鳴りが残響し、世界そのものがひっくり返るような圧力が襲う。
その中で、ハナラだけが一歩も動かず、淡々と立っていた。彼女の眼差しは冷ややかで、だが確かに勝利を見据えていた。
♢
嘲りとも賞賛ともつかぬ声が奔流の中に響いた。
だが帰還者は動じない。全身を軋ませながら、最後の力を込めて黒剣を押し込む。
「クラヴァル……よくやった」
その短い言葉が、紫の光に包まれた少女へと届いた。クラヴァルは血に濡れた剣を握り締め、震える唇を噛みしめる。
目尻に熱いものが滲み、声にならない返答を呑み込んだ。
白はさらに広がり、二人の輪郭を侵食していく。
能面の顔に影が走り、口元がわずかに吊り上がった。
「また会おう」
その言葉を最後に、TPの姿は奔流に呑まれて消えた。同時に、帰還者の影もまた白に溶けていく。黒剣とガントレットは粒子となり、霧のように散っていった。
「おじいちゃん!」
クラヴァルが叫ぶ。だが彼女の声は奔流に呑まれ、何の返答も返ってこない。
仲間たちもただ見つめるしかなかった。
ナズは拳を握り、リゼは唇を噛み、ロアは治癒の光を保ちながらも瞳を揺らしている。
やがて奔流は収束し、残響だけを残して消え去った。残ったのは、TPと帰還者の姿が消えた空白だけ。
空間全体が震え、次の瞬間、大きな揺れが走る。
亀裂が幾重にも広がり、異空間そのものが崩壊を始めていた。
その直後、轟音と震動が途絶え、仲間たちは一斉に地を踏みしめる感覚を取り戻す。
♢
草の匂い。
ユウが瞬きを繰り返すと、そこはもう異空間ではなかった。
夜風に揺れる草原。見慣れたアヴラス郊外の景色が広がっていた。
崩壊しかけていた異形の世界は影も残さず消え失せ、ただ冷たい風だけが頬を撫でていく。
「戻った……のか」
ナズが呟く。剣を地に突き、荒い息を吐きながら周囲を見渡す。
「みんな…無事か?」
ロアが確認する。まだ治癒の光を絶やしていないその手は、汗に濡れていた。リゼは短く頷き、ユウの隣に立って周囲を警戒する。
彼女の視線はすぐに一点に注がれた。
「……クラヴァル!」
紫の光に包まれた少女が、草原に倒れていた。
顔色は青白く、衣服は血に濡れている。だが胸はわずかに上下し、生きていることを示していた。
ユウが駆け寄り、抱き起こす。
「大丈夫か……! クラヴァル!」
その瞬間、彼女の胸奥から脈動が走り、紫の光が強く脈打った。砕けた肉体が編み直されるように、傷口がみるみる塞がっていく。
ロアが目を見開いた。
「……再生? 違う……これは……」
クラヴァルのまぶたがゆっくりと震え、鈍く光る瞳が開かれる。
「……ユウ……?」
かすかな声が漏れた。
ユウは必死に頷く。
「ああ! よかった、生きてて……!」
だがロアは表情を険しくしたまま首を振った。
「違う。これは“蘇生”に近い。……普通の治癒じゃない」
リゼが眉をひそめる。
「どういうこと?」
ロアは深く息を吐き、冷静に言葉を継ぐ。
「彼女はもう、魔素なしでは生きられない体になってる」
「……ここではいいけど、ユウの世界に行けば──」
「……生きられない」
ロアの言葉を遮るように、クラヴァルが自分で答えた。
蒼白な頬にうっすら笑みを浮かべ、強がるように口角を上げる。
「そんなの、覚悟してたわ」
ユウの胸に重いものがのしかかる。
抱き締める腕に力がこもるが、クラヴァルはその手を軽く叩いた。
「平気よ。……ほら、ちゃんと生きてるでしょ?」
だがロアは首を振り、鋭い声で制した。
「今は動かないで。すぐに元通りにはならない」
クラヴァルは悔しげに唇を噛み、だが従うように目を閉じた。紫の光がゆるやかに収まり、静かな夜風が彼女の髪を揺らした。
仲間たちは安堵の息を漏らしながらも、その代償の重さを否応なく思い知らされていた。
♢
草原には、もう何も残っていなかった。
異空間を形づくっていた黒い半球も、奔流の痕跡も消え失せ、そこに広がるのはただの更地だけ。
風が吹けば草がそよぎ、鳥の声が遠くに響く。
先ほどまで命を賭けた戦場だったとは到底思えない静けさだった。
「……終わった、のか?」
ナズが低く呟く。剣を肩に担ぎ直し、虚空をにらむ。
「違う」
リゼが即座に首を振った。
「TPも、あの人も……消えただけ。終わりじゃない」
ロアはまだクラヴァルに治癒の光を当てながら、唇を噛んだ。
「私たちは生き残った。でも…」
紫の光に包まれたクラヴァルは、意識の底でかすかに揺れた。彼女の睫毛が震えるたびに、ユウの胸は締め付けられる。
帰還者が最後に残した「よくやった」の声が、まだ耳に残っていた。その一言が、ユウの心にずしりと響く。
守られるだけの存在だった自分が、気づけば戦場を呼び込んでしまった。
自分の声が、この戦いを引き寄せた。
その果てに、ひとりの男が消えてしまった。
「俺が…2人を合わせた…から」
吐き出すように呟いた言葉は、夜風にかき消された。リゼがそっと近づき、ユウの肩を支える。
「まだ、これで終わりじゃない。…そうでしょ?」
彼女の瞳はまっすぐに輝いていた。
ユウは返事を飲み込み、ただその瞳を見返す。
不穏さと喪失感を抱えたまま、夜の草原は静かに広がっていた。
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