9 / 34
第9話 二日目の冒険
しおりを挟む
あたしは流行る気持ちに足取りを弾ませて通学路を駆け抜け、急いで家に帰ってきた。
玄関前で鍵を出しながら、横の犬小屋にいるコウに話しかける。
「今から向こうの世界のあなたに会いに行ってくるからね!」
「わん!」
コウは今日も元気だ。溌剌とした瞳でこちらを見上げ、尻尾を振っている。利口で聞き分けがいいのはあっちのコウもこっちのコウも同じだ。
あたしは彼に束の間の別れを告げて家に入る。自分の部屋に直行して鞄を置いて少し暑かったのでベランダの窓を開けてゲームを起動することにした。
「ヘルプちゃんはこれで行けるって言ってたけど……」
ゲームを起動すると画面にゲームの姿のヘルプちゃんが現れて、「ゲームにしますか? それともファンタジアワールドに行きますか?」とメッセージで訊ねてきた。
あたしは迷わず、「ファンタジアワールドに行く」を選んだ。
すると瞬間に目に映る景色が変わった。ゲームでワープポイントに入った時のようなそんな感じ。
薄らいで揺らいだ景色がやがてはっきり見えてきて安定して気が付くとあたしはファンタジアワールドの天界、雲の上に来ていた。
初めて来た時と同じ場所だ。
リアルな現実となったヘルプちゃんがにこやかな笑顔であたしを迎えてくれた。
「よく来てくださいました、ルミナ様。今日も勇者を導いてくださるのですね?」
「うん、あたしも来たかったからね。コウ君の様子はどうでした?」
あたしは少し離れた場所の雲の隙間から下界を見下ろしている神様に訊ねた。
彼はいきなり声を掛けられてびっくりしたのだろう。少しビクッと肩を跳ね上げてから振り返って答えた。
「なんだ、ルミナか……旅は順調じゃ。二回ほど家に泊まってまだスライムと戦っておるよ」
「二回泊まったのか」
この世界と向こうの世界の時間の差はどうなっているのだろうか。あたしは考えてしまう。ゲームだと泊まったらすぐに次の日になるけど。
ゲームの世界と現実の世界で時間の流れる速さが違うのは常識だ。そうでないと夜にしかゲーム出来ない人は夜のゲームの世界しか見れなくなっちゃうからね。
ゲームによっては歩数で時間が経過するものもあれば、イベントで経過するものもある。ゲーム内の時間で経過するものもある。
さらに止めたり巻き戻したり出来るものまである。いろいろだ。
いかにヘルプちゃんと言えど彼女はこちらの世界の存在。他の世界の事まで知っているとは思えなかった。
現実世界の時間のことならあたしの方がずっと詳しいはずだ。一日は24時間でお昼は12時で一年は365日とばっちり知っている。
まあ、時間のことを考えてもしょうがない。あたしはここに時間について考えに来たわけではないのだから。さっさと冒険を始めよう。
「えっと、服装は……」
「それなら……」
神様に説明される必要は無かった。ゲームで装備を変更するやり方をあたしはもう知っていた。
ウインドウを開いてスクロールさせ、装備画面からお気に入りの魔法使いの服へと変更した。
これで普通の一般の学生から魔法使いの精霊ルミナへと変身だ。
「うわ、この服ステータスが高い」
そこで初めてあたしはこの服がとても良い物であることを知った。装備品の数値は装備画面で見ないと分からないからだ。
「神様が頑張りましたからねー」
「そうじゃろう、頑張ったからのう」
ヘルプちゃんに褒められて神様はとっても嬉しそう。あたしは素直にお礼を言って、転送ポータルから地上に向かうことにした。
ポータルの上に立つと場所の選択でタビダチ王国と前回中断した場所と出た。あたしは前回中断した場所を選ぶことにする。
「それじゃ、行ってきます」
「うむ、お前に任せておけば安心じゃ。今日も頑張ってきてくれ」
「はい!」
あたしは自分の冒険のことで頭が一杯で、ヘルプちゃんが『神様も頑張ってくださいよー人間に丸投げしてないで』と言いたげな目で彼を見ていたことには気が付かなかった。
天界から草原に降り立ち、あたしの冒険が再び始まる。
玄関前で鍵を出しながら、横の犬小屋にいるコウに話しかける。
「今から向こうの世界のあなたに会いに行ってくるからね!」
「わん!」
コウは今日も元気だ。溌剌とした瞳でこちらを見上げ、尻尾を振っている。利口で聞き分けがいいのはあっちのコウもこっちのコウも同じだ。
あたしは彼に束の間の別れを告げて家に入る。自分の部屋に直行して鞄を置いて少し暑かったのでベランダの窓を開けてゲームを起動することにした。
「ヘルプちゃんはこれで行けるって言ってたけど……」
ゲームを起動すると画面にゲームの姿のヘルプちゃんが現れて、「ゲームにしますか? それともファンタジアワールドに行きますか?」とメッセージで訊ねてきた。
あたしは迷わず、「ファンタジアワールドに行く」を選んだ。
すると瞬間に目に映る景色が変わった。ゲームでワープポイントに入った時のようなそんな感じ。
薄らいで揺らいだ景色がやがてはっきり見えてきて安定して気が付くとあたしはファンタジアワールドの天界、雲の上に来ていた。
初めて来た時と同じ場所だ。
リアルな現実となったヘルプちゃんがにこやかな笑顔であたしを迎えてくれた。
「よく来てくださいました、ルミナ様。今日も勇者を導いてくださるのですね?」
「うん、あたしも来たかったからね。コウ君の様子はどうでした?」
あたしは少し離れた場所の雲の隙間から下界を見下ろしている神様に訊ねた。
彼はいきなり声を掛けられてびっくりしたのだろう。少しビクッと肩を跳ね上げてから振り返って答えた。
「なんだ、ルミナか……旅は順調じゃ。二回ほど家に泊まってまだスライムと戦っておるよ」
「二回泊まったのか」
この世界と向こうの世界の時間の差はどうなっているのだろうか。あたしは考えてしまう。ゲームだと泊まったらすぐに次の日になるけど。
ゲームの世界と現実の世界で時間の流れる速さが違うのは常識だ。そうでないと夜にしかゲーム出来ない人は夜のゲームの世界しか見れなくなっちゃうからね。
ゲームによっては歩数で時間が経過するものもあれば、イベントで経過するものもある。ゲーム内の時間で経過するものもある。
さらに止めたり巻き戻したり出来るものまである。いろいろだ。
いかにヘルプちゃんと言えど彼女はこちらの世界の存在。他の世界の事まで知っているとは思えなかった。
現実世界の時間のことならあたしの方がずっと詳しいはずだ。一日は24時間でお昼は12時で一年は365日とばっちり知っている。
まあ、時間のことを考えてもしょうがない。あたしはここに時間について考えに来たわけではないのだから。さっさと冒険を始めよう。
「えっと、服装は……」
「それなら……」
神様に説明される必要は無かった。ゲームで装備を変更するやり方をあたしはもう知っていた。
ウインドウを開いてスクロールさせ、装備画面からお気に入りの魔法使いの服へと変更した。
これで普通の一般の学生から魔法使いの精霊ルミナへと変身だ。
「うわ、この服ステータスが高い」
そこで初めてあたしはこの服がとても良い物であることを知った。装備品の数値は装備画面で見ないと分からないからだ。
「神様が頑張りましたからねー」
「そうじゃろう、頑張ったからのう」
ヘルプちゃんに褒められて神様はとっても嬉しそう。あたしは素直にお礼を言って、転送ポータルから地上に向かうことにした。
ポータルの上に立つと場所の選択でタビダチ王国と前回中断した場所と出た。あたしは前回中断した場所を選ぶことにする。
「それじゃ、行ってきます」
「うむ、お前に任せておけば安心じゃ。今日も頑張ってきてくれ」
「はい!」
あたしは自分の冒険のことで頭が一杯で、ヘルプちゃんが『神様も頑張ってくださいよー人間に丸投げしてないで』と言いたげな目で彼を見ていたことには気が付かなかった。
天界から草原に降り立ち、あたしの冒険が再び始まる。
0
あなたにおすすめの小説
『ラーメン屋の店主が異世界転生して最高の出汁探すってよ』
髙橋彼方
児童書・童話
一ノ瀬龍拓は新宿で行列の出来るラーメン屋『龍昇』を経営していた。
新たなラーメンを求めているある日、従業員に夢が叶うと有名な神社を教えてもらう。
龍拓は神頼みでもするかと神社に行くと、御祭神に異世界にある王国ロイアルワへ飛ばされてしまう。
果たして、ここには龍拓が求めるラーメンの食材はあるのだろうか……。
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
【3章】GREATEST BOONS ~幼なじみのほのぼのバディがクリエイトスキルで異世界に偉大なる恩恵をもたらします!~
丹斗大巴
児童書・童話
幼なじみの2人がグレイテストブーンズ(偉大なる恩恵)を生み出しつつ、異世界の7つの秘密を解き明かしながらほのぼの旅をする物語。
異世界に飛ばされて、小学生の年齢まで退行してしまった幼なじみの銀河と美怜。とつじょ不思議な力に目覚め、Greatest Boons(グレイテストブーンズ:偉大なる恩恵)をもたらす新しい生き物たちBoons(ブーンズ)とアイテムを生みだした! 彼らのおかげでサバイバルもトラブルもなんのその! クリエイト系の2人が旅するほのぼの異世界珍道中。
便利な「しおり」機能を使って読み進めることをお勧めします。さらに「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届いて便利です! レーティング指定の描写はありませんが、万が一気になる方は、目次※マークをさけてご覧ください。
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
転生妃は後宮学園でのんびりしたい~冷徹皇帝の胃袋掴んだら、なぜか溺愛ルート始まりました!?~
☆ほしい
児童書・童話
平凡な女子高生だった私・茉莉(まり)は、交通事故に遭い、目覚めると中華風異世界・彩雲国の後宮に住む“嫌われ者の妃”・麗霞(れいか)に転生していた!
麗霞は毒婦だと噂され、冷徹非情で有名な若き皇帝・暁からは見向きもされない最悪の状況。面倒な権力争いを避け、前世の知識を活かして、後宮の学園で美味しいお菓子でも作りのんびり過ごしたい…そう思っていたのに、気まぐれに献上した「プリン」が、甘いものに興味がないはずの皇帝の胃袋を掴んでしまった!
「…面白い。明日もこれを作れ」
それをきっかけに、なぜか暁がわからの好感度が急上昇! 嫉妬する他の妃たちからの嫌がらせも、持ち前の雑草魂と現代知識で次々解決! 平穏なスローライフを目指す、転生妃の爽快成り上がり後宮ファンタジー!
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる