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王都へ
初めての野宿
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「もうさ、疲れたから今日はここで野宿しようぜ」
「疲れたんですか?」
『脆弱じゃの』
「何とでも言え!」
とりあえず二人分の寝袋を出してみたのだが「僕はいらないですよ」とギースに笑顔で言われてしまった。
「窮屈な袋に入って寝たくはないですから」
寒くはないのだろうかと思ったが、ここよりももっと寒い地域に元々は住んでいたため全く寒くないらしい。
「むしろ少し暑いくらいですね」
初夏を迎えているとはいえ朝晩は少し冷え込むことが多いのに平気とはやはり地龍だ。
『ところで、飯は食わんのか?』
「ご飯ですか!?」
シャンテの顔は分からないが声の感じからして期待がこもっているのが分かる。
ギースもキラキラした目で俺を見てる。
「さっきサーベルダイル食ったんだろ?」
「サーベルダイルは別腹ですよ! ご飯はご飯です!」
別腹の分量がおかしすぎないか!?
「分かったよ。俺も多分夜中に腹減って起きそうだからな。簡単なものでも作るよ」
固くなって安売りしていた食パンを厚めに切り、卵と牛乳と少しの蜂蜜を入れた液に浸し焼く。
これは前世で唯一母親と作ったことがあった料理で、この世界ではきっと俺しか知らないだろう。
記憶を取り戻した今なら簡単に作れる。
そう「フレンチトースト」だ。
表面を少しカリッとするまで焼いたら砂糖を振りかける。
本来なら粉砂糖なんてもんを掛けたり、生クリームやアイス、ジャムなどを乗せたりするようだが、俺は前世の母親と作ったシンプルな砂糖がかかったものの方が好きだ。
「何ですか、それ?」
『初めて見るのぉ』
「フレンチトーストだ!」
『何じゃ、その耳慣れぬ名の食べ物は!?』
「甘い匂いがします」
「まぁ、食ってみろよ!」
俺が一口食べると、ギースが怖々と一口頬張った。
「甘い! 柔らかい! こんなに柔らかい食べ物初めて食べました! 美味しい!」
ギースが小刻みに揺れながら美味しさを全身で表現している。
『そんなに美味いのか!? どれ、我も』
シャンテの前に置いたフレンチトーストがスーッと卵に吸い込まれていった。
『んっ!? こ、これは!? 何じゃこれは!? 何なんじゃこれは!?』
「口に合わなかったか?」
『美味い! 美味いぞ! 甘くて美味い! 玉子と牛乳を吸い込んだ食パンが溶けるほど柔らかいのに側はカリッとしておるぞ! アースは天才か!? そなたには料理の才能があるぞ!』
口に合ったようだ。とても褒められた。
この世界、甘味系のおやつやスイーツは庶民にはなかなか手が届かない高級品で、ケーキなんかは貴族や富豪の食べ物である。
庶民が食べるケーキもあるにはあるが、スポンジはパサパサ、食感は悪く甘味は少ない。
クリームなんてカスタードクリームがちょっと塗ってあれば上出来で、真っ白い生クリームなどはそうそう口に入らない。
カスタードクリームや生クリームは商店やレストラン、菓子店の秘伝とされているため作り方を知っているものも少ない。
前世を思い出したので、きっとカスタードクリームくらいは作れるだろう。
何せ前世ではずっとベッドの上にいたから色んな本を読んでいて、その中には「子供でも作れる簡単料理」なる本もあったので、作り方や材料は知っている。
何度か試してみればそのうち成功するだろう。
そうしたら丸パンにカスタードクリームを挟んだクリームパンも食べられるだろう。楽しみである。
その後シャンテとギースはフレンチトーストで食パンを食べ尽くし、また今度作る約束をさせられた。
まさかこんなに好評だとは思わなかった。
もしかしてフレンチトーストの店でも作れば客がわんさか来るんじゃないか? ……いや、来すぎて一日中フレンチトーストを焼くだけの人間にはなりたくないな。
日も暮れてきたので休むことにした。
風呂に入りたかったが一日くらい我慢である。
猫の姿になり全身の毛を手足で撫で付けると毛艶が格段に良くなった。
『便利よの。撫でるだけで綺麗になるとはの』
本当に便利だと思うが、やはり風呂にはきちんと入りたい。
猫の姿のまま寝袋に潜り込む。
星を見上げてみようと思ったが、木々が邪魔で空が少ししか見えず諦めた。
「なぁ? そういえばギースは何で王都まで行くんだ?」
そう言えば聞くのを忘れていたことを聞いてみた。
「野良のワープゲートが開いてしまって、そこに吸い込まれてここまで来てしまったんです。元の場所と繋がっているワープゲートがどこにあるか分からず、もう何日もさまよっていたんですが、シャンテ様に王都の傍にその気配があると教えていただきまして、そこへ向かおうと思ってます」
ワープゲートとはそれぞれ別の空間と空間が繋がっており、一瞬で別の場所へと移動出来る便利なものだ。
自然界に突然現れ、それを魔法で固定すると「管理ゲート」と呼ばれる国が管理する移動手段となり、通行料を払えば誰でも利用出来る。
何故現れるのか解明されていないようだが、魔法固定されていないゲートのことは「野良」と呼ばれており、一定時間が経過するとどこかへと消えてしまう。
それに巻き込まれて他国にまで飛ばされてしまったなんて話もたまに耳にする。
ギースもそれに巻き込まれた口のようだ。
「別にこの辺りに住んでもいいかと思ったんですけど、やはり住み慣れた場所の方が落ち着きますしね」
親兄弟と群れる性質はないようだが、やはり故郷の方がいいに決まっている。
そこを追い出された身だからこそよく分かる。
「ちゃんと帰れるといいな」
「そうですね……でも、このままアースさんと旅をするのも楽しそうですけどね」
嬉しいことを言ってくれる。
出会ってまだそんなに経っていないのに、随分長いこと一緒にいるような気がするから不思議だ。
虫の鳴き声や魔物達の唸り声を聞きながらいつの間にか眠りに落ちていた。
深い眠りの中、前世の夢を見た。
両親に手を引かれて一度だけ行った遊園地。
体のことがあり大半の乗り物は見ているだけだったが、観覧車には乗れたため、何度も乗ったものだった。
段々高くなる視界に最初は恐怖を覚えたが、辺りが一望出来、のんびりと一周する観覧車からの景色にすっかり魅了されていた。
両親は楽しそうにしている俺を嬉しそうに見ていた。
幸せな気分で穏やかに目が覚めた。
「疲れたんですか?」
『脆弱じゃの』
「何とでも言え!」
とりあえず二人分の寝袋を出してみたのだが「僕はいらないですよ」とギースに笑顔で言われてしまった。
「窮屈な袋に入って寝たくはないですから」
寒くはないのだろうかと思ったが、ここよりももっと寒い地域に元々は住んでいたため全く寒くないらしい。
「むしろ少し暑いくらいですね」
初夏を迎えているとはいえ朝晩は少し冷え込むことが多いのに平気とはやはり地龍だ。
『ところで、飯は食わんのか?』
「ご飯ですか!?」
シャンテの顔は分からないが声の感じからして期待がこもっているのが分かる。
ギースもキラキラした目で俺を見てる。
「さっきサーベルダイル食ったんだろ?」
「サーベルダイルは別腹ですよ! ご飯はご飯です!」
別腹の分量がおかしすぎないか!?
「分かったよ。俺も多分夜中に腹減って起きそうだからな。簡単なものでも作るよ」
固くなって安売りしていた食パンを厚めに切り、卵と牛乳と少しの蜂蜜を入れた液に浸し焼く。
これは前世で唯一母親と作ったことがあった料理で、この世界ではきっと俺しか知らないだろう。
記憶を取り戻した今なら簡単に作れる。
そう「フレンチトースト」だ。
表面を少しカリッとするまで焼いたら砂糖を振りかける。
本来なら粉砂糖なんてもんを掛けたり、生クリームやアイス、ジャムなどを乗せたりするようだが、俺は前世の母親と作ったシンプルな砂糖がかかったものの方が好きだ。
「何ですか、それ?」
『初めて見るのぉ』
「フレンチトーストだ!」
『何じゃ、その耳慣れぬ名の食べ物は!?』
「甘い匂いがします」
「まぁ、食ってみろよ!」
俺が一口食べると、ギースが怖々と一口頬張った。
「甘い! 柔らかい! こんなに柔らかい食べ物初めて食べました! 美味しい!」
ギースが小刻みに揺れながら美味しさを全身で表現している。
『そんなに美味いのか!? どれ、我も』
シャンテの前に置いたフレンチトーストがスーッと卵に吸い込まれていった。
『んっ!? こ、これは!? 何じゃこれは!? 何なんじゃこれは!?』
「口に合わなかったか?」
『美味い! 美味いぞ! 甘くて美味い! 玉子と牛乳を吸い込んだ食パンが溶けるほど柔らかいのに側はカリッとしておるぞ! アースは天才か!? そなたには料理の才能があるぞ!』
口に合ったようだ。とても褒められた。
この世界、甘味系のおやつやスイーツは庶民にはなかなか手が届かない高級品で、ケーキなんかは貴族や富豪の食べ物である。
庶民が食べるケーキもあるにはあるが、スポンジはパサパサ、食感は悪く甘味は少ない。
クリームなんてカスタードクリームがちょっと塗ってあれば上出来で、真っ白い生クリームなどはそうそう口に入らない。
カスタードクリームや生クリームは商店やレストラン、菓子店の秘伝とされているため作り方を知っているものも少ない。
前世を思い出したので、きっとカスタードクリームくらいは作れるだろう。
何せ前世ではずっとベッドの上にいたから色んな本を読んでいて、その中には「子供でも作れる簡単料理」なる本もあったので、作り方や材料は知っている。
何度か試してみればそのうち成功するだろう。
そうしたら丸パンにカスタードクリームを挟んだクリームパンも食べられるだろう。楽しみである。
その後シャンテとギースはフレンチトーストで食パンを食べ尽くし、また今度作る約束をさせられた。
まさかこんなに好評だとは思わなかった。
もしかしてフレンチトーストの店でも作れば客がわんさか来るんじゃないか? ……いや、来すぎて一日中フレンチトーストを焼くだけの人間にはなりたくないな。
日も暮れてきたので休むことにした。
風呂に入りたかったが一日くらい我慢である。
猫の姿になり全身の毛を手足で撫で付けると毛艶が格段に良くなった。
『便利よの。撫でるだけで綺麗になるとはの』
本当に便利だと思うが、やはり風呂にはきちんと入りたい。
猫の姿のまま寝袋に潜り込む。
星を見上げてみようと思ったが、木々が邪魔で空が少ししか見えず諦めた。
「なぁ? そういえばギースは何で王都まで行くんだ?」
そう言えば聞くのを忘れていたことを聞いてみた。
「野良のワープゲートが開いてしまって、そこに吸い込まれてここまで来てしまったんです。元の場所と繋がっているワープゲートがどこにあるか分からず、もう何日もさまよっていたんですが、シャンテ様に王都の傍にその気配があると教えていただきまして、そこへ向かおうと思ってます」
ワープゲートとはそれぞれ別の空間と空間が繋がっており、一瞬で別の場所へと移動出来る便利なものだ。
自然界に突然現れ、それを魔法で固定すると「管理ゲート」と呼ばれる国が管理する移動手段となり、通行料を払えば誰でも利用出来る。
何故現れるのか解明されていないようだが、魔法固定されていないゲートのことは「野良」と呼ばれており、一定時間が経過するとどこかへと消えてしまう。
それに巻き込まれて他国にまで飛ばされてしまったなんて話もたまに耳にする。
ギースもそれに巻き込まれた口のようだ。
「別にこの辺りに住んでもいいかと思ったんですけど、やはり住み慣れた場所の方が落ち着きますしね」
親兄弟と群れる性質はないようだが、やはり故郷の方がいいに決まっている。
そこを追い出された身だからこそよく分かる。
「ちゃんと帰れるといいな」
「そうですね……でも、このままアースさんと旅をするのも楽しそうですけどね」
嬉しいことを言ってくれる。
出会ってまだそんなに経っていないのに、随分長いこと一緒にいるような気がするから不思議だ。
虫の鳴き声や魔物達の唸り声を聞きながらいつの間にか眠りに落ちていた。
深い眠りの中、前世の夢を見た。
両親に手を引かれて一度だけ行った遊園地。
体のことがあり大半の乗り物は見ているだけだったが、観覧車には乗れたため、何度も乗ったものだった。
段々高くなる視界に最初は恐怖を覚えたが、辺りが一望出来、のんびりと一周する観覧車からの景色にすっかり魅了されていた。
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