雪うさぎ

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お仕置き

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ルイージ公爵家に来て2日目の荷解きが漸く落ち着いた頃、いよいよ婚約者であるステファノが屋敷に帰宅する知らせが届いた。

マッシモの起こした事件を担当するに当たり、聖地ザバーニへ行ってしまっていた為エンマはこのひと月余りステファノに会えていなかった。

ステファノ様が帰ってくる…

なんだろう。逃げ出したい!

手紙を抱える様にして顔を赤くし身悶えてしまう。嬉しいと恥ずかしいが脳内で大暴れしていたのだ。

ニマニマした笑いを抑えもしない伯爵家から付いてきてくれた侍女のニーナと公爵家でエンマ付きとなってくれたマーニャが二人で楽しそうに朝の支度を手伝ってくれる。
いたたまれない!
「もう!2人ともひどいわ!」
くそぉ、ニーナは昨日の夜からおかしな事ばかり言うし。
「エンマ様、昨日も申しましたが、新しく新調しました下着や変えのナイトドレスはこちらに。ですが恥ずかしいことなどございませんので、どうぞ何かありましたら昼夜問わず私共をお呼びください。」

そうそうこんな感じ…で…

「な、何度も言わなくてもわかってるわ!…でも、ほら、婚約したとは言えまだ未婚なのだし…その、そんな心配なんて」

「お嬢様!今の時代にその様なご心配は不要ですわ!」
「ええ、そうですわ?親子の鑑定を出来る魔道具が出来てからは皆様婚約期間中に子作りなさいますし。」
「…え?」

ええ?

「…まさか、お嬢様、教育係の御説明を聞いてませんでしたね?」

あ、そう言えば、昔は、って前置きで血筋を間違いなく残す為半年ほどの婚約期間を設けるとか、なんとか、あれ?

「え?では今はそれほど長くは婚約期間を設けないのです?」
「今は花嫁を迎える支度の為に数ヶ月から数年とそれぞれの婚約期間を設けている方がほとんどだと思います」

「ですが、エンマ様とステファノ様は光の月の日にご結婚されますし、三ヶ月も有ればお腹よりも悪阻にご注意が必要かも知れませんね?」

あら、本当だわ?などと納得顔のニーナとそうでしょう?と言った顔のマーニャをエンマは口をぱくぱくして見ていた。

あれ?もしや、私、貞操の危機?


1日中そわそわし通しのエンマだったが、晩餐が終わり未だに帰ってくる気配の無いステファノをもしや、急なお仕事で帰りが遅れて延期になったのかな?と思うようになった。
そんなに楽しみで仕方なかったわけじゃないけど、でも、ほらずっと話し相手が少ない状態で、ちょっと楽しみにしていただけだもの。

エンマは誰に言い訳する必要も無いのにそんな事を考えながらしょんぼり肩を落としながら部屋へと戻った。
この屋敷には今、公爵夫妻が王宮に詰めている為エンマと使用人達しかいない。
公爵様は騎士団長から数年前に軍務長官となったので1年のほとんどを王宮に部屋がありそちらで生活を送っている。
そんな公爵に代わりこの公爵家の管理一切は夫人と管理人数人と執事長で管理しているのだ。
エンマが越してきた当日は忙しくされているにも関わらず歓迎の挨拶にと来てくださった。

でも直ぐに王宮に戻ってしまったため、なんだかやっぱり人恋しい。
ステファノ様とお話がしたいな?
出来れば、マッシモの事件の真相なんかも教えて貰いたい。
「湯浴みの御用意が整いました」
「ええ、ありがとう」

湯浴みを終えまたも事件の事を考えていた。ぼんやりするエンマの髪を数人かかりで乾かしているところにステファノの声が聞こえて来て事件の真相を考えぐるぐるしていたエンマを一気に現実へと呼び戻した。

「あ、おかえりなさいませ、ステファノ様」
「ああ、今帰った」
鏡台から立ち上がった状態のエンマを少し疲れた顔のステファノが目を細めじっと見つめてくる。

エンマはもじもじしだした。どーしたらいいのだ。なぜじーっとみてくるの?あ、お風呂上がりですっぴんだから?日中お化粧をそんなにして無いつもりが、もしかして別人に見えてたり?すっぴん別人詐欺師みたいな?

あ、あれ!?

エンマは狼狽えさ迷う眼差しを侍女達に向けようとして、はたと気づいた。
いない…だと…

みんなの姿はどこにも無かった。
先程まで髪を乾かす為に5人はいたはずだ。

それなのに…誰もいなーい!?

「エンマ」
「ふひゃ」
ステファノに名を呼ばれたと思ったら既に抱きしめられていた。

なんだかステファノの匂いがする。
当たり前なの事になんだかステファノが帰ってきたのが実感できた。すぐ側に少し逞しい身体があって抱き締め返してくれる存在がすごく嬉しい。

「エンマ。それで、なぜザバーニのあの男を呼び捨てにして俺には未だ様、付けなんだ?」

軽く聞いた風を装うならばせめてその恐ろしいツンドラなお声はやめてください。怖いですわ!

「あの、マッシモ…くん?とは、学園の入学式からのお友達なの。彼は腰まである黒髪の片方を複雑な編み込みになさっていて、まだ背も低くて、とても可愛らしかったから、わたしてっきり女の子だと思ってたの。」

深夜に差し掛かりエンマの脳みそは営業時間外となったようで喋る速度は遅くうとうとしてきていた。

「…それは、まぁ同情の余地が無くもないな…」

神妙な声だった。やはり女の子扱いで女生徒達と名前呼びしよー!と、言う流れは不味かったようだ。しかしエンマだけでは無くアンジェリーナやジェニファーを初め、仲の良かった女生徒達はマッシモを呼び捨てだったし、マッシモは拒否しなかった。

成長しても線は細くまるで凛々しい美女のようで男性だと未だに思えなかったとは、流石に言えなかったけど。
そう、ぽやぽやしながら必死に説明した。

「いや、エンマ、もういい。凄まじく哀れになってきた」

あれ?ステファノ様が苦い顔をしてる…なんで?

「んっ」
「エンマ、もう他の男の名を呼ばないでくれないか」
「は…んぁ」
「はい、だろ」
いやいやいや、ステファノ様が唇を奪うから。
「まぁ、いい。2度と他の男の名など呼ぼうと思えくしてしまえば…」
「ステファ…ん、待っ…て」

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