地味に転生していた少女は冒険者になり旅に出た

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白豹の泣き言

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甘くて美味(うま)そうな匂いだと、最初はそう思った。

それが俺の忍耐と痩せ我慢の始まりだった。



「エタン!髪やってー!」
「……あぁ、ほら座れ」
元気に俺の戻にやってきたクリスはキラキラと輝く蜂蜜色の瞳を俺に向けていた。

風呂上がりの甘やかな少女の香りだ。
そう自覚すると途端に酷い喉の渇きを覚えた。

けれど気にするなと言い聞かせ俺の胡座をかいた膝の中でちょこんと座るクリスの頭を無心で布で拭き、風魔法で水分を飛ばしクシで髪を梳いてやる。

「気持ちいい~」

少し甘える様に俺の中で力を抜いてこちらを時折見上げてくる少女を見ていると息が乱れ息苦しさを感じた。

サラサラと肩下で揺れる金の髪は触れれば触れるほどいい匂いが漂ってくる。

この匂いを、もっとクリスの匂いを嗅ぎたい。

そんな欲求が膨らみ、俺は自分のそんな気持ちに驚き自分の腕に攻撃を加えどうにかクリスから離れた。

「ありがとう~うわぁ、しっとりサラサラだ!」

信じ難い事に俺は欲情していた。目の前の、まだ子供の柔い肌をした少女に。

「エタン、お酒に酔ったの?」

俺の顔が欲に濡れ赤くなっていたのだろう。

「ああ、そうかもしれない。でも、大丈夫だ。」

幼さを残すクリスの反応に張り詰めた想いがふわりと慈しむ様な想いに変化したのがわかって、俺は安堵する。

そうだ。クリスはまだまだ幼い少女だ。確かにいい匂いだったが俺は幼い少女を抱きたいなどと思う様な趣向は持ち合わせていない。

そんはずは無い。
これは気の迷いだ。

なのに…日々、クリスから香る甘い匂いが濃くなってくる。俺の中でどうしようも無いほどの熱が溜まっていく。


「ありがとう~女将さん!どうしたらいいか分からなくて。すごく助かります!」
朝起きるとクリスがいなかった。
胸がざわめき俺は慌ててクリスの匂いを辿った。そうして見つけたクリスは宿の女将に手を合わせて不思議な体勢で礼を言っていた。

初めは「なんだ?」と疑問に思った。クリスが人を頼るのは珍しかったから。

けれど、俺は直ぐに今のクリスの状態を察する事が出来た。

獣の嗅覚故か。クリスは一応大人の女性になったらしい。あんなに幼げな彼女が大人の仲間入りをしたのか。獣人の性交渉はメスに初潮が来たらやる。だが、幼い少女をそんな目で見るなんて野蛮だ。ありえない。彼女をそんな目で…

クリスは獣人だ。狐の匂いがする。
いい匂いが、甘くていい匂いが俺を誘っている。

紙袋を手にした女の匂いを纏うクリスがこちらに気が付きサッと頬を染めた。そして少し恥ずかしそうに俺を見ている。

息が苦しい。何かをやらかしそうで強く拳を握りしめ耐える。
しかし心を落ち着けたくて深く吸い込むと頭が酩酊する様にぐらりと世界が揺れた。


薄く開いた唇は果実の様だ。きっと舐めたら甘いのだろう。そんな考えが頭を占める。

潤んで見える瞳から目が離せなかった。

「私だってもう大人の仲間入りなんだぞ!」
なんて言って逃げていった。その後ろ姿を見て呆然とした。

ならばもう喰っても良いはずだ。

クリスが欲しい。



「ダメだ」俺は慌てて脳内で叫んでいた。
俺は今何を考えていた。ありえないだろう。俺はクリスの兄だ。
子供を、妹の様なクリスを抱きたいなんておかしいだろ。

「俺は変態ではない」

なのに心の中をあの甘い匂いが俺を嘲笑う様に蹂躙する。

クリスが他のオスを見ただけで魔力が漏れる。クリスが攻撃されたのを見た瞬間理性が消えて全力で魔獣を攻撃していた。

クリスが他のオスに撫でられただけで怒りと焦りに狂いそうだった。

このままだと不味い。



「エタン」

俺の名を呼ぶクリスが薄く舌を見せて俺を誘ってくる。
まるで自分を俺に捧げる様に、ベッドに座って俺を見ている。

緊張した面持ちにクリスが自分の欲をもしかしたら知ってしまったのかと焦った。

その小さな唇がまるで俺を誘惑する様に俺を誘ってくる。

無理をするな。まだお前は子供だ。
そう言っている俺がクリスを単なる女として、メスとして、見ていると気づきもせず。

抗い難い程に甘く、俺を呼んだクリスの唇を気付けば自分の唇で塞いでいた。

口付けたクリスの唇は想像以上に甘く俺はあっさりと理性を手放してしまった。


クリスが小さな唇を塞がれて苦しげに口を開いた。その隙を逃さず口内を蹂躙した。飢えを満たす様に、貪る様に口付けた。


─────────


案の定飲んでいたマッシモさんを見つけた俺は彼の隣に無言で座った。

「どうしたんだ?お前。こんな時間にクリス君のそばを離れるなんて珍しいじゃねぇか………って、お前その耳。」

目を白黒したマッシモさんが立ち上がった。
「ついに幻の種族が覚醒かぁ~。って事は、、はっはぁ~ん、ついに発情期に入ったのか。いや、入っただけならこうはならないな。魔力が盛れすぎだ。…って事は、、番か…」


おーい!こいつにさっさと酒やってくれ!とマッシモさんのドデカい声が酒場に響く。

項垂れて酒場のカウンターにゴスっと突っ伏すると既に少し離れたカウンター席で飲んでいたイチイさんが少し目を見開いて寄ってきた。他にもメンバーの姿が見えるが一様に青ざめてこちらを見ない。

「クリスを襲った。口付けだけでなんとか離れられたが。次は抵抗されても無理やり抱いてしまいそうだ。……クリスは、まだ子供だ。まだあいつはガキだ。抱いたり出来るはず無いのに」

俺がそう泣き言を言ってでっかいため息を吐くと、隣りにどっかりと座ったマッシモさんと、イチイさんがニヤリと笑った。

「悩める青年よ。仕方ねぇから俺が一杯奢ってやるよ」
「エタンさんもこんな事で悩むんだな」

失礼なイチイさんをじろりと睨むと彼は両手を顔の横に上げて降参する様に「すいません。俺が悪かった!でも悪気はねぇんだ」と言った。

「やっぱり番だったんだろ?クリス君が。まぁ、アレだ。覚醒した瞬間、番を襲うのはよくあるパターンだな。あとは番だと気付かないまま襲って覚醒ってパターンも。お前がそうなったのは獣の本能と悲しき性ってヤツだよ。」

なんだそれは。

「番に出会ったオスは獣の本能が強く働くんだってさ。
俺はまだ番なんかには出会ってないからわかんねぇげど。
番のメスとヤル事しか考えられなくなるらしい。ヤったら次は番を抱き潰して他のオスから隔離する様に監禁だって聞くし。猛獣種ってのは皆そんなもんらしいぜ?」

イチイさんが眠そうな顔で他人事の様にそう言ったが、あんたも猛獣種だろが!と言ってやりたい。
イタチの魔獣だ、幻獣だ、聖獣だと一時騒がれていた幻の上位種である鎌鼬のイチイさん。
なんでこの人こんなに眠そうなんだって感じだが、実際に戦いの場に立つと圧倒される強者のオーラを纏っていた。

「まぁ、クリス君は綺麗だしエタンが焦るのも無理ねぇけど。それにしてもよく我慢したな!」

「…大嫌いだと言われたんだ。」

「………あー、それは、まぁ、なぁ?いきなり襲われたお子ちゃまのクリス君が怒り任せに言った言葉だろ?」

「………生きて行けない。」

「んー、じゃ、ちとクリスちゃんが育って自分で判断できるまで離れるとか?」

「そのつもりだ。」

俺はクリスから離れるべきだろう。だが。


「いくつか気がかりな事がある。離れるとしたらそれを片付けてからだ。」



クリスが住むこの地を阻もうとする不安の種を。

クリスが追われる事の無いように。あの腐った軍を。

クリスの幸せに影を落とす不安要素全てを。


一掃しなければならない。




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