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ピアノとエンマと始まる世界
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お兄様と一悶着したステファノが諦めた顔をしてエンマの身なりを調える為に侍女達を呼んでくれた。
「…さっさと結婚してしまいたい。貴族とは面倒なものだな…」
などと色気のある眼差しで言われても困る。
貴族の婚姻はその血筋を守る為に女性が夫以外の者の子を身ごもることの無いようにとの意味で最低半年程の婚約期間を置くようされている。
婚約期間から既に婚家にて花嫁修業を兼ね暮らす事になるので男性側からしたら蛇の生殺しらしいが…
そんな訳でエンマは身支度を再度調えると羞恥に顔を赤くしながらパーティ会場へと戻った。
隣を歩くステファノと後ろに居る兄ロベルトの話を聞きながら、どうやらラミアナ様はあの後、離れた場所で驚愕して見ていたラミアナ様の両親が引き取り、ステファノ様の両親やステファノ、エンマの両親や兄に深々と詫び、会場へ向け謝罪を口にすると2度とラミアナを領地から出さないと誓い会場を後にしたと分かった。
彼女のあの行動を批判的に見ていた者達もラミアナ様の両親であるパレストリーナ伯爵夫妻の謝罪て水に流してくれたようだ。良かった!
ステファノやロベルトはエンマは絡まれた被害者だから謝罪など必要無いと言っていたが…
私も私の周りで気を揉んでいたご婦人方に謝罪をしなければ。
パーティ会場へと戻った途端エンマは惚気話をせっつかれると言う謎の状態に陥った。
「え?皆様どうなさったので?」何が彼女達の心に火を付けたのだろう。
「エンマ様をお守りし、あの、ステファノ様がエンマ様を大事そうに抱きしめお姿が、それはそれは麗しく。」
「まぁ、その後のお姿はわたくし身も心も恐怖しか感じませんでしたが」
「ええ、大変なお怒りであの恐ろしいまでの殺気のこもった眼差しは命が幾つあっても足りませんわ?」
「「「おほほほほ……本当に恐ろしかったですわね」」」
和やかに?語られるあの時の様子にエンマは真っ赤になって震えていた。
謝罪をしに母達の友人達やエンマの友人、知人の集まる場所へと1人向かうと謝罪などよろしいのよ。それよりもときゃいきゃいと詰め寄られてしまったのだ。
あの後、ステファノ様と愛を囁きあったのだろうとか、あのステファノ様は愛を囁く時は無表情を捨てているのかと。
その勢いに、タジタジのエンマである。
☆
婚約式はパーティ会場の一角にある女神の像の前で行なわれた。
真っ白な女神像は肩に小さな小鳥を乗せている。その小鳥に既視感を覚えエンマはステファノそっちのけで小鳥を凝視していた。
『それでは、これより婚約式の誓いの印璽に取り掛からせて頂きます』
婚約式を執り行う神官に、エンマとステファノの繋いだ手を金の魔法陣の刺繍が施された赤いベルベットの布地の上に置くように言われた。
その布地には魔法陣が大好きなエンマも驚く様な精緻な魔法陣が施されていた。
その赤いベルベットの布地が乗った白く細長い台の上に2人が手を置いたのを確認すると神官が何やら呪文を唱えた。
『…………愛する2人に祝福を、神の御加護を賜ります様』
何やら手の甲が暖かい。
魔法陣が熱を持ちエンマとステファノの手の甲に同じ模様が浮かんでいた。球体の中心には花が、薄い桃色から水色にグラデーションとなっていく花びらが開き、草木がその花を囲うような不思議な色付きの模様だった。
数日で色が抜け出し薄い緑の印璽になるそうだ。
すごく珍しい模様だった様で友人達がさすがステファノ様だと言っていた。
なぜそこでステファノ様なのだと納得いかないエンマであった。
印璽が終わると婚約式は終わり、以後エンマやステファノに邪な心を持つ者が触れてしまうと神罰が下ると迷信的に伝えられている。
今は時代が代わり神罰をそこまで真に受けたりはしない。でもこの印璽があると婚約したんだなって実感してしまい、エンマは気恥しい気持ちになった。
パーティも終盤に差し掛かり酔いが回った紳士達は酔い醒ましの薬草入りドリンクを持って2階の喫煙室でカードゲームをしたり、貴婦人達はサロンでピアノを披露したりと別れ出す。
エンマも行きますわよ?とステファノとエンマの母親達に言われ移動する。
嫌な予感しかし無い。たぶん流れ的に今夜の主役だからとか何とか言ってこのサロンのドンみたいなおば様方に演奏を強請られる未来しか見えない!
ピアノ弾くのは好きだけど!人が多すぎるよ!!
諦めよう。きっとあの期待に満ちたご婦人方からは逃れられない。
でも、先日のパーティでも、そのまた前の日のパーティでもさらにさらに、その前のパーティでもエンマはピアノを弾かせて頂いたのでここ最近習った曲でパーティで弾ける曲が尽きてしまったのだ。
うずうず、あの曲、弾いてしまおうかな。
いやいやいや、でもこの曲はこの世界的には難易度が高すぎて何となく過剰評価されてしまう恐れが…
でも、この日のエンマの気持ち的にもこの曲が一番ぴったりくるのも確かで。うーむ。でもお母様やお父様には人前でまだ弾かないでくれと言われた曲なんだよね。やっぱり不味いかな?
エンマは前世で唯一覚えてる曲を弾こうかどうしようかと悩んでいた。始まりの曲って感じの題名だった曲で、不思議なことにこの世界の聖獣召喚の歌にも似た題名の曲である。こっそりと家で練習した時には母や父から大絶賛を受けた曲なのだ。しかし、確か母には許可なくこの曲を人前で弾いてはダメって言われちゃったんだっけ。んー、違う曲より、むしろ前と同じ曲でもいいかしら。
「エンマ、今日があの曲をご披露する絶好の機会だわ?あなたはわたくしの自慢の娘。もし失敗したって構わない。いつかあなたが愛する人を見つけたら弾いても良いと伝えるつもりだったの。例えあの曲を弾いてあなたを欲しがる人達が出てきてもステファノ様ならば、ルイージ公爵家ならあなたを守れるわ。だから、思いっきり、弾いてしまいなさい。」
「え?よろしいんですか?」
「ええ、エンマ思いっきりやっておしまい!」
おお?お母様からよく分からないが許可が下りましたー!良かった!どん詰まりだったんだよ、お母様!
「…さっさと結婚してしまいたい。貴族とは面倒なものだな…」
などと色気のある眼差しで言われても困る。
貴族の婚姻はその血筋を守る為に女性が夫以外の者の子を身ごもることの無いようにとの意味で最低半年程の婚約期間を置くようされている。
婚約期間から既に婚家にて花嫁修業を兼ね暮らす事になるので男性側からしたら蛇の生殺しらしいが…
そんな訳でエンマは身支度を再度調えると羞恥に顔を赤くしながらパーティ会場へと戻った。
隣を歩くステファノと後ろに居る兄ロベルトの話を聞きながら、どうやらラミアナ様はあの後、離れた場所で驚愕して見ていたラミアナ様の両親が引き取り、ステファノ様の両親やステファノ、エンマの両親や兄に深々と詫び、会場へ向け謝罪を口にすると2度とラミアナを領地から出さないと誓い会場を後にしたと分かった。
彼女のあの行動を批判的に見ていた者達もラミアナ様の両親であるパレストリーナ伯爵夫妻の謝罪て水に流してくれたようだ。良かった!
ステファノやロベルトはエンマは絡まれた被害者だから謝罪など必要無いと言っていたが…
私も私の周りで気を揉んでいたご婦人方に謝罪をしなければ。
パーティ会場へと戻った途端エンマは惚気話をせっつかれると言う謎の状態に陥った。
「え?皆様どうなさったので?」何が彼女達の心に火を付けたのだろう。
「エンマ様をお守りし、あの、ステファノ様がエンマ様を大事そうに抱きしめお姿が、それはそれは麗しく。」
「まぁ、その後のお姿はわたくし身も心も恐怖しか感じませんでしたが」
「ええ、大変なお怒りであの恐ろしいまでの殺気のこもった眼差しは命が幾つあっても足りませんわ?」
「「「おほほほほ……本当に恐ろしかったですわね」」」
和やかに?語られるあの時の様子にエンマは真っ赤になって震えていた。
謝罪をしに母達の友人達やエンマの友人、知人の集まる場所へと1人向かうと謝罪などよろしいのよ。それよりもときゃいきゃいと詰め寄られてしまったのだ。
あの後、ステファノ様と愛を囁きあったのだろうとか、あのステファノ様は愛を囁く時は無表情を捨てているのかと。
その勢いに、タジタジのエンマである。
☆
婚約式はパーティ会場の一角にある女神の像の前で行なわれた。
真っ白な女神像は肩に小さな小鳥を乗せている。その小鳥に既視感を覚えエンマはステファノそっちのけで小鳥を凝視していた。
『それでは、これより婚約式の誓いの印璽に取り掛からせて頂きます』
婚約式を執り行う神官に、エンマとステファノの繋いだ手を金の魔法陣の刺繍が施された赤いベルベットの布地の上に置くように言われた。
その布地には魔法陣が大好きなエンマも驚く様な精緻な魔法陣が施されていた。
その赤いベルベットの布地が乗った白く細長い台の上に2人が手を置いたのを確認すると神官が何やら呪文を唱えた。
『…………愛する2人に祝福を、神の御加護を賜ります様』
何やら手の甲が暖かい。
魔法陣が熱を持ちエンマとステファノの手の甲に同じ模様が浮かんでいた。球体の中心には花が、薄い桃色から水色にグラデーションとなっていく花びらが開き、草木がその花を囲うような不思議な色付きの模様だった。
数日で色が抜け出し薄い緑の印璽になるそうだ。
すごく珍しい模様だった様で友人達がさすがステファノ様だと言っていた。
なぜそこでステファノ様なのだと納得いかないエンマであった。
印璽が終わると婚約式は終わり、以後エンマやステファノに邪な心を持つ者が触れてしまうと神罰が下ると迷信的に伝えられている。
今は時代が代わり神罰をそこまで真に受けたりはしない。でもこの印璽があると婚約したんだなって実感してしまい、エンマは気恥しい気持ちになった。
パーティも終盤に差し掛かり酔いが回った紳士達は酔い醒ましの薬草入りドリンクを持って2階の喫煙室でカードゲームをしたり、貴婦人達はサロンでピアノを披露したりと別れ出す。
エンマも行きますわよ?とステファノとエンマの母親達に言われ移動する。
嫌な予感しかし無い。たぶん流れ的に今夜の主役だからとか何とか言ってこのサロンのドンみたいなおば様方に演奏を強請られる未来しか見えない!
ピアノ弾くのは好きだけど!人が多すぎるよ!!
諦めよう。きっとあの期待に満ちたご婦人方からは逃れられない。
でも、先日のパーティでも、そのまた前の日のパーティでもさらにさらに、その前のパーティでもエンマはピアノを弾かせて頂いたのでここ最近習った曲でパーティで弾ける曲が尽きてしまったのだ。
うずうず、あの曲、弾いてしまおうかな。
いやいやいや、でもこの曲はこの世界的には難易度が高すぎて何となく過剰評価されてしまう恐れが…
でも、この日のエンマの気持ち的にもこの曲が一番ぴったりくるのも確かで。うーむ。でもお母様やお父様には人前でまだ弾かないでくれと言われた曲なんだよね。やっぱり不味いかな?
エンマは前世で唯一覚えてる曲を弾こうかどうしようかと悩んでいた。始まりの曲って感じの題名だった曲で、不思議なことにこの世界の聖獣召喚の歌にも似た題名の曲である。こっそりと家で練習した時には母や父から大絶賛を受けた曲なのだ。しかし、確か母には許可なくこの曲を人前で弾いてはダメって言われちゃったんだっけ。んー、違う曲より、むしろ前と同じ曲でもいいかしら。
「エンマ、今日があの曲をご披露する絶好の機会だわ?あなたはわたくしの自慢の娘。もし失敗したって構わない。いつかあなたが愛する人を見つけたら弾いても良いと伝えるつもりだったの。例えあの曲を弾いてあなたを欲しがる人達が出てきてもステファノ様ならば、ルイージ公爵家ならあなたを守れるわ。だから、思いっきり、弾いてしまいなさい。」
「え?よろしいんですか?」
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