雪うさぎ

文字の大きさ
14 / 24

隊長は故障中②

しおりを挟む

「どうした、エンマ」

静まり返る会場に凛とした低い声がする。エンマは慌ててそちらを向いた。
エンマと揃いの金の刺繍が入った白を基調としたタキシードを纏う美丈夫がこちらに歩いて来ていた。短い銀髪、紺色の色気のある眼差しをしたステファノである。

エンマは固まってステファノがこちらに来るのを見ていた。ルイージス王国の名を連ねる公爵家のパーティで騒動を起こしてしまった。
呆れられてしまう?ステファノはラミアナ様を選ぶの?
そんなのは嫌だ。
「好きなの。ステファノ様。ごめんなさい。ステファノ様が好きなの。」
小さな呟きはステファノに届いた様でステファノの目が見開かれる。

あ…言ってしまった

すると、溜めていた涙がポロリと落ちてしまった。
それを見た途端にステファノはエンマに近づき抱きしめ、辺りをゆっくりと見回した。
エンマを抱くその手は優しいのに、ステファノの纏う空気は冷気を放つほど冷たくなる。

「…どういうことかな?君かい?パレストリーナ伯爵令嬢、まさか、君が私のエンマに何かしたのか?」

ステファノの声に周囲は竦み上がる。低く怒りを宿す声は魔力量の違いも相まって威圧感が凄まじく怒りで人の息の根を止めることすら出来てしまいそうだった。

「…っあ、その女が…、ひっ!」

ステファノが冷気を殺気に変えた途端にラミアナは粗相をしドレスを濡らすと気を失ってしまった。

無理も無い。
誰もがそう思った。









「エンマ、落ち着いたかい?」
チュッと目尻に口付けするこの方はどちら様でしょうか?


エンマです。ただ今パーティを抜け出し公爵家の2階にある奥まった客室でしょうか?本日のパーティ用の控室でしょうか?やたら豪華な部屋に連れて来られたのですが…

「エンマ、こっちを向いて」
チュッと今度は耳に口付けされてエンマはビクリとステファノを見た。
すると、溶けそうな眼差しにぶつかりエンマは訳が分からず呆然としてしまう。
どうなってこうなったの?
え?
この方本当にステファノ様よね?
なぜ糖度100%???

「んんっ…」
ぺろりと舐められてるのが唇だと遅れて気づいたエンマは目を見開いて息すら止めていた。

「エンマ、口開けて」
「へっ?…あっ…ふぁ」

ステファノの言葉に反応した途端に口の中に舌が這い回り逃げるエンマの舌を絡めて舐め上げてくる。
いやらしく蠢くステファノの舌が喘ぐしか出来ないエンマの思考を真っ白にして行く。
なぜこんなことになったのか。

くたりと力の抜けたエンマの身体を抱きとめたステファノは執拗に口付けしながらエンマの背を撫で抱きしめる。
背中からまた顔にと柔らかな輪郭をなぞっていたステファノの手が耳に移動するとエンマは知らずピクンと反応を示した。
ステファノの瞳が怪しく光って見える。エンマの唇を解放し、ステファノの口付けは耳に移動する。

ステファノは舐め上げて齧り付く様に耳たぶを喰む。そして噛んでじんじんする場所をまた執拗に舐めるのだ。

「あっ、ひゃっ、んん!耳嫌です、あ、ステファ…様」

息も絶え絶えのエンマは耳に口付け甘噛みしながら舐めて来たステファノに驚愕してその胸を押した。しかし騎士様はビクともしないし、なにかのスイッチでも入ったみたいにエロモードに突入していらっしゃるようだ。

ひぇ!どーしたら良いの?このままじゃ、私、食べられちゃう!

コンコン、コンコンと矢継ぎ早にノックと兄の低い低ーい声が聞こえる。たぶん「おい!開けろ!つか、何してやがる!!」
と言っている気がする。

ちっ、とステファノが舌打ちしエンマをソファーに寝かせると「少し待ってろ、エンマ」と不機嫌全開でやさぐれたように乱暴に扉を開けた。
「何の用だ」と言いながら廊下にロベルトを押しながら扉は閉められた。


いやいやいや、待って待って!
エンマは身だしなみを調えながらあたふたと羞恥に顔を染め頭を抱え。なんだ!何が起こった!誰だあの方は!と混乱する。
無表情がデフォルトのステファノが、不機嫌な顔、もしくは時々意地悪な顔くらいしか見たことのないステファノが……
デレた!?
もう、故障中としか思えないくらいにデレた!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お姫さんと呼ばないで

秋月朔夕
恋愛
華族の娘として生まれたからにはお家のために結婚しなさい。そう父に言われ続けて、わたしは今日幼馴染と結婚する。けれど洋館で出迎えた男は全く違う人だった。

惚れた男は根暗で陰気な同僚でした【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
イベント企画会社に勤める水木 茉穂は今日も彼氏欲しさに合コンに勤しむ、結婚願望が強い女だった。 ある日の週末、合コンのメンツが茉穂に合わず、抜け出そうと考えていたのを、茉穂狙いの男から言い寄られ、困っていた所に助けに入ったのは、まさかの男。 同僚で根暗の印象の男、【暗雨】こと村雨 彬良。その彬良が会社での印象とは全く真逆の風貌で茉穂の前に現れ、茉穂を助けたのである………。 ※♡話はHシーンです ※【Mにされた女はドS上司に翻弄される】のキャラを出してます。 ※ これはシリーズ化してますが、他を読んでなくても分かる様には書いてあると思います。 ※終了したら【プラトニックの恋が突然実ったら】を公開します。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

義兄様と庭の秘密

結城鹿島
恋愛
もうすぐ親の決めた相手と結婚しなければならない千代子。けれど、心を占めるのは美しい義理の兄のこと。ある日、「いっそ、どこかへ逃げてしまいたい……」と零した千代子に対し、返ってきた言葉は「……そうしたいなら、そうする?」だった。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

【完】経理部の女王様が落ちた先には

Bu-cha
恋愛
エブリスタにて恋愛トレンドランキング4位 高級なスーツ、高級な腕時計を身に付け ピンヒールの音を響かせ歩く “経理部の女王様” そんな女王様が落ちた先にいたのは 虫1匹も殺せないような男だった・・・。 ベリーズカフェ総合ランキング4位 2022年上半期ベリーズカフェ総合ランキング53位 2022年下半期ベリーズカフェ総合ランキング44位 関連物語 『ソレは、脱がさないで』 ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高4位 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高2位 『大きなアナタと小さなわたしのちっぽけなプライド』 ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高13位 『初めてのベッドの上で珈琲を』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高9位 『“こだま”の森~FUJIメゾン・ビビ』 ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高 17位 私の物語は全てがシリーズになっておりますが、どれを先に読んでも楽しめるかと思います。 伏線のようなものを回収していく物語ばかりなので、途中まではよく分からない内容となっております。 物語が進むにつれてその意味が分かっていくかと思います。

泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。

待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

処理中です...