この世界で唯一の猫は俺~捕獲対象として賞金掛けられたが、相棒の黒龍(卵)とのんびり旅します

ロゼ

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旅の始まり

明日のために

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 とりあえず宿屋を襲撃されることはなさそうなので、一先ず宿屋へと戻った。

「よりによってデビル・ブラザーズに狙われることになるなんてなぁ……」

 ため息しか出ない。

 確かに猫の俺はケルベルースを倒せるまでに成長しているが、相手はあの・・デビル・ブラザーズだ。

 下手したらケルベルースよりも強い可能性がある。

『何じゃ? よもや、倒せる自信がないのかの?』

「あるわけないだろ? あいつら賞金首のお尋ね者だぞ!? どれだけ強いのかすら分からねぇのに、勝てる自信がどっから湧くんだよ!?」

『であればスキルを磨くしかあるまい? 時間もないことだしの、今から狩りに行けば朝までには強くなっておろう?』

「お前は鬼か!?」

『我は黒龍じゃな。今は卵じゃがの』

「言葉の綾だよ! まさか、俺に寝ずに狩りをしろって言ってるのか?」

『自信がないのじゃろ? さすれば身体能力強化のために修行の一環として狩りをして、ネコとしての能力値を上げるしかあるまい?』

 サラッと簡単に言うが、人間はしっかり寝てしっかり食ってこそ本来の力が出せるものだ。

 昨日の夜から一睡もしていない今の俺は、非常に眠いのだ。

 だが、言われていることも分かる。

 ここは自分の命がかかっているのだから、狩りをして少しでも能力を強化したほうがいいことは重々承知しているのだが、本当に眠い。

 とりあえず猫になってみたが、体が重くていうことを聞いてくれない。

『行かぬのか?』

 シャンテの声が聞こえたが、俺はベッドの上でそのまま眠ってしまった。

 どのくらい時間が経ったのか、目を覚ますとまだ辺りは暗かった。

『起きたのか?』

『寝ちまった……どのくらい寝てた?』

『かれこれ一時間半と少々といったところかの』

『何だ、それくらいなのか……』

「クワァァ」と欠伸をしながら体を伸ばす。

『あれ? 体が軽くなった』

『眠って疲れが取れたのではないのか?』

 これなら狩りに行けそうである。

 窓から部屋を抜け出して、民家の屋根の上を移動し、町を囲っている塀を伝い町の外に出た。

 相変わらず道だけがぼんやり光っていて草地のほうは暗いのだが、視界はきちんと確保出来ている。

 夜は特に魔物が活発になるため、草原にはあちらこちらに魔物の姿が確認出来るのだが、ウサータやケルベルースよりも大きな魔物が多い。

『これ、俺、死ぬんじゃ……』

『安心せい。もしもの時は我も加勢する』

『もしもじゃなくても加勢してくれていいんだが?』

『それじゃとそなたの能力が上がらんぞ? それに、ガクに勘づかれるやもしれんしな。我が手助けするのは、本当にアースが危機に晒された時のみじゃ』

 世知辛い……。

 道からすぐのところに象ほどデカい魔物がウロついているが、あいつは無視である。

 まだその時ではない……笑ってくれていいぞ。デカさにビビってるのは間違いないからな。

 象サイズの魔物は同族の魔物とぶつかり合いの争いを始めたので、その隙に背後を走り抜けた。

 少し走るとケルベルースを見付けたので戦いを挑み、前回よりあっさりと倒した。

 確実に強くなっているのを実感したのだが、ケルベルースよりも少し大きい位の魔物を探してみても、それ以上にデカいのしかいない。

『とりあえず戦ってみれば良いのではないか? ほれ、あれならばここらではまだ小さい部類ではないかの?』

 シャンテが言っているであろう方向を見ると、巨大な熊のような魔物が木に体を擦り付けていた。

『あれ、何て魔物だ?』

『あれは「ドスベアー」じゃな』

『ドスベアー……』

『牙に毒があるからの、噛まれぬように気を付けることじゃ。体が大きい故、さほど俊敏さはない魔物じゃ。皮膚は固いが、何とかなるじゃろ』

 茶色っぽい皮膚はカサついていて、見るからに固そうではあるが、問題は毒の牙だ。

『毒があるやつと戦うのか!?』

『噛まれなければいいのよ』

『無理だろ!』

 そんなやり取りをしていたら、ドスベアーの方が俺に気付いてしまったようで、ドドドッと地面を揺らしながら四足でこちらに走ってきた。

『来ちゃったじゃねぇかよぉぉおお!!』

『戦って倒せ! アースなら出来る!』

 シャンテに後押しされ、戦闘がスタートした。

 走る速度はそこそこ早いが、体が大きい分小回りが利かないようで、ケルベルースに比べると動きがゆっくりしているように感じる。

 走る時は四足だが、戦闘状態では立ち上がって二足になるため尚更動きが鈍くなる。

 気を付けるべきは毒があるという牙と黒い爪の生えたデカい前足だろう。

 振り下ろされた前足をヒョイとかわし、体の横に回り込み後ろ足に爪を立ててみたが、本当に皮膚が固いようでかすり傷程度の傷しか付けられない。

『か、固すぎないか!?』

『何とかなるじゃろ』

 再度後ろ足に爪を立てて引っ掻き、横からスイングするように振りかざされた前足をかわし、ドスベアーの前足に乗って腕? を駆け上がり肩まで上ると、顔までジャンプをし何度も引っ掻いた。

 これは効果があったようでドスベアーは前足で顔を押さえながら「グォォオ!」と鳴き声を上げた。

 悶絶している間に腹に連続で猫パンチを繰り出す。

 効いたようで腹を押さえるように前傾姿勢になったので、飛び上がり、落下の勢いを乗せた猫パンチを後頭部に一発決めるとドスベアーが膝をついた。

 しかしすぐに立ち上がると、両方の前足を上げて大きな唸り声を上げた。

「グァァァアア!!」

 空気がビンビンと震える咆哮に一瞬体が硬直したが、すぐに動けるようになった。

 負けじとこちらも「フシャァァアア!!」と毛を逆立てて威嚇をする。

 ドスベアーが俺と同じく一瞬だけ固まったので、その隙を見逃さず、走りながら後ろ足に思い切り爪を立てる。

 確かな手応えを感じ、ターンをしてもう一度後ろ足を切り付けるイメージで爪を立てると、ドスベアーの皮膚が大きく裂けて血が吹き出した。

 しかし、ここで少しマズイことが起きた。
 
 ドスベアーの血の匂いを嗅ぎつけたのか、他の更に大きな魔物がこちらに向かって数匹走ってきたのだ。

『少々分が悪そうじゃの』

『少々じゃねぇだろ!!』

『戦略的撤退とい』
『逃げるぞ!!』

 追ってくるドスベアーを気にすることなく全力で走った。

 途中チラッと後ろを振り返ると、ドスベアーは数匹の大型魔物に囲まれていた。

『ありゃ、助からんの』

 シャンテの声に無言で同意した。
 
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