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第8話 瑠美奈の現代生活
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気が付くとあたしは元の世界の自分の部屋にいて、テレビの前でコントローラーを握って座っていた。
あの出来事は夢だったのだろうか。いや、夢じゃなかった。すぐに分かった。
テレビの画面にゲームの姿でヘルプちゃんが映っていて、『またの起こしを』と一礼した後に消えていった。またこのゲームを始めれば会えるのだ。
「瑠美奈ー。早くご飯を食べなさいー。いつまでピコピコやってるのー」
「すぐ行くー」
階下からお母さんの呼ぶ声がする。あたしはすぐにゲームを片付けて、ご飯を食べに台所に向かった。
食卓ではもう一家が揃っていた。お父さんがいてお母さんがいてお兄ちゃんがいて、そしてあたしが来た。
お兄ちゃんはもう自分のご飯を半分以上食べていた。あたしが来るの、そんなに遅かったのだろうか。
あたしが席につくなり、お母さんがお小言を言ってきた。
「もうゲームばかりしてちゃ駄目よ。学校の成績は大丈夫なの?」
「大丈夫。赤点は取ってないから」
あたしは箸を取って自分のご飯を食べ始める。
ふとお兄ちゃんが話しかけてきた。
あたしのお兄ちゃんの名前は政治といって真面目な優等生で勉強は出来るんだけど大のゲームマニアだ。
あたしがこんな性格になったのは間違いなく、こんな兄の影響を受けたせいだと思う。
あたしが子供ながらにいろんなゲームをやってこれたのには理由があって、それはこのお兄ちゃんからゲームを借りているからなのだ。
兄は交友関係が広いらしく、色んな知り合いからゲームを融通してもらっているらしい。彼がゲームをやらなくなってしまったら、あたしは多くのゲームをやる機会を失ってしまうだろう。考えるだけで怖いね。
そのお兄ちゃんが訊ねてくる。味噌汁をすすりながら。
「瑠美奈、そんなにあのゲームが面白いか?」
「うん、面白いよ」
「そうか。あれは俺のお薦めだからな。ウハハハ!」
どうやらあたしの答えを兄はとても気に入った様子。この分だとこれからもゲームを貸してもらえそうだ。
兄が喜んでいてあたしもとても嬉しかった。
そして、あたしは兄の思惑通りにゲームマニアへの道を進んでいくのでした。
さあ、次の日も学校だ。ゲームが気になっても子供は学校に行かなければならない。
「行ってくるね、コウ」
「わん!」
あたしは我が家の愛犬に言葉を掛ける。きっと向こうの世界のコウも今頃頑張っていることだろう。
あたしはゲームをやりたいのを我慢して、頑張って学校へ向かっていった。
学校はわいわいととっても賑やかだ。昨日ゲームの世界であんな体験をしてもそれでこの世界の何かが変わったりはしない。
先生が来て授業が始まる。いつも通りの普通で退屈な授業だ。
あたしはコウは今頃何してるかなとか向こうの世界のことばかり気にして、あまり授業を聞いていなかった。
まあ、それはいい。今日は当てられなかったから。
今日の授業がやっと終わり、あたしは『待ってました。さあ、帰ってゲームをしよう』と急いで鞄を持って立ち上がった。
「バイバイ、瑠美奈ちゃん」
「…………」
声を掛けてきたクラスメイトの挨拶にも答えず、あたしは一目散に急いで教室を出ていった。
あたしの体はまだこっちの世界にあったけど、あたしの意識はもうここには無かった。
あたしの去った教室で、生徒達の間にヒソヒソと不穏な雑談の渦が広がった。
「最近、瑠美奈ちゃん付き合い悪いよね」
「ボーっとしていることが多いような気がするよ」
「何かあったのかしら」
そんな雑談の渦を断ち切ったのが、背筋を伸ばして立ち上がった気の強そうな少女だった。
「みなさん、瑠美奈さんの件はわたくしに一任してはくださいませんか?」
彼女の名前は鷹宮高嶺(たかみや たかね)。このクラスの委員長でお金持ちで知られるお嬢様だった。
責任感のある委員長である彼女が任せろというのなら、クラスに反対の意見は出なかった。
真面目な高嶺はこのクラスから落ちこぼれを出すことを許さなかった。彼女は厳しい目で瑠美奈の動向を見定めることにした。
あの出来事は夢だったのだろうか。いや、夢じゃなかった。すぐに分かった。
テレビの画面にゲームの姿でヘルプちゃんが映っていて、『またの起こしを』と一礼した後に消えていった。またこのゲームを始めれば会えるのだ。
「瑠美奈ー。早くご飯を食べなさいー。いつまでピコピコやってるのー」
「すぐ行くー」
階下からお母さんの呼ぶ声がする。あたしはすぐにゲームを片付けて、ご飯を食べに台所に向かった。
食卓ではもう一家が揃っていた。お父さんがいてお母さんがいてお兄ちゃんがいて、そしてあたしが来た。
お兄ちゃんはもう自分のご飯を半分以上食べていた。あたしが来るの、そんなに遅かったのだろうか。
あたしが席につくなり、お母さんがお小言を言ってきた。
「もうゲームばかりしてちゃ駄目よ。学校の成績は大丈夫なの?」
「大丈夫。赤点は取ってないから」
あたしは箸を取って自分のご飯を食べ始める。
ふとお兄ちゃんが話しかけてきた。
あたしのお兄ちゃんの名前は政治といって真面目な優等生で勉強は出来るんだけど大のゲームマニアだ。
あたしがこんな性格になったのは間違いなく、こんな兄の影響を受けたせいだと思う。
あたしが子供ながらにいろんなゲームをやってこれたのには理由があって、それはこのお兄ちゃんからゲームを借りているからなのだ。
兄は交友関係が広いらしく、色んな知り合いからゲームを融通してもらっているらしい。彼がゲームをやらなくなってしまったら、あたしは多くのゲームをやる機会を失ってしまうだろう。考えるだけで怖いね。
そのお兄ちゃんが訊ねてくる。味噌汁をすすりながら。
「瑠美奈、そんなにあのゲームが面白いか?」
「うん、面白いよ」
「そうか。あれは俺のお薦めだからな。ウハハハ!」
どうやらあたしの答えを兄はとても気に入った様子。この分だとこれからもゲームを貸してもらえそうだ。
兄が喜んでいてあたしもとても嬉しかった。
そして、あたしは兄の思惑通りにゲームマニアへの道を進んでいくのでした。
さあ、次の日も学校だ。ゲームが気になっても子供は学校に行かなければならない。
「行ってくるね、コウ」
「わん!」
あたしは我が家の愛犬に言葉を掛ける。きっと向こうの世界のコウも今頃頑張っていることだろう。
あたしはゲームをやりたいのを我慢して、頑張って学校へ向かっていった。
学校はわいわいととっても賑やかだ。昨日ゲームの世界であんな体験をしてもそれでこの世界の何かが変わったりはしない。
先生が来て授業が始まる。いつも通りの普通で退屈な授業だ。
あたしはコウは今頃何してるかなとか向こうの世界のことばかり気にして、あまり授業を聞いていなかった。
まあ、それはいい。今日は当てられなかったから。
今日の授業がやっと終わり、あたしは『待ってました。さあ、帰ってゲームをしよう』と急いで鞄を持って立ち上がった。
「バイバイ、瑠美奈ちゃん」
「…………」
声を掛けてきたクラスメイトの挨拶にも答えず、あたしは一目散に急いで教室を出ていった。
あたしの体はまだこっちの世界にあったけど、あたしの意識はもうここには無かった。
あたしの去った教室で、生徒達の間にヒソヒソと不穏な雑談の渦が広がった。
「最近、瑠美奈ちゃん付き合い悪いよね」
「ボーっとしていることが多いような気がするよ」
「何かあったのかしら」
そんな雑談の渦を断ち切ったのが、背筋を伸ばして立ち上がった気の強そうな少女だった。
「みなさん、瑠美奈さんの件はわたくしに一任してはくださいませんか?」
彼女の名前は鷹宮高嶺(たかみや たかね)。このクラスの委員長でお金持ちで知られるお嬢様だった。
責任感のある委員長である彼女が任せろというのなら、クラスに反対の意見は出なかった。
真面目な高嶺はこのクラスから落ちこぼれを出すことを許さなかった。彼女は厳しい目で瑠美奈の動向を見定めることにした。
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