地味に転生していた少女は冒険者になり旅に出た

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王都

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まんぷく亭の食堂の角っ子の席で私とエタン、それからギルドマスターと受付のおばちゃんの四人で座り、ひとまずギルドマスターの話、と言うやつを聞く事になった。
ギルドマスターの奢りと聞いた瞬間に私はお姉さんを呼び止めて風兎の唐揚げとデザートの焼きリンゴを追加した。

「………クリス君、その小さな身体で良く入るね」
ちょっと引きつった顔のギルドマスターに言われて「ご馳走になります!」とお辞儀した。

肝心のギルドマスターの話と言うのは王都にある冒険者ギルド協会の養成所で半年間、週に四日、講習を受けて欲しい、という事だった。

「……うーん、そこに行って僕にプラスになる事があるんですか?」
あっ、また僕と言っている!と内心思ったけど、うんここはスルーだ。

「養成所の卒業試験をクリアすれば年齢に関係無くCランクになれる事と、冒険者ギルド協会から報奨金が払われる。」

「Cランク……それはかなり魅力だね」

将来性のある若者の可能性を伸ばす為、王都に養成所を建てたのだが、この要塞都市トーネソル支部からは最近誰も推薦していない為、怠慢だとチクチク嫌味な他支部のギルマスに言われているのだとか。

「誰か適当に推薦すれば良いのでは?」
エタンがそう言って私の前におつまみの串焼きを置いてくれた。
「わーい」と私は早速ぱくつく。

魔力をかなり使ったせいですんごく空腹だったのだ。

「ダメなんだよ。将来性のある、って言うくらいだからね。それなりに推薦する基準があるんだよ。」

おばちゃんが行きたい奴を受け入れてくれりゃ良いのに。と不貞腐れた顔で言う。

「その基準をクリア出来る子が最近は居なかったんです。ですから、今回も見送ろうかと思っていたのですが…」

でも、私を見つけてしまったのですね?そっとギルドマスターが私の目の前に木の実の串焼きと肉の串焼きを出した。

「………えっと、その養成所って寮なんですか?」

確かに子供ってだけでFからスタートだと出来ることは限られるからエタンの才能を潰して一緒に旅をする事になる。

行く街、行く街で依頼を受けるにしても私がエタンの足を引っ張ってしまう。
下のランクの者と一緒に依頼を受ける時は私とエタンで言うと、Eランクの依頼を受けられると言う事になる。
一つ上のランクの依頼しか受けられ無いからだ。
成人までは年に一度のランク試験でしかランクが上がらないとか厳しいし。

護衛や討伐の依頼はCランク以上じゃ無きゃダメだから。せめて、旅をしつつ旅費を稼ぎながらの護衛依頼を受けたり出来るようになりたい。

そう考えるとやっぱり養成所の話は美味しい。エタンの負担にならないようにしたいし。

だけど私は一人で寮に入って、エタンは宿をとるって言うのはちょっと嫌だなぁ…と、ちょっと思ってしまった。
だって、今更一人で寝るとか。ゾッとする。エタンが近くに居るからこそ、寝るのも怖くないのに。

そんな事を考えて、ふと現実を見て唇を噛んだ。
何を甘えているんだ。
囲われて過ごした期間が長かったからか、人の気配の無い空間はちょっと落ち着かない。でも、これはなれていくものだ。
いつまでもエタンが私と一緒に居ると勘違いしている訳じゃないと。頭を振った。
違う、私はいずれは一人で旅をするんだから。ちゃんとエタンとは、いつかちゃんと…
「クリスを一人で寮にやる気は無い」

馬鹿なの?私は。エタンの言葉にほっと安堵した自分が嫌になる。

エタンが顔を歪めてギルドマスターを見ている姿に私はすっかりこの人に依存しているのだと自覚してしまった。

「いえいえ!王都の宿にて寝泊まりして頂く事になります。王都滞在中の費用はギルド持ちで。養成所の無い日はもちろん自由に過ごして頂けます!」

ギルドマスターの鼻息が荒い。

思考の渦に入り込んでいた私はギルドマスターの興奮した声にビクッとした。
そんな私の横から伸びて来た腕が私をささっと膝に抱き上げてくる。
怯える子供をあやすように、エタンの手が私を撫でた。

えっと?エタン?

私は、コレだと確信した。甘やかしすぎなんだわ!この人!

「エタンさ、なんか、お兄ちゃん度と過保護具合が上がって無い?普通のお兄ちゃんってのは、こんなに抱っことかはしないと…」
「クリス、あっちに居る兄妹を見てみろ」

神妙な顔をしたエタンが指さした方向を見ると、巨体のお兄さん(犬)がちんまい女の子(子犬)を膝に抱いてご飯を食べていた。

「え?待ってエタン。あの女の子、どう見てもかなり、ちっさいよ?五歳とか、六歳くらいじゃない?」

眉間に皺を寄せご飯中の犬の兄妹を見るエタン。

「大丈夫だ。大きさ的には俺達とさほど変わらない」
「ちょっと!?えっ、変わるよね!」

「あんた達って本当に仲良しな兄妹だねぇ」

おばちゃんが生暖かい眼差しを向けて言ってくる。
そう、兄妹だ。兄妹なら進む道は違ってくる。いつかは違う道を行くけど、エタンは私の前に進む心の糧だと、エタンには光のある方を歩いて欲しいと思ってるんだもの。
「うん、エタンは僕のお兄ちゃんだもんね」
はっ、また僕と言っている!
ま、まぁ、きっとそのうち治るはずだ。

エタンは私の言葉に「ああ」となんだか真剣な顔で頷いた。

「あぁ、因みに、兄妹で宿に泊まっても同じ部屋なら全てギルド持ちだよ」

「そうなの!?」

タダ!?宿泊費って事は、ご飯付きにしたらかなり浮くよね!?

私はエタンを興奮して見つめた。


──────────


「ここが王都かぁ…凄いね。建物がなんだかどれもデッカイ」

「獣人は皆、体のつくりがでかいからな」

なるほど、エタンもデカいもんね。

普通に来れば、王都までトカゲみたいな竜の馬車で約二十日かかるらしい。でも私達は途中、全力疾走して山越えしたので十日で着いた。

結局私は養成所の話を受けた。
エタンと離れ離れは嫌だな、と思っていたけどエタンは私が養成所に行くなら保護者としてついて行くと言ってくたれたし。
「しばらくは俺も王都で活動するが、万が一、脱走兵だとバレた場合はすぐ様クリスを抱えて逃げる。もしくは……(皆殺し…)」

ニッコリ笑う顔が怖かった。そんな訳で私達は王都にやって来た。気分はちょっとした観光気分だったりする。

ギルマスからは推薦書と支度金を貰い、王都のギルマス宛の手紙を預かって来た。

王都ジャストゥの冒険者ギルド支部は大きな三階建ての建物で中心街から一本、中道に入った場所にあった。

ここまで来る間に狩った魔物の魔石をエタンが買取窓口に持って行っている間に私は受付の列に並んでいる事になった。

けっこうたくさんの人が居て、依頼書を手に並ぶ冒険者が長い列を作っていた。

都会はどの世界も人でいっぱいだ。

「おいおい、こんなチビッ子が冒険者ギルドに何の用だぁー?」

冒険者ギルドの窓口の前にできてる長い列に一人、順番待ちをしているとヒャッハーとか言い出しそうなモヒカンの、信じられないくらい人相の悪いお兄さんが話しかけて来た。
「うひゃっ!?」

ゴクリと唾を飲んで私は冷や汗をかきながらモヒカンお兄さんを見上げた。

でも、よく見てみればこのヒャッハー兄さん、ギルド職員のバッチっぽいのを付けている。

え?ここの職員なの!?

銀バッチにギルドの支部の名前が彫られてある。

「あの、要塞都市トーネソルから来たんですが、トーネソル支部のギルドマスターからこちらのギルドマスター宛に手紙を預かっかっ、てまして」

噛み噛みで、でも必死に伝えた!私、頑張ったよ!

軍人っぽい強面は慣れたから平気なんだけど。
こういうヒャッハー系は見た目が心臓に悪い。

アレは鬣で馬獣人の上位種の特徴だと知らない私はヒャッハー兄さん、としばらくの間思い続けていた。

「おぉ!坊主、ずいぶん遠くからお使いに来たんだな!ちょっと待ってろ……よっ、って。………まさか、白豹?」

ヒャッハー兄さんが私の後ろを見て目を見開いた。
「エタン?もう買取終わったの?」
「ああ、急いでやってもらえた」

そっかァ!とニコニコしているとヒャッハー兄さんが私の肩を掴んで「と言う事は……お、おい、坊主!?じゃなくて、君、もしかして女?」なんて言ってくる。
「そうだけど」と答えるとヒャッハー兄さんの顔が青くなった。

ついでに私の肩を掴んでいた手を自分でぎょっと二度見して、エタンを見て、それから跳ねるように手を離して後退りした。

「………?」

落ち着きのない人だなぁ。なんて私は呑気にエタンの顔を見上げて、納得した。

「エタン、顔が怖いよ?」

その顔を見たらヒャッハー兄さんだって恐怖するってもんだ。

「…生まれつきだ。」

いやいや

呆れた顔でエタンを見るけどエタンは素知らぬ顔で私の頭を掴み前を向かせた。

ぐぬぬ。








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