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王都
女将の過去
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夕飯を食べ終え部屋に戻ったのだが、満腹過ぎて動けそうになく、その日はそのまま眠りについた。
風呂はいつでも入っていいと言われているので朝風呂を堪能しようと思う。
夢の中にまで女将飯が出てきて、何とも満たされた気持ちで目が覚めた。夢の中でもたまらないほど美味いとは反則すぎだ。
「さて、風呂に入ってくるか」
『我も行くぞ!』
「僕も!」
三人で風呂に行くと、中から聞き覚えのある声の鼻歌が聞こえてきた。
嫌な予感を覚えつつも風呂場に入ると、腰にタオルを巻き、頭にフリフリのついた風呂用の帽子のようなものを被った女将がマッスルポーズを取っていた。
「キャァァァア!」
俺達に気付くとけたたましくも少しばかり野太い声で悲鳴を上げて、腕で胸と下半身を隠した女将。
『見とうないものを見てしまったわ』
『あぁ……』
心が女性なのは理解しているが、体は俺と同じ男(しかもマッチョ)。そんなの見たところで何とも思わないのだが、女将は違うのだろう。難しい。
「ご、ごめんなさいっ! 私ったらみっともなく悲鳴なんか上げちゃって」
相変わらず上下を太い腕で隠したまま、女将が頬を染めて謝罪してきた。
「いやいや、こちらこそ驚かせてしまってすみません」
「いえ、いいの……うふ♡」
なぜか三人(本当は四人)で入ることになった風呂。
女将の視線を感じながら体を洗い風呂に入った。
『ギース、大丈夫なのか?』
『長風呂でなければ大丈夫じゃろ』
「大丈夫ですよ、ありがとうございます」
風呂は床は全部切り出し磨かれた石の床で、洗い場には座って体が洗えるように木製のベンチが置かれている。
浴槽は木造でほんのり乳白色の湯が満ちている。
壁側に立っている小さな女神像の水瓶から湯が浴槽に常に注がれている掛け流しタイプだ。
先に湯に入っていた女将とは離れた場所にギースと並んで入る。
心做しか少しとろりとした湯質で肌がツルツルになりそうである。
「どうです? 私の温泉は?」
ススーッと隣にやって来た女将。
「少しトロッとしてますね。肌がツルツルになりそうですね」
「あら、分かります!? この温泉、化粧水の湯なんて言ってるくらいお肌がツルッツルになるんですよ。ほら、毎日入ってるから私のお肌ツルツル」
ムッキムキの腕を湯から出して披露してきた女将。確かに肌はツルツルのようだが、肌よりもその筋肉に目がいってしまう。
「この温泉と私の料理で絶対繁盛させてやるわ! って息巻いてたんですけどねぇ……現実は厳しいわね」
ため息を吐きながら女将が寂しそうに言った。
『こやつはなぜカルロッソを辞めたのじゃろうの? そこで働いておる方が安泰だったじゃろうに』
それは俺も気になっていたが、聞いていい話題なのか分からないため聞かずにいる。
「何でカルロッソ辞めちゃったんですか?」
なのにギースがサラッと聞いてしまった。
「ちょっ、おまっ、駄目だろ、そんなこと聞いちゃ!」
慌てて止めたが口にした言葉は引っ込められるはずもない。
「あぁ、いいんですよ。聞いてもつまらない話ですけどね、聞いてくださる?」
そう言うと女将はポツポツと話し始めた。
女将は二年前までカルロッソの総料理長を務めていたそうだ。
だからあの料理の美味さだったのか! と思わず納得してしまった。
元々辞める気などなかったそうなのだが、オーナーが代替わりをし、新しいオーナーの傍若無人ぶりに他のシェフ達から次々と苦情が上がり、店を辞めるものまで出てきたため、総料理長だった女将がオーナーに苦言を呈したそうだ。
「このままでは店が立ちいかなくなります! 元のやり方に戻してください! って、当たり前のことを言っただけなんだけどね」
カルロッソで働いている間は第三の性は隠していたため普通の男性として働いていたそうだ(いや、絶対漏れ出ていたと思う、うん)。
抗議したことに怒った新オーナーは女将をクビにしてしまったらしい。
「私もいい歳だからそろそろ引退は考えていたんだけど、私の代わりを務められる子を育ててからって思ってたのよね……」
いい歳だと言うがどう見ても四十代前半、まだまだ働き盛りだろう。
「私が辞めてから、カルロッソの評判は下がる一方……先代が急に亡くなって、養子だった現オーナーが店を継いだのはいいの、仕方のないことだもの……でも、お世話になった先代が大切にしていたカルロッソの評判が落ちていくのは辛いわね……ヤダ、私ったら、こんなことお客様にペラペラと、ごめんなさいね」
女将のこの言葉を聞いた俺は嫌な予感しか感じていなかった。
『きな臭いのぉ』
ほら来たよ!! こういう話、間違いなくシャンテは大好物なのだ!
『オーナーが代わると体制も代わる。よく聞く話だぞ?』
とりあえず当たり前のことを言ってみたのだが、シャンテの好奇心は膨れ上がり始めていた。
『先代が突然亡くなったというのも何やら気になる。アースよ、先代は病気だったのか聞いてみよ!』
『ヤダよ、何でそんなこと』
『良いから聞け! はよぉ!』
聞かなければうるさそうなのでとりあえず聞いてみた。
「亡くなる前日まではとても元気だったわ。病気をしているなんて聞いたこともなかったし。まぁ、シェフの私にそんな話はしないでしょうから知らなくて当然だけど……でもまだ私と大して変わらない歳だったから、亡くなったと聞いた時はショックで三日ご飯が食べられなかったわ」
「女将は何歳なんですか? オーナーさんは?」
空気を読まないギースが笑顔でそんなことを聞いた。
「私? 四十二よ? オーナーは四十五だったの……早すぎよね……せめてお顔だけでもってお願いしたけど、密葬にするってお別れすら出来なかったわ……」
『ほぉ……』
これはもう確定じゃないのか? 俺、また偵察とかさせられちゃうパターンじゃないのか?
『アースよ、後でカルロッソに行ってみるぞ!』
ほらぁ!!
『何で!?』
『気になるじゃろ!』
やはり確定のようである。
風呂はいつでも入っていいと言われているので朝風呂を堪能しようと思う。
夢の中にまで女将飯が出てきて、何とも満たされた気持ちで目が覚めた。夢の中でもたまらないほど美味いとは反則すぎだ。
「さて、風呂に入ってくるか」
『我も行くぞ!』
「僕も!」
三人で風呂に行くと、中から聞き覚えのある声の鼻歌が聞こえてきた。
嫌な予感を覚えつつも風呂場に入ると、腰にタオルを巻き、頭にフリフリのついた風呂用の帽子のようなものを被った女将がマッスルポーズを取っていた。
「キャァァァア!」
俺達に気付くとけたたましくも少しばかり野太い声で悲鳴を上げて、腕で胸と下半身を隠した女将。
『見とうないものを見てしまったわ』
『あぁ……』
心が女性なのは理解しているが、体は俺と同じ男(しかもマッチョ)。そんなの見たところで何とも思わないのだが、女将は違うのだろう。難しい。
「ご、ごめんなさいっ! 私ったらみっともなく悲鳴なんか上げちゃって」
相変わらず上下を太い腕で隠したまま、女将が頬を染めて謝罪してきた。
「いやいや、こちらこそ驚かせてしまってすみません」
「いえ、いいの……うふ♡」
なぜか三人(本当は四人)で入ることになった風呂。
女将の視線を感じながら体を洗い風呂に入った。
『ギース、大丈夫なのか?』
『長風呂でなければ大丈夫じゃろ』
「大丈夫ですよ、ありがとうございます」
風呂は床は全部切り出し磨かれた石の床で、洗い場には座って体が洗えるように木製のベンチが置かれている。
浴槽は木造でほんのり乳白色の湯が満ちている。
壁側に立っている小さな女神像の水瓶から湯が浴槽に常に注がれている掛け流しタイプだ。
先に湯に入っていた女将とは離れた場所にギースと並んで入る。
心做しか少しとろりとした湯質で肌がツルツルになりそうである。
「どうです? 私の温泉は?」
ススーッと隣にやって来た女将。
「少しトロッとしてますね。肌がツルツルになりそうですね」
「あら、分かります!? この温泉、化粧水の湯なんて言ってるくらいお肌がツルッツルになるんですよ。ほら、毎日入ってるから私のお肌ツルツル」
ムッキムキの腕を湯から出して披露してきた女将。確かに肌はツルツルのようだが、肌よりもその筋肉に目がいってしまう。
「この温泉と私の料理で絶対繁盛させてやるわ! って息巻いてたんですけどねぇ……現実は厳しいわね」
ため息を吐きながら女将が寂しそうに言った。
『こやつはなぜカルロッソを辞めたのじゃろうの? そこで働いておる方が安泰だったじゃろうに』
それは俺も気になっていたが、聞いていい話題なのか分からないため聞かずにいる。
「何でカルロッソ辞めちゃったんですか?」
なのにギースがサラッと聞いてしまった。
「ちょっ、おまっ、駄目だろ、そんなこと聞いちゃ!」
慌てて止めたが口にした言葉は引っ込められるはずもない。
「あぁ、いいんですよ。聞いてもつまらない話ですけどね、聞いてくださる?」
そう言うと女将はポツポツと話し始めた。
女将は二年前までカルロッソの総料理長を務めていたそうだ。
だからあの料理の美味さだったのか! と思わず納得してしまった。
元々辞める気などなかったそうなのだが、オーナーが代替わりをし、新しいオーナーの傍若無人ぶりに他のシェフ達から次々と苦情が上がり、店を辞めるものまで出てきたため、総料理長だった女将がオーナーに苦言を呈したそうだ。
「このままでは店が立ちいかなくなります! 元のやり方に戻してください! って、当たり前のことを言っただけなんだけどね」
カルロッソで働いている間は第三の性は隠していたため普通の男性として働いていたそうだ(いや、絶対漏れ出ていたと思う、うん)。
抗議したことに怒った新オーナーは女将をクビにしてしまったらしい。
「私もいい歳だからそろそろ引退は考えていたんだけど、私の代わりを務められる子を育ててからって思ってたのよね……」
いい歳だと言うがどう見ても四十代前半、まだまだ働き盛りだろう。
「私が辞めてから、カルロッソの評判は下がる一方……先代が急に亡くなって、養子だった現オーナーが店を継いだのはいいの、仕方のないことだもの……でも、お世話になった先代が大切にしていたカルロッソの評判が落ちていくのは辛いわね……ヤダ、私ったら、こんなことお客様にペラペラと、ごめんなさいね」
女将のこの言葉を聞いた俺は嫌な予感しか感じていなかった。
『きな臭いのぉ』
ほら来たよ!! こういう話、間違いなくシャンテは大好物なのだ!
『オーナーが代わると体制も代わる。よく聞く話だぞ?』
とりあえず当たり前のことを言ってみたのだが、シャンテの好奇心は膨れ上がり始めていた。
『先代が突然亡くなったというのも何やら気になる。アースよ、先代は病気だったのか聞いてみよ!』
『ヤダよ、何でそんなこと』
『良いから聞け! はよぉ!』
聞かなければうるさそうなのでとりあえず聞いてみた。
「亡くなる前日まではとても元気だったわ。病気をしているなんて聞いたこともなかったし。まぁ、シェフの私にそんな話はしないでしょうから知らなくて当然だけど……でもまだ私と大して変わらない歳だったから、亡くなったと聞いた時はショックで三日ご飯が食べられなかったわ」
「女将は何歳なんですか? オーナーさんは?」
空気を読まないギースが笑顔でそんなことを聞いた。
「私? 四十二よ? オーナーは四十五だったの……早すぎよね……せめてお顔だけでもってお願いしたけど、密葬にするってお別れすら出来なかったわ……」
『ほぉ……』
これはもう確定じゃないのか? 俺、また偵察とかさせられちゃうパターンじゃないのか?
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