この世界で唯一の猫は俺~捕獲対象として賞金掛けられたが、相棒の黒龍(卵)とのんびり旅します

ロゼ

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王都へ

幼馴染

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 そっと洞窟内に侵入する。

 見張りなどは誰もいないが、奥の方から声が響いている。

 声のする方に進んでいくと一番奥が拓けていて、五人の男達と、女を二人はべらせて一人だけ立派な椅子に座っている男が見えた。

 椅子に座っている男に見覚えがあった。

『ラッセル!?』

『知り合いか?』

『故郷が一緒の幼馴染だよ』

 幼馴染だとはいってと仲がいいとかではない。

 あいつは町の俺ら世代の子供達の中の頂点で、俺は最下層。

 派手好きで見栄っ張りで気に入らないとすぐにキレるあいつに、俺はいつも使いっ走りに使われていたのだが、成人の十八になった次の日にあいつは町を出て行って解放された。

「大物になってやる!」

 そんな言葉を残して行ったが、その結果がこれか?

『大物のぉ……随分とスケールの小さい大物じゃの』

 あいつのことだ、本気で大物になるつもりでいたのだろうが、上手くいかなくて悪事に手を染めたのだろう。

『どうする? 見逃すのか?』

『そうはいかないだろう』

 よく観察していると、ラッセルが腰を抱いている女性達は怯えた表情をしている。彼女達もどこかから連れ去られてきたのかもしれない。

『暴れるのか?』

『でも、あいつ獄火ヘル・ファイヤーがつかえるんだよな』

『ほう、獄火とな』

 獄火とは青白い火の魔法で、普通の火よりも高音で燃え盛りなかなか消えない。

 威力がデカいとブスブスと骨まで焼き尽くしてしまうことから獄火なんて物騒な名が付いたと言われている魔法だ。

 一度だけだがあいつの手から青白い火が出るのを見たことがあった。

「ふざけんな! 昨日も今日も稼ぎがなしだ!?」

 ラッセルが荷馬車にいた男達を怒鳴りつけている。

 その声に表情を強ばらせている女性達。男達の表情はこちらからは見えない。

「申し訳ありませんっ! ドスベアーに襲われまして」

「んなもん倒しゃいいだろうが! そんなことも出来ねぇのか!? 四人もいて何してやがる!」

 ラッセルが女性の腰から手を離し、手のひらにボワッと青白い火を出した。

「ヒィッ! お許しを!」

 それを見た男達が怯えたような声を上げている。

『獄火と言ったな? あれがそうか?』

『あぁ、あれだ』

『クハハハハ! あれが獄火とな?』

『違うのか!?』

『似ても似つかん別物よ。あれは単なる青火ブルー・ファイヤーじゃな』

 青火と獄火は火の色だけが同じだが、その実態は全く異なる魔法だそうだ。

 獄火は高温の火だが、青火は触っても熱くないらしい。

 熱を嫌う場所などの光源としては重宝される魔法らしいが、攻撃力は全くない生活魔法の一つなのだそうだ。

 そうとは知らずに、青白いというだけで獄火だと思い込み怯えていた俺らや今目の前にいるもの達が実に滑稽である。

『獄火と思い込ませここまでのし上がったのならば確かに大物じゃの』

 シャンテが皮肉を言っていた。

『多分、あの女の子達も捕まって連れてこられたんだと思う』

『そのようじゃの。ほれ、足を見てみぃ。鎖で繋がれておるわ』

 向かって右側にいる女の子の足首に足枷が見えた。

『助けるしかねぇよな』

『思う存分暴れよ。昔の恨みもあろうしの』

『こんなことで恨みを晴らすつもりはねぇよ』

 とは言ったが一発くらいあいつにぶちかましてやりたい気持ちは強かった。

 駆け出してラッセルの前にひざまづいている男の背に乗り、そこからジャンプでラッセルに近付いて猫パンチをお見舞いすると、ラッセルは面白いほど吹っ飛んで動かなくなった。
 
『え? 俺、やり過ぎた?』

『死んではおらんわ。気絶しておるだけじゃ。まぁ、骨の数本は逝っておるじゃろうがの』

「な、何だ!?」
「魔物なのか!?」
「ボスが一撃で!?」

 俺に視線が集まっているのが分かる。

 振り返って「フシャァァァア!」と威嚇をすると男達はパタパタと倒れてしまった。

『は!? 何だこれ!?』

『魔物相手に戦っておったのじゃ。人間に使えばこうなるじゃろうな。余程強い人間でなければ、アースの威嚇には耐えられんじゃろ』

 いつの間にか自分がここまで強くなっていたことを知り、人間相手には加減しようと思った。

『あの鎖、どうすりゃいいかな?』

『今のアースなら切れるのではないか? あの鎖、錆び付いておるしの』

 錆びた箇所に狙いを定め爪でスパッと切り付けると、鎖はあっさり切れてしまった。

「た、助けてくれたの?」

 小麦色の髪をした女の子が俺を見ながらそう言ったので「ニャー」と一鳴きしておいた。

 髪の色からしてそこそこ高貴な女の子ではないかと思う。

 もう一人の女の子は俺と同じ黒髪黒目だが、瞳の大きな美人である。

 小麦色の髪の女の子は俺と同じくらい、黒髪の女の子は俺より少し年上といった感じだろうか?

『こいつらどうしようか?』

『放っておけばまた悪事を働くかもしれんしの。役所に差し出すべきじゃろうが……ギースを連れてくれば良かったの』

 とりあえず全員をシャンテが魔法で拘束してくれたので、目が覚めても動くことは出来ないだろうが、収納カバンに入れて連れていくことも出来ないため、俺にはどうしようもない。

「ニャー様?」

 ラッセル達を前に考えていた俺(猫)に小麦色の髪の子が声をかけてきた。

『ニャー様って俺のことか?』

『アースしかおらんじゃろ』

「ニャー様? 何かお困りなのですか?」

 まっすぐ俺を見ているので、俺で間違いないようだ。

「ニャー(それやめてくれねぇか?)」

「あぁ……何と愛らしい声……」

 頬を染める小麦色の子……え? 俺、惚れられた? この姿なのに?

「お困りなのでしょう? 私に出来ることはございますか?」

「ニャ、ニャー(マジでそれやめてくれねぇ?)」

「この者たちをどうするか、お困りなのですね?」

 男達を前にしながら女の子にオロオロしていたのをそう解釈してくれたようだ。

「ナルシア! あなたもニャー様に助けられたのだから、手伝いなさい!」

 やはり高貴な身分の子なのだろう。声に威厳を感じる。

「は、はいっ!」

 呼ばれた黒髪の女の子は俺を怯えたように見ながらもこちらにやってきた。

「この男達をどうするか、あなたも考えなさい!」

「役所につき出せば……」

「私達とニャー様だけでそれが出来るとでも!?」

「ですが、私とお嬢様だけではどうにも」

「では、あなたが役所まで走って人を呼んできなさい!」

「ここがどこなのかも分からないのにですか!?」

「場所の把握くらいしているわ! 山を降りて南に走れば魔獣の森手前の訓練所に辿り着ける」

『おいおい、女の子一人で行かせるなんて無理だろ』

 そう口にしたのだが、俺の今の声が届くはずもなく、黒髪の女の子ナルシアは洞窟を飛び出して行った。
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